日本国憲法とは?三原則や歴史、第9条についても

img

5月3日は憲法記念日。祝日としては知っていても、日本国憲法の細かな内容について、正確に説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。

実は、三原則と歴史、そして第9条のポイントを押さえることで、日本国憲法の全体像がすっきり見えてきます。

ここからは、憲法の基本構造から三原則の内容、GHQが関わった誕生の歴史、第9条と自衛隊の論点、そして憲法改正の議論に至るまでをわかりやすく解説していきます。

読み終えたときには、ニュースで憲法の話題が出ても、自分の考えを持てるようになっているでしょう。

日本国憲法とは

日本国憲法とは、日本という国の在り方を定めた最も基本的な法律です。1946年(昭和21年)11月3日に公布され、1947年(昭和22年)5月3日に施行されました。ここでは、憲法がどのような役割を果たし、どんな構成になっているのかを見ていきましょう。

そもそも憲法って何?「国の最高ルール」を理解しよう

憲法とは、国の一番強い法律です。日本国憲法の第98条にはこの憲法は、「国の最高法規」と明記されており、憲法に反する法律や命令には効力がありません。

国会がどんな法律を作ったとしても、憲法に違反していれば無効になります。これが「最高法規性」と呼ばれる仕組みです。*1)そして、法律が憲法に違反していないかをチェックする権限が、最高裁判所に与えられています。これを「違憲立法審査権」といいます。*2)

前文から11章103条!日本国憲法の全体像

日本国憲法は前文と本文(11章103条)で構成されています。前文には、国民主権・平和主義・基本的人権の尊重という三原則の理念が示されています。各章の概要は以下のとおりです。

内容
第1章天皇(象徴天皇制、国事行為)
第2章戦争の放棄(第9条)
第3章国民の権利及び義務
第4章〜第6章国会・内閣・司法(三権分立)
第7章〜第8章財政・地方自治
第9章〜第10章改正・最高法規
第11章補則

*3)

日本国憲法の三原則について

日本国憲法には、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」という3つの基本原則があります。これらは前文に明記され、日本国憲法全体を貫く最も重要な考え方です。

国民主権:「国のことは国民が決める」という考え方

国民主権とは、国の政治のあり方を最終的に決める権限(主権)が国民にあるという原則です。憲法前文には「主権が国民に存することを宣言」と記されています。

戦前の大日本帝国憲法では天皇が主権者でしたが、日本国憲法では天皇は「日本国の象徴」となり、政治的権力を持たなくなりました。私たちが選挙で投票し、国会議員を選ぶことができるのも、国民主権があるからにほかなりません。憲法改正には国民投票が必要とされており、ここにも国民主権の考え方が反映されているのです。

基本的人権の尊重:「生まれながら持つ権利」の中身

基本的人権とは、人間が生まれながらにして持っている権利を指します。憲法第11条では、基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」と定めています。主な内容は次のとおりです。

種類具体例
自由権思想・信教・表現・学問の自由など
平等権法の下の平等(第14条)
社会権生存権(第25条)、教育を受ける権利(第26条)
参政権選挙権・被選挙権(第15条)

戦前の日本では、治安維持法によって思想や表現が厳しく制限され、政府に反対する意見を述べただけで逮捕される人もいました。現在私たちが自由に意見を述べられるのは、基本的人権が保障されているからにほかなりません。*4)

平和主義:「二度と戦争をしない」という決意

平和主義は、第二次世界大戦の悲惨な経験への反省から生まれました。憲法前文には政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにする」と明記されています。

この平和主義を具体的に定めたのが、次のパートで詳しく解説する第9条です。日本国憲法は、世界の憲法の中でも特に平和主義を強く打ち出している点に特色があるとされています。*5)

日本における憲法の歴史

日本国憲法は、それ以前の大日本帝国憲法(明治憲法)に代わって制定されました。その背景には、敗戦とGHQによる占領統治があります。ここでは、憲法の歴史を時系列でたどってみましょう。

大日本帝国憲法はどんな憲法だった?

大日本帝国憲法は1889年(明治22年)に公布された、日本初の近代的な憲法です。

【大日本帝国憲法と日本国憲法の比較】

項目大日本帝国憲法日本国憲法
主権者天皇国民
人権法律の範囲内で保障侵すことのできない永久の権利
天皇の地位統治権の総攬者国の象徴
戦争規定なし放棄(第9条)

天皇が主権者であり、天皇自らが定めた「欽定憲法」でした。国民は「臣民」と呼ばれ、権利は法律の範囲内でのみ認められていました。*6)

GHQが関わった日本国憲法の誕生の流れ

1945年8月、日本はポツダム宣言を受諾して終戦を迎えました。その後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の指示のもと、憲法改正が進められました。制定の流れは以下のとおりです。

年月内容
1945年10月松本烝治を委員長とする憲法問題調査委員会が設置
1946年2月日本政府案がGHQに拒否され、GHQ草案が提示される
1946年3月政府がGHQ草案をもとに「憲法改正草案要綱」を発表
1946年6~10月帝国議会で審議・修正
1946年11月3日日本国憲法公布、1947年5月3日:施行

GHQ草案の起草にあたって、マッカーサーが示した「マッカーサー三原則」には、①天皇は国家の元首の地位にあること、②戦争放棄、③封建制度の廃止が含まれていました。*7)

帝国議会での審議と国民の反応

帝国議会での審議では、いくつかの重要な修正が行われました。たとえば、芦田均委員長による第9条の修正(芦田修正)や、森戸辰男議員の提案による生存権(第25条)の追加などが挙げられます。*8)

当時の毎日新聞世論調査(1946年5月)では、象徴天皇制に賛成が85%、戦争放棄に賛成が70%となっており、国民の多くが新しい憲法を支持していたことがわかります。*9)

日本国憲法に問題点はあるのか


日本国憲法は施行から一度も改正されたことがありません。しかし、時代の変化に伴い、さまざまな観点から問題点が指摘されるようになりました。特に議論の中心となっているのが第9条と自衛隊の関係です。

第9条と自衛隊:「戦力不保持」なのに軍隊がある?

第9条は、日本国憲法の中でも最も議論の多い条文です。その内容は大きく2つに分かれます。

  • 第1項:国際紛争を解決する手段としての戦争・武力行使を永久に放棄
  • 第2項:陸海空軍その他の戦力を保持しない国の交戦権を認めない

一方で、日本には現員約22万人の隊員を擁する自衛隊が存在します。政府は「自衛のための必要最小限度の実力」は憲法が禁じる「戦力」には当たらないと解釈しており、1954年の自衛隊創設以来の一貫した見解です。*10)

ただし、「戦力を保持しない」と明記されているのに実質的な軍事組織があるのは矛盾ではないかという指摘も根強く存在します。

集団的自衛権と安保法制で何が変わった?

2014年7月、政府は閣議決定により、それまで認めていなかった集団的自衛権の行使を限定的に容認しました。2015年には、この新しい解釈を反映した安全保障関連法が成立しています。

この法律により、日本と密接な関係にある国が攻撃を受けた場合でも、一定の条件下で武力行使が可能になりました。賛成派は「日本を取り巻く安全保障環境の変化に対応するために必要」とし、反対派は「憲法9条の空文化につながる」と指摘しています。*11)

「押し付け憲法」論争とは何か?

日本国憲法の制定過程におけるGHQの関与の大きさから、「押し付け憲法」ではないかという議論があります。

参議院憲法調査会の報告書では、日本国憲法についてさまざまな考え方が示されています。

GHQが大きく関わっているため、自主的に作られた憲法とはいえないという意見が見られました。一方で、国民の支持を受けて成立したのだから、自主的な憲法だとする意見もあります。

さらに、制定から約80年が経ち、基本となる三つの原則が国民に広く定着しているため、作られた過程に問題があったとしても、すでに解消されていると考える見方も示されています。*12)

日本国憲法が改正される可能性について


日本国憲法は、施行以来一度も改正されたことがない「硬性憲法」です。しかし、改正に向けた議論は活発に行われています。

憲法を変えるにはどんな手続きが必要?

憲法改正の手続きは、第96条に定められています。通常の法律の改正よりもはるかに厳しい要件が設けられており、これが硬性憲法と呼ばれる理由です。

  • ステップ1:衆議院・参議院のそれぞれで総議員の3分の2以上の賛成で発議
  • ステップ2:国民投票で有効投票の過半数の賛成
  • ステップ3:天皇が国民の名で公布

通常の法律は国会の過半数で改正できますが、憲法改正には「3分の2以上」という高いハードルに加え、国民投票も必要とされています。国の根本的なルールを安易に変えられないようにするための仕組みです。*13)

議論されている憲法改正のテーマとは?

議論されている憲法改正のテーマをいくつか取り上げます。

テーマ概要
自衛隊の明記第9条に自衛隊の存在を明記し、違憲論争を解消
緊急事態条項大規模災害時などに対応する規定を新設
参議院の合区解消人口格差と地域代表のバランスを是正
教育の無償化教育無償を憲法で明確に保障

これらのテーマにはそれぞれ賛否両論があります。たとえば、自衛隊の明記については、「違憲論を解消できる」という意見がある一方、「9条の平和主義の機能が弱まる」という懸念も示されています。

日本国憲法とSDGs


日本国憲法の理念は、国連が掲げるSDGS(持続可能な開発目標)と多くの共通点を持っています。平和主義や基本的人権の尊重は、SDGsの目標16と深く結びついています。

SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」との関わり

SDGs目標16は、すべての人々に平和で公正な社会を実現することを目指しています。「法の支配」「公正な制度」「暴力の排除」といったターゲットが含まれている点が特徴的です。

日本国憲法が定める「最高法規性」や「三権分立」は、まさに「法の支配」や「公正な制度」を実現するための基盤といえるでしょう。平和主義を掲げる第9条は、「暴力の排除」というSDGsの理念とも通じるものです。

私たちの暮らしと憲法のつながりを考えよう

憲法は難しい法律の話だと感じるかもしれませんが、実は私たちの日常生活に直結しています。SNSで自由に意見を発信できるのは「表現の自由」(第21条)のおかげです。学校に通えるのは「教育を受ける権利」(第26条)によるものですし、働いて給料をもらえるのは「勤労の権利」(第27条)があるからにほかなりません。

このように、憲法は決して遠い存在ではなく、私たち一人ひとりの暮らしを守る土台として、日々機能しているのです。

>>SDGsに関する詳しい記事はこちらから

まとめ

日本国憲法は、国民主権・基本的人権の尊重・平和主義という三原則を柱とし、戦後の日本社会を支えてきた国の最高法規です。1946年の公布から約80年が経過した現在に至るまで改正は行われていませんが、その理念は広く国民に根付き、現代日本の礎となっています。

しかしその一方で、第9条と自衛隊の関係や、制定過程におけるGHQの関与、集団的自衛権や緊急事態条項など、時代の変化に伴って新たに生じた課題や議論もあります。

憲法は、私たちの自由や権利、平和な暮らしを支える重要な基盤です。だからこそ、その基本的な価値を大切にしつつも、時代に合わない部分については見直しを検討していくことが重要であり、憲法のあり方を一人ひとりが考え続けていく必要があるのではないでしょうか。

参考
*1)参議院「憲法の最高法規性と硬性性
*2)日本大百科全書(ニッポニカ)「日本国憲法(ニホンコクケンポウ)とは?
*3)衆議院「日本国憲法
*4)デジタル大辞泉「基本的人権
*5)ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「憲法第9条
*6)山川 日本史小辞典 改定新版「大日本帝国憲法
*7)国立国会図書館「マッカーサー3原則(「マッカーサーノート」) 1946年2月3日 | 日本国憲法の誕生
*8)国立国会図書館「概説[第4章 帝国議会における審議] | 日本国憲法の誕生
*9)兵庫教育大学 小南浩一「意法施行70年 意法とは何か- 9 条、 13条、 20条についての若干の考察一
*10)防衛省・自衛隊「防衛省・自衛隊:憲法と自衛権
*11)内閣官房「平和安全法制等の整備について
*12)参議院憲法審査会「第3部_[総論] 1.憲法制定過程とその問題点
*13)デジタル大辞泉「憲法改正(ケンポウカイセイ)とは?

通知設定
通知は
0 Comments
Oldest
Newest Most Voted
Inline Feedbacks
View all comments

SHARE

この記事を書いた人

馬場正裕 ライター

元学習塾、予備校講師。FP2級資格をもち、金融・経済・教育関連の記事や地理学・地学の観点からSDGsに関する記事を執筆しています。

元学習塾、予備校講師。FP2級資格をもち、金融・経済・教育関連の記事や地理学・地学の観点からSDGsに関する記事を執筆しています。

前の記事へ 次の記事へ

関連記事