
ストレスが原因で不眠に悩む人は多く、吐き気や動悸などの身体症状が現れることも少なくありません。不眠が続くと、うつ病や生活習慣病のリスクも高まります。ストレスが関係する不眠の仕組みやタイプ、漢方を取り入れた対策、日常でできるセルフケア、病院で相談すべき診療科についてわかりやすく紹介します。
目次
ストレスが不眠を引き起こす理由とは?メカニズムについて解説
ストレスが不眠を招く主な原因のひとつに、自律神経のバランスの乱れがあります。
通常、日中は交感神経が優位になって活動を促し、夜になると副交感神経に切り替わることで心身がリラックスし、自然な眠気が訪れます。
しかし、強いストレスや不安、緊張が続くと交感神経が過剰に働き、脳や体が興奮したままの状態に。副交感神経への切り替えがうまくいかず、寝つきにくくなったり、眠りが浅くなったりします。
さらに、ストレスによって分泌が増えるアドレナリンやコルチゾールなどのホルモンが脳を覚醒状態に保ち、睡眠の妨げとなります。
本来なら休息に入るべき時間帯でも、脳が「闘争か逃走か」のスイッチを入れたままになり、落ち着けなくなってしまうのです。
この状態が続くと、不眠が慢性化し、生活の質や心身の健康に深刻な影響を及ぼすおそれがあります。
ストレスによる不眠が続くと高まるリスクについて解説
ストレスによる不眠が続くと、心身にさまざまな悪影響が現れ、放置すると深刻なリスクを招くことがあります。ここでは主な4つのリスクについて解説します。
うつ病や不安障害を発症
ストレスによる不眠が長期間続くと、脳や体が十分に休息できず、心のバランスが崩れやすくなります。
その結果、ストレスを適切に処理する力が低下し、うつ病や不安障害などを引き起こすリスクが高まるおそれがあります。
不眠症の人は、そうでない人に比べてうつ病を発症する確率が2〜4倍高いとされており、特に1年以上不眠が続いた場合は、うつ病のリスクが約40倍に上昇するという報告もあります。
不眠とうつ病は互いに影響を及ぼし合い、「負のスパイラル」に陥りやすいのが特徴です。
放置せず、早めに対策を講じることや専門医への相談が重要といえるでしょう。
参考:てらすクリニック「不眠症とうつ病の関係とは?症状の見分け方と効果的な治療法」
集中力や判断力が低下する
不眠が続くと、日中の集中力や判断力が著しく低下します。
脳が十分に休めないことで、記憶力や注意力にも悪影響が及び、仕事や学業でのミスが増えるほか、運転時の事故リスクも上昇。
さらに、イライラ感や焦燥感が強まり、些細なことで感情的になりやすくなる傾向も見られます。
慢性的な睡眠不足は、思考力や創造力を奪い、日常生活全体のパフォーマンスを大きく損なう要因です。
この状態が続くと、自己肯定感が低下し、ストレスも悪化する恐れがあります。早めの対策が重要です。
高血圧や糖尿病のリスクが高まる
不眠が慢性化すると、自律神経のバランスが崩れ、交感神経が優位な状態が続きます。
その影響で血圧や血糖値のコントロールが難しくなり、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を引き起こしやすくなります。
また、睡眠不足はホルモンバランスにも悪影響を及ぼし、インスリンの働きが弱まることで血糖値が上昇しやすくなるほか、食欲が増して肥満を招くことも。
こうした状態が続けば、動脈硬化や心疾患のリスクも高まり、不眠を放置することは全身の健康に深刻な影響を与えるおそれがあります。
美容面や生殖機能への影響
睡眠は肌や髪の健康を保つためにも不可欠です。不眠が続くと成長ホルモンの分泌が減少し、肌荒れやシミ、抜け毛など美容面でのトラブルが増加します。
また、ホルモンバランスの乱れは女性の場合、生理不順や月経前症候群(PMS)の悪化、男性の場合は精子の質や性機能の低下など、生殖機能にも悪影響を及ぼします。
美容や健康を維持するためにも、質の良い睡眠を確保することが重要です。
ストレスが引き起こす不眠には4つのタイプが存在する
ストレスが原因で起こる不眠は、大きく以下4つのタイプに分けられます。
- 入眠障害
- 中途覚醒
- 早期覚醒
- 熟眠障害
それぞれの特徴や原因を理解することで、自分に合った対処法を見つけるヒントになります。
①入眠障害
入眠障害は、布団に入ってもなかなか寝つけず、眠りにつくまでに30分から1時間以上かかる状態を指します。
このタイプは不眠症の中で最も多く、強いストレスや不安、緊張が原因となることが多いです。
たとえば、仕事や人間関係の悩み、翌日の予定への不安などが頭から離れず、脳が興奮状態のままとなり、リラックスできないために寝つきが悪くなります。
また、寝る直前までスマホやパソコンを使用していると、脳が刺激を受けてしまい、さらに入眠が妨げられることもあります。
②中途覚醒
中途覚醒は、眠りが浅く、夜中に何度も目が覚めてしまう状態です。一度目が覚めると再び寝つくのが難しく、眠りが断続的になりやすいのが特徴です。
ストレスや加齢、生活リズムの乱れが主な原因で、特に中高年や高齢者に多く見られます。
また、睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害などの睡眠関連疾患が背景にある場合もあります。
中途覚醒が続くと、日中の眠気や集中力低下につながることが多いです。
③早期覚醒
早期覚醒は、望む起床時刻よりも2時間以上早く目が覚めてしまい、その後再び眠れなくなる状態です。このタイプは高齢者やうつ病の方に多く見られます。
加齢により体内時計のリズムが前倒しになったり、ストレスや気分の落ち込みが原因で、早朝に目が覚めてしまうことがあります。
十分な睡眠時間を確保できず、朝から疲労感を覚えやすいのも特徴です。
④熟眠障害
熟眠障害とは、睡眠時間は十分に確保できているにもかかわらず、ぐっすり眠ったという満足感が得られない状態を指します。
眠りが浅いため、朝起きたときに疲れが残っていたり、日中も眠気が続いたりすることが多いのが特徴です。
この睡眠の質の低下は、ストレスや不安が原因となっている場合や、睡眠中の無呼吸症候群や足の不随意運動など、身体的な要因が隠れていることもあります。
さらに、これらの症状は本人が自覚しにくいこともあるため、注意が必要です。
ストレスをコントロールする方法とは?今日からできる5つの方法を紹介
ストレスは日々の生活で避けられませんが、上手にコントロールすることで心身の健康を保つことができます。ここからは、今日から実践できる5つの方法をご紹介します。
ヨガやストレッチで心身をリラックスさせる
ヨガやストレッチは、筋肉の緊張をほぐし、呼吸を整えることで自律神経のバランスを整える効果が期待できます。
深い呼吸を意識しながら体を動かすことで、交感神経の高ぶりが抑えられ、副交感神経が優位になりやすくなります。
その結果、心身ともにリラックスしやすくなり、ストレスによる不安やイライラも和らぎます。
特に就寝前に軽いストレッチやヨガを取り入れると、眠りの質が高まるでしょう。
難しいポーズを取る必要はなく、無理のない範囲でゆっくりと体を伸ばすだけでも十分です。毎日の習慣として続ければ、ストレスに強い体づくりにつながります。
マインドフルネス瞑想を行う
マインドフルネス瞑想は、「今この瞬間」に意識を集中させ、ストレスや不安から心を解放する方法です。
呼吸や体の感覚に注意を向け、浮かんでくる思考や感情を評価せずに受け流すことで、心が落ち着き、ストレスの感じ方が和らぐことが科学的にも示されています。
継続することでストレスへの耐性が高まり、集中力や自己コントロール力も向上。1日5分から気軽に始められるため、忙しい方にもおすすめです。
毎日の生活に取り入れれば、心の安定を保ちやすくなります。
睡眠環境を整える
質の良い睡眠は、ストレスを和らげるうえで欠かせません。寝室の照明を暗めにし、静かな環境を整えることで、脳と体がリラックスしやすくなります。
寝具や室温、湿度は自分に合うよう調整を。スマートフォンやパソコンの使用は控えめにし、ブルーライトを避けるとスムーズな入眠につながります。
さらに、軽いストレッチや深呼吸を取り入れると心身が落ち着き、睡眠の質が向上。結果として、日中のストレスにも強くなり、回復力も高まっていきます。
規則正しい生活習慣を意識する
毎日同じ時間に起きて寝る、食事の時間を一定に保つといった規則正しい生活リズムは、ストレスの軽減に効果的です。
生活リズムが乱れると自律神経のバランスも崩れやすくなり、ストレスへの耐性が下がりがちです。
朝はしっかりと日光を浴び、夜はリラックスできる時間を設けることで体内時計が整い、心身の調子も安定します。
さらに、バランスの取れた食事や適度な運動を取り入れることで、ストレスに負けにくい体と心づくりにつながります。
生活習慣の見直しは、ストレス対策の第一歩といえるでしょう。
アロマセラピーを取り入れる
アロマセラピーは、植物由来の香りを使って心身をリラックスさせる方法です。
ラベンダーやカモミールなどの精油はリラックス効果が高く、ストレスや不安を和らげるのに役立ちます。
ディフューザーやアロマストーンを使って寝室やリビングに香りを広げたり、入浴時に数滴垂らすのもおすすめです。
香りは脳に直接働きかけるため、短時間でも気分転換やリフレッシュ効果が期待できます。
自分の好きな香りを見つけて、日常生活に取り入れることで、ストレスの軽減に役立てましょう。
ストレスによる不眠におすすめの漢方薬を紹介
ストレスによる不眠には、体質や症状に合わせた漢方薬が効果的です。ここでは代表的な4つの漢方薬と、その特徴や選び方についてご紹介します。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
柴胡加竜骨牡蛎湯は、イライラや不安感、動悸、神経過敏などを伴うストレス性の不眠におすすめの漢方薬です。主に精神的な緊張や興奮が強く、眠りが浅い、夢を多く見るといった方に向いています。柴胡や竜骨、牡蛎などが配合され、心身のバランスを整え、気持ちを落ち着かせる効果が期待できます。
【選ぶポイント】
- ストレスで気分が高ぶりやすい
- 神経が過敏になっている
- 不安やイライラが強い
- 比較的体力がある
抑肝散(よくかんさん)
抑肝散は、神経が高ぶりやすく、怒りっぽい、イライラしやすい方に適した漢方薬です。ストレスによる不眠だけでなく、認知症の周辺症状や小児の夜泣きにも使われることがあるほど、幅広い年代に対応しています。肝(かん)の働きを整えて精神を安定させ、過敏な神経を鎮める効果が期待できます。
【選ぶポイント】
- イライラや怒りっぽさが強い
- 寝つきが悪い
- 神経が過敏で眠れない
- 年齢や体質を問わず使いやすい
桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
桂枝加竜骨牡蛎湯は、不安感や緊張、動悸、寝つきの悪さなどが気になる方におすすめの漢方薬です。桂枝や竜骨、牡蛎などが配合され、心身の緊張を和らげてリラックスさせる働きがあります。特に体力が中等度以下で、ストレスによる不安や緊張から眠れない方に向いています。
【選ぶポイント】
- 寝つきが悪い
- 不安感や動悸がある
- 体力があまりない
- 高齢者や体力のない方にも適している
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
半夏厚朴湯は、喉や胸につかえ感がある、吐き気や不安感を伴うストレス性の不眠に効果的な漢方薬です。気分がふさいだり、喉が詰まる感じがして眠れない、胃腸の不調があるといった方に向いています。半夏や厚朴などが配合され、気の巡りを良くし、心身の緊張を和らげる効果が期待できます。
【選ぶポイント】
- 喉や胸のつかえがある
- 吐き気や胃の不快感がある
- ストレスで気分が落ち込みやすい
- 体力に関係なく使いやすい
ストレスによる不眠は病院に行くべき?相談先と行くべきタイミングについて解説
ストレスによる不眠が続くと、自己対策だけでなく、専門家への相談が重要になる場合があります。ここからは、適切な相談先や、病院に行った方がいいサインについて解説します。
診断してくれるのは3つの相談先
不眠やストレスに関する相談先は、主に以下の3つです。
- 心療内科
- 精神科
- 精神科
それぞれの診療科の特徴や、どのような人に向いているかをわかりやすく解説します。
心療内科
心療内科は、ストレスや心理的な要因が関わる不眠に幅広く対応しています。
医師は睡眠の状態だけでなく、生活習慣や職場・家庭でのストレス、心身のバランスなど総合的に診てくれます。
不眠の背後にある精神的なストレスや自律神経の乱れ、身体症状(動悸、吐き気、頭痛など)も含めて相談できるのが特徴です。
薬物療法だけでなく、カウンセリングや生活指導など多面的なアプローチが期待できます。
ストレスや環境の変化による不眠、心身両面の不調を感じている方におすすめです。
精神科
精神科は、うつ病や不安障害など精神疾患が疑われる場合や、強い精神的ストレスを感じている人に適した診療科です。
不眠が長く続き、気分の落ち込みや意欲低下、強い不安、日常生活への支障が出ている場合は、精神科での診断が重要となります。
診察では、国際的な診断基準(DSM-5やICSD-3)に基づき、睡眠の状態や日中の機能障害の有無を総合的に評価し、適切な治療方針を提示。
精神的な疾患が背景にある場合や診断書が必要な際にも対応しています。
かかりつけの内科
かかりつけの内科でも、不眠の相談や初期診断を受けられます。
特に、高血圧・糖尿病・甲状腺疾患などの身体的な病気が不眠の原因となっている可能性がある場合や、まずは身近な医療機関で相談したい方におすすめです。
内科では、身体的な異常の有無を確認し、必要に応じて心療内科や精神科への紹介も行っています。軽度の不眠や健康診断の一環としても気軽に相談できるのが特徴です。
病院に行った方がいいサインとは?
【病院に行った方がいいサイン】
- 疲れているのに眠れない状態が続く
- 好きなことが楽しめない
- 気分が落ち込む・やる気が出ない
- 日中の眠気や集中力低下で生活に支障がある
- 眠れない、途中で目が覚めるなどの不眠が1週間以上続く
これらのサインが現れた場合、ストレスによる不眠が深刻化している可能性があります。
特に「疲れているのに眠れない」「好きなことが楽しめない」といった症状が1週間以上続く場合は、心身のバランスが崩れ、うつ病や不安障害などのリスクも高まります。
また、日中の眠気や集中力の低下で仕事や学業に支障が出ている場合も、早めに医療機関を受診することが重要です。
放置すると症状が悪化しやすいため、早めに相談することをおすすめします。
まとめ
ストレスによる不眠は、放っておくと心身にさまざまな悪影響を及ぼすため、医療機関の受診が必要になることもあります。
不眠が1週間以上続く、日常生活に支障が出ている、気分の落ち込みや集中力の低下があるといった場合は、早めの相談が望ましいでしょう。
特に、眠れないことで仕事や家庭に影響が出ている場合や、気分の落ち込み・食欲不振・疲れやすさを感じる場合は、心療内科や精神科の受診がおすすめです。
早期に受診することで、症状の悪化や合併症を防ぐことにもつながります。
この記事を書いた人

エレビスタ ライター
エレビスタは「もっと"もっとも"を作る」をミッションに掲げ、太陽光発電投資売買サービス「SOLSEL」の運営をはじめとする「エネルギー×Tech」事業や、アドテクノロジー・メディアなどを駆使したwebマーケティング事業を展開しています。
エレビスタは「もっと"もっとも"を作る」をミッションに掲げ、太陽光発電投資売買サービス「SOLSEL」の運営をはじめとする「エネルギー×Tech」事業や、アドテクノロジー・メディアなどを駆使したwebマーケティング事業を展開しています。