ナッシュ株式会社 岩田繭さん インタビュー

岩田繭
ナッシュ株式会社は、2018年から冷凍宅配食サービス「nosh」を開始。「垂直統合型ビジネス」を基盤に、商品の企画・開発、製造、販売、広告、CS、システム開発に至るまで、インハウスで運用することで、ニーズにいち早く対応し、真にお客様に寄り添ったサービスを提供しています。昨今の健康志向の高まりや、中食需要、時短ニーズなども追い風となり、会員数は年々増加。2024年6月には累計販売食数9,000万食を突破するなど、サービス開始から6年で売上は100倍以上に拡大しています。
introduction
日本における死因の約5割は生活習慣病に起因していると言われています(※)。この問題を解決するために、健康に配慮した食事提供サービスを行っているのがナッシュ株式会社です。
毎日のことだからこそ、無理なくサステナブルに利用できるサービスにするため、お客様第一主義を掲げ、サービスの提供を行っています。
今回は、どうやってお客様に寄り添い、「お客様に寄り添ったサービス」をどのように提供しているのかについて、ナッシュ株式会社の岩田さんにお話を伺いました。
(※)日本生活習慣病予防協会「生活習慣病とその予防」
「死」に直面する葬儀仲介サービスから、「生」に貢献できる宅配食サービスへ
–まずは会社概要について教えてください。
岩田さん:
2016年に創業したナッシュ株式会社は、2018年から冷凍宅配食サービスを行っています。多くの方に、健康な食事をサステナブルに届けることを一番の目的にしており、糖質・塩分に配慮した、健康的なワンプレート冷凍弁当をサブスクリプション形式で提供しています。
サービス開始から6年が経ちますが、おかげさまで累計販売食数が9,000万食を突破しました。
–創業のきっかけについて教えてください。
岩田さん:
現代表の田中はもともと、葬儀仲介サービスを運営していました。サービス内容が葬儀の仲介なので、やはり人の死に直面することが多くありました。遺された方々だけでなく、生きている人に向けて幸せを提供できるようなサービスを行いたい、と思うようになったそうです。
そこで色々と調べる中で、日本における「死」の要因の約半分が生活習慣病に起因していることが分かりました。そこから、生活習慣病という社会課題を解決できるサービスを考え、辿り着いたのが、糖質・塩分に配慮した冷凍宅配食サービスでした。社名の「nosh(ナッシュ)」は英語のスラングで「軽食」を意味します。手軽でおいしい食事を通じて、人々の健康をサポートしたいという思いが込められています。

社内で全てが完結するからこそ出来ること
–サービスを展開する上で大切にしていることを教えてください。
岩田さん:
お客様に寄り添い、長く継続して選んでいただけるサービスを提供することを大切にしています。
食事を通して健康を目指すためには、1か月の内、1食だけ健康的な食事になってもあまり意味がないですよね。そのため、お客様が継続してくださるものを提供することが重要だと考えています。継続する理由も、「辞めにくい」というようなネガティブな感情ではなく、「続けたい」というポジティブな感情で続けてもらいたいんです。
そのために私たちが重要視していることは、「おいしさ」「安さ」「安心・安全」です。
当社では独自の基準から、すべてのメニューを糖質30g以下、塩分2.5g以下に設計していますが、一般的に健康的なメニューは「おいしくない」、「味が薄い」といったイメージがありますよね。ナッシュはこの制限された内容であったとしても、「おいしい」かつ物足りなさを感じないよう、塩分を使わずに旨みや酸味などを駆使して味付けをしたり、歯ごたえのある食材を使用することで満足感をプラスしたり、様々な工夫をしています。
「安さ」の面では、価格が高価であると継続に経済的制限がかかってしまうため、徹底的な内製化により外注コストを下げることで、なるべく低価格でお届けできるように日々工夫しています。
「安心・安全」の面では、当社独自の基準で設定した一部の添加物は、一切使用していません。
上記に加えて、お弁当容器の工夫も行っています。
SDGsに直結する部分でもあるのですが、容器とトップシール含めて全て紙製の物を使っています。これは「プラスチック削減」と同時に、お客様の手間を省こうという意図もあります。やはりプラスチックの場合、地域によっては洗って分別して捨てるという手間が発生するので、SDGsと利便性の両方を考慮して紙容器の導入を行いました。
これらの「お客様に寄り添うサービス」を可能にしているのが、垂直統合型ビジネスという、商品開発から製造、販売、広告まで全て自社(インハウス)で行う事業形態です。
お弁当の宅配サービスを展開している他業者の場合、OEMで製造や開発を他社にお願いしている所が多くあります。対して弊社では、全てを社内で行うことで外注費を抑えられますし、妥協しない商品作りができています。
浮いた分のコストは、お客様に還元することで、これまでに3度の値下げに成功しました。また、業界初の買えば買うほど安くなる「nosh club」制度の導入などを行っています。
–顧客として、とてもうれしい内容ばかりですね。利用者はどのような方が多いのでしょうか?
岩田さん:
男女比は半々で、20~40代が約85%を占めています。もともと若い世代をターゲットに始めたサービスというわけではなく、広い層の方にご利用いただきたいと思って事業を行っていました。ただ、代表の田中がデジタルマーケティングに強かったこともあり、そこに力を入れた結果、デジタルと相性の良い若い世代の方に多くご利用いただけるようになった、という流れです。他にも、コロナの影響で外出が減ったことで体型を気にされる方や、健康に気を遣う方が増えたという背景も、若年層の方の利用が多い理由だと思います。
明確な役割分担でお客様のニーズに応える
–ここからは、商品開発について教えてください。商品開発を行う際、社内ではどのような流れになるんでしょうか?
岩田さん:
商品開発を行う際、まず企画課の担当者が商品の企画を行います。お客様がどんな商品を望んでいるかという市場調査を行い、その上で、どんなコンセプトの商品を作るかを決めます。次に、決定した企画に沿って、シェフが実際に美味しく食べられるお弁当の形にしていきます。この時に、管理栄養士も入り、栄養バランスや塩分や糖質の制限を超えていないかのチェックを行います。
この開発における弊社の特徴は、シェフも管理栄養士も全員自社の人間であり、お客様に寄り添った商品開発を目指していることです。
主にレストランなどを開いているシェフは、自分の作りたいものや自分が届けたい料理を提供していることが多いと思います。ただ、我々のケースの場合、シェフが作りたいものが必ずしもお客様の食べたいものであるとは限らないですよね。
ナッシュのサービスは、サステナブルに食べ続けることで健康を維持することが目的なので、お客様が求める商品を開発し続ける必要があります。
そのため、お客様のニーズを拾うのは企画課、その企画の中で出来る限りおいしいお弁当を作るのがシェフ、栄養素の管理を行うのが管理栄養士というように、明確に役割分担を行っています。分担しても、全員が「お客様に寄り添った商品を作る」という同じ方向を見ているので、想いは同じです。

–実際にお客様の声を反映した商品について教えてください。
岩田さん:
お弁当の内容量を、2023年時点では平均203gだったのを2024年には230g以上まで増やしました。糖質30g以下、塩分2.5g以下という制限の中でおいしく、満足できる量まで増やしていくということは、非常に難しい課題ではありました。
味の濃さに関しては、塩分以外のものでカバーする方法が多くあるのですが、糖質を抑えながら量を増やしていくことは難しい部分だったんです。それでも試行錯誤を繰り返し、ワンプレートで塩分と糖質を抑えながら増量することに成功しました。
これは、自社でカスタマーサービスを持っていることからお客様の声をダイレクトに受け取れていたことと、商品の製造から開発まで自社で行っているからこそスピード感を持って改善できたと思います。
–御社の商品は、見た目も商品名も惹かれるものがたくさんありますよね。
岩田さん:
サービスそのものがEC販売のみで、現物を見ていただいたり試食をしていただくことができないので、写真ビジュアルや名前で目を引いてもらえるように心がけています。クリエイティブチームも社内で抱えており、どうやったらお弁当がおいしく見える写真になるか試行錯誤しながら撮影しています。
商品名については、「食べてみたい」と思ってもらえて、かつ食事の内容が想像できるような名前を考えるようにこだわっています。
例えば、「幸せの黄!コーンクリームハンバーグ」とか「チーズ!チーズ!たらのフリット」などです。
飽きずに継続していただくために、常に約100種類のメニューを用意しているので、選ぶところも楽しんでもらえたら良いなと思っています。
「おまかせ」で選ぶ機能もあるので、時短で購入したい方にはそちらがオススメです。
より、お客様に寄り添える商品にするための挑戦
–今後の展望について教えてください。
岩田さん:
現在の主な利用者様は、1~2人の少人数世帯の方々で、全体の8割を占めています。単身者や共働き世帯の方ですね。今後は、もっと多くの方にご利用いただきたいので、様々なシーンでお召し上がりいただけるような商品ラインナップの拡充を行っていきます。
現在新しく取り組んでいることは、プレミアムメニュー、ボリュームメニュー、イベントメニューのご提供です。プレミアムメニューは、通常のメニューよりもリッチな食事を楽しみたい方向けに、価格を少し引き上げてご提供しているメニューです。選択肢の1つとして楽しんでいただきたいと思っています。
ボリュームメニューは、主に若い男性の方をターゲットにした内容量300g以上の商品です。ボリュームはありますが、もちろん糖質30g以下、塩分2.5g以下に抑えているため、安心して食べていただけます。
イベントメニューは、昨年初めてクリスマスやお正月向けの商品を発売しました。イベントシーズンは食事が不規則になりがちなので、その中でも罪悪感なくおいしい食事を楽しんでいただきたいと思っています。
以上のような、様々な利用シーンに合わせた商品を開発する一方で、さらに内製化を進めることでコストを抑え、お客様に還元していきたいと思っています。
その中でも特に注目しているのが配送で、現在は、大手配送業者に委託している状況です。。今後は配送も社内で行うなどの工夫ができないか検討したいと思っています。
そして、より多くの方にナッシュの食事でサステナブルに健康維持を目指していただきたいです。
–貴重なお話ありがとうございました!
ナッシュ株式会社:https://nosh.jp