サラヤ株式会社|社会課題に寄り添い解決する商品開発で、明るい未来を創る

サラヤ株式会社 広報宣伝統括部 廣岡さん インタビュー 

廣岡 竜也

大学にてマスメディア&報道論を専攻し、広告代理店に入社。営業部門を経て広告ディレクション、コピーなどを担当。その後サラヤの広報宣伝統括部へ入社。入社から広告の企画・立案の他、PRおよびディレクションやコピーを担当し、小売部門の広告全般を手掛ける。これからも持続可能な活動であるために、消費者の理解と共感を得ることが重要と考えている。いつも支援される企業を目指し、製品やサービスの提供に努めている。

 introduction

一般家庭からプロの現場まで、衛生管理や感染対策に関わる各種商品やサービスで市場をけん引しつつ、環境保全団体「認定NPO法人ボルネオ保全トラスト」の立ち上げに関わるなど社会課題の解決に尽力するサラヤ株式会社。同社の広報宣伝統括部長の廣岡さんに、事業を始めるきっかけや、環境問題に本腰を入れるに至った背景、具体的な活動まで伺いました。

誰もが平等に病から逃れられる方法を求め事業を始めた

-始めに、事業内容を教えてください。

廣岡さん:

当社は1952年の創業以来、衛生管理や感染対策の商品とサービスを提供しております。一般家庭用の「コンシューマー事業部」、企業や官公庁向けの公衆衛生と外食産業や食品関連の食品衛生を担当する「サニテーション事業部」、医療機関や福祉施設の「メディカル事業部」の3つの事業部に分かれ、事業を展開しております。
中でも業務用の感染対策事業では国内トップシェアを誇っております。

ヤシノミ洗剤
アラウ.ベビーシリーズ
ヤシノミ洗たく洗剤
ヤシノミ柔軟剤
ラカントS シロップ
ラカントS 顆粒

-最近では、入り口に置いてある消毒液など御社の商品をよく見かけます。この事業を始めるに至った背景を教えてください。

廣岡さん:

1952年頃に流行っていた赤痢という伝染病がきっかけです。多くの方が亡くなる悲惨な状況を目の当たりにした創業者の更家章太は、その対策として手洗いに目をつけました。

-薬ではなく手洗いに着目したのはなぜですか?

廣岡さん:

当時、戦後まもない日本はとても貧しい状況で、薬を開発するための資金の確保が難しい状況でした。また、開発が成功したとしてもそれを買えるのは富裕層だけ。「多くの人を平等に救えないか」と考えた更家は、感染対策の基本である手洗いに着目し、手洗いと同時に殺菌・消毒ができる薬用せっけん液と専用容器を日本で初めて発売したのです。
同時に「トイレの後には手を洗おう」などの標語ポスターも作成しました。

-「誰もが病気から逃れる有効な手段」として開発した薬用せっけん液とポスターによる手洗いの啓発が多くの命を救ったのですね。

廣岡さん:

はい。その後、緑のせっけん液と専用容器は手洗いの文化と共に日本中に広がりました。社会問題から着想を得て、事業化に至ったのです。

50年前から続く、環境問題への貢献

-ここからは、御社を代表する食器用洗剤「ヤシノミ洗剤」についてお伺いします。どのようにして生まれた商品ですか?

 ヤシの実由来の植物性洗浄成分を用いた食器用洗剤

廣岡さん:

ヤシノミ洗剤もまた、環境問題という社会課題の解決のために生まれました。
日本は、1960年に高度成長期を迎え急速な経済成長を遂げました。生活が豊かになる一方で、生活排水による河川や湖沼の環境悪化が始まります。その主な原因となったのが、石油を原料とした合成洗剤です。身近なところで言うと、台所洗剤や洗濯洗剤ですね。

-合成洗剤はどういった点で環境に悪影響を及ぼすのでしょうか?

廣岡さん:

石油由来の洗剤は、様々な化学的工程を経て作られ、複雑な構造を持ちます。そのため微生物によって分解されるのに時間がかかります。また、多くの合成添加物が含まれていて、魚が大量に死んでしまうという問題が起こり始めたのです。
そこで、環境に優しい植物性の洗剤「ヤシノミ洗剤」の開発に乗り出しました。

-「ヤシノミ洗剤」はどういった商品ですか?

廣岡さん:

ヤシノミ洗剤は、ヤシの実由来の植物性洗浄成分を使用した植物系洗剤です。また、無香料・無着色にこだわるなど、余計な添加物を含まない環境に配慮した処方のため、排水は微生物によって素早く分解され環境への負担を抑えることができます。さらに手肌にも優しい洗剤です。

食器用洗剤で日本初の「詰め替えパック」を発売し、資源の有効利用とゴミ問題に貢献 

高度成長期には、大量生産・大量消費によるゴミの増加も問題になりました。

廣岡さん:

そうですね。当時、食器用洗剤のボトルもすべて使い捨てでした。ボトルは石油から作られているので、ゴミ問題はもちろん石油資源の無駄遣いにもつながります。
そこで生まれたのが「詰め替えパック」です。今では一般的な商品ですが、これも食器用洗剤では当社が日本で初めて発売したものです。ボトルと比べて石油資源の節約とゴミの少量化に貢献出来る商品となりました。

「ヤシノミ洗剤が環境破壊をしている」テレビ取材の誤解がきっかけで、環境問題に本腰を入れる

創業のきっかけとなった赤痢や環境問題など、長きにわたる取り組みは、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」目標6「安全な水とトイレを世界中に」目標12「つくる責任つかう責任」などに貢献されていますね。現在はどのような問題に取り組んでいますか?

廣岡さん:

弊社は創業時から、SDGsに繋がる活動を行ってきました。SDGsの番号にあわせて活動するというよりも、創業時からの取り組みが自然とSDGsの番号に当てはまる、というイメージです。
目標1「貧困をなくそう」、目標2「飢餓をゼロに」以外のすべての目標に繋がる活動をしていますが、特に力を入れるようになったきっかけは、「ヤシノミ洗剤のせいで、マレーシアのボルネオの熱帯雨林が伐採され環境破壊が起きているのでは?」というテレビ番組の取材でした。

御社にとってはネガティブなテーマにも関わらず、取材を受けられたことに誠実さを感じます。

廣岡さん:

当社では、商社から洗剤の原料を購入し、そこに他の成分をブレンドしてヤシノミ洗剤を作っています。自然界に戻りやすい植物性の洗浄成分を使用したり、詰め替えパックを発売するなどの取り組みは行っていましたが、原料生産地で起きている問題にまで目が行き届いていませんでした。この取材がきっかけで、環境保全活動に本格的に取り組むことにしたのです。

現実を目の当たりにし、出来ることから始める

では、実際どのような取り組みを始めたのですか?

廣岡さん:

まず「本当にヤシノミ洗剤のせいで、ボルネオの環境破壊が起きているのか?」という事実確認のためボルネオに出向きました。報道の通り、熱帯雨林がすごい勢いで伐採されており、そこに暮らす動植物は絶滅の危機に追い込まれていました。
しかし、環境破壊の原因となったヤシの油は「パームオイル」といわれ、約85%が食用に使われ、工業用は15%。しかも石鹸・洗剤に使用される量は数%であり、その90%以上は大手企業。
ヤシノミ洗剤に使われる量は全体から見ればごく僅かということでした。しかし、50年前から環境問題に取り組んできた「ヤシノミ洗剤」としては無視できないことから、ボルネオでの生物多様性保全の活動を始めることにしました。

具体的な活動を教えてください。

廣岡さん:

まずは、農民によって傷つけられた象の救出活動を行いました。でも次から次に傷ついた象がでてきて、きりがない。そこで、生物学者やNPO、現地の専門家とミーティングを行い、動物の生息域を残しつつ、そこに影響の少ない場所に畑を作ることを考えました。環境と産業のエリアを分けることが、現実的な解決策であると導き出したのです。

廣岡さん:

川岸を動物たちの生息域にすることにしたのですが、すでに畑になっている土地もあります。本来は保全林なので、保全のために返して欲しいと提案しました。ただ農民にも暮らしがありますので、簡単には土地を手放してくれませんでした。交渉が難航したため、その場所を買い取ることにしたのですがなんと200億円かかることがわかり…。

一社ではとても賄えませんね。

廣岡さん:

はい、そこで多くの企業や人々が参画できる環境保全団体「認定NPO法人ボルネオ保全トラスト」を立ち上げることにしたのです。

一社では限界がある。力を集結するための団体を立ち上げた

廣岡さん:

 先に述べたように、原因となっているパームオイルは、食用で85%、工業用で15%。世界中の人が食べ、使っている油なら、みんなの力を合わせて解決すればいいと考えました。

大胆なアイディアですね。

廣岡さん:

世界だけでなく、日本のパーム油関連企業からも参加してもらうため、日本の窓口として「ボルネオ保全トラスト・ジャパン」も立ち上げました。「動物と人が共に生きる社会をつくり未来につなぐ」をコンセプトに、野生動物の保護や生物多様性保全に関する啓発活動など幅広く行っています。

廣岡さん:

当社独自の取り組みとしては、2007年から「ボルネオはあなたが守る」をテーマに、ヤシノミ洗剤の売り上げの1%をボルネオの環境問題の改善に使っています。消費者とサラヤ、そしてボルネオ現地の間で循環が生まれればと考えた結果ですね。
これはSDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」、15「陸の豊かさも守ろう」、17「パートナーシップで目標を達成しよう」にも関わることだと思います。当時、商品と社会問題を結び付けたものはなかったので、その点でも注目いただきました。

100%を目指さず、一つずつ取り組みを重ねる

これまで様々な課題があったかと思いますが、「パームオイルを使わない」という選択をしなかったのはなぜですか?

廣岡さん:

サラヤが矢面から逃れられても、社会問題の根本解決につながらないと考えたからです。パームオイルは、先進国から途上国すべての人が食べたり、使ったりしているものです。生産に携わるのは主に途上国の方々ですので、使わないという選択をすれば生活が成り立たなくなる恐れもあります。代替品として大豆を使う場合、パームオイルの10倍の土地が必要となりまた別の問題が浮上します。

彼方立てれば此方が立たぬ状態ですね。

廣岡さん:

その通りです。また仮に、100%環境にやさしい油ができたとしても、価格が100円上がってしまったら、消費者への影響はどの程度になるのか。買ってもらえなければ生産側も事業を継続できないので、「100%環境にやさしい」を求めると課題解決は止まってしまうと思うんです。
だからこそ、ベストでなく1つ1つのベターを選び続けていくしかないのだと考えます。持続可能であることはビジネスを行う上で非常に重要です。今後もバランスを取りながら、社会課題の解決に尽力していきたいです。

ここまでサラヤ株式会社の成り立ちや環境問題への姿勢について伺いました。次回は「100万人手洗いプロジェクト」について詳しくご紹介します!

取材 大越 / 執筆 hitomin.to

サラヤ株式会社 関連リンク

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