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ウォーターサーバーは環境問題の解決に貢献する?その理由を分かりやすく解説

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近年見かけるシーンが増加している、ウォーターサーバー。美味しい水がいつでも飲めることが最大の魅力ですが、環境問題解決への貢献にもつながります。

今回はそんなウォーターサーバーについて、仕組みや水の種類といった基本的な情報から環境問題との関係、また気になる電気代のことや、出先で水を補給できる給水スポットの情報、そしてSDGsとの関連まで幅広くご紹介します。

まずはウォーターサーバーについて知ろう

ではまず、ご家庭やオフィスで使用するウォーターサーバーの仕組みや、水の配送方式、また水の種類などを簡単に解説します。

仕組み

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ウォーターサーバーを利用する場合は、専門の業者と契約し、サーバー本体をレンタルします。レンタル料金は無料で、水の代金を支払うという形式が主流です。

ウォーターサーバーを使用すると、衛生的で美味しい水好みの温度ですぐに飲むことができるため、使用する人が増えています。また、水は自宅やオフィスまで配送してくれるため、買い物のときに重い水を持ち運ぶ必要がありません。

なおこのほか、サーバー本体を購入し、市販のペットボトルをセットして使用するタイプや、水道と直結させて使うタイプもあります。この記事では特記のない限り、現在最も主流と言える水を購入して使用するタイプについて記述します。

ワンウェイ方式とリターナブル方式

ウォーターサーバーの水の配達には、ワンウェイ方式とリターナブル方式の2種類があります。

ワンウェイ方式は、水がなくなった後の容器は利用者自身で処分します。一方でリターナブル方式は、水の配達時に使い終わった容器を返却します。返却した容器は洗浄され、一定回数繰り返し利用されます。

こう聞くと、リターナブル方式の方が環境への負荷が少ないように感じますが、ワンウェイ方式の場合も、資源ごみとして処分できるほか、最近は軽量のボトルやビニールパックが使われることが増えてきています。また、リターナブルボトルの場合は洗浄時や回収運搬時にも環境負荷が発生します。そのためワンウェイ方式とリターナブル方式のどちらが環境に優しいか、一概に述べるのは難しいといえます。

天然水とRO水の2種類がある

スーパーやコンビニなどで売っているペットボトルの水は、ほとんど全てが自然から採取した地下水や海洋深層水などを殺菌処理した「天然水」です。

一方でウォーターサーバーの水は、この天然水のほかに「RO水」と呼ばれる種類の水も存在します。RO水とは、RO膜という高性能なろ過装置を使用してろ過した水で、不純物をほとんど含まない「純水」に近い水です。RO水の原料は、天然水のように地下水を使用することもあれば、水道水を使用することもあります。原料が地下水でも水道水でも、純粋に近い水のため、理論的には同程度の品質といえます。

天然水・RO水は、どちらかが優れているという物ではありません。それぞれの特徴を表にまとめてみました。利用者自身の用途やこだわりに合わせて選ぶと良いでしょう。

天然水RO水
原料山地などの地下水、海洋深層水水道水、地下水、河川水
処理方法殺菌処理(加熱殺菌・紫外線殺菌・ろ過など)RO膜によるろ過
成分ミネラルを含む(種類や量は採水地や処理方法により異なる)純粋に近い(ミネラル分が添加されていることもある)
ミネラルを含むため、味わいを楽しめるミネラルの添加がないものは、無味
値段比較的高い比較的安い

飲み水と環境問題の関係

続いて、私たちが生きていくうえで欠かすことのできない「飲み水」と環境問題の関係性について解説します。

飲み水を購入する人が年々増加

日常の飲み水として、水道水を飲むのではなく、ミネラルウォーターなどを購入して飲む人が増加しています。

平成2年の世論調査では、「お金を払っておいしい水を飲みたいかどうか」という設問に対し、「飲みたい」「どちらかといえば飲みたい」と答えた人は合わせて22.9%にとどまっていました。その後、平成6年に行われた同様の調査では28.9%と、平成初期から少しずつ「飲み水を購入する」という意識が高まってきていることが分かります。

そして平成20年の世論調査では、「普段の飲み水として、ミネラルウォーターなどを購入して飲んでいる人」が29.6%、令和2年度の同様の調査では33.9%に増加しています。

平成2年・6年の調査と平成20年・令和2年の調査では、質問項目や調査方式が異なるため単純比較はできませんが、飲み水をお金を払って購入する人が増加していることは確かと言えそうです。

ペットボトルはマイクロプラスチック問題に直結

次に考えたいことが、ペットボトル飲料の生産量が増える中で、プラスチック問題が表面化してきたことについてです。ペットボトルは資源として再利用できますが、適切に回収されずゴミとして廃棄されると、紫外線などにより劣化し、微細なプラスチックごみ「マイクロプラスチック」となってしまいます。

このマイクロプラスチックが特に猛威を振るうのが、です。プラスチックの有害な物質が海水に湧出したり、有害物質を吸収したプラスチックを海の生物が摂取したりしてしまいます。その結果、生態系や、海産物を食べる私たち人間の健康にも悪影響を及ぼすのです。

また、ペットボトルが資源として回収された場合、マイクロプラスチックの問題はクリアできますが、リサイクルの課程で二酸化炭素が排出されてしまう問題は残ります。もちろん「ゴミ」として廃棄される場合よりは環境負荷は少なくなりますが、ペットボトルのもたらす環境問題として知っておきたい事実です。

ウォーターサーバーはどのように環境問題に貢献する?

一方でウォーターサーバーを利用すれば、ペットボトルゴミの排出量を減らすことができます。もちろんウォーターサーバーの水もプラスチック容器を使って配送されますが、ペットボトルの水は500ml〜2Lが一般的である一方、ウォーターサーバーは4〜20Lと大容量です。そのため同量の水に対して使用されるプラスチック量が少ないと言えます。

また取り扱い企業によっては、生産拠点を増やすことによって水の配送距離を減らし、輸送時に発生するCO2の削減に取り組んでいる企業もあります。さらに、水道直結・浄水一体型タイプのウォーターサーバーは、より環境にやさしいと言えます。

とはいえ電気代は?

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ここまでで、ペットボトルの水を購入するよりも、ウォーターサーバーを使用したほうが環境への負荷が抑えられることが分かったと思います。

一方で実際に使用する場合、とくに家庭では電気代がいくらかかるか気になるところです。またペットボトルを削減できても、電気をたくさん使ってしまっては、結局環境汚染につながってしまうようにも思えてしまいます。そこで、ウォーターサーバーの電気代について見ていきましょう。

電気代は多少かかるが、電子ポットやケトルが不要になる

ウォーターサーバーは、冷たい水や熱いお湯を待ち時間なしで飲めるのが魅力の一つです。そのため、どうしても保冷や保温のための電気代がかかってしまいます。最近では省電力のサーバーも増えてきており、家庭用ウォーターサーバーの1ヶ月の電気代は約350円〜1,000円程度が標準です。

なお、ウォーターサーバーがあれば電気ポットや電気ケトルを使用する必要がありません。そのためその分の電気代が不要になることとなります。一般的な電気ポットの電気代が1か月あたり5〜600円程度と言われていますから、家庭でウォーターサーバーを使用するにあたって大きな問題ではないといえるのではないでしょうか。

給水スポットも増加中

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家庭やオフィスのウォーターサーバーの他、少しずつ増えているのが公共の場所にある「給水スポット」です。水筒や飲み終わったペットボトルなどのマイボトルを持ち歩き、給水スポットで水を汲むことで、プラスチックごみの削減につながります。

浄水を提供する給水スポットが多い

公共の場の給水スポットは、家庭・オフィス用のウォーターサーバーと異なり、水道と接続されていて浄水された水が出てくるものがほとんどです。天然水などと比べると味が劣ると感じる人もいるかもしれませんが、それでも高い浄水技術のおかげで美味しくいただくことができます。マイボトルに水出しのティーバッグを入れれば、お茶を楽しむこともできますね。また給水は無料ですから、水代の節約にもなります。

台湾でもマイボトルへの給水が日常の風景

筆者が暮らしている台湾では、マンションのロビーや駅、商業施設、学校など、日本以上に頻繁に給水スポットを見かけます。そのため老若男女がマイボトルを持ち歩き、給水する光景が日常的に見られます。

多くの人々がマイボトルを日常的に使用することで、環境へ配慮することが人々の意識に染みこんでいるように感じます。

給水スポットの探し方

日本における給水スポットとして代表的なのが、図書館や公民館といった公共施設で、必ずと言っていいほど給水機が設置されています。また全国の「無印良品」約400店舗にも自由に使用できる給水機が設置されています。無印良品以外のマイボトルにも給水することができます。

給水スポットを探すことができるアプリもあります。一般社団法人Social Innovation Japanの提供する「mymizu」や無印良品の提供する「水 – MUJI Life」などが情報量も多く、おすすめです。

マイボトルを持つことから始めよう

給水スポットを活用するために、まずはマイボトルを持つことから始めましょう。

もちろん、ペットボトルを再利用(リユース)することも可能ですが、専用のボトルは洗浄や給水のしやすさ、また保温・保冷などの機能性を兼ね備えています。さらに、サイズやデザインなども多様です。お気に入りのボトルを持てば、毎日持ち歩くモチベーションにもつながります。

おすすめのマイボトルはこちらの記事で紹介しています

また浄水フィルター付きのボトルを使ったり、水に溶けやすいパウダータイプのお茶を活用するなどで、より美味しく水分補給をすることができますよ。

最後に、ウォーターサーバーの活用によって環境問題を解決することで、どのようにSDGsの達成に貢献するのかを見ていきましょう。

ウォーターサーバーが環境問題を解決することとSDGsの関係

ウォーターサーバーを利用することで「プラスチックの削減」につながります。このことと関係するSDGsの目標は、主に以下の3つです。

一つずつ確認していきましょう。

目標12「つくる責任つかう責任」

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目標12のテーマは「つくる責任つかう責任」です。生産者も消費者も、未来の地球に対して責任をもって行動をとる必要があるということを訴える目標です。

この目標12の中には、さらに細分化されたターゲットが11あります。その中でも注目したいのが以下の3つです。

12.4 2020年までに、国際的な取り決めにしたがって、化学物質やあらゆる廃棄物(ごみ)を環境に害を与えないように管理できるようにする。人の健康や自然環境に与える悪い影響をできるかぎり小さくするために、大気、水、土壌へ化学物質やごみが出されることを大きく減らす。

プラスチックは、生産時や焼却時に温室効果ガスなどの有害物質が排出されてしまいます。また先述のとおり、マイクロプラスチックは海の汚染につながります。プラスチックの使用量を減らすことで、これらの現象による環境汚染を軽減することができるのです。

12.5 2030年までに、ごみが出ることを防いだり、減らしたり、リサイクル・リユースをして、ごみの発生する量を大きく減らす。

ウォーターサーバーの利用は、プラスチックごみの量そのものを減らすことにつながります。

12.8 2030年までに、人びとがあらゆる場所で、持続可能な開発や、自然と調和したくらし方に関する情報と意識を持つようにする。

家庭やオフィスでウォーターサーバーを利用したり、マイボトルを持ち歩いて給水スポットを利用したりすることは、日頃から環境への意識を持つことにつながります。

目標13「気候変動に具体的な対策を」

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気候変動の主な原因は、二酸化炭素やメタンといった温室効果ガスの排出です。

目標12の説明でも解説した通り、プラスチックは生産時や焼却時、またリサイクル時にも温室効果ガスが排出されます。ウォーターサーバーの利用を通してプラスチックの使用量を減らすことで、温室効果ガスの排出も減らし、気候変動対策に貢献できます。

目標14「海の豊かさを守ろう」

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目標14は、「海の豊かさを守ろう」です。人間が海洋資源をこれからも持続的に享受し続けるために達成すべきターゲットが10点、示されています。

その中でも特にウォーターサーバーと関連するのは、

14.1 2025年までに、海洋ごみや富栄養化など、特に陸上の人間の活動によるものをふくめ、あらゆる海の汚染をふせぎ、大きく減らす。

です。

ここまでで繰り返し述べてきた通り、ペットボトルは海へのマイクロプラスチック流出問題に大きく関わっています。一度海に流出したマイクロプラスチックは、その小ささから回収が困難であるほか、自然分解されるには非常に長い時間がかかってしまいます。

ウォーターサーバーを活用し、プラスチックの使用量そのものを減らすことが、海洋へのマイクロプラスチック流出の解決につながります。

まとめ

この記事では「ウォーターサーバー」をテーマに、環境問題との関わりや、給水スポットSDGsとの関連についても解説しました。また、水の種類や配送方式、電気代についても取り上げましたので、ウォーターサーバーを導入するか迷っている人の参考にもなったのではないでしょうか。

プラスチック量削減という観点から環境問題の解決に貢献するウォーターサーバー。ぜひ日頃からペットボトルの水を購入している人は、導入を検討してみてくださいね!

<参考文献>
「平成2年度 人と水とのかかわりに関する世論調査」内閣府
「平成6年度 人と水とのかかわりに関する世論調査」内閣府
「平成20年度 水に関する世論調査」内閣府
「令和2年度 水循環に関する世論調査」内閣府