家族の容態が思わしくないとき、悲しみのなかで「これからの生活費は大丈夫だろうか」という不安が頭をよぎるのは自然なことです。遺族年金は、配偶者や子どもなど生計を共にしていた家族を亡くした遺族の生活を支えるための公的な制度ですが、2025年6月に成立した年金制度改正法により、今後の給付内容が段階的に見直されることが決まりました。
「2026年に何かが変わるらしい」「5年で打ち切りになるって本当?」といった情報が断片的に出回っていますが、施行は2028年4月であり、いま受給を始める方は基本的に現行制度のまま受け取れます。本記事では、Sustainable Finance Lab編集部が厚生労働省・日本年金機構の一次情報をもとに、制度の基本から改正のポイント、今のうちに備えるべきことまでを整理しました。
🔍 こんな悩みはありませんか?
- 家族(パートナー・親)の容態が思わしくなく、亡くなったあとの生活費が不安
- 「2026年に変わる」「5年で打ち切り」という情報を見たが、何が本当なのか分からない
- 遺族年金は結局いくらもらえるのか、自分の家族構成だとどうなるのか知りたい
- 葬儀のあとすぐに何の手続きをすればいいか整理できていない
- 公的制度だけで足りるのか、ほかにどう備えればいいのか分からない
本記事では、これらの悩みに「あなたの状況に合わせた答え」を、公的データと専門家の視点で整理してお届けします。
【結論】遺族年金は今受給を始める方には改正の影響なし
2025年改正法による主な変更の施行は2028年4月で、現時点で受給権が発生する方や受給中の方は現行制度がそのまま適用されます。まずはこの点を押さえてください。
厚生労働省は、改正による影響を受けない方として4つの類型を明示しています。
同省の説明資料によれば、
は、今回の見直しの影響を受けません。
📌 本記事の3つの結論
- 結論1:いま遺族年金を受給する方は、現行制度のまま受け取れる(改正の影響なし)
- 結論2:改正の施行は2028年4月。法案は2025年5月に提出→6月13日に成立した
- 結論3:将来世代の備えは「公的年金+生命保険+資産形成」の3層で考えるのが現実的
出典:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00020.html(2026年5月閲覧)
遺族年金とは?基礎年金・厚生年金の2階建て構造
遺族年金は、亡くなった方によって生計を維持されていた遺族に対して支給される公的年金で、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2階建てになっています。
遺族基礎年金(1階部分)
国民年金から支給される部分で、自営業者・会社員・公務員のいずれの遺族でも対象になりえます。受給できるのは原則として「子のある配偶者」または「子」で、子の年齢要件は18歳到達年度末(障害等級1・2級の場合は20歳)までです。
令和7年度の遺族基礎年金額は年831,700円(昭和31年4月2日以後生まれの場合)に、子の人数に応じた加算が上乗せされます。子が1人または2人の加算は1人あたり239,300円、3人目以降は79,800円が基準です。
遺族厚生年金(2階部分)
厚生年金に加入していた方(または加入していた方)が亡くなったときに、その遺族へ支給されます。会社員・公務員の遺族が対象で、自営業者の遺族は受給できません。
受給できる遺族の優先順位は「①配偶者・子→②父母→③孫→④祖父母」で、最も順位の高い方が受け取ります。年金額は亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3が基本です。
💡 編集部メモ:自営業の遺族は手薄になりやすい
会社員の遺族は「基礎+厚生」の両方を受給できる可能性がありますが、自営業の遺族は基礎年金のみで、子がいない場合は遺族基礎年金も受け取れません。家族の働き方によって備えるべき自助努力の量は大きく変わる点を押さえておきましょう。
遺族年金は実際いくらもらえる?4ケースのシミュレーション
受給額は「亡くなった方の職業」「家族構成」「残された方の年齢」によって変わります。代表的な4ケースで現行制度の年間受給額の目安を整理しました。
ケースA:夫(会社員・平均報酬月額35万円)が死亡|妻と子ども2人
| 受給する年金 | 年額(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 遺族基礎年金 | 約131万円 | 子2人加算込み |
| 遺族厚生年金 | 約49万円 | 報酬比例の3/4 |
| 合計 | 約180万円(月15万円) | 末子18歳到達年度末まで |
※平均報酬月額35万円・厚生年金加入8年(最低25年とみなす特例適用)の場合の試算。実際の金額は加入期間・標準報酬月額により変動します。最新の正確な見込み額は日本年金機構「ねんきんネット」で確認できます(2026年5月閲覧)。
ケースB:夫(会社員・平均報酬月額38万円)が死亡|妻30代・子どもなし
| 受給する年金 | 年額(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 遺族基礎年金 | 0円 | 子なしのため対象外 |
| 遺族厚生年金 | 約60万円 | 報酬比例の3/4 |
| 中高齢寡婦加算 | 約62万円(40歳〜65歳) | 段階的に廃止予定 |
| 合計 | 約60万〜122万円(月5〜10万円) | 40歳以降に加算が乗る |
※妻が30歳未満で子なしの場合は現行制度でも遺族厚生年金は5年間の有期給付。改正後は男女問わず5年有期+有期給付加算(1.3倍)に変わる予定。
ケースC:夫(自営業)が死亡|妻と子ども1人
| 受給する年金 | 年額(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 遺族基礎年金 | 約107万円 | 子1人加算込み |
| 遺族厚生年金 | 0円 | 厚生年金未加入のため |
| 合計 | 約107万円(月9万円) | 末子18歳到達年度末まで |
※子が独立すると遺族基礎年金は失権し、寡婦年金または死亡一時金に切り替わる可能性あり。自営業世帯は民間の生命保険・収入保障保険での補完が特に重要です。
ケースD:妻(会社員・平均報酬月額35万円)が死亡|夫50代・子ども1人
| 受給する年金 | 年額(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 遺族基礎年金 | 約107万円 | 子1人加算込み |
| 遺族厚生年金 | 約49万円 | 夫が55歳以上の場合に受給権発生・60歳から支給 |
| 合計(子の養育期間中) | 約107万円(月9万円) | 夫60歳以降に厚生年金が上乗せ |
※現行制度では妻死亡時に夫が55歳未満の場合、遺族厚生年金の受給権そのものが発生しません。改正後(2028年4月以降)はこの男女差が解消される予定です。
金額の前提として、遺族基礎年金額は厚生労働省「令和7年度の年金額改定について」に基づいています(2026年5月閲覧)。実際の見込み額は加入期間・標準報酬月額・家族構成により異なるため、ねんきんネットでの試算もあわせて行ってください。
2025年改正で何が変わった?5月→6月の動きと2028年4月の施行
遺族年金改正の動きは、2025年5月に法案が国会に提出され、同年6月に成立、施行は2028年4月という3段階で進んでいます。報道で「いつから変わるのか」が混在しているのはこのためです。
| 時期 | 動き | 受給者への影響 |
|---|---|---|
| 2025年5月16日 | 法案を通常国会に提出 | 影響なし(法案段階) |
| 2025年6月13日 | 法案成立(衆議院修正のうえ) | 影響なし(公布段階) |
| 2026年〜2028年3月 | 準備期間(現在ここ) | 影響なし。現行制度で受給可 |
| 2028年4月1日 | 主要部分が施行 | 男性は一斉適用/女性は20年かけ段階移行 |
| 2028年4月以降〜 | 女性の対象年齢を段階的に引き上げ | 該当者が徐々に増加 |
厚生労働省の公式情報によれば、年金制度改正法案が2025年5月16日に通常国会に提出され、衆議院で修正の上、6月13日に成立しました。そして遺族厚生年金制度の見直しは、2028年4月から開始されますが、すべての変更が一度に適用されるわけではありません。
⚠️ 「2026年に変わる」という情報の正体
SNSやニュースで「2026年から遺族年金が変わる」と見かけた方は、おそらく2025年の法案成立時期と2028年の施行時期が混同された情報に触れています。実際の主要部分の施行は2028年4月であり、それまでに受給を始めた方は現行制度の対象です。情報の出どころは必ず厚生労働省や日本年金機構など一次情報で確認してください。
改正の5つのポイントをわかりやすく整理
2028年4月から段階的に施行される主な変更点は次の5つです。「制限が強まる部分」と「拡充される部分」が両方あるため、自分にとってプラスかマイナスかは家族構成と性別・年齢で異なります。
ポイント①:男女差の解消(5年有期給付への一本化)
現行では、子のない配偶者の遺族厚生年金について、妻は30歳未満で5年有期・30歳以上で無期、夫は55歳未満で受給権なし、という大きな男女差がありました。改正後は、男女とも60歳未満で配偶者を亡くした場合は原則5年間の有期給付に統一されます。
女性側は段階的な移行で、まず2028年4月時点では「30歳未満→40歳未満」までが新ルールの対象になり、その後20年かけて60歳未満まで拡大します。男性側は施行日から一斉に対象拡大となるため、これまで遺族厚生年金を受け取れなかった方に新たに支給されるケースが増えます。
ポイント②:有期給付加算(給付額の約1.3倍化)
5年の有期給付期間中は、新たに「有期給付加算」が上乗せされ、給付額は現行の遺族厚生年金額の約1.3倍になる予定です。期間は短くなる代わりに、その間の支給は手厚くなります。
ポイント③:継続給付(生活が再建していない人への配慮)
5年経過後も生活が安定しない方には「継続給付」の仕組みが用意されます。単身の場合は、就労収入が月額約10万円(年間122万円)以下の方は、継続給付が全額支給されます。収入が増えるにつれて緩やかに調整される設計で、概ね月額20〜30万円を超えると停止します。
ポイント④:死亡分割(老齢厚生年金への上乗せ)
新設される「死亡分割」は、亡くなった配偶者の婚姻期間分の厚生年金記録を残された方の老齢厚生年金に上乗せできる仕組みです。離婚時の年金分割と似た考え方で、老後の年金額が増額されます。
ポイント⑤:所得制限の撤廃と子の加算引き上げ
現行では遺族厚生年金の受給に「年収850万円未満」という生計維持要件がありましたが、この所得制限が撤廃されます。共働き世帯にとっては受給のハードルが下がる方向の変更です。あわせて、遺族基礎年金の「子の加算」も引き上げられる予定で、子育て中の遺族への支援が強化されます。
なお、現行制度にあった「中高齢寡婦加算」は施行日以降、年度ごとに段階的に逓減し、最終的には廃止される方針です。
あなたに改正は影響する?影響しない?診断チャート
「自分は改正の影響を受けるのか」を判断するための、簡易診断フローです。Yes/Noを順に確認してください。
Q1. すでに遺族厚生年金を受給していますか?
→ Yes:影響なし。現行制度のまま受給を継続できます。
→ No:Q2へ
Q2. 受給権が発生するのは2028年3月31日までですか?(家族の容態が芳しくなく、近い将来受給開始する見込みのある方)
→ Yes:影響なし。施行前に受給権が発生した方は現行制度の給付内容が維持されます。
→ No / 不明:Q3へ
Q3. 受給権が発生する時点で60歳以上ですか?
→ Yes:影響なし。60歳以降に発生する遺族厚生年金は現行どおりの給付内容が維持されます。
→ No:Q4へ
Q4. 18歳年度末までの子を養育中ですか?
→ Yes:給付内容に大きな変更なし(子の加算は増額)。
→ No:Q5へ
Q5. 残された配偶者は2028年度末時点で40歳以上の女性ですか?
→ Yes:影響なし。経過措置の対象として現行制度が適用されます。
→ No:改正の影響を受ける可能性が高い(5年有期給付+有期給付加算が適用されます)。
このチャートでQ1〜Q4までに「Yes」が1つでも当てはまった方は、改正の影響をほぼ受けずに済みます。本記事の主な読者である「もうすぐ家族が亡くなりそうな方」は、Q2でYesになるケースが大多数です。施行前の受給権発生は現行制度が適用されるため、まずは安心してください。
【タイプ別】間もなく家族を亡くす方が”今”備えるべきこと
残される家族の状況によって、いま準備すべきことは変わります。代表的な4タイプ別に、優先度の高い行動を整理しました。
タイプA:配偶者(会社員)が間もなく亡くなる|子どもあり
遺族基礎年金+遺族厚生年金の両方を受給できる、もっとも手厚いケースです。年間180万円前後(家族構成による)が、末子の18歳年度末まで継続します。
- 最優先:ねんきんネットで配偶者の正確な厚生年金加入記録を確認しておく
- 住宅ローンの団体信用生命保険の加入状況を確認(多くの場合、ローン残債が消える)
- 勤務先の死亡退職金・弔慰金の規定を確認(社内規定または人事部に問い合わせ)
- 子の独立後(末子18歳以降)は遺族基礎年金が失権するため、その後の生活設計も並行して検討
タイプB:配偶者(会社員)が間もなく亡くなる|子どもなし
遺族基礎年金は対象外で、遺族厚生年金のみとなります。妻側は30歳以上であれば現行は無期、30歳未満なら5年有期。夫側は55歳未満だと受給権なし、というのが現行ルールです。
- 最優先:受給開始時の妻の年齢を確認(30歳前後なら受給期間が大きく変わる)
- 受給期間が短い場合は、貯蓄・生命保険からの収入でブリッジ計画を立てる
- 夫が残される場合(55歳未満)は遺族厚生年金が出ないため、生命保険・遺族の収入確保が最優先
- 40歳以上の妻には中高齢寡婦加算(年約62万円・現行)が65歳まで上乗せされる
タイプC:配偶者(自営業)が間もなく亡くなる
遺族厚生年金は対象外で、遺族基礎年金のみ。子がいなければ遺族基礎年金も受給できず、寡婦年金または死亡一時金に切り替わります。公的保障が手薄な分、民間保険・貯蓄での補完が特に重要です。
- 最優先:加入中の生命保険・収入保障保険の保険金額と保障期間を確認
- 事業の整理(取引先・口座・契約の引き継ぎ)に必要な資金を確保
- 国民年金基金・iDeCoなど自助努力分の受取方法を確認
- 子の独立後は寡婦年金(60〜65歳まで)または死亡一時金が選択肢
タイプD:親が間もなく亡くなる(生計を維持されていた子・孫)
親(または祖父母)が亡くなった場合、生計を維持されていた子・孫は遺族厚生年金の対象になりえます。ただし配偶者・子が優先順位上位にいる場合は受給できません。
- 最優先:自分が「生計を維持されていた」状態に該当するか年金事務所で確認
- 未支給年金(亡くなった月の分まで)の請求を忘れない(時効5年)
- 遺族年金が受給できない場合でも、相続・葬祭費・各種給付の申請は別途必要
- 親の介護費用・葬儀費用の精算と相続手続きを並行して進める
受給手続きの流れ|窓口・必要書類・期限(5年時効)
遺族年金は自動的に支給されるものではなく、自分で請求手続きをしなければ受け取れません。請求できる期間にも時効があるため、流れを押さえておきましょう。
| ステップ | 内容 | 期限の目安 |
|---|---|---|
| ①死亡届の提出 | 市区町村役場へ(葬儀社が代行することも) | 死亡から7日以内 |
| ②年金受給権者死亡届 | 日本年金機構(亡くなった方が年金受給中だった場合) | 死亡から10〜14日以内 |
| ③未支給年金の請求 | 同上(亡くなった月までの未払い分を請求) | 死亡日の翌日から5年以内 |
| ④遺族年金の請求 | 遺族基礎年金は市区町村、遺族厚生年金は年金事務所 | 受給権発生日の翌日から5年以内 |
請求時の主な必要書類
- 年金請求書(年金事務所または市区町村窓口で入手)
- 戸籍謄本(亡くなった方と請求者の関係を証明)
- 住民票の写し(世帯全員分/生計同一の証明)
- 請求者の所得証明書または非課税証明書
- 死亡診断書または死体検案書のコピー
- 請求者の通帳(年金振込口座)
- マイナンバーが確認できる書類
請求書類の最新版と詳細は日本年金機構「遺族年金を受けられるとき」で確認してください(2026年5月閲覧)。
📞 手続きで迷ったときの相談先
- ねんきんダイヤル:0570-05-1165(一般的な相談)
- 近くの年金事務所:日本年金機構サイトで検索可能(事前予約が確実)
- 街角の年金相談センター:全国80か所超(無料)
※相談は無料です。手続きが複雑なケース(離婚歴ありの方の遺族年金など)は、社会保険労務士への有料相談も選択肢です。
公的制度だけで足りる?「お金の循環」で考える持続可能な備え
遺族年金は生活を支える土台になりますが、それだけで現役時代の家計を完全に補うのは難しいケースも多いのが実情です。Sustainable Finance Lab編集部では、遺族保障を「短期・中期・長期」の3層で組み立てる考え方を提案しています。
3層構造のお金の循環
🌱 第1層:途切れない収入の土台(公的年金)
遺族基礎年金・遺族厚生年金は、亡くなった月の翌月分から受給開始でき、子の養育期間や本人が60歳に達するまでなど、長期にわたって支給されます。「最低限の生活費を毎月途切れずに確保する」役割を担うのがこの層です。改正後の5年有期給付期間中は1.3倍に増額されるため、その間に第2層・第3層の準備を整える時間にもなります。
🌳 第2層:中期の安心(生命保険・収入保障保険・貯蓄)
子どもの教育費や住居費など、5〜20年程度の中期で必要になる支出は、生命保険や収入保障保険、預貯金で備えるのが現実的です。生命保険文化センターの調査によれば、生命保険の世帯加入率は約9割と高水準ですが、必要保障額を正確に計算した上で加入している世帯は多くありません。遺族年金で見込める額を差し引いた「不足分」だけを保険で補うのが、保険料を抑えつつ持続可能な設計のコツです。
🌲 第3層:長期の備え(NISA・iDeCo・退職金)
残された方自身の老後資金は、つみたてNISAやiDeCo、企業型DCなどの資産形成手段で長期に育てていく層です。改正で新設される「死亡分割」によって配偶者の厚生年金記録が老齢厚生年金に上乗せされる仕組みも、この長期層を補強する制度設計と言えます。
なぜ「3層」で考えると持続可能なのか
遺族年金の改正で「5年で減額する人が出る」という変化は、一見するとマイナスに映ります。しかし制度全体としては、所得制限の撤廃・男女差の解消・子の加算増・死亡分割の新設など、「一時的に手厚く、その後は本人の自助と再就労を後押しする」という設計思想に動いています。
つまり、「公的制度に全部頼る」でも「保険ですべて備える」でもなく、3つの層がそれぞれの時間軸で機能する循環を作るのが、長く安心が続くお金の使い方です。短期的な保険料の安さや給付の多寡だけで判断せず、5年後・10年後・20年後にどう繋がっているかを見て選んでいきましょう。
遺族年金についてよくある質問(FAQ)
Q1. 夫が亡くなった場合、妻はいつまで遺族年金をもらえますか?
A. 妻の年齢と子の有無、夫の加入年金により異なります。子のある妻は子が18歳年度末まで遺族基礎年金、その後40〜65歳は中高齢寡婦加算(現行)。遺族厚生年金は妻が30歳以上で子がない場合は終身(現行)。改正後(2028年4月以降に受給権発生)は、男女とも60歳未満で子がない場合は原則5年有期となります。
Q2. 遺族厚生年金が「5年で打ち切り」になるのはいつから、誰が対象ですか?
A. 2028年4月以降に新たに受給権が発生する、60歳未満で子のない配偶者が対象です。男性は施行日から一斉に対象、女性は施行日から段階的に対象年齢が引き上げられ、2028年4月時点では「30歳未満→40歳未満」までの拡大です。すでに受給中の方や2028年3月までに受給権が発生する方は対象外です。
Q3. 遺族年金が廃止されるって本当ですか?
A. 制度自体の廃止は予定されていません。「廃止」という言葉が使われるのは、現行の「30歳以上の妻への終身給付」や「中高齢寡婦加算」が段階的に縮小・廃止される部分のことを指していることが多いです。基本的な遺族年金の枠組みは存続します。
Q4. 現在遺族年金を受給している人はどうなりますか?
A. 影響を受けません。厚生労働省は「改正法の施行日前に受給権が発生している遺族厚生年金については、現行制度の給付内容を維持する」と明言しています。減額や打ち切りはありません。
Q5. 2026年度の遺族基礎年金の金額はいくらですか?
A. 令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の遺族基礎年金額は年831,700円(昭和31年4月2日以後生まれ)。2026年度の額は厚生労働省から例年1月に公表されます。最新値は厚生労働省「年金額改定について」のページをご確認ください。
Q6. 遺族年金と自分の年金は両方もらえますか?
A. 受給権は両方発生しますが、原則として併給調整があり、どちらか有利な方を選択する形になります。65歳以降は「老齢基礎年金+遺族厚生年金」「老齢基礎年金+老齢厚生年金」など組み合わせが可能で、遺族厚生年金の額が老齢厚生年金より多い場合はその差額が遺族厚生年金として支給されます。
Q7. 遺族年金は非課税ですか?
A. はい、遺族基礎年金・遺族厚生年金とも所得税・住民税は非課税です。ただし、世帯収入や扶養判定の基準には影響しないため、健康保険の扶養や住民税非課税世帯の判定では収入として扱われない一方、自治体の手当によっては別途扱いが異なる場合があります。
Q8. 月収30万円の人が亡くなった場合、遺族厚生年金はいくらですか?
A. 平均標準報酬月額30万円・厚生年金加入25年の場合の遺族厚生年金は年額約42万円(月3.5万円)が目安。子2人なら遺族基礎年金約131万円が加算され、合計年170万円程度(月14万円)となります。実額は加入期間と平均報酬で大きく変わるため、ねんきんネットで個別試算を行ってください。
Q9. 遺族年金の請求を5年以上忘れていた場合はどうなりますか?
A. 受給権発生から5年を超えた分は時効で請求できません。ただし、5年以内の分は遡って請求可能です。家族の不幸の直後は手続きに気が回らないことも多いため、葬儀後しばらくしてからでも構わないので、年金事務所に相談してみてください。
編集部からのコメント
💬 Sustainable Finance Lab 編集部より
家族の旅立ちが近いなかでこの記事に辿り着かれた方へ。まず、いま遺族年金を受給される場合は2025年改正法の影響を受けないことを、心の片隅に置いてください。そのうえで、遺族年金は「あなたの生活の土台」であって「すべて」ではない、という視点を持っていただけると、その後のお金の選択がぐっと楽になります。
制度に頼れる部分は素直に頼り、足りない部分は生命保険・貯蓄・資産形成で長く育てる。この「お金の循環」が、悲しみのあとに続く長い人生を、少しでも穏やかに支えてくれます。あなたにとっての最適解は、家族構成や生活設計によって違います。本記事の診断チャートとペルソナ別の指針を手がかりに、ご自身のケースで一度整理してみてください。
まとめ
遺族年金は、配偶者や子どもなど生計を共にしていた家族を亡くした遺族の生活を支える公的制度で、「遺族基礎年金(1階)」と「遺族厚生年金(2階)」の2階建てになっています。2025年6月13日に成立した年金制度改正法により、2028年4月から段階的に内容が見直されますが、施行前に受給権が発生する方は現行制度がそのまま適用されます。
- 遺族年金の主要改正の施行は2028年4月。それまでに受給開始する方は影響なし
- 改正の柱は5つ:男女差解消/有期給付加算1.3倍/継続給付/死亡分割/所得制限撤廃
- 受給額は家族構成と亡くなる方の働き方で大きく変わる(年70万〜200万円の幅)
- 請求には5年の時効あり。葬儀後落ち着いたら年金事務所に相談を
- 持続可能な備えは「公的年金+生命保険+資産形成」の3層構造で考える
不確かな情報に振り回されず、厚生労働省や日本年金機構の一次情報を起点に、ご自身のケースで判断していくことが何より大切です。本記事が、難しい時期にあるあなたの選択を少しでも後押しできれば幸いです。
監修:Sustainable Finance Lab 編集部(年金・社会保障分野担当)
主な参考資料:
・厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00020.html
・厚生労働省「年金制度改正法の概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000209599.html
・日本年金機構「遺族年金を受けられるとき」https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izoku-kyufu/jukyu-yoken/20140422.html
本記事は2026年5月時点の公開情報をもとに作成しています。制度の最新状況は必ず公的機関の発表をご確認ください。

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