
アメリカと隣接するメキシコは、日本の5倍の国土に日本と同規模の人口を抱える中米の大国です。最大の貿易相手国アメリカによる経済発展も著しいメキシコですが、その陰では麻薬戦争という深刻な国内問題を抱えています。そこにはどんな事情があるのでしょうか。
目次
メキシコ麻薬戦争とは

メキシコ国内では、20世紀終盤から現在に至るまで、麻薬密売を行う組織と麻薬を取り締まる警察や軍・政府との間で、終わりのない武力抗争が繰り広げられています。
その結果、メキシコ国内では一般市民をも巻き込むあらゆる暴力や犯罪が蔓延し、深刻な治安の悪化と社会の荒廃を招きました。
こうした一連の抗争と暴力による支配が、メキシコ麻薬戦争と呼ばれる状況です。
深刻な暴力の連鎖
メキシコ麻薬戦争が深刻なのは、カルテルと呼ばれる麻薬組織と治安当局、一般市民が互いに相手に武器を向け合って争っているためです。
- 麻薬カルテルと治安当局(警察・軍・公安・行政)との抗争
- 国内に乱立する麻薬カルテル同士の抗争
- 麻薬カルテルによる一般市民への暴力支配/反発し武装する市民自警団との抗争
- カルテルに買収された警察による一般市民の不当逮捕、殺害
このように、メキシコでは麻薬カルテルを中心にあらゆる層同士の暴力が続いており、市民は常に犯罪と死の恐怖に怯えながら暮らしています。
カルテルとは

メキシコ麻薬戦争の中心となるカルテルとは、麻薬取引をはじめさまざまな犯罪を行う大規模な麻薬密輸組織のことです。
犯罪組織といっても、カリスマ的なボスを頂点としたトップダウンの独裁組織は少数です。
実際には、少人数からより大規模な人数までの、主に親族を中心としたいくつかのグループが緩やかなネットワークを構成している場合が多いようです。
こうしたカルテルは、
- ナルコと呼ばれる大勢の麻薬密輸メンバー
- 大量の銃火器と訓練された武装集団
- 麻薬取引のほか強盗や誘拐、殺人、脅迫などあらゆる犯罪で得た多額の資金
などを保有して、警察や軍にも匹敵する力を備えています。

それぞれのカルテルは、その時の状況や利害関係で互いに連帯したり敵対し合うだけではなく、組織内の対立で分裂し、中小の組織が増えていくことも日常茶飯事です。
2023年時点ではシナロア・カルテルとハリスコ新世代カルテルを筆頭に10以上の主要組織が存在するとされますが、小規模組織まで含めた全体像は把握しきれておらず、情勢は混迷しています。
メキシコ麻薬戦争の歴史①19世紀〜21世紀初期

メキシコが麻薬戦争に巻き込まれるようになったのは、
- アメリカに隣接しているという地理的要因
- アメリカが世界最大の麻薬消費国であること
- メキシコで麻薬栽培と密輸出が始まる
という条件が揃ったためです。なおメキシコで麻薬の栽培が始まったのは19世紀後半で、中国人労働者がアヘンの種を持ち込んだのが始まりと言われています。
19世紀〜第二次世界大戦後
1848年の米墨戦争で敗れたメキシコは、カリフォルニアやテキサス、ニューメキシコなどをアメリカに割譲し、領土の半分を奪われます。
しかし国境が新たに引き直された後でも、国境地帯では人の移動は活発で、密輸も日常的に行われていました。
麻薬もその密輸品のひとつで、1930年代、禁酒法終了後のアメリカにはメキシコからの大量のヘロインやマリファナが流れ込んでいきます。
この流れにさらに拍車をかけたのが第二次世界大戦です。米軍では、負傷兵の苦痛を緩和するためのモルヒネの需要が高まり、原料であるアヘン栽培がメキシコで急増しました。
1960年代〜1990年代

第二次大戦後も、アメリカを中心に麻薬需要は増え続けました。1961年に米墨両国が国連の麻薬取締協定に署名した後も違法薬物の需要は衰えませんでした。1960年代には、アメリカでのヒッピー・ムーブメントの影響で若者の間にマリファナなどが広まり、メキシコで麻薬の栽培や密輸が組織化されていきます。さらに1970年代には、南米産コカの葉を原料とするコカインがパーティードラッグとしてセレブの間で流行し、主にコロンビアマフィアによってカリブ海経由でアメリカへ密輸されました。
この頃からメキシコでは麻薬組織が次第に力をつけ始めていき、1980年代には
- シナロア系カルテル:北部国境地域から太平洋沿岸までのルート
- メキシコ湾カルテル:北東部タマウリバス州からテキサス州までのルート
の二つのカルテルが麻薬輸出ルートを牛耳るようになっていきます。
1990年代〜2000年代前半
1990年代に入り、麻薬取り締まり強化でコロンビアルートが衰退、壊滅します。
代わって麻薬密輸はメキシコ経由のルートが主流になり、メキシコの麻薬カルテルがさらに力を伸ばしていきます。この頃には
- 農家が麻薬組織と結びつき、ケシやマリファナを大量に栽培
- 1994年:北米自由貿易協定(NAFTA)締結による貿易自由化
などで密輸にもより拍車がかかり、莫大な利益を生む集団が形成されていきました。
同時に激しくなっていったのが、麻薬組織間のプラサ(麻薬密輸の縄張り)争いです。
産地や経由地を問わずアメリカ向けの麻薬はメキシコの特定の地域を通過するようになったことで、流通の要衝地域をめぐり争いが頻発するようになりました。この時期には
- シナロア系が3派に分裂(フアレス、シナロア、ティファナ)
- メキシコ湾カルテルは武装集団「セタス」を創設
という情勢になり、2003〜2007年までセタスとシナロア系との間で抗争が繰り広げられました。同じ時期にアメリカから銃器の入手が容易になったこともあって各組織では重武装化が進み、暴力はさらに激しくなっていきます。
メキシコ麻薬戦争の歴史②2006年:麻薬戦争の開始

メキシコ麻薬戦争の大きな転換点となったのが2006年です。
カルデロン大統領は「対麻薬戦争」を掲げ、軍や連邦警察を投入。大物麻薬組織のボスやリーダーらを数多く逮捕・殺害し、麻薬カルテルの壊滅を図ります。
しかし、これがその後現在まで続く麻薬戦争の始まりでした。
リーダーを失った組織は分裂して中小に細分化、統率が取れなくなった組織は歯止めが効かなくなり、資金源を求めて一般市民を巻き込むようになります。事態は沈静化するどころか、かえって泥沼化の様相を呈していくのです。
2000年代後半〜2010年代
カルデロン政権の掃討作戦以降、逆に麻薬カルテルの犯罪は激化し、メキシコの治安は目に見えて悪化の一途をたどっていきます。
国内の殺人件数は2007年から増え始め、2011年には年間約25,000件に達します。その多くが麻薬犯罪組織に起因するものです。
麻薬カルテルをめぐる動きだけでも
- 2009~2010年:ベルトラン・レイバ・カルテル:ボスの逮捕・殺害で分裂、地元ギャング団が加わり抗争激化
- 2010年:タマウリパス州でゴルフォとセタスが武力抗争、警察との銃撃戦が激化し住民が集団脱出
- 2011年:ヌエボレオン州で軍とナルコの銃撃戦
- 2014~2015年:ゲレロ州で殺人件数増加(ほとんどはカルテルの縄張り争いや武装した市民自警団との争い)
- 2017年:シナロア・カルテル内の派閥間抗争
など、全国各地でエスカレートしていった抗争は枚挙にいとまがありません。
有力者の殺害、誘拐事件
同時にこの頃から、政治家・役人や人権活動家、ジャーナリストなどを狙った殺害や誘拐・失踪などの事件も増えていきます。2010年だけでも、
- ヌエボレオン州サンチアゴ首長の誘拐・殺人事件
- コリマ州前知事シルベリオ・カバソス氏射殺
- 人権活動家マリソラ・エスコベド氏殺害事件
- 大統領選候補ディエゴ・フェルナンデス・デ・セバリョ上院議員誘拐
- ゲレロ大学前学長誘拐
などの殺人、誘拐事件が続発しています。国境なき記者団の報告書では、2010年にはメキシコで7件のジャーナリスト殺害事件がおきました。これはパキスタン(11件)、イラク(7件)に次ぐ多さです。
2018年にはオブラドール大統領が「銃弾でなく抱擁」政策で、力ではなく貧困や不平等の解消で犯罪を撲滅するという方針を打ち出しましたが、予算不足のため目立った成果を出すことはできませんでした。
メキシコ麻薬戦争の現状

現在のメキシコでは、麻薬カルテルのほか、栽培農家や輸送業者、化合業者、気づかずに運び屋にされてしまう不法移民など、さまざまな人々が麻薬ビジネスに巻き込まれています。そしてその渦中で、メキシコ中のあらゆる人々は今も犯罪と暴力に怯え、犠牲を強いられ続けているのです。
止まらない暴力の連鎖
一番の恐怖は、止まらない暴力です。メキシコでは殺人事件の30〜60%が犯罪組織によるものとされています。
麻薬カルテル同士の争いや治安当局による麻薬カルテルの取り締まりでは、激しい銃撃戦が展開され、当事者双方だけでなく、巻き添えとなった市民からも多くの死者がでています。
また、カルテルの構成員による敵対組織の人物や、警察・行政、ときには政治家を標的とした暗殺も珍しくありません。
突如姿を消す一般市民
そして、多くの中小組織がひしめくメキシコでは、資金源を確保するために、一般市民を標的にした誘拐や恐喝、窃盗などのサイドビジネスが横行しています。
メキシコでは現在でも、組織とは何の関わりもない市民が突然姿を消してしまう事件が相次いでいます。被害者の多くは遺体が山中やゴミ捨て場などで発見されるか、骨も残さずに処置されるという残虐な殺され方をするケースが少なくありません。
しかし、こうした誘拐や失踪、殺人事件が起きても、住民のほとんどは組織からの報復を恐れるか、政府当局への不信などから、警察に届け出ることをしません。そのため、実際にはさらに犯罪が多く、遺体が発見されないケースが多いこともあり、実態の把握は困難です。
汚職が招く不信感

市民が当局への不信を抱くのは汚職の蔓延ゆえです。
メキシコでは政治家、地元警察、軍、司法当局などあらゆる公務員がカルテルと通じ、協力関係にあることが常態化しています。
麻薬密輸では検問の検査官や空港の管制官・警察官がカルテルに買収され、街の治安では当局が麻薬以外の犯罪も見逃すなど、あらゆる場面で犯罪の不処罰が横行しています。
そのため一般市民は、たとえ犯罪に遭っても、警察官の誰が買収されているかがわからないため報復を恐れて被害届を出せないのです。
取り締まる側=犯人?
メキシコにおける公務員の腐敗は犯罪を見逃すだけにとどまりません。治安を守るはずの当局や、時には政治家の側が、率先して組織犯罪に加担するケースすら起きています。
いくつかの例を上げると
- ミチョアカン州ゴドイ議員=麻薬カルテルのメンバーとして逮捕状→海外逃亡、異母兄弟の州知事も捜査情報漏えいの疑い
- 刑務所から囚人152人が集団脱走=刑務所所長と41人の監守が関与
- 狩りに来たハンター8人が行方不明=警官に拉致され犯罪組織に引き渡され、殺害されたとの証言
などがあります。さらに2011年には、軍による麻薬カルテル掃討作戦において、買収された警官がカルテル側に軍の出動情報を流し、パトカーで道路を封鎖して軍と銃撃戦を展開したというのだから呆れるばかりです。
2019年には元公安相ヘナロ・ガルシア・ルナが麻薬輸出幇助の容疑で逮捕され、腐敗が国の上層部、それも公安のトップにまで及んでいることが明らかになりました。事態は非常に深刻であると言わざるを得ません。
カルテルによる恐怖支配
カルテルの暴力は市民生活にも深く及び、中でも「ナルコクォータ」による搾取は顕著な例です。
ナルコクォータとは、ナルコ(組織のメンバー)またはナルコを騙る組織が、商店主や企業経営者に対し危害を加えない代わりに請求するお金、つまりみかじめ料です。
シウダファレスでは2008年に約3万軒あった商店のうち、ナルコクォータによって2010年までに約1万軒が閉店し、残った7割も何らかの被害を受けたとされています。
場合によってはレモンやアボカドなどの農家や小売業者にも「課税」をしたり、勝手に農産品の値段を決められる、自動車や住宅に対しても「税」を徴収されるなどのケースもあります。当然こうしたみかじめ料を拒めば、恐喝や誘拐、殺人などの標的にされるため、市民は泣く泣く従わざるを得ません。
日本で流通するアボカドの多くもメキシコ産ですが、その背後にはこうした暴力が潜んでいる可能性を考える必要があります。
メキシコ麻薬戦争が終わらない要因

このような無法が蔓延るメキシコにおいて、麻薬戦争が終わる気配は一向に見えません。
一体何が麻薬戦争の収束を妨げているのでしょうか。
要因①アメリカにおける麻薬の需要
最大の要因は、世界最大の麻薬消費国であるアメリカの存在です。
アメリカでも麻薬問題は国内の懸案事項であり、長年に渡って麻薬対策を進めてきました。にもかかわらず、
- 2016年時点で4種の違法薬物購入のために推定1,460億ドル(約15兆7,900億円:2016年当時)が払われた
- 2023年時点で12歳以上のアメリカ人のうち4,770万人が違法薬物を使用
- 毎年90万人のアメリカ人がヘロインを使用
- 2020年代:ヘロインより安く生産が容易な合成麻薬フェンタニルの需要増加
など、アメリカ国内における麻薬依存の問題は解決の兆しを見せてはいません。
現在はアメリカ、メキシコ両国とも、大麻の非犯罪化、合法化で麻薬密輸組織の弱体化を図る方針に舵を切っていますが、それ以外の薬物が蔓延している状況では何の解決にもなりません。アメリカと世界中に麻薬依存者がいる限り、カルテルは麻薬を売り続けるのです。
要因②武器の流入
麻薬戦争悪化の背景には武器の流入がありますが、その要因もやはりアメリカです。
2004年に、米国ではブッシュ政権下で銃規制法が改悪され、一般人でも殺傷能力が高い銃の購入が可能になりました。
これによってメキシコではアメリカからの銃器が大量に流れ、カルテルは警察や軍に匹敵する、あるいは上回る装備を手に入れました。
アメリカの銃器販売業者にとってメキシコのカルテルは上得意客であり、犯罪現場で押収された銃はほとんどがアメリカからの密輸です。
要因③資金洗浄
カルテルは犯罪行為によって莫大な資金を手にしており、資金洗浄(マネーロンダリング)によって合法的に活動資金となります。具体的には
- 現金を小口の銀行口座に預ける
- タックスヘイブン口座などを経由し資金を国外へ移転
- 合法的な資金として投資などに利用
といったルートで組織の手に戻ります。麻薬戦争の解決にはこうした資金洗浄のルート解明と資金の流れを断つことが重要ですが、現実には租税逃れをしたい資本家や、カルテルと癒着する政治家などが反対しており、思うようにはいきません。
要因④賄賂・汚職と脅迫

国内に蔓延る治安当局の汚職と腐敗も、解決を困難にしている要因です。
しかし、買収されて組織に協力している公務員も、必ずしもやりたくてやっているわけではありません。前述のように、麻薬カルテルは潤沢な資金と動員力を有し、銃火器などの装備は警察や軍を凌ぎます。
その力をバックに、カルテルは警察官や政治家などに対し「カネか銃弾か」の二者択一を迫ります。麻薬組織と結託してお金と安全を得るか、断って殺されるか、です。そのため多くの公務員は、自分と家族の命惜しさに従わざるを得ません。
カルテルの動員力は、市民への脅迫によって成り立っています。構成員であるカルテルのメンバーも、もとは下町の貧しい家や一般家庭の子どもの場合も少なくありません。
カルテルはそうした街中にいる普通の青少年を拉致し、恐怖で支配し構成員にしてしまうのです。そして、一度犯罪組織に組み入れられてしまうと、元の世界には戻れません。
彼らもやはり自分や家族が殺されないために、道を踏み外さざるを得ないのです。
要因⑤失業と貧困
一方、失業や貧困などで仕事がない若者が「働き口」を求めて組織に流れるケースもあります。メキシコでは犯罪者の9割が男性で、そのうち5割が16〜30歳です。彼らの8割は高等教育を受けておらず、非熟練労働者として働くことになります。
こうした層は、2008年のリーマンショックや近年の新型コロナ禍などの社会の激しい変化によって雇用への影響をモロに受けます。
そして行き場を失った若者たちの受け皿として機能するのが、この国ではカルテルなどの犯罪組織です。メキシコでは若年男性失業者の比率と殺人率には強い正の相関があります。
若者の失業と貧困もまた、麻薬戦争が終わらない要因のひとつなのです。
メキシコ麻薬戦争の今後の見通し

では、メキシコ麻薬戦争の行方は今度どうなっていくのでしょうか。
2024年に就任したシェインバウム大統領は、当初オブラドール前大統領の「銃弾でなく抱擁」政策の継承を打ち出していました。しかし就任後、その方針を次第に転換させ、
- 北部シナロア州に数千人規模の陸海軍部隊と特殊部隊を派遣
- 大物カルテルの幹部を逮捕
- 大量の麻薬を押収
など、2006年のカルデロン政権を彷彿とさせるような強硬策へと舵を切りつつあります。
この背景には、米国トランプ大統領がメキシコ産品への25%の関税を突きつけて麻薬密輸と不法移民対策強化を求めたことが指摘されています。
しかし、地域や犯罪組織ごとの特徴を見極めずに闇雲に進めることで、再びかつてのような最悪の事態を招いてしまうとする専門家の声もあり、解決の道筋は未だ立っていません。
市民による抵抗運動
そんな見通しの立たない麻薬戦争の中でも、勇気ある市民による抵抗運動が各地で少しずつ広がっています。いくつかの例として
- 女性たちによる家族を探す団体:フエルテの追跡する女たちの会(シナロア)/ソレシート(ベラクルス市)など
- 自警団:テパルカテペク行政区
- 村民による共同体警察:先住民の村チェランでの「習わしと慣習」による自治
- NGOカウセ・シウダダーノ:中学校で非暴力を学ぶワークショップを開催
などがあります。どの活動も小規模で、常に暴力の危険も付きまといます。それでも市民たちはそれぞれのやり方で組織や汚職に対して声をあげ、地道に立ち向かっているのです。
メキシコ麻薬戦争とSDGs

メキシコ麻薬戦争は、SDGs(持続可能な開発目標)の目標すべての解決が一度に求められるような、極めて困難な課題です。その主なものだけでも、
- 貧困:目標1「貧困をなくそう」
- 薬物依存:目標3「すべての人に健康と福祉を」
- 教育:目標4「質の高い教育をみんなに」
- 失業:目標8「働きがいも経済成長も」
- 公正:目標16「平和と公正をすべての人に」
など多岐にわたります。そして、現在のメキシコの悲劇の大半はアメリカによって生み出されました。アメリカはその歴史的事実を踏まえ、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」のもと、解決に向けて道義的責任を果たすことが求められます。そこに必要なのは関税でも圧力でもありません。
>>SDGsに関する詳しい記事はこちらから
まとめ

21世紀のメキシコは、麻薬戦争の歴史といっても過言ではありません。
その起源は古く、歴史的、地理的要因も相まって長きにわたってメキシコの社会を蝕んできました。その原因には、アメリカの薬物需要、武器や資金の流れ、失業と貧困、汚職と腐敗などがあるものの、解決にはどれかひとつだけでなく、それらすべてを同時に無くさなくてはなりません。
見通しは今なお暗く、問題の解決は極めて困難です。それでも、同じ世界に住む私たちがこの問題に光を当て、解決を求め訴え続けることは決して意味のないことではないはずです。
参考文献・資料
ナルコ回廊をゆく : メキシコ麻薬戦争を生きる人々 / 山本昭代著. 風詠社, 2023.
現代メキシコを知るための70章 第2版 / 国本伊代編著. 明石書店, 2019.
馬場香織, ヘゲモニーの衰退と拡散する暴力―メキシコ麻薬紛争の新局面 : ラテンアメリカ・レポート, Vol34, No2, p.13-25
星野, 妙子 特集 メキシコ現地報告:泥沼化する麻薬戦争 ラテンアメリカ・レポート Vol.28, No.1, p.49-53, 2011-06-20 アジア経済研究所学術研究リポジトリ ARRIDE
「アメリカの違法薬物」市場規模が明らかに | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
メキシコの陽気さに隠れた闇?複雑で深刻な麻薬とカルテルの実態に迫る | TRANSIT.jp|トランジット
犠牲者7万人のメキシコ麻薬戦争ルポ | 時事オピニオン | 情報・知識&オピニオン imidas – イミダス
アングル:メキシコ大統領が麻薬組織対応に軍動員、トランプ政権にらみ強硬策か | ロイター 2024年12月28日
この記事を書いた人
shishido ライター
自転車、特にロードバイクを愛する図書館司書です。現在は大学図書館に勤務。農業系の学校ということで自然や環境に関心を持つようになりました。誰もが身近にSDGsについて考えたくなるような記事を書いていきたいと思います。
自転車、特にロードバイクを愛する図書館司書です。現在は大学図書館に勤務。農業系の学校ということで自然や環境に関心を持つようになりました。誰もが身近にSDGsについて考えたくなるような記事を書いていきたいと思います。