
人類は、遥か昔からさまざまな伝染病に苦しめられ、そして戦ってきた歴史があります。しかし今ほど科学が発展していなかったために、たくさんの人が命を落としてきました。
伝染病は非常に脅威として、恐れられてきた病気です。そして今もなお、世界中では伝染病に苦しみ命を落としている人が大勢います。
そんな恐ろしい伝染病について、みなさまはどれぐらいご存知でしょうか。
「伝染病」と言われると歴史的な出来事として捉えられる傾向があり、「聞いたことはある」といった方がほとんどかもしれません。
ですが、SDGsの目標3に掲げられている「すべての人に健康と福祉を」にも、伝染病を根絶すると明記されているように、伝染病は世界で取り組んで解決していかなければならない重要な問題なのです。
目次
伝染病とは?
伝染病とは、ある人が病気にかかり、その病原体が別の人(動物)に侵入して感染し、健康障害が発症、これが繰り返され拡散していく病気のことです。
病気の危険性が高いものから順に1類感染症から5類感染症まで分類されており、それに合わせて拡大を防止するための対策がとられています。
伝染病は治る?
糖尿病や心臓病などのように、薬を飲み続けてこれ以上悪化しないように保っていく病気とは違い、基本的にはその病原体が体内からいなくなれば治ります。
しかし、
- その治療が充分に受けられない環境
- 十分に栄養が取れずに免疫力が低下
- 金銭的な問題
などの課題を抱える国や地域では、治るまでに命を落としてしまっているのが現状です。
伝染病と感染症の違い
現代の私たちにとっては、「伝染病」よりも「感染症」の方が聞き馴染みがあるのではないでしょうか。
そして多くの人が同義とみなし使っていますが、厳密には異なります。
「伝染病」は人から人へ感染するのが前提の病気です。それに対して破傷風や虫垂炎などの人への感染させにくい病原体の病気は伝染病とは言わず「感染症」に分類されます。
つまり、感染症(感染病)の方が広義であり、その中でも広範囲で人から人へ感染していく感染症を「伝染病」というのです。
しかし意味は定義していても、近年では「伝染病」のワードはあまりみられなくなっており、感染症との境目が曖昧になりつつあるとの見方もあります。
伝染病・感染症の種類・分類一覧|症状も合わせて紹介
続いて、伝染病にはどのような種類のものがあるのか、ここからさらに知識を深めていきましょう。
伝染病の分類一覧は以下のとおりです。
分類 | 特徴 | 伝染症 |
---|---|---|
1類感染症 | 最も危険度が高く、原則として即時入院・隔離が必要 | 天然痘(根絶済みだが、1類感染症に指定) |
2類感染症 | 結核など、空気感染・飛沫感染で広がるもの | 結核 SARS(重症急性呼吸器症候群) |
3類感染症 | 飲食物などを介して集団感染の恐れがあるもの | コレラ |
4類感染症 | 動物や昆虫から感染するもの、届出義務あり | マラリア ペスト(ペストは危険性が高いため、1類と扱われることもある) 発疹チフス(リケッチア感染症) |
5類感染症 | 一般的な感染症で、発生動向の把握が必要なもの | エイズ(後天性免疫不全症候群) 季節性インフルエンザ(スペインかぜ、アジアかぜ、香港かぜの流れ) |
分類外または歴史的流行で現在分類対象外 | 現在の感染症法が整備される以前の発生であり、現行の感染症分類に当てはまらない感染症 | スペインかぜ(当時の分類は存在せず、現在の基準では新型インフルエンザ相当) アジアかぜ・香港かぜ(同上。いずれもインフルエンザA型の流行) |
【日本でも流行】天然痘(紀元前〜)
紀元前のエジプトのミイラに天然痘によってできた跡(痘痕)があったことから、古来から存在していたとされる伝染病。日本やアメリカ大陸で流行しました。ですが、1980年にWHOが地球上から天然痘は根絶したと宣言しており、それ以降発症した例はみられていません。世界で唯一根絶できた伝染病です。
【日本でも流行】結核(紀元前〜)
三大感染症のひとつ。結核菌により体内のさまざまな臓器に炎症が起こる伝染病。主に肺炎のような症状が見られ、紀元前のエジプトのミイラにも結核菌が見つかっています。1935年から日本でも流行しました。
マラリア(紀元前〜)
三大感染症のひとつ。ハマダラカという蚊に媒介され人へ感染していき、現在では主にアフリカのサハラ砂漠以南地域で発生しています。
ペスト(14世紀)
ヨーロッパで大流行し、当時の人口の3分の1がペストによって減少しました。人類史上、もっとも死者数を出した伝染病のひとつ。ノミが持つペスト菌によって動物や人へ感染していき、皮膚が黒くなっていく症状から「黒死病」と呼ばれていました。現代でも世界では発生が確認されています。
発疹チフス(1490年)
シラミに媒介されて感染していき、主に高熱や咳、吐き気、発疹などの症状が起こる伝染病。ヨーロッパの貴族が頭を刈り上げ、カツラをかぶっていたのも、シラミ対策だったと言われています。
コレラ(1817年)
コレラ菌により嘔吐、下痢などの症状が起こる感染力の強い伝染病。不衛生な環境で発生しやすく、過去7回にわたって世界的に流行しています。
【日本でも流行】スペインかぜ(1918年)
ペストに続き、人類史上もっとも死者数を出した伝染病のひとつとされています。日本ではスペインかぜをきっかけに、市民もマスクを着用するようになりました。
【日本でも流行】アジアかぜ(1957年)
香港、シンガポール、台湾、マニラなどのアジア諸国から流行したインフルエンザ。アジアかぜを受けて、日本のインフルエンザワクチンが確立されました。
【日本でも流行】香港かぜ(1968年)
香港から流行し、短期間で爆発的に流行したインフルエンザ。カモからアヒル、アヒルからブタ、そしてブタから人へ感染したと言われています。
【日本でも流行】エイズ(後天性免疫不全症候群)(1981年)
三大感染症のひとつ。HIV(ヒト免疫不全ウイルス)により免疫力が低下し引き起こされる病気を言います。唾液の飛沫などでは感染しないことや、粘膜、傷を通して感染することから、感染経路は性的感染、血液感染、母子感染となります。
SARS(重症急性呼吸器症候群)(2002年)
中国の広東仏山市で発生し、世界中に拡大した感染症。症状が発症していない保菌者から感染した例は確認されていません。
【日本でも流行】新型インフルエンザ(2009年)
発生の前年まで一度も流行したことのない新しいインフルエンザウイルスによるインフルエンザ。季節性のインフルエンザとはほとんど同様の症状が発症します。
【日本でも流行】新型コロナウイルス(2020年)
2019年に中国武漢市で発見されたことを発端に、全世界において感染が広がりました。密閉・密集・密接(三密)の空間が主な感染経路とされています。
急ピッチで開発されたmRNAワクチンは新技術を用い、前例のない速さで世界に普及したことが感染予防に大きく貢献したことも記憶に新しいです。
伝染病の歴史は紀元前に遡り、これまで何度も人類を苦しめてきました。しかし、これだけの歴史があっても、十分な対策や根絶が難しかったということも事実です。
では、伝染病はどのようにして広まっていくのでしょうか。
今日本で流行している感染症・伝染病

ここでは、今日本で流行している感染症・伝染病について紹介します。
胃腸炎(ノロウイルス)
2025年初頭より、日本各地でノロウイルスによる胃腸炎が流行しています。特に、冬季に多く見られますが、今年は例年を上回る感染者数が報告されており、東京、大阪、福岡などの都市部で集団感染が確認されています。
感染経路は主に飛沫感染や接触感染で、汚染された食品からの感染も多く報告されています。予防には、石鹸を使った手洗いや食品の十分な加熱が効果的です。
インフルエンザ(A型・B型)
2024年末から2025年初頭にかけて、インフルエンザの感染者数が急増し、全国的に警報レベルに達しました。特に、A型(H1N1およびH3N2)の流行が顕著で、胃の不快感や吐き気などの消化器症状を伴うケースも報告されています。
現在は減少傾向にありますが、地域によっては注意が必要です。
マイコプラズマ肺炎
2024年夏以降、マイコプラズマ肺炎の患者数が増加し、過去最多レベルに達しています。特に、学童期から青年期の患者が多く、咳が長引くことが特徴です。
感染経路は飛沫感染や接触感染であり、予防には手洗いやマスクの着用が有効です。
伝染病・感染症の感染経路は?
ここでは伝染病の感染経路について確認していきましょう。
伝染病の主な感染経路は、
- 皮膚同士や個体を通しての接触
- 微生物の経口摂取
- 微生物を含んだ体液の飛沫の付着
- 空気中に浮遊した微生物を吸い込む
- 媒介生物により体内に取り込まれる
などが挙げられます。それぞれ確認していきましょう。
皮膚同士や個体を通しての接触
握手やハグなど、自分と相手の皮膚同士が直接触れあったときに、病原体が付着して感染する経路。直接感染や接触感染と言われます。
また、皮膚同士が直接触れあわなくても、例えばタオルや食器の共有など、感染者が触れた物を別の誰かが触れることで、表面についた病原体がその人に付着してしまう場合もあります。
その他、他人の血液に触れて感染する場合もあり「他人の血液には絶対触れてはいけない」と言われているのは、この接触感染を防ぐためというわけです。
微生物の経口摂取
病原体を体内に宿している動物の肉を食べたり、糞便で汚染された水で処理された食べ物を口にすることで感染する経路。
これは動物から病原体をもらってしまう場合がほとんどですが、人間もトイレで排便をしたあとに手を充分に洗っていないまま何かに触れたり、食事をすることで直接病原体を摂取してしまいます。
これは衛生環境が整っていても、起こりうる感染経路です。
微生物を含んだ体液の飛沫の付着
感染者の咳やくしゃみなどの病原体が含まれる体液(ツバ)の飛沫によって、他人に付着し感染する経路。いわゆる飛沫感染と呼ばれるものです。
病原体を含んだ体液が付着した手で、顔を触ったり、目・鼻・口など粘膜に触れると感染しやすくなります。
風邪やインフルエンザなどの主な感染経路も、この飛沫感染とされています。
空気中に浮遊した微生物を吸い込む
空気中の病原体を吸い込んで感染する経路。空気感染と呼ばれます。
前述した「飛沫感染」の感染経路とされる病原体を含んだ体液は、徐々に水分が蒸発し、小さな軽い微粒子となって空中を浮遊します。
空気感染をする病原体は、微粒子になっても感染能力を保ったままです。その空気を吸い込むことで感染してしまいます。
媒介生物により体内に取り込まれる
媒介生物が人や動物に病原体を移し感染させる感染経路で、ベクター感染とも呼ばれます。
媒介生物の多くは蚊などの吸血を行う虫で、感染者や動物から病原体を取り込み、また別の人や動物に吸血する際に注入して感染させます。
また、ハエが糞便に触れた足で人や動物に触れたり、食べ物に触れたりすることで、それを私たちが体内に取り込んでしまう場合もこの感染経路に該当します。
以上5つが伝染病の主な感染経路です。
途上国で伝染病・感染症が多い4つの原因
冒頭でもお伝えしたように、日本のような先進国に住んでいる私たちが「伝染病」に馴染みがないのは、その多くが途上国で発生している、というのも一つの理由です。
では、なぜ伝染病は途上国で多く発生してしまうのか、ここで具体的な原因と途上国の環境について解説していきましょう。
清潔な水が確保できない
1つ目に清潔な水が確保できないことが挙げられます。
日本ユニセフ協会によると、世界には安全な水を確保できない人が、およそ6億6,300万人いると言われています。(2017年時点のデータ参照)(※1)
また、水が出ている場所も数少ない地点に限られているため、数時間かけて水を汲みに行かなくてはなりません。
大変な思いをして汲みに行った水さえも衛生的に安全とは言えず、糞便や菌が混じっていることも。この水を飲むしかない途上国の人は、そこから感染症にかかってしまうのです。
さらには一度に運べる水の量も、生活をする上では十分とは言えません。
そのために、
- 身体を洗えない
- 使っている生活用品の汚れも十分に落とせない
なども、感染しやすい原因と言えます。
医療整備が不十分
2つ目が医療整備が不十分であることが挙げられます。
これまでも世界が協力して貧困する地域に医療を届けようと活動・支援してきたことで、途上国の医療環境も徐々に整えられてきました。
しかし、ワクチンや治療法が普及しても、まだまだ病院や医療従事者が不足していたりするために、安定した治療が行き渡っていない地域もたくさんあります。
例えば、外務省の「世界の医療事情」によるとマラウイ共和国では、人口10万人に対し、医師の数はたったの約3.6人。(日本の場合は人口10万人に対して約260人)(※2)
これでは、ワクチンがいくらあってもそれを届けることが容易ではないと言えます。
経済的な貧しさ
3つ目が経済的に貧しいことが挙げられます。
途上国では、例え医療機関が正常に機能していても経済的に医療費を払うのが難しく、治療が受けられない場合もあります。途上国に住む人が満足に収入を得られない理由は、
- 紛争により家や職を失う
- 満足に収入を得られる職に就けない
などが挙げられます。
職に就けない原因は、教育を受けられていないため。文字の読み書きや計算ができないと条件の良い職に就くことは難しいでしょう。
その結果、子どもが生まれても同じように教育を受けさせられず、親と同じ道を辿るという負の連鎖が立ちきれません。
さらに、栄養のある食事も取れず免疫力も下がってしまうといった貧困の悪循環も、伝染病とは切っても切り離せない課題なのです。
媒介生物を避ける設備が整っていない
4つ目が媒介生物を避ける設備の不足が挙げられます。
亜熱帯・亜熱帯地域を中心に今なお流行している「マラリア」は、ハマダラカという蚊が媒介になる伝染病。
これは世界の三大感染症のうちの一つですが、予防ワクチンは現在開発されていません。そのために、ハマダラカと接触しないためには蚊帳などの設備が必要です。
しかし、その設備が十分に配給されていないために、ハマダラカに刺されてマラリアに感染する人が後を絶ちません。
つまり、伝染病を根絶、予防するためにはこれらの原因を解決していく必要があります。
伝染病の解決策
これまで発生してきた伝染病は、
- 根絶できたもの、あるいは人への感染がみられなくなったもの
- 特定の地域のみで流行している
ものなど多種多様。
そこで、SDGsで掲げたような三大感染症や顧みない熱帯病などの伝染病をなくすためには、どのような
- 取り組み
- 支援
- 考え方
が必要なのかをピックアップしました。
ワクチンの普及と医療環境の整備
繰り返しになりますが、多くの伝染病は、予防や正しい治療によって治すことのできる病気です。
私たち日本人が幼少期にワクチンを受けるように、途上国でも同様に受けられるようになれば、感染症で亡くなる子供の数は大幅に減るでしょう。
とはいえ、ワクチンを普及させるだけではこの問題は解決しません。
- ワクチンの保管
- 適切な医療技術を持つ人材の確保
- 治療する施設の確保
など、医療環境を整えることも同時に行う必要があるでしょう。
さらには、より多くの人にワクチンの効果や予防方法を伝えることも欠かせない要素です。
媒介生物の侵入を防ぐ蚊帳の供給
蚊などの媒介生物によって感染してしまう伝染病は、媒介生物の侵入を防ぐことが大切です。
例えば「蚊帳」は、マラリアが発生している暖かい地域では、ハマダラカの侵入を防ぐなど、感染する機会を物理的に減らせます。
これまで支援団体などにより蚊帳の普及活動は行われてきましたが、まだまだ配置するスタッフや個数が足りていないのが現状です。
支援団体に寄付しよう
<蚊帳の配布ができる10ドルの内訳>
この現状を打破するためにも、蚊帳の普及活動を行なっている支援団体への寄付が有効です。
認定NPO法人マラリア・ノーモア・ジャパンでは、マラリアの撲滅活動のための寄付を募っています。わずか10ドル、日本円にすると1,000円の寄付で、3年〜5年分の蚊帳の配布が可能になるのです。
毎日800人の子供が亡くなるマラリア。撲滅活動にご協力ください。
地球温暖化を進行させない
<気温が高くなるとどのような影響があるのか>
地球温暖化による気温上昇も、伝染病の増加に関係しています。
二酸化炭素などの温室効果ガスの排出により進行する地球温暖化。数十年も前から問題視され、世界的に対策も行われてきましたが、今もなお地球の温度は上がり続けています。
地球温暖化が進むと地球の気候システムが変化し、酷暑、暖冬などの異常気象を引き起こします。
そういった現象は私たちの生活に大きく影響し、だんだんと生活様式を変えざるをえなくなるでしょう。現段階でも、すでにその変化は世界の各地で起きています。
そして伝染病にも大きな影響をもたらすことも考えられます。
なぜなら気温が上昇すると、病原体をもつ媒介生物が増殖し生息地位域が拡大していくため、伝染病の猛威がより広範囲に広がってしまうからです。(※3)
さらに、私たち人間も暑さにより半袖や肌を露出する服を着る機会が増えるなど、あらゆる観点から媒介生物と接触しやすい環境が作られ、リスクは高まるでしょう。
この温暖化を加速させないためには、原因となっている二酸化炭素の排出を減らすことが重要なポイントです。
そこで、私たちが身近なことから取り組める地球温暖化対策をまとめたので、できることから実践してみましょう。
- 長時間使わない家電製品は主電源から切る
- 車の利用を減らして、電車や徒歩で移動
- 家族で同じ部屋で過ごす時間を増やして電気の節約
- 1日1時間、テレビの利用時間を減らす
- 食器を洗うときやシャワーを使うときに流しっぱなしにしない
- 冷蔵庫を開閉する回数を減らす
- 省エネ製品を選ぶ(家電、車、太陽光発電など)
どの国に住んでいても他人事ではない地球温暖化の防止に取り組むことで、私たちの未来は変えられるはずです。
水環境の改善
感染源となる汚染された水や水不足を解消するためには、安全できれいな水を安定して届けなければなりません。
これまでの取り組みにより水環境が整ってきた国は増加してきましたが、下記グラフのように、安全とは言えない水を利用しながら暮らしている地域は現在でも存在します。
すべての人が安全な水を利用できるようになるには、
- 先進国からの支援によりさらに安全な水が給水できる設備を増やす
- その水が衛生的に問題なく下水処理される設備も設ける
など、安定した水環境を整えていかなくてはなりません。
【関連記事】SDGs6「安全な水とトイレを世界中に」の現状と私たちにできること、取り組み事例を解説
感染症・伝染病に関するよくある質問
ここでは、感染症・伝染病に関するよくある質問について、いくつか紹介します。
感染症と伝染病はどう違うの?
「感染症」は、ウイルスや細菌、寄生虫などの病原体が体内に侵入・増殖することで起こる病気の総称です。一方「伝染病」は、その中でも特に人から人へ広がる性質を持つ感染症を指します。
つまり、すべての伝染病は感染症に含まれますが、感染症の中には、破傷風やマラリアのように人から人へはうつらないものもあります。現在では両者の意味は混同されることが多いですが、公的文書や医療現場では区別して使われることもあります。
感染症・伝染病への対策は?
感染症や伝染病への対策は、「予防」「早期発見」「拡大防止」の3つが基本です。予防としては、手洗い・うがい・マスクの着用、ワクチン接種、十分な睡眠と栄養管理が有効です。
発熱や咳などの症状が出た場合は、早めに医療機関を受診し、自己判断での出勤・登校は避けましょう。また、感染拡大を防ぐためには、消毒の徹底や、周囲との距離を保つ行動も重要です。学校や職場での感染拡大を防ぐには、個人だけでなく集団としての意識も不可欠です。
感染症・伝染病の分類の覚え方は?
日本の感染症法では、感染症を危険度や感染力などに応じて「1類~5類」に分類しています。覚え方としては、数字が小さいほど危険度が高いと理解するとよいでしょう。
たとえば、1類はペストやエボラ出血熱、2類は結核やSARS、5類はインフルエンザや風疹などです。また、「新型インフルエンザ等感染症」や「指定感染症」など特例もあるので、分類の背景も一緒に覚えると理解が深まります。語呂合わせや一覧表の活用もおすすめです。
今、日本で流行している感染症は何?
2025年5月現在、日本で特に流行している感染症は以下の通りです。
- 胃腸炎(ノロウイルス)冬場を中心に流行し、全国的に集団感染が発生中
- インフルエンザ(A型・B型):警報レベルを記録した地域もあり、依然注意が必要
- マイコプラズマ肺炎:学童を中心に感染者が増加し、咳が長引くのが特徴
これらはすべて飛沫・接触感染によって広がるため、手洗い、マスク、早めの受診といった基本的な対策が重要です。
感染症にかかったときの出勤・登校の基準は?
感染症にかかった場合、出勤・登校は医師の指示に従うことが原則です。例えば、インフルエンザは学校保健安全法で「発症後5日かつ解熱後2日(幼児は3日)」は出席停止とされています。
ノロウイルスなどの胃腸炎は法的な強制力はないものの、症状が治まっても2〜3日はウイルスを排出する可能性があるため、慎重に判断すべきです。職場によっては企業の就業規則にも定めがありますので、確認しておくと安心です。
伝染病とSDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」の関係
まずは「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」の概要を簡単に確認します。
SDGsとは?
SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。
SDGsは環境や社会、経済に関する課題の解決を目指しており、大きく17の目標が掲げられています。さらに、それぞれの目標に対し、どう向き合うかが示された169のターゲットも設定。世界中の人々が協力して持続可能な世界を目指すための国際的な目標で、前身であるMDGsの内容を引き継ぎつつ採択されたものです。
MDGsでは、途上国を中心にした問題を先進国が支援する形で救っていこうといった内容のものでした。それに対し新たに表明されたSDGsは、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓い、世界の国々が心身共に健康に暮らせる社会を目指しているのが特徴です。
そして伝染病は、17個の目標のなかでも3「すべての人に健康と福祉を」と関わりを持ちます。
目標3「すべての人に健康と福祉を」に関係
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」は、年齢、国籍、性別、人種にかかわらず、すべての人が適切な医療を受けられ、健康に生活できることを目指した内容です。
目標3に掲げられたターゲットには、以下の2つの項目が伝染病に関係している内容として挙げられています。
3.3 2030年までに、エイズ、結核、マラリアや、これまで見放されてきた熱帯病などの伝染病をなくす。また、肝炎や、汚れた水が原因で起こる病気などへの対策をすすめる。
3.8 すべての人が、お金の心配をすることなく基礎的な保健サービスを受け、値段が安く、かつ質の高い薬を手に入れ、予防接種を受けられるようにする(ユニバーサル・ヘルス・カレッジ)。
このように、世界中のだれもが健康で幸せな生活を送れるようにするには、伝染病の根絶が不可欠です。
先進国が普通に受けられている治療や予防のためのワクチンが、世界中の誰一人として例外なく受けられるように、私たちはこのSDGsの目標3に取り組む必要があります。
まとめ
この記事では伝染病について詳しく見てきました。SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」との関わりについてご紹介しました。
歴史上の出来事だと思っていた伝染病・感染症も、コロナウイルスによってその脅威を身近に感じるようになりました。また、途上国では今なお伝染病に苦しむ人がたくさんいます。
小さな積み重ねが地球温暖化のような世界の課題を生み出したように、伝染病は小さな積み重ねでしか解決することはできないのかもしれません。
だからこそ、まずは危機意識を持ち知識を得るだけでも世界が違って見え、そこから自分たちにできることを探し取り組むことで、未来をよりよいものに変えていけるはずです。
私たちにも、何かできることはないか、今一度考えてみませんか?
参考文献(文中注釈箇所)
※1 日本ユニセフ協会「どんなに汚くてもこの水を飲むしかない」
※2 外務省「世界の医療事情 マラウイ」
※3 環境省「地球温暖化と感染症」
参考文献
※ 外務省「SDGsとは?」
※ 国立感染症研究所「マラリアとは」
※ 日本ユニセフ協会「水と衛生 最新報告書」
※ JCCCA「温暖化とは?地球温暖化の原因と予測」
※国立感染研究所 「コロナウイルスとは」
この記事を書いた人

スペースシップアース編集部 ライター
スペースシップアース編集部です!
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