
高額な自動車を購入するときは一括払いではなく、分割払いができる「オートローン」を契約する方は多いです。実際のところ、新しく銀行や消費者金融から借りるよりも、購入先のディーラーで直接ローン契約を結んだ方が多いかもしれません。しかしオートローンは流れで契約してしまったため、未契約者を含めて内容については完全に理解していない、またはマイカーローンとの違いも分からない、という方は多いでしょう。そこで今回はオートローンとは何か、マイカーローンとの違いや審査基準、金利や頭金の有無を含めたメリット・デメリットについて、詳しく解説していきます。
目次
オートローンとは?仕組みと基本的な契約の流れを紹介
まずはオートローンの仕組みと契約の流れについて簡単に解説します。
オートローンとは
オートローンとは、新車・中古車問わず自家用車を購入する際に利用できる、目的別ローンのことです。主に銀行や信用金庫などの金融機関、自動車ディーラー、信販会社などが提供しています。
オートローンでは原則として、借り入れた元金に利息を加えた金額を、契約期間にわたり毎月分割して返済していくという仕組みが採用されています。この仕組みにより、手元にまとまった資金がなくても車を購入できるのです。
ただしデメリットやリスクもあるため、オートローンを賢く活用するためにその特徴をよく理解し、自身の経済状況や返済能力に見合った計画を立てることが重要です。
オートローンの基本的な契約の流れ
オートローンの契約における流れをステップごとに解説します。
①自動車を選びローンを申し込む
まずは購入したい車を決めて販売店から見積もりを取り、必要な借入額を明確にします。次は候補となるローン会社(銀行、ディーラー、信販会社など)を比較検討し、決まったら仮審査(事前審査)を申し込みます。この仮審査段階で、大まかな融資の可否や条件を知ることができます。
②ローン契約を行い自動車を購入する
オートローンの仮審査に通過したら、指定された手順に従って本人確認書類や収入証明書類などの必要書類を提出し、書類に問題がなければ本審査に進みます。
厳正な審査は提出書類や信用情報機関に記録された信用情報に基づいて行われ、審査に通過した段階で最終的な借入条件が提示されます。
条件に問題がなければ同意し、これで契約手続きが完了します。契約後はローン会社から販売店へ車両代金が支払われることで、正式に融資が行われます。
③毎月返済を行い完済すれば所有権が購入者の元へ移る
融資・車の引き渡し完了後は、完済するまで返済を毎月続けていくことになります。返済額は元金と利息で構成されており、毎月の返済額が少ないほど、返済期間は長くなります。
ローンを完済すると、そこで初めて自動車の所有権が移動します。具体的には、ローン会社が「所有権留保」の解除を行うことで、車の名義が本人のものになります。この仕組みがあるために、契約者による一方的な売却や譲渡はできません。
オートローンとマイカーローンの違い
オートローンとマイカーローンは異なる用語に見えますが、実際はほぼ同じ意味で用いられます。具体的には次のような共通点があります。
- どちらも自家用車(新車・中古車)の購入に利用できる目的別ローンである
- 銀行などの金融機関や自動車ディーラー、信販(ローン)会社などが提供する
- 元金に利息を加えた金額を、毎月分割で返済していく仕組みである
- 手元にまとまった資金がなくても、車を必要とするタイミングで購入できる
このとおり、オートローンとマイカーローンはほぼ同じものとして捉えてよいですが、言葉の使われ方には若干のニュアンスの違いがあります。次の表をご覧ください。
比較項目 | マイカーローン | オートローン |
---|---|---|
用途 | 車の購入資金に充当する目的別ローン | 車の購入資金に充当する目的別ローン |
提供機関 | 金融機関が提供するローンを指すことが多い | ディーラー系の自動車ローンを指すことが多い |
特徴 | 無担保で金利が低い | 無担保で金利が低いが、銀行よりは若干高め |
基本的に「マイカーローン」は、金融機関が提供する個人向け自動車資金ローンの商品名として使われることが多いです。それに対して「オートローン」は、自動車販売店が提携する信販会社など、ディーラー系の自動車ローンを指す場合に使われることが多いです。
ディーラー系の自動車ローンは店頭で案内されることが多く、購入手続きと同時に組めるという利便性がある一方、金利は銀行系に比べて若干高めに設定される傾向があります。
オートローンのメリットとは?賢く車を購入する方法
次はオートローンのメリットについて、3つの点を解説していきます。
手続きが簡単かつスピーディー
自動車販売店で申し込めるオートローン(ディーラーローン)は、車の購入手続きと同時に申し込めるため、手続きが簡単で早く、基本的には申し込んだ即日、遅くても数日以内に審査結果が出ます。
ちなみに新車だけでなく中古車販売店でも自社ローンを提供しています。ディーラーと同様に契約はしやすいものの、金利が高く総返済額が大きくなりやすい点には注意が必要です。
比較的審査が通りやすい
自動車販売店が提携するオートローンは、銀行系のマイカーローンに比べて審査が比較的柔軟で、自営業やフリーランスの人でも通りやすい傾向があります。
どこも具体的な審査基準を公表していないため明確な違いやボーダーラインは提示できませんが、オートローンなら、過去の借入・返済実績が少なくても、安定した収入があれば通る可能性が高いです。
ちなみに中古車販売店が提供する自社ローンなら、ディーラーのオートローン審査に通らなかった人でも審査に通る可能性があります。金利が若干高くなるというデメリットはあるものの、新車の審査に通らない人にとっては有力な選択肢となるでしょう。
頭金なしでも購入が可能
オートローンは必ずしも頭金を用意する必要がないため、初期費用を抑えられます。車両本体価格や諸費用など含む全額を借り入れる「フルローン」での契約が可能です。これにより、まとまった自己資金や十分な貯蓄がなくても、車を必要とするタイミングで入手できます。
もちろん、頭金を入れることで借入額を減らし、月々の返済額や利息を抑えることも可能です。実際に頭金を支払うかどうかは、車の価格や契約内容、それぞれの資金・家計の状況に合わせて柔軟に選択するべきです。
オートローンのデメリットとは?事前に確認しておくべきポイント
次はオートローンのデメリットと事前に確認が必要なポイントについて、5つの点を解説していきます。
金利が高めに設定されている
ディーラー系のオートローンは銀行系のマイカーローンと比較して金利が高いため、同じ車を購入すると仮定した場合に、総返済額が増える可能性があります。
- 銀行系マイカーローン:年1~3%程度
- ディーラー系オートローン:年4~9%程度
当然ながら金利が高いと毎月の返済額も高くなりますから、それだけ家計への負担が増えますし、返済が長期になるとその差額はさらに広がるため「損をした」と感じてしまう方もいるでしょう。
完済まで所有権が自分ではない
ディーラーローンを利用するうえで無視できないデメリットの一つが、購入したはずの自動車がすぐには「自分のものにならない」点です。具体的には、ローンを完済するまで車両の所有権(名義)が購入者自身に移行されません。
たとえば、車検証の所有者欄にはディーラーまたは信販会社の名前が記載されるため、自分で車を買った気にならない、という方がいます。特に銀行系のマイカーローンに同様の制限がないことを考慮すると、明確なデメリットといえます。
途中で一括返済や乗り換えが難しい
所有権のデメリットと関連しますが、オートローンは一括返済や乗り換えに関して制限があります。まず一括返済に関してはディーラー系・銀行系に限らず可能であり、総返済額を減らすことにつながりますが、場合によっては手数料を上乗せされる可能性があります。
乗り換えに関しては明確に難易度が高く、基本的には残額分の一括返済(または買取額の不足分を自分で補填する)が必要となります。
ローン契約と自動車の購入が一体となっている
ディーラーで車をローンで購入する場合は、当然ながらその契約は「車の購入」と「ローンの契約」が一体化して初めて成立するものです。そのため車の購入をやめたくなっても、ローン契約があるので簡単にキャンセルできず、場合によっては違約金が発生します。
これはどの種類のローンにもいえることですが、契約前に契約書をよく読んで確認し、不安なことがあれば都度相談し、解決したうえでサインするべきです。
ローン完済前の自動車売却が面倒
ディーラー系のオートローンを利用すると所有権が留保される点は解説したとおりですが、これにより完済前の売却・譲渡が明確に制限されます。もし売却・譲渡したいなら、先に残債分を完済したうえで、所有権を自分自身に移行させる必要があります。
オートローンの審査では何が見られる?4つの主なポイント
次はオートローンの審査で見られる4つのポイントについて、それぞれ解説していきます。
年収や収入の安定性
オートローンの審査では、年収額と収入の安定性・継続性が重要視されます。当然ながら金融機関は、契約者が契約期間中一度も支払いを怠らず、安定して返済を続けられる人に融資したいです。だからこそ職業や雇用形態、勤続年数などを判断基準とします。
具体的に要求される年収のボーダーラインについては、金融機関や借入希望額によって異なりますし、そもそも公表されていないため具体的な金額は提示できません。
ただし、一般的に公務員や正社員といった正規雇用者は収入が安定していると評価されやすく、審査に通りやすい傾向があります。
借入希望金額と年収のバランス
オートローンの審査では、借入希望額が申込者の年収に対して適切な範囲であるか、そのバランスが重要視されます。これは返済負担率(返済比率)ともいいますが、一般的に年収に対して「30%〜35%程度」が上限とされています。
銀行系やディーラーが提供するオートローンは総量規制の対象外であるため「年収に対する借入額が多くても契約できる」と誤解されやすいですが、この返済負担率の考慮により、他のローンからの借り入れが多すぎることで審査に落ちる可能性はあります。
雇用形態や勤務年数
オートローンの審査では勤続年数(同じ職場で連続勤務している年数)も重要です。これも具体的なボーダーラインは示されていませんが、一般的には最低で3年以上、最低でも1年以上あるのが望ましいとされています。
勤続年数の長さは、現在と同等またはそれ以上の収入が将来的にも続く可能性が高い、ということを示す根拠となります。そのため年収と信用は申し分ないのに審査に落ちる人は、入社して数日、数か月しか経過していないなど、この勤続年数の部分に引っかかっている可能性があります。
信用情報(クレジットヒストリー)
オートローンの審査において、契約者の信用情報は極めて重要な判断基準です。金融機関は審査時に、信用情報機関に記録されている借入やクレジットカードの利用履歴、延滞や滞納を含めた返済状況、事故情報の有無を必ず確認します。
特に事故情報が記録されている人、いわゆる「信用ブラック」の人はほぼ確実に審査落ちします。たとえ収入が多くても事故情報が記録されているだけで一発アウト、となるケースも珍しくありません。
また申し込み時点でブラックではなくても、過去に延滞を繰り返しているなどネガティブな要素が多い場合、信用リスクが高いと判断され審査落ちすることがあります。結局のところ信用情報がクリーンであることが、何よりも審査を有利に進めるために重要なのです。
オートローンの審査に落ちてしまった時の対処法を紹介
次はオートローンの審査に落ちてしまった場合に適切な5つの対処法について、それぞれ解説していきます。
まずなぜ落ちたのか確認をする
オートローンの審査に落ちたとき、多くの人は審査落ちした理由を知りたいと思いますが、実際は具体的な否決理由を教えてくれません。そのため自分自身で現在の状況を振り返り、何が原因だったのか見極める必要があります。
- 収入が低すぎないか?(一般的な目安としては200万円以下)
- 年収に対して車の価格が高すぎないか?
- 入社または転勤してすぐに申し込んでいないか?
- 他社から多額の借り入れをしていないか?
- 信用状態がブラックになっていないか?
上記のいずれかに当てはまっている場合、少なくともその問題を解決できてから再申し込みすることをおすすめします。
別のローン会社や金融機関へ申し込む
オートローンの審査基準は金融機関ごとに異なるため、一つの機関で審査落ちしても、別の機関では通る可能性があります。たとえば、新車のディーラーローンが厳しければ、中古車販売店の自社ローンを検討するのも一つの方法です。
銀行系のマイカーローンに落ちた方は、より審査が柔軟なディーラーローンを検討する価値があります。もちろんどちらの場合も、変更後の金利や返済総額は十分に確認するべきです。
借入希望額を減らす
借入希望額(車両価格)が年収に対して大きすぎる場合は、返済負担率を下げるために、車種やグレードを変えて借入希望額を下げるか、頭金を増やしてローンで借入金額自体を減らすことを検討できます。
ただし可能なら、審査落ちした直後の再申し込みは避けるべきです。信販会社や金融機関が明言しているわけではありませんが、信用情報機関に申し込み履歴が記録された状態では、返済能力が低いと判断される可能性があります。この点に関しては、後ほど詳しく解説します。
保証人を用意する
ローン申込者本人の収入や信用力だけでは審査通過が難しいと判断された場合、安定した収入のある親族などを連帯保証人として立てることで、審査に通ることがあります。ただし連帯保証人にも審査がありますし、当人が返済できなくなったときに返済義務が生じるリスクがあるため、推奨はされません。
信用情報を確認する
審査においてとりわけ重要な信用状態に関しては、自分で「CIC」や「JICC」といった信用情報機関に開示請求することで確認できます。過去の借り入れ等が原因で事故情報が記録されているなら、ほぼ確実にそれが審査落ちした原因だと特定できます。
オートローンに関するよくある質問
最後に、オートローンに関する4つのよくある質問に回答していきます。
審査に落ちた場合どれくらい期間を空ければいい?
一度オートローンの審査に落ちると、ローンを申し込んだという事実が照会日から約6ヶ月間は信用情報機関に保有されるため、少なくとも半年以上は開けるべきです。短期間にいくつものローンに申し込むと資金繰りに困っているとみなされやすいからです。
この点に関しては信用情報機関の非公表情報となりますが、一般的には「申し込みブラック」といい、どの種類のローンでも避けるべきこととみなされています。
また、単に前回の申し込みから期間を空けるだけでなく、その間に審査落ちの原因を分析し、借入希望額の見直しや既存の借入の整理と返済、勤続年数をしっかり積み重ねる、といった対策も講じましょう。
過去に債務整理を行っている場合、少なくとも5年から10年は事故情報が消えないため、情報が抹消されるまでさらに長期間待つ必要が生じます。
そこまでブランクが発生するなら、別の手段を考えた方が建設的です。堅実に貯蓄して現金払いを目指すか、カーリース(サブスクリプションプラン)の契約も検討できます。カーリースにも審査がありますが、独自審査を行っているところなら通る可能性があります。
ボーナス払いは必須?
オートローンのボーナス払いにより利息をカットし、総返済額を減らせますが、一般的には任意の返済方法であって必須ではありません。万が一ボーナス支給が減額された場合にボーナス払いの金額が固定されていると、返済が難しくなってしまうデメリットもあります。
基本的にはボーナス払いなしの均等払いも選択できるので、自身のボーナス収入における安定性を十分に考慮したうえで決めましょう。
ローン名義と所有者の名義が違ってもいい?
まず前提として、銀行系のマイカーローンでは所有権が契約者本人ですが、ディーラー系のオートローンは、完済するまで所有権の移行が留保されます。そもそもローン契約者が誰であれ、所有者の名義は完済するまで変えられないのです。
たとえば「家族など契約者以外が使うためにローンを組む」ことは可能ですが、場合によっては名義貸しと判断されるリスクもあります。そのため基本的には、契約者と車の使用者は同一の方が望ましいです。
ローンはオプションや保険にも使える?
オートローンの利用範囲は、ローンの種類によって変わります。銀行系マイカーローンは使途が比較的広く、車両に加えてカーナビなどのオプション、税金や登録費用といった諸費用、修理費用や車検費用、さらには運転免許取得費用や任意保険料までローンに含められる場合があります。
一方ディーラーローンで対象になるのは、車両および同時に購入するメーカー指定のオプション、および初回登録に必要な諸費用のみです。ディーラーが指定する保険をのぞき、社外オプションや購入後の維持費、法定費用などは一般的に含められません。
どこまでの費用がローンに含められるかはディーラーおよび信販会社により変わるため、必ず事前に確認しておきましょう。またオプションや諸費用をローンに含めるとそれらにも利息が発生し、総支払額が増える点にも注意が必要です。
まとめ
今回はオートローンのメリットだけでなくデメリットも深堀りしましたが、依然として一回当たりの負担を大幅に軽減できるオートローンが、車を購入したい人にとっての有力な選択肢であることは変わりません。
契約内容をよく確認したうえでリスクの少ないローン契約をすることが重要なので、一時の判断や誘惑に惑わされないように注意しながら、オートローンを活用していきましょう。
この記事を書いた人
kaitooru ライター