
ニューヨークのイーストリバー沿いにそびえ立つ、ガラス張りの高層ビル。世界193カ国の国旗が風に揺れるその場所こそが、国際連合(国連)の本部です。
国連という言葉はニュースでよく耳にするものの、具体的に何をしているのか、どんな仕組みで動いているのかを正確に答えられる人は意外と少ないかもしれません。
国際連合は、紛争の調停や難民支援だけでなく、2015年に採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の推進や、気候変動対策、子どもの教育支援など、私たちの暮らしにも深く関わる活動を展開しています。
この記事では、国際連合の基本的な役割や歴史、具体的な活動内容からSDGsとの関係まで、高校生にもわかるように解説していきます。読み終わる頃には、国際連合の全体像をつかめるとともに、世界と自分のつながりが見えてくるでしょう。
目次
国際連合とは

国際連合は、世界の平和と社会の発展のためにつくられた国際機関で、1945年に51カ国の独立国家が集まり発足しました。現在は193カ国が加盟する世界最大規模の国際組織として、平和維持から人権保護まで幅広い活動を展開しています。
国際連合の正式名称と基本情報
国際連合の英語名はUnited Nations(略称:UN)です。この名称は、第二次世界大戦中にアメリカのルーズベルト大統領が考え出したものです。日本語では、軍事同盟の「連合国」と区別するために「国際連合」と意訳されました。*1)
主な基本情報をまとめると、以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 国際連合(United Nations) |
| 略称 | 国連、UN |
| 設立日 | 1945年10月24日 |
| 本部所在地 | アメリカ・ニューヨーク |
| 加盟国数 | 193カ国(2024年時点) |
| 公用語 | 英語、フランス語、スペイン語、ロシア語、中国語、アラビア語 |
| 日本の加盟 | 1956年12月18日(80番目の加盟国) |
*1)
なお、国連は世界政府ではありません。法律をつくる権限も持たず、加盟国が合意した事項を実行する機関です。この点は誤解されやすいので、しっかり押さえておきましょう。
国連憲章とは?国連の「ルールブック」
国連憲章は、前文と全19章・111条からなる国連の基本文書です。いわば国連の「憲法」のような存在で、加盟国の権利や義務、6つの主要機関の役割などが定められています。1945年6月26日にサンフランシスコ会議で署名され、同年10月24日に発効しました。
国連の目的と原則、加盟国の基準、機関の機能や権限が詳細に規定されており、すべての加盟国がこの憲章に基づいて行動することが求められます。*2)
国際連合の役割と目的

国際連合には、国連憲章第1条で定められた4つの目的があります。これらは国連の活動の土台となっているもので、平和維持だけでなく経済や社会、人権など幅広い分野をカバーしています。その具体的な内容と、6つの主要機関の役割を見ていきましょう。
国連憲章に書かれた4つの目的
国連憲章第1条には、以下の4つの目的が記されています。
| 目的 | 具体的な内容 |
|---|---|
| ①国際平和の維持 | 平和への脅威の防止、紛争の平和的解決 |
| ②友好関係の発展 | 人民の同権・自決の原則に基づく国家間の協力 |
| ③国際協力の達成 | 経済・社会・文化・人道的問題の解決と人権の尊重 |
| ④各国の協調の中心 | 各国の行動を調和する中心的な役割 |
このように国連の目的は多岐にわたり、単なる国際会議の場ではないことがわかります。*3)
6つの主要機関の役割をわかりやすく解説
国連には6つの主要機関があり、それぞれ異なる役割を担っています。
| 機関名 | 主な役割 |
|---|---|
| 総会 | 全加盟国が参加する最高議決機関。各国1票の投票権を持つ |
| 安全保障理事会 | 平和と安全に責任を持つ。常任理事国5カ国は拒否権を持つ |
| 経済社会理事会 | 経済・社会問題の討議と調整を行う |
| 信託統治理事会 | 1994年にパラオ独立で実質的に任務終了 |
| 国際司法裁判所 | 国家間の法的紛争を国際法に従って解決 |
| 事務局 | 国連の日常業務を管理。事務総長が組織の代表 |
特に注目すべきは安全保障理事会です。アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の5カ国が常任理事国として拒否権を持ち、1カ国でも反対すれば議案が否決される仕組みです。
専門機関の役割(UNESCO・WHO・UNICEFなど)
国連には6つの主要機関のほかに、15の専門機関や多くの計画・基金があります。代表的な機関を見てみましょう。
| 機関名 | 正式名称 | 主な活動 |
|---|---|---|
| UNESCO | 国連教育科学文化機関 | 教育・科学・文化の協力、世界遺産の登録 |
| WHO | 世界保健機関 | 国際的な保健問題の対応、感染症対策 |
| UNICEF | 国連児童基金 | 子どもの権利保護、教育・栄養支援 |
| UNHCR | 国連難民高等弁務官事務所 | 難民の保護と支援 緒方貞子氏が日本人かつ女性として初の トップ |
これらの専門機関は、私たちの生活とも密接に関わっているのが特徴です。たとえば、世界遺産リストの運営・管理はUNESCOが行っています。
国際連合の歴史

国際連合の誕生には、2つの世界大戦という悲惨な歴史が背景にあります。国際連盟が第二次世界大戦を防げなかった反省から、より強力な平和機構として国連が設立されました。その歴史的な流れを見ていきましょう。
国際連盟からの反省で生まれた国連
第一次世界大戦後の1920年、世界初の国際平和機構として国際連盟が設立されました。しかし、全会一致制による意思決定の遅さや、提唱国であるアメリカ自身が不参加だったことなどから、第二次世界大戦の勃発を防げませんでした。
国際連盟と国際連合の主な違いを整理すると、以下のようになります。
| 項目 | 国際連盟 | 国際連合 |
|---|---|---|
| 設立年 | 1920年 | 1945年 |
| 本部 | スイス・ジュネーブ | アメリカ・ニューヨーク |
| 議決方法 | 全会一致制 | 多数決制(原則) |
| アメリカの参加 | 不参加 | 参加(中心的役割) |
| 軍事的強制力 | なし | 安保理による制裁が可能 |
国連は、国際連盟の失敗を踏まえ、より実効性のある仕組みとして設計されたのです。
国連設立までの流れ(1941年~1945年)
1941年の大西洋憲章で、ルーズベルト大統領とチャーチル首相が戦後の国際平和機構の構想を示しました。その後、以下のステップを経て国連は誕生します。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1941年 | 大西洋憲章で戦後の平和機構の構想を提示 |
| 1942年 | 26カ国が「連合国共同宣言」に署名 |
| 1943年 | モスクワ宣言で国際機構設立の必要性を確認 |
| 1944年 | ダンバートン・オークス会議で具体案を審議 |
| 1945年6月 | サンフランシスコ会議で国連憲章に署名 |
| 1945年10月 | 国連憲章が発効、国際連合が正式発足 |
毎年10月24日は「国連デー」として世界各国で記念行事が開催されています。*1)
日本の国連加盟とその後の歩み
日本は1956年12月18日に80番目の加盟国として国連に加入しました。サンフランシスコ講和条約の成立直後から加盟申請を行っていたものの、東西冷戦の影響で実現が遅れたのです。
加盟後の日本は、「国連中心主義」を外交の基本方針のひとつに掲げ、以下のことを働きかけてきました。
- 軍縮達成への努力
- 経済社会開発への努力
- 機構面・財政面の強化
*4)
こうした外交の結果、日本は安保理の非常任理事国として最も多く選出され、国連分担金でも世界上位の負担を続けてきたのです。2026年の国連予算は約34.5億ドルですが、日本は約2.2億ドルを拠出し、世界第3位の拠出国となっています。*5)
国際連合の具体的な活動内容

国連は具体的にどのような活動を行っているのでしょうか。平和維持活動(PKO)から人道支援、人権保護、環境問題への取り組みまで、国連の活動は多岐にわたります。代表的な活動内容を見ていきましょう。
平和維持活動(PKO)って何をするの?
PKOとは、紛争地域に国連の軍事要員や文民スタッフを派遣し、停戦の監視や選挙支援、民間人の保護などを行う活動です。1948年以降、累計71のミッションが設置され、現在は11のPKOが活動を続けています(2024年時点)。*6)
日本もカンボジアや南スーダンなどに自衛隊を派遣したPKO協力の実績があります。PKOに参加する軍事要員は「ブルーヘルメット」と呼ばれ、戦うためではなく平和を守るために活動しているのが特徴です。*7)
PKOの法的根拠はPKO法(国際平和協力法)です。1992年6月に制定されたこの法律では、PKOなど4つの活動への協力が明記されており、停戦監視や選挙監視、医療活動、生活関連物資の支援などが可能とされています。
紛争や災害時の人道支援活動
国連は、紛争や自然災害の際に人道支援活動も展開しています。UNHCRによる難民支援、WFP(世界食糧計画)による食糧支援、UNICEFによる子どもへの緊急支援など、複数の機関が連携して素早い支援を届けます。
具体例としてWFPの活動を取り上げます。
WFPは現在、イエメン・シリア・スーダンなど紛争地域を中心に小麦粉や食用油などの緊急食料を配給しています。
また、食料を直接配給するだけでなく、現金や電子バウチャーを給付して受給者が地元市場で食料を購入できる仕組みを導入し、地域経済の復興にも貢献しています。*8)
さらに世界約60か国で学校給食プログラムを展開し、子どもたちの栄養確保と就学率の向上を同時に支援するなど、緊急支援にとどまらない長期的な取り組みも進めています。*9)
人権保護・環境問題への取り組み
国連は1948年に「世界人権宣言」を採択し、すべての人の基本的人権を守るための土台を築きました。現在も人権理事会を中心に、世界各地の人権状況の監視と改善に取り組んでいます。
環境分野では、気候変動に関する国際的な枠組みづくりも国連が主導してきました。気候変動枠組条約(UNFCCC)の下、パリ協定(2015年)では世界全体で温室効果ガスの削減に取り組むことが合意されています。
国際連合とSDGs

国際連合の活動の中でも、近年特に注目されているのがSDGs(持続可能な開発目標)です。ここでは、国際連合とSDGs目標17との関わりに注目します。
国際連合とSDGs目標17との関わり
SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」は、国際連合の役割と最も深く結びついた目標です。国連は世界193か国が加盟する国際機関として、国同士が協力し合うための話し合いの場を提供しています。
目標17は、お金の援助・技術の共有・貿易のルール・政策の協調など、国同士が助け合うための具体的な仕組みをまとめたものです。豊かな先進国が発展途上国を支援することで、すべての国がSDGsの目標を達成できるよう促しています。
また国連は、SDGsの進み具合を毎年世界規模の会議で確認・報告する役割も担っています。目標17は他の16の目標を実現するための「土台」であり、国連はその土台を支える司令塔といえます。一国だけでは解決できない地球規模の問題に、世界が力を合わせて取り組むために、国連とSDGs目標17は欠かせない存在です。
日本の国連を通じたSDGsへの取り組み
日本政府は2016年5月に、内閣総理大臣を本部長とし全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」を設置しました。その後「SDGs実施指針」を策定し、国内外の両面で取り組みを進めています。
さらに、企業や自治体、市民社会によるSDGsへの取り組みも広がりを見せています。たとえば、エシカル消費やフードロス削減、ジェンダー平等など、日常生活の中でもSDGsに貢献できる場面は数多くあります。
>>SDGsに関する詳しい記事はこちらから
まとめ
今回は、国際連合の基本情報から役割、歴史、具体的な活動内容、そしてSDGsとの関係までを解説してきました。
国際連合は、紛争の調停や難民支援から、気候変動対策、子どもの教育支援まで、私たちの暮らしにも深く関わる活動を行っています。
一方で、国際連合は決して万能な機関ではありません。特に近年は拒否権を持つ五大国が自国の利益を優先させる傾向が目立ちます。安保理改革や資金不足などの課題も残されており、国連の活動をより良くするためには、私たち一人ひとりが関心を持ち続けることが欠かせません。
SDGsを知ることは、世界を変えるきっかけになります。まずは身近なところから、国連の活動やSDGsについて調べてみてはいかがでしょうか。
参考
*1)国際連合広報センター「国際連合:その憲章と機構」
*2)国際連合広報センター「国際連合憲章」
*3)外務省「国連とは」
*4)外務省「国連を通ずる平和と繁栄の探究」
*5)外務省「日本の分担金・拠出金」
*6)外務省「PKO政策Q\&A」
*7)内閣府「国連平和維持活動」
*8)WFP「現金等での食料支援」
*9)WFP「学校給食支援」
この記事を書いた人
馬場正裕 ライター
元学習塾、予備校講師。FP2級資格をもち、金融・経済・教育関連の記事や地理学・地学の観点からSDGsに関する記事を執筆しています。
元学習塾、予備校講師。FP2級資格をもち、金融・経済・教育関連の記事や地理学・地学の観点からSDGsに関する記事を執筆しています。