106万の壁とは?社会保険料や扶養への影響をわかりやすく解説

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106万の壁とは、パートやアルバイトで働く人が社会保険に加入するかどうかの基準となる年収ラインを指します。

配偶者の扶養内で働いている場合、この金額を超えることで保険料の自己負担が発生し、手取りでもらえる収入が少なくなってしまう可能性があります。

損をしない働き方を選ぶためには、制度の仕組みを正しく理解して判断することが大切です。

106万の壁とは?概要や対象になる条件についてわかりやすく解説

「106万の壁」とは、アルバイトなどで働いている人が年収でこの金額を超えると、自分で社会保険に加入しなければならなくなる基準のことです。

配偶者の扶養の範囲内で働いていたいと思っている方にとっては、手取りが減るかどうかを左右する大切なラインです。

ここでは、制度のしくみと加入条件を整理し、損をしない働き方のヒントをお届けします。

106万の壁の概要

106万円の壁とは、アルバイトなどで働いている人が年収でこの額を上回った際に、勤務先の条件次第では自分で社会保険に入るラインのことです。

配偶者の扶養として働いていた人は、保険料が引かれることで、手取り収入が減ることがあります。

「働いた分だけ得になるとは限らない」ため、多くのパート主婦・主夫が働き方を決めるうえで意識する重要なラインとなっています。

106万の壁の加入条件

106万円を上回ったとしても、すぐに社会保険に入らなければならないわけではありません。

実際には、「年収」だけでなく、働く条件や会社の規模、学生かどうかなど、さまざまな条件をすべて満たした場合にのみ加入しなければならなくなります。

以下の表は、2025年5月時点での最新の加入条件です。

項目加入対象となる条件
週の労働時間20時間以上
月収(賃金月額)月8.8万円以上(年収換算で約106万円)
雇用期間継続して2か月を超える見込みがあること
勤務先の従業員数社会保険適用事業所で、従業員数が常時51人以上(2024年10月から適用)
学生かどうか学生ではない(定時制・通信制・夜間部を含む)

※「従業員数」は厚生年金の加入者ベースでカウントされます(出典:厚生労働省「社会保険適用拡大対象となる事業所・従業員について」)。

この5つの条件のうち、ひとつでも満たさなければ、106万円を超えても社会保険に入る必要はありません。

逆にいえば、「年収だけが基準」と思い込むのは危険で、自分の働き方や職場の状況もチェックすることが大切です。

今後さらに制度の見直しが進む可能性があるため、働き始める前や収入が増えそうなタイミングで、最新情報を確認する習慣を持つと安心です。

106万の壁に交通費や残業代・賞与は含まれない

106万円の壁は、年収が106万円を超えると社会保険に加入する必要があるラインですが、実はすべての収入が対象になるわけではありません。

判断基準になるのは「毎月決まって支払われる基本給や手当」であり、交通費や残業代、賞与(ボーナス)などの一時的な収入は含まれません。

たとえば、月収が8.5万円で交通費が1万円あっても、社会保険の対象となるのは8.5万円の部分だけです。

知らずに「106万円を超えそう」と心配して働く時間を減らすと、実は加入対象外だった…ということもあります。

大切なのは、対象となる収入を正しく知ることです。

損をしない働き方のためにも、まずは収入の内訳をしっかり把握しましょう。

106万の壁と扶養の関係とは?外れるとどうなるのか

この金額の壁を上回ると、配偶者の扶養として認められなくなることがあります。

これは家計や手取りに大きな影響を与えるため、特にパートなどで働く人にとって重要な分かれ目です。

扶養に関係する他の「103万円」「130万円」との違いや、外れた場合に何がどう変わるのかを具体的に整理します。

ここを読めば、自分にとってベストな働き方の選び方が見えてきます。

103万の壁や130万の壁との違い

年収の壁はすべて、扶養の扱い、税などが一年間の収入によって変わる基準です。

この基準が、生活を送るうえで大きく影響してきます。

はじめに「103万」は所得税の有無に影響するラインで、一年間の収入が103万円より低ければ配偶者控除が使えます。

「130万」は、社会保険と健康保険の扶養に影響するものです。

この金額より多くの額を稼いでしまうと、扶養として扱われず、社会保険料が必要になります。

そして「106万」は、この130万よりも先に社会保険の加入が必要になる人が増えたことで注目されるようになりました。

主に51人より多くの人が働いている企業で、条件が揃って収入が多くなった際に加入が必要になります。

ここを理解することで、自分の働き方をどう設計するかが見えてきます。

【年収ごとの扶養の扱い】

年収扶養の扱い
~103万円社会保険・所得税ともに扶養内。配偶者控除も可
103万~106万円所得税はかかるものの、社会保険は扶養内(条件次第)
106万~129万円条件が揃った際に社会保険に入る。配偶者控除は不可
130万円~一律で扶養から外れる。保険料を自分で用意する

扶養から外れた場合何が変化するのか

扶養から外れると、働く本人の社会保険料や税金に関して、大きな変化が生じます。

特に注意したいのが、健康保険と年金の負担、そして所得控除の扱いです。

まず、健康保険と年金について。扶養内であれば、配偶者の社会保険に加入している扱いとなり、本人は保険料を払わずに済みます。

しかし扶養から外れると、自分自身で勤務先の社会保険に加入し、毎月保険料を負担することになります。

これにより、月数万円単位で手取りが減ることも珍しくありません。

次に控除の問題です。

年収が103万円を超えると、配偶者控除が受けられなくなり、配偶者側(多くは夫)の所得税が高くなります。

さらに、自分自身にも住民税や所得税が課税されることになり、これもまた手取り減少の原因となります。

こうした変化は、働く人本人だけでなく、世帯全体の家計に影響を与えるため、事前にしっかりとシミュレーションしておくことが大切です。

「少しだけ働きすぎたつもりが、結果的に世帯の手取りが減ってしまった」という声も少なくありません。

自分にとってベストな働き方を見つけるためにも、扶養を外れることで何が変わるのかを正しく理解しておきましょう。

106万の壁を越えるメリットとは?長期で見た時の利点

106万円の壁は「手取りが減るから超えたくない」と思われがちですが、実は将来を見据えると得になることもあります。

社会保険に加入することで年金や医療保障が手厚くなり、老後や万が一への備えが強化されます。

ここでは短期的な損得だけでなく、長期的な視点で見ることで得られる安心やメリットを詳しく解説します。

将来の年金が増える

106万円の壁を超えて社会保険に加入すると、厚生年金に入れるため、将来受け取れる年金が増えるという大きなメリットがあります。

国民年金のみ納めている人と比べ、厚生年金を積み立てしている人のほうが、最終的にもらえる金額が多くなります。

たとえば、年収106万円のパートでも厚生年金に加入すれば、長く働くほど将来の年金額に差がつきます。

短期的には保険料の支払いで手取りが減ったと感じるかもしれませんが、老後の生活費や安心感を考えると、将来的には「得だった」と思えるケースが多いのです。

老後の年金が不安な今の時代だからこそ、少しずつでも厚生年金を積み上げておくことが、自分の将来を守ることにつながります。

健康保険が手厚くなる

106万円の壁を超えて社会保険に加入すると、健康保険の保障内容が今までよりも手厚くなります。

特に大きいのが「傷病手当金」や「出産手当金」がもらえるようになる点です。

これらは、国民健康保険や配偶者の扶養内では基本的に受け取れない制度です。

たとえば、病気やケガで仕事を休んだとき、傷病手当金があれば収入がゼロにならずに済みます。

また、出産手当金があれば、産休中も一定の収入が確保されるため、安心して出産を迎えることができます。

こうした制度は、「いざというときの支え」になる大切な保障です。

社会保険の保険料を払うのは負担に感じるかもしれませんが、保障の充実度を考えれば、決して損とは言い切れません。

働き方を選ぶうえで、このメリットをしっかり知っておくことが大切です。

106万の壁を越えるデメリットとは?損しないために知っておくべき注意点

106万円の壁を越えると、社会保険の加入義務が生じることで、自分の保険料の負担ができ、手取りが少なくなるリスクがあります。

さらに、扶養から外れる影響や勤務時間の増加など、想定外の負担が生じることもあります。

事前にデメリットをしっかり理解することで、「思ったより損をした」と後悔するリスクを防げます。

ここでは、見落としやすい注意点をわかりやすく解説します。

社会保険料の自己負担が発生する

106万円の壁を越えて社会保険に加入すると、最大のデメリットは「保険料の自己負担が発生すること」です。

これまで配偶者の扶養内にいれば、健康保険や年金の保険料は一切かかりませんでしたが、社会保険の加入対象になると、給与から自動的に保険料が差し引かれます。

実際に負担する金額は収入次第で変わりますが、健康保険と厚生年金を合わせて月に1〜2万円程度かかることもあります(参考:協会けんぽ「令和7年度保険料額表」)。

その結果、働いた時間や収入が増えても、手取り額が思ったより少ないと感じる方も多いのです。

とはいえ、将来的な年金の増額や保険給付の充実という側面もあるため、「長期的に得か損か」を見極めることが大切です。

目先の手取りだけで判断せず、全体のバランスで考える視点を持ちましょう。

扶養から外れてしまう

106万円を上回り、社会保険に入ることになると、配偶者の扶養でいることはできません。

これにより、本人だけでなく配偶者側にも影響が出る可能性があるのがポイントです。

たとえば、扶養内であれば夫(または妻)の税金を安くする「配偶者控除」や「配偶者特別控除」が使えますが、年収が増えることでこれらの控除が使えなくなり、配偶者にかかる税が多くなる場合もあります。

また、健康保険や年金も配偶者の被扶養者ではなくなり、自分で加入・負担する必要があります。

つまり、扶養から外れるというのは「税金」「保険料」「制度のメリット」の3つが一気に変わる場合があるということです。

思わぬ家計への影響を避けるためにも、自分の年収と家族全体の収支を一緒に考えることが大切です。

勤務条件に縛りが出てしまう

106万円の壁を超えると、社会保険に加入するだけでなく、勤務条件にも制約が出てくることがあります。

というのも、社会保険の対象になるには「週20時間以上」「2か月超の雇用見込み」などの条件を継続的に満たす必要があるからです。

そのため、会社側から「保険加入の対象にするからシフトをもっと入れてほしい」と言われたり、「短期やスポット勤務では雇えない」と判断されたりすることがあります。

結果として、自分の希望よりも長時間働くことを求められたり、働く場所の選択肢が狭まったりすることがあるのです。

家庭や育児と両立しながら働いている方にとっては、これは大きな負担となり得ます。

制度のメリットだけでなく、「自分のライフスタイルに合った働き方ができるか」という視点でも判断することが、後悔しない選択につながります。

106万の壁を超えた時の保険料負担の計算方法

106万円の壁を超えると、自分で社会保険料を支払う必要があります。

手取り額に大きく影響するため、加入後に「こんなに引かれるとは思わなかった」と後悔する人も少なくありません。

ここでは、厚生年金と健康保険の保険料がどのように計算されるのかをわかりやすく整理します。

厚生年金保険料の計算方法

106万円の壁を超えて厚生年金に加入すると、自分で保険料を支払う必要があります。

厚生年金保険料は、基本的に「月給 × 保険料率」で計算され、会社と本人が半分ずつ負担します。

2025年時点の保険料率は18.3%(労使合計)で、そのうち9.15%が自己負担です(参考:日本年金機構「厚生年金保険料額表」)。

たとえば月収9万円の際、「90,000円 × 9.15% = 約8,235円」が毎月の自己負担額となります。

これが給料から差し引かれる形になります。

手取りは減りますが、将来もらえる年金額は確実に増えます。

国民年金だけの人よりも厚生年金に加入していた人のほうが、老後に受け取れる額が高くなるのは大きな安心材料です。

長期的な視点で考えれば、決して損な制度ではありません。

健康保険料の計算方法

社会保険に加入すると、健康保険料も自分で負担する必要があります。

健康保険料も「月収 × 保険料率」で計算され、会社と本人が半分ずつ負担します。

保険料率は地域や保険者により異なりますが、協会けんぽ(全国健康保険協会)では、2025年時点で概ね9~10%台です(参考:協会けんぽ「令和7年度保険料額表」)。

たとえば、東京都で月収9万円の場合、保険料率が9.87%なら「90,000円 × 9.87% ÷ 2 ≒ 4,441円」が自己負担額になります。

この金額は、傷病手当金や出産手当金などの給付を受けるための「保険」としての役割を持っています。

つまり、ただの出費ではなく、いざというときに助けてくれる保障への備えとも言えます。

働き方を決めるときには、こうした制度の中身まで理解しておくことが大切です。

106万の壁は廃止される?政府の見直しについて解説

2025年5月16日、政府は「年金制度改正法案」を閣議決定し、国会に提出しました。

この法案には、いわゆる「106万円の壁」の撤廃が盛り込まれています。

具体的には、厚生年金や健康保険への加入要件として設けられていた「賃金月額8.8万円以上(年収換算で約106万円以上)」の条件が廃止される予定です。

これにより、週20時間以上働くパートやアルバイトの方々は、賃金額に関係なく社会保険に加入することになります。 

この改正は、労働者が年収を気にせず働ける環境を整えることを目的としています。

また、企業規模による加入要件も段階的に廃止される方向で検討されています。

これにより、より多くの短時間労働者が社会保険の恩恵を受けられるようになると期待されています。

ただし、週の所定労働時間が20時間以上であることや、学生でないことなど、他の加入要件は引き続き適用される見込みです。

詳細な施行時期や具体的な手続きについては、今後の政令や通知で明らかにされる予定です。

この法改正により、パートやアルバイトで働く方々の働き方や社会保険への加入状況が大きく変わる可能性があります。

最新の情報を随時確認し、自身の働き方にどのような影響があるのかを把握しておくことが重要です。

106万の壁に関するよくある質問

106万円の壁は制度がややこしく、実際の働き方や条件によって扱いが変わることもあるため、よくある疑問が数多く寄せられています。

「ダブルワークはどう判断される?」「少し超えただけで即アウト?」など、曖昧になりがちなポイントをここで整理していきます。

ここを読めば、悩みがちなケースも自信をもって判断できるようになるはずです。

ダブルワークの人は勤務先の合計で判断するの?

ダブルワークをしている時、社会保険への加入義務があるかどうかは1つの勤務先ごとに判断されます。

ただし、健康保険法や厚生年金保険法のルール上、合計年収ではなく個々の勤務先で条件を満たすかどうかがポイントです。

たとえば、A社で週25時間働き、月収が9万円あれば、それだけで社会保険の対象になります。

一方、A社とB社を掛け持ちして合計年収が106万円を超えていても、どちらの職場でも週20時間未満・月収8.8万円未満であれば加入する必要はありません。

つまり、「106万円を超えた=必ず社会保険に入る」ではないということ。各勤務先での働き方を確認することが重要です。

うっかり106万円の壁を超えてしまったらどうなる?

うっかり106万円を超えてしまったからといって、すぐに罰則があるわけではありません。

ただし、社会保険の加入条件をすべて満たしていれば、勤務先が手続きを行い、自動的に保険加入となることがあります。

その結果、過去にさかのぼって保険料が徴収されることもあるため、「気づいたら数か月分の保険料が引かれていた」という場合もあります。

これが損した気分になる原因のひとつです。

とはいえ、加入が決まるのは年収だけではなく、週20時間以上の勤務や勤務先の規模などの複数条件を満たすかどうかにより判断されます。

年末や繁忙期にうっかり収入が増えそうな時は、事前に職場と相談しておくのが安心です。

パートで一番損する年収はいくらですか?

「一番損する年収」は、人により違いますが、年収106万円〜130万円未満のゾーンが特に注意が必要です。

この範囲では社会保険に加入する可能性がある一方、配偶者控除や手当も受けられなくなるため、実質的な手取りが減ってしまうことがあります。

たとえば、保険料を支払う一方で年金がまだそれほど積み上がらない働き方だと、「払った割にメリットが少ない」と感じやすくなります。

このような働き損ゾーンに入らないようにするには、106万円を下回って扶養内をキープするか、いっそ130万円以上しっかり稼ぐか、どちらかを選ぶことがポイントです。

生活スタイルや家庭の状況に合わせて、どちらが自分に合っているかを考え、年収のラインを調整しましょう。

106万の壁を超えたら連絡はくる?

基本的には、106万円の壁を超えたからといって、自動的に役所や保険機関から通知がくるわけではありません。

しかし、社会保険に加入する条件が揃っていれば、勤務先が加入の手続きをする義務がありますので、会社から「加入対象になります」と案内があることが多いです。

一方、配偶者の健康保険や税の扶養から外れる際、多くは本人が申請しないと自動的には外れません。

そのため、扶養内で働きたいと考えている人は、自分で年収の見込みや勤務条件をしっかり把握しておくことが大切です。

「知らないうちに扶養を外れていた」「いつの間にか保険料が引かれていた」とならないよう、早めに会社や配偶者の勤務先と確認しておきましょう。

まとめ

パートやアルバイトで働く人にとって、「106万円の壁」は社会保険の加入や扶養の扱いに直結する重要なラインです。

単に年収106万円を超えたら即加入、というわけではなく、勤務先の規模や週の労働時間など、いくつかの条件がそろったときに社会保険の対象となります。

加入すると、保険料の自己負担が発生して手取りが減る一方で、将来の年金が増えたり、健康保険の保障が手厚くなったりと、長期的にはメリットもあります。

逆に、制度を正しく理解せずに収入調整をしてしまうと、働き損になってしまうこともあります。

また、2025年には制度の見直しが予定されており、106万円の壁が廃止される方向で動いています。

今後は「年収」ではなく「労働時間」などが加入判断の軸となるため、働き方の見直しが必要になるかもしれません。

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この記事を書いた人

エレビスタ ライター

エレビスタは「もっと"もっとも"を作る」をミッションに掲げ、太陽光発電投資売買サービス「SOLSEL」の運営をはじめとする「エネルギー×Tech」事業や、アドテクノロジー・メディアなどを駆使したwebマーケティング事業を展開しています。

エレビスタは「もっと"もっとも"を作る」をミッションに掲げ、太陽光発電投資売買サービス「SOLSEL」の運営をはじめとする「エネルギー×Tech」事業や、アドテクノロジー・メディアなどを駆使したwebマーケティング事業を展開しています。

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