
2022年から2024年までの3年間に大手を含む脱毛サロンの倒産が続き、倒産件数は3年連続で最多を更新しています。
倒産によって施術を受けられなくなった利用者・施術料金を回収できなかった利用者はこの3年間で30万人近くに達しています。
脱毛サロンの倒産は今後も増え続ける見通しなのでしょうか?
脱毛サロンの代表的な倒産理由やこの3年間に倒産した主な脱毛サロンを紹介すると共に、契約している脱毛サロンが倒産した場合の対応や倒産しない脱毛サロンの見分け方などを解説します。
目次
最近なぜ脱毛サロンの倒産が相次いでいるのか|背景と今後の見通し
2022年以降脱毛サロンの倒産が相次いでいます。
脱毛サロンに限らず、医療脱毛クリニックの倒産も増えていますが、当記事では脱毛サロンに絞って調査した結果を紹介します。
主な脱毛サロンの倒産理由
脱毛サロンが続々と倒産しているのは1つの理由ではなく、複数の現象が積み重なった結果起こった現象です。
さまざまな倒産理由の中で代表的なものを見ていきましょう。
価格競争の末低価格化が限界に
2010年代から急増した脱毛サロンですが、全体的なピークを迎えたのは2020年初め頃だと言われています。
「ニーズがあるから」と次から次へと新規の脱毛サロンが業界に加わった結果、当然のように利用者を獲得するための価格競争が勃発しました。
中には、公式サイトをチェックする度に施術料金が下がっているような脱毛サロンもありました。それだけ価格競争が激化していたのです。
「他の脱毛サロンよりも低価格でサービスが良い」というPRをするために低価格にした結果、経営破綻に追い込まれて倒産した脱毛サロンはかなりの数に上っています。
経営が安定していると見られていた大手脱毛サロンも、価格競争に参加した結果、運営会社の倒産という状況に追い込まれました。
莫大な広告費により資金繰りが困難に
莫大な広告費も脱毛サロンの経営を圧迫しました。現在はTV・街頭ポスター・インターネットで広告が流れており、広告費は2024年に3年連続で最高値を記録しています。
特にインターネットでは、公式サイトに限らず、記事にも他社の広告が掲載されるのが当たり前の状態になり、SNSや動画にも広告があふれています。
SNSや動画の広告は集客効果が非常に大きいため、利用客を増やしたい脱毛サロンは積極的にSNSや動画に広告を掲載するようになりました。
しかし、集客効果以上に広告費用が莫大な額になったため、経営状態が悪化した脱毛サロンが多いのです。
コロナ禍の反動で供給過多に
脱毛サロンの倒産は2022年以降に急増しました。その背景には、価格競争・広告費増加に加えてコロナ禍があります。
新型コロナウイルス感染症の影響で、公共の場で他人と接することを避ける人が増えました。
また、流行を終息させるために政府が「不要不急の外出は避けよう」というスローガンを掲げたこともあって外出を控える人が増え、ほとんどの脱毛サロンは営業時間縮小・休業などの対応を取っています。
新型コロナウイルス感染症のワクチンが開発された後の脱毛サロンは、コロナ禍で集客できなかった分を取り戻すべく、コロナ禍以前よりも集客のための値下げや過剰な広告などを行いました。
その結果、サービス供給過多による経営破綻を招いたのです。
売上を上げるほど負債が増える構造に
脱毛サロンでお馴染みの定額制や回数契約は売上を伸ばすために考案されたビジネスモデルですが、定期的に収入を得られるといったメリットがある一方で、デメリットもあります。
定額制も回数契約も、契約途中で解約されると予定していた売上を得られません。また、利用者の予約管理が難しくなるのです。
予約を取りにくくなると利用者に契約解除を求められることが増え、解約時にトラブルが発生しやすくなります。
トラブルが表沙汰になると売上も信用度も低下して負債が増大するので、急成長した脱毛サロンならそれが倒産に直結することが非常に多いのです。
今後も脱毛サロンの倒産は止まらないのか|2024年度は過去最高の倒産件数だった
前述したように2022年以降脱毛サロンの倒産が続いていますが、2024年度は過去最高の倒産件数になり、脱毛業界や脱毛サロンに通っている人達に衝撃が走りました。
2024年までの倒産件数は以下グラフの通りです。
(画像引用:株式会社東京商工リサーチ)
2021年度までは1件から4件までの倒産件数にとどまっていましたが、2022年度はいきなり9件という件数になり、翌年度は11件に、2024年度には16件に達しています。
超大手脱毛サロンの運営会社も倒産したことから、脱毛サロン業界への不信感がつのっており、脱毛サロンや医療脱毛クリニックで検索すると「倒産」「破産」「やばい」といった単語が候補に出るようになっています。
章前半で脱毛サロンの倒産理由を紹介しましたが、こういった諸事情は現状では改善の見込みが少なく、倒産が相次ぐ一方で新規参入する脱毛サロンもあるため、競争激化が止まりません。
現在の脱毛サロン事情が変わらない限り、倒産は今後も続くと見込まれています。
最近倒産した脱毛サロン一覧|大手のミュゼプラチナムも
2023年度・2024年度・2025年度にサロン自体や運営会社が倒産した脱毛サロン3社を紹介します。
それぞれの脱毛サロンが倒産した時期や倒産の背景や負債額、倒産の際の救済措置などを見てみましょう。
ミュゼプラチナム
倒産した時期 | 2025年6月2日 |
倒産の背景 | 人件費・店舗運営費・広告費の増大など |
負債総額 | 260億円 |
救済措置 | あり |
ミュゼプラチナムは、2024年までに全国各地に約170店舗を展開していた大手脱毛サロンです。
しかし、2025年3月下旬から全店舗が一時休業状態になり、同年6月6日にミュゼプラチナム公式サイトで運営会社であるMPH株式会社の会社解散を発表しました。
運営会社MPHの会社解散の背景は、新規の収入がない状態で人件費・店舗運営費・広告費がかさみ、財務構造が不安定な状態になったことだと説明されています。
約2,300人の従業員に2025年1月から4月まで給与が支払われなかったとして、元従業員が2025年3月に東京地方裁判所に「運営会社に多額の債務があり給与が支払不能の状態にある」として運営会社の破産手続き開始の申立てを行ったこともニュースになりました。
運営会社MPHは「給与支払いは年内に全て完了する見込み」とコメントしましたが事業の経営状態の回復には至らず、会社解散という結果になったのです。
しかし、新生ミュゼプラチナム株式会社を設立してミュゼプラチナムの店舗を継承することも会社解散発表時にあわせて発表し、現時点で26店舗が賃貸仮契約を引き継ぎ、営業再開あるいは再開準備中だとアナウンスしています。
また、2025年6月時点で「どこでもミュゼプラチナム」のフランチャイズ店舗を34都道府県で開業し、約15,000名の利用者がその体制下で施術を継続してると発表しているので、他の脱毛サロンでの救済措置などは現状では行っていません。
ビー・エスコート
倒産した時期 | 2024年11月25日 |
倒産の背景 | 他サロンとの競争激化など |
負債総額 | 19億4,900万円 |
救済措置 | あり |
ビー・エスコート(Be・Escort)は、運営会社であるセピアプロミクスの倒産によって全店舗営業停止に至りました。その前年に破産した銀座カラー利用者の救済措置も行っていた脱毛サロンの倒産は大きなニュースになっています。
運営会社セピアプロミクスは1997年に法人化し、ビー・エスコートを含むエステティックサロンを運営していました。最盛期には直営店・フランチャイズ店が合わせて100店舗近くに達していました。
しかし、急激に事業拡大をするために広告を増やすなどをしたことや同業他社との競争が激化したことから経営が傾き、破産手続きに至っています。
現在は公式サイトトップが運営会社の破産管財人の公式サイトに変更され、公式インスタグラムも破産手続きのアナウンスのみが掲載されている状態です。
運営会社セピアプロミクス及びビー・エスコートから支払った施術料金の返金も望めない利用者に対し、脱毛サロン・ストラッシュやシェアラ・ヴェルチェやエヴァーグレースやリンリンなどが救済措置を行っています。
1店舗につき30名まで・1回限りなど、脱毛サロンによって救済措置の規模や内容は異なりますが、施術料金を回収できずに困っていたビー・エスコート利用者からは喜びと感謝の声が寄せられていました。
銀座カラー
倒産した時期 | 2023年12月15日 |
倒産の背景 | コロナ禍による業務縮小など |
負債総額 | 58億5,776万円 |
救済措置 | あり |
銀座カラーは、運営会社のエム・シーネットワークスジャパンの倒産により、全店舗が閉店となりました。
運営会社エム・シーネットワークスジャパンは1993年に設立されて以降、脱毛専門のエステティックサロンを経営していました。
設立当時は銀座店のみでしたが、脱毛業界が活性化してきた2010年代に銀座カラーの名称で全国展開を開始し、通い放題プランなどの料金プランで若い女性をはじめとした利用者の人気を集めるようになっています。
人気が高まるにつれて「予約が取れない」「店舗を増やしてほしい」という声が増えたことを受け、全国各地の主要都市に店舗展開をして、最盛期には約50店舗を展開し、利用者数も80万人に及ぶ数になりました。
2020年には約126億円の売上高となる大手脱毛サロンになっています。
しかし、新型コロナウイルス感染症の流行によって多くの店舗の営業が制限され、休業を余儀なくされる店舗もあり、さらに利用者が激減したことによって債務超過額が65億円に到達し、事業再建できずに倒産となりました。
救済措置は、倒産した2023年12月にストラッシュとサロンリッツとビー・エスコートとサロンシェアラとンミュゼプラチナムが行うと発表され、利用者に救済メニューを提供していました。
しかし、救済措置を取った5社のうち、翌年にビー・エスコートの運営会社が、翌々年にミュゼプラチナムの運営会社が倒産しています。
契約中の脱毛サロンが倒産した時どうしたらいい?ケースごとに解説
脱毛サロンや運営する会社が倒産した場合、施術料金の回収は非常に難しいのが現状です。
施術料金を回収するにはどうしたらいいのでしょうか?施術料金の支払方法のケース別に解説します。
【ケース1】クレカやローンで支払っていた場合
施術料金をクレジットカードやローンなどの分割払いで支払っていた場合には、これまで支払った施術料金の回収は難しいのですが、クレジットカード会社やローン会社に「支払停止の抗弁」を主張することでこれから支払う予定だった料金を支払わなくてよくなるケースがあります。
脱毛サロンや運営会社の倒産によって脱毛が続けられなくなった場合には、まだ施術していない分の料金は支払う必要がないというのが一般的です。
そのため、クレジットカードやローンの引き落としが現状でされていない段階なら、クレジットカード会社・ローン会社に支払停止の抗弁を主張すれば引き落としを停止できるのです。
クレジット契約が割賦販売用の適用を受けられない場合や支払総額が4万円以下の場合などは支払停止の抗弁が認められないことがあるので、クレジットカード会社やローン会社に問い合わせて引き落とし停止ができるかを確認してみましょう。
【ケース2】現金や銀行振込で支払っていた場合
現金や銀行振込で施術料金を全額一括払いで支払っていた場合には、クレジットカード・ローン払いよりも施術料金の回収が難しいです。
しかし、脱毛サロンと交わした契約書に「前受金の保全」という項目がある場合には、脱毛サロンや運営会社が倒産した際に支払った前受金の全額または一部の返還措置が行われます。
前受金はサービス提供を受ける前に払うお金のことで、前受金保全措置を設けている脱毛サロンや運営会社なら、全額回収は難しいですが施術料金の一部を返金してもらえる可能性があります。
また、倒産した脱毛サロン・運営会社を担当している破産管理人に「債権者届」を提出することにより、債権者名簿に登録されて清算配当を受けられることも。
しかし、脱毛サロン利用者が清算配当を受けられる優先度は低いので、清算配当は受けられないか、受けられたとしても全額戻って来る可能性は非常に低いです。
出典:消費者庁
倒産しない・信頼できる脱毛サロンの見分け方
倒産しない、あるいは信頼できる脱毛サロンの主な見分け方を紹介します。脱毛サロンを契約する前に以下の条件に該当するかどうかを必ず確認しましょう。
都度払いに対応してくれる
まとまった金額の製品やサービスは分割払いよりも一括払いの方が安く設定されています。特に、脱毛サロンなどの脱毛業界は、分割払いより1万円以上安くなる一括払いプランを用意しているので、利用者は一括払いを選択する傾向が強いです。
しかし、一括払いは倒産した場合に施術料金を回収できない可能性が高く、分割払いもそれまで払った施術料金は返金されないことが多いです。
そういった事情を把握した人は、都度払いに対応している脱毛サロンを選んで通っています。利用者のニーズを受け、都度払いを実施するようになった脱毛サロンも増えてきました。
脱毛サロンを契約する時は、都度払いシステムを導入しているか、都度払いに対応してもらえるかを確認すると、休業・事業停止・倒産といった事態になっても泣き寝入りする羽目に陥らずに済みます。
過剰な広告宣伝をしていない
倒産した脱毛サロンの多くが、業績が不調になった原因の1つに広告宣伝費が莫大な額になったことを挙げています。当記事で紹介した倒産会社のうち2社も広告宣伝費を倒産の一因としていました。
日常的にPCやスマホを使うと脱毛関連の広告が非常に多いのがわかります。それだけ脱毛業界は新規利用者の獲得に力を注いでいるのです。
しかし、広告宣伝費は上昇する一方で、2024年の日本の総広告費は前年比の104.9%増の7兆6730億円に達し、3年連続で過去最高額を更新しています。
過剰に広告喧伝をしている脱毛サロンは、その喧伝によって経営が傾く可能性が高いのです。
契約書をもとに丁寧な説明をしてくれる
信頼できる脱毛サロンかどうかは、無料カウンセリングのときにも判別できます。
信頼できない脱毛サロンは何が何でも契約させようと強引なセールストークを展開したり美容器具を売りつけようとしてきますが、信頼できる脱毛サロンは利用を考えている人の不安に寄り添ってくれるからです。
特に、契約内容について質問したとき、契約書を見せながら丁寧に説明をしてくれる脱毛サロンなら信頼が置けます。
倒産した際に返金を求めることが可能になる前受金保全措置について質問した時、契約書に「前受金の保全」が記載されているか説明してくれる脱毛サロンもおすすめです。
「前受金の保全」の項目があっても前受金の全額が返ってくるとは限りません。
しかし、最初から前受金保全措置を行わないと決まっている脱毛サロンよりは、契約書に「前受金の保全」を明記している脱毛サロンの方が信頼でき、安心して契約できるのは確かです。
脱毛サロンの倒産で困った時は消費者センターへ相談
脱毛サロンが倒産した場合、倒産した脱毛サロンや運営会社に連絡してもつながらないケースが多いです。問い合わせが殺到しているからです。
また、基本的に破産管財人は利用者個人からの問い合わせに対応してくれないので、消費者センターに相談するのがベストです。
消費者センターは、製品・サービスに関するクレーム・問い合わせに専門の相談員が対応してくれる期間なので、すでに支払った施術料金の回収やクレジットカード会社との契約などの質問を受け付けてくれます。
消費者ホットラインは、局番なしの「188」にかけると住んでいる地域の消費者センターにつないでもらえるので、脱毛サロンの倒産を知ったらなるべく早めに消費者センターに連絡しましょう。
脱毛サロン倒産に関するよくある質問
脱毛サロンの倒産が気になる人、すでに倒産して施術料金を回収できないか悩んでいる人などから寄せられることが多い質問とその回答を紹介します。
未消化の脱毛回数分は返金可能?
未消化分の施術料金は、まだ支払っていない場合に限り、支払わずに済みます。
契約したクレジットカード会社やローン会社に連絡し、施術を受けていないことを理由に「支払停止の抗弁」を主張することで、以降の施術料金を支払う必要がなくなるのです。
未消化分を返金されるのではなく、支払わないという形でそれ以上の支出を防げます。
詳細は「契約中の脱毛サロンが倒産した時どうしたらいい?ケースごとに解説」の章でご確認ください。
しかし、一括払いを利用してすでに支払ってしまった施術料金の回収はできない可能性が非常に高いです。
返金手続きの期限はある?
施術料金の返金手続きの期限は、倒産した脱毛サロンが取った倒産手続きの種別や状況、脱毛サロンと交わした契約書などにより異なります。
基本的には、倒産した脱毛サロン公式サイトに脱毛サロン運営会社または破産管財人からのアナウンスが掲載されるので、その内容に従って返金手続きを要請しましょう。
すでに支払った施術料金は戻ってこないケースが多いのですが、破産管財人が用意する債権者名簿に登録されることで、ある程度の返金を受けられる可能性が出てきます。
破産管財人にも契約したクレジットカード・ローン会社にも消費者センターにも、早めに連絡することを推奨します。
消費者センターはどこまで対応してくれる?
消費者センターは、返金関連の案内や契約解除の方法などの相談に乗るなどのサポートを行ってくれますが、返金手続きや補償の代行は利用者本人で行う必要があります。
しかし、専門的な知識を持つ人が問い合わせに対応してくれるので、ネットで情報収集するだけでは得られない方法を案内してくれることがあるので、困った時には消費者センターに問い合わせて対応を依頼してもらいましょう。
電話番号は、局番なしの「188」です。
まとめ
2022年以降急増している脱毛サロンの倒産は多くの利用者に被害を与えています。すでに払ってしまった施術料金は基本的に回収できないからです。
しかし、救済措置を用意している脱毛サロンが多いので、通っていた脱毛サロンが倒産したときにはすぐに公式サイトで状況や救済措置の有無を確認した上で消費者センターに相談しましょう。
この記事を書いた人
fuyuhome ライター