FIT制度(固定価格買取制度)とは?仕組みや期間、問題点、今後について

近年、地球温暖化や異常気象など、世界中で環境問題が注目されるようになりました。

そして、環境問題への対策として、既存の発電方法から再生可能エネルギーを利用した発電方法への移行が推進されています。

具体的な推進策としてFIT制度(固定価格買取制度)が挙げられます。

しかし、言葉自体を聞いたことがあっても、実際に制度内容についてはわからない人も多いと思います。そこでこの記事では、FIT制度(固定価格買取制度)の概要から、仕組み、SDGsとの関係まで紹介していきます。

FIT制度(固定価格買取制度)とは

FIT制度(固定価格買取制度)とは、太陽光風力といった再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定の価格で一定期間買い取ることを国が保障する制度です。

FIT制度(固定価格買取制度)によって、再エネ発電を行う事業者は発電した電気を必ず売電することができるため、リスクを抑えながら発電事業を行えます。

ではなぜFIT制度(固定価格買取制度)が制定されたのか、また制度が再エネ発電普及率にどれだけの影響を与えたのかを見ていきましょう。

固定価格買取制度が制定された背景

FIT制度(固定価格買取制度)が制定された最も大きな理由は、再生可能エネルギーを利用した発電を日本でも普及させるためです。

これまでの主要な発電方法としては、石炭や石油を燃料にして行う火力発電や原子の核分裂反応を利用した原子力発電が挙げられます。日本では長らく火力発電が主力発電として利用されてきました。

しかし、こうした発電方法は便利である反面、環境への悪影響が懸念されています。

特に火力発電は発電を行う際に、大量の二酸化炭素が排出されてしまいます。この二酸化炭素は温室効果ガスの一種で、地球温暖化を加速させる原因であると問題視されています。

また火力発電には、石炭や石油といった化石燃料が欠かせず、日本では他国からの輸入に依存しています。さらに、輸出国側でも化石燃料を大量に採掘するため、周囲の自然環境が破壊されてしまう恐れもあります。

このように、従来の発電方法は環境への影響が大きいだけでなく、限りのある化石資源への依存が問題視されているのです。

そこで、欧州を中心に環境破壊や地球温暖化、化石資源への依存を脱するため、再生可能エネルギーを利用した発電方法への移行が求められています。

とはいえ、再エネ発電は発電コストが高く、既存の発電方法との電力市場争いに負けてしまいます。これでは普及させることは困難であるため、FIT制度(固定価格買取制度)によって、再エネ発電をサポートし、積極的に導入が進んでいくよう促しているのです。

固定価格買取制度導入後の再生可能エネルギーの普及率の変化

では続いて、FIT制度(固定価格買取制度)が制定される前(2011年)と、FIT制度(固定価格買取制度)が制定された後(2019年)でどれだけ再エネ発電が普及したのかを確認していきます。

資源エネルギー庁が公表した資料によると、全体の発電電力量における再エネ発電の割合は以下のように変化しています。

このように、太陽光発電を中心に発電電力量は上昇しており、再エネ発電全体では10.4%から18.1%にまで増加しました。

FIT制度(固定価格買取制度)の仕組み

では、FIT制度(固定価格買取制度)の仕組みはどのようなものなのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

再エネ発電事業者・電力需要者(国民)・電力会社・政府の関係

FIT制度(固定価格買取制度)を理解するために、まずは再エネ発電事業者・電力需要者(国民)・電力会社・政府の関係を整理していきましょう。

再エネ発電事業者は発電事業を行うため、再エネ発電設備を設置、運用します。

そこで発電した電力はFIT制度(固定価格買取制度)によって、電力会社が買取を約束してくれます。

発電された電気を利用する電力需要家(国民)は、FIT制度(固定価格買取制度)を維持するために毎月の電気代に再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)を上乗せして電力会社へ支払わなけばいけません。

電力会社は電力需要家から回収した再エネ賦課金を利用して、再エネ発電事業者から電気を買い取ります。

政府は、再生可能エネルギーの種類や設備容量ごとに、買取価格を設定しています。

電力会社が再エネ発電事業者から電力を買い取る際は、この買取価格を参照して取引を行っています。

国民が負担する再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)

再エネ発電事業者・電力需要者(国民)・電力会社・政府の関係を見ても分かる通り、固定価格買取制度(FIT制度)を維持するための財源の一部は国民からの再エネ賦課金によって賄われています。

つまり、私たち一人一人が再エネ賦課金として追加の電気代を支払うことで、FIT制度(固定価格買取制度)が維持され、再エネ発電は普及しているのです。(実際、資源エネルギー庁の資料でも、2021年度の買取費用総額は3.8兆円なのに対し、再エネ賦課金の総額は2.7兆円となっています。

そして、この再エネ賦課金による負担額が年々上昇していることが、現在問題視されています。

資源エネルギー庁によると、FIT制度(固定価格買取制度)が制定されたばかりの2012年時点では家庭用電気料金の内、再エネ賦課金による負担額は全体の1%にしか相当しませんでした。

しかし、再エネ発電が普及していくとともに、年々再エネ賦課金による負担額は上昇していき、2020年時点では全体の12%に相当します。

このように、FIT制度(固定価格買取制度)によって再エネ発電の普及が促進されたことは事実です。しかし、普及とともに問題が発生していることも認識しなければなりません。

今後再エネ発電を普及させていくのであれば、制度の見直しや新たな仕組みも必要になってくるでしょう。

太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの売電価格推移

では続いてFIT制度(固定価格買取制度)を再エネ発電事業者目線から見ていきましょう。

ここでは、再エネの種類や設備容量ごとに再生可能エネルギーの売電価格推移を紹介していきます。

太陽光発電

FIT制度(固定価格買取制度)では太陽光発電の設備規模によって産業用と住宅用の2種類に分類されており、それぞれで売電価格も異なります。

産業用は、企業が発電事業として行うものや自社で活用する電気を賄うためのものが挙げられます。例えば大量に太陽光パネルを設置するメガソーラーが産業用太陽光発電に該当します。

住宅用は一軒家やマンションの屋根または屋上に設置された太陽光パネルで行う太陽光発電です。

FIT制度(固定価格買取制度)を導入した2012年の1kWhあたりの売電価格は以下の通りです。

  • 2012年、住宅用:42円
  • 2012年、産業用:40円

しかし、太陽光発電が徐々に普及していくのに伴って、徐々に売電価格も減少していきました。2022年における1kWhあたりの売電価格は以下の通りです。

  • 2022年、住宅用:17円
  • 2022年、産業用:10円〜11円

(※売電価格は発電設備の規模によって細かく定められていますので、詳しくは公式のサイトをご確認ください。)

このように、現在は同じ量の電力を発電しても、2012年当時の半分の価格でしか売電することが出来ません。

※住宅用に限っては発電量自体が大きくないため、売電するよりも自分で利用したほうが電力を抑えられるとも言われています。

【関連記事】太陽光発電とSDGsとの関連性|特徴と企業の取り組み、メリット・デメリットを解説

風力発電

風力発電も太陽光発電同様、設備の種類や規模によって売電価格も異なります。

2012年時点では設備の規模で分類されており、2022年時点では風力発電の種類によって分類されています。

種類としては主に陸上風力発電、着床式洋上風力発電、浮体式洋上風力発電の3つに分けられます。

2012年の風力発電における1kWhあたりの売電価格は以下の通りです。

  • 2012年、20kw以上:22円
  • 2012年、20kw未満:55円

続いて2021年での風力発電における1kWhあたりの売電価格は以下の通りです。

  • 2022年、陸上風力発電:16円
  • 2022年、着床式洋上風力発電:29円
  • 2022年、浮体式洋上風力発電:36円

(※売電価格はそれぞれ細かく定められていますので、詳しくは公式のサイトをご確認ください。)

2012年と2022年では売電価格の分類区分が異なるため、明確な比較はできません。とはいえ、やはり太陽光発電同様1kWhあたりの売電価格は減少しています。

【関連記事】風力発電の特徴・仕組みとは?メリット・デメリット、日本で普及しない理由

水力発電

では最後に水力発電における売電価格の推移についても見ていきましょう。

水力発電も発電設備の規模によって、売電価格の分類がなされています。

2012年の水力発電における1kWhあたりの売電価格は以下の通りです。

  • 2012年、1,000kW以上・30,000kW未満:24円
  • 2012年、200kW以上・1,000kW未満:29円
  • 2012年、200kW未満:34円

続いて、2021年の水力発電における1kWhあたりの売電価格は以下の通りです。

  • 2022年、5,000kW以上・30,000kW未満:20円
  • 2022年、1,000kW以上・5,000kW未満:27円
  • 2022年、200kW以上・1,000kW未満:29円
  • 2022年、200kW未満:34円

こちらも2012年と2022年では分類区分が異なるため、明確な区分は難しいでしょう。しかし、他の再生可能エネルギーに比べても1kWhあたりの売電価格はあまり変化していません。

これは水力発電があまり普及していないことから、今後さらなる導入が望まれていると考えられます。

【関連記事】水力発電とは?仕組み・導入メリット・デメリット、日本の発電量と課題、SDGsとの関係

売電価格が低下している理由と固定価格買取制度が抱える問題点

ここからは売電価格が低下している理由と、固定価格買取制度が抱える問題点について紹介していきます。

売電価格が減少する理由

まずは、売電価格が低下している理由について解説していきます。

FIT制度(固定価格買取制度)の売電価格が減少してしまうのは、再エネ発電普及に伴い、「再エネ発電の設備費用」「運転維持費用」がともに減少していくからです。

これだけでは分からないと思うので、太陽光発電を例に考えてみましょう。

そもそも、太陽光発電は太陽光パネルを設置するだけで発電が行えるため、非常に普及しやすい発電方法です。

当然ながら普及していくにつれて、より多くの人が太陽光パネルを購入しようとします。

その結果、太陽光パネルの生産数が増加し、それに伴い太陽光パネル1枚当たりの値段も低下していきます。これにより、太陽光発電設備を設置する費用も抑えられるようになります。

また、より効率的に発電できる太陽光パネルの開発や耐久性にすぐれた製品の開発などによって、運転維持費用が下がることも、売電価格が低下する要因となります。

先述した通り、FIT制度(固定価格買取制度)の売電価格は政府が決定しています。

売電価格は「再エネ発電の設備費用」や「運転維持費」を参考にして定められているため、これらの費用の低下に伴い、売電価格も下がるようになっているのです。

※設備費用や運転維持費用を売電価格の基準にしている理由は、参入時期によって生じる発電事業者間での不公平感をなくすためです。

これを踏まえて、FIT制度(固定価格買取制度)の問題点について見ていきましょう。

FITの問題点1:依然として高い発電コスト

まず第一に挙げられるFIT制度(固定価格買取制度)の問題点として、「依然として高い発電コスト」が挙げられます。

そもそも、FIT制度(固定価格買取制度)では次のような効果が期待されていました。

  • FIT制度(固定価格買取制度)によって再エネ発電をサポート・普及を促進
  • 普及に伴って、設備費用・運転維持費用といった各種コストダウン
  • 既存の火力発電や原子力発電といった発電方法よりも、トータルの発電コストを安く抑える

つまり、FIT制度(固定価格買取制度)は再エネ発電が既存の火力発電や原子力発電との市場競争に勝てるようになるまで、サポートしていく制度だったと言えるでしょう。

しかし現状では、再エネ発電にかかるトータルコストは高いままです。

FIT制度(固定価格買取制度)なしでは、既存の発電方法と電力市場で競争していくのは難しいかもしれません。

実際、世界の再エネ発電にかかるコストを比較すると、日本のコストは依然として高く、低下スピードも緩やかになっています。

そして、発電コストが高いままということは、依然として再生可能エネルギーはFIT制度(固定価格買取制度)によるサポートが必要であると言えます。

この結果、しわ寄せが再エネ賦課金となって国民へと移っているのです。

FITの問題点2:国民負担の増加

依然として発電コストは高いままであるのに対して、再エネ発電設備自体は年々増加傾向にあります。そのため、FIT制度(固定価格買取制度)によって保障されている売電料の総額は、年々と高くなります。

こうした中でFIT制度(固定価格買取制度)を維持していくためには、年々増加する総売電料に見合うだけの資金を再エネ賦課金として、国民から回収する必要があるのです。

つまり、現状のFIT制度(固定価格買取制度)のままでは、再エネ発電を維持するためにも、国民の負担が大きくなり続けるということになります。

この問題については政府も認識しており、今後FIT制度(固定価格買取制度)自体の改定や、新たな制度の導入が求められています。

FIT制度とFIP制度の違い

その中で、新たに再エネ発電をサポートする制度としてFIP制度の導入が決定しています。

ここでは、FIP制度の概要をFIT制度(固定価格買取制度)との違いも踏まえて紹介していきます。

FIP制度とは

FIP(フィード・イン・プレミアム)制度とは、再エネ発電事業者が作った電気を卸電力取引市場や相対取引で販売した際、プレミアム(追加報酬)を上乗せして交付する制度で、2022年度から導入されます。

導入される背景には、「再エネ賦課金の上昇による国民の負担を軽減すること」と、「再エネを主力電源とすることを目指す」ことが挙げられます。

FIT制度(固定価格買取制度)では、再エネ発電事業者がいつどのタイミングで発電しても一定の価格で買い取ってもらえていました。これにより、先述したような国民への負担が増加したことに加えて、発電事業者は、需要と供給のバランスを考えずに発電しても損をせずに安定していたと言えます。

しかし、これではいつまで経っても競争が発生しないことから、電力市場の活性化を目指してFIP制度が導入されました。

まとめると、

  • FIT制度(固定価格買取制度)→再エネを普及させることを目的とした制度
  • FIP制度→競争を生み出し、電力市場の活性化を目的とした制度

と言えるでしょう。

【関連記事】FIP制度とは?FIT制度との違い、導入される理由、メリット、デメリットを解説

企業や個人がFIT制度を利用して太陽光発電を導入するメリット

ここまでFIT制度について詳しく見てきました。では、企業や個人がFIT制度を利用して再エネ発電を導入するメリットはあるのでしょうか。

太陽光発電投資によって再エネ普及率の上昇につながる

再生可能エネルギーの設置・運用に関しては様々な意見はあります。しかし今後、地球を持続可能なものにするためにも、再生可能エネルギーを普及させるためにはどのようにすれば良いのかを真剣に考えていく必要があります。

ここまで見てきたように、FIT制度は年々売電価格が下がっていることは事実です。とはいえ、中古の太陽光発電は利回りが高い傾向にあり、十分な利益を出せると言われています。

このメリットを活かして、企業や個人が太陽光発電投資に積極的に取り組む風潮ができれば、普及率上昇のきっかけにもなります。また、近年注目を集めるSDGsは、あらゆる課題に対して企業も個人も取り組むことが求められています。つまり、FIT制度を活用して太陽光発電を導入することは、SDGsの達成にも貢献できる取り組みに参加できると言えるでしょう。

固定価格買取制度とSDGsの関係性

では最後に、FIT制度(固定価格買取制度)とSDGsの関係について紹介していきます。

FIT制度(固定価格買取制度)は再エネ発電の普及を支援する制度ですが、これがSDGsの達成とどのように関係してくるのか理解していきましょう。

SDGsとは

まずSDGsとは、英語のSustainable Development Goalsの略語であり、日本語では持続可能な開発目標を意味します。2030年までに達成すべき目標を17のゴールとして定め、具体的に行うべき行動を169のターゲットとして定めています。

前身のMDGsは、開発途上国向けの目標でしたが、SDGsは先進国を含めたすべての国が取り組むべき目標として位置づけられています。

実際、2015年の国連サミットにて、全ての国連加盟国によってSDGsは採択されており、現在も多くの国々で目標達成に向けた取り組みが行われています。

SDGs目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」との関係

FIT制度(固定価格買取制度)と関連する目標が7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」です。この目標は、全ての人が安価で信頼できる持続可能なエネルギーへのアクセス確保を目指しています。

FIT制度(固定価格買取制度)によって再エネ発電が普及させることで目標達成に近づき、さらには設備の設置や運用、メンテナンスといった部分でのコスト削減が実現します。

また、普及に伴い、技術が向上すれば、開発途上国への再エネ発電の導入が加速することも期待されます。

SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」との関係

次に関連するのが目標13「気候変動に具体的な対策を」です。この目標は、気候変動及びその影響を軽減していくための対策実施を目指しています。

現代に生きる私たち人間にとって電気は欠かすことのできない必需品です。しかし、現在主流となっている火力発電は二酸化炭素を排出し、地球温暖化への影響が懸念されています。

FIT制度(固定価格買取制度)によって再エネ発電を支援していけば、将来的に電力需要の大部分を再エネ電力で賄えるようになるでしょう。

これが実現すれば、地球温暖化を抑制しながら、電力需要を満たすことができます。

まとめ

FIT制度(固定価格買取制度)は再生可能エネルギーによって発電された電気を取引する際、一定の価格で電力会社が買い取ることを政府が約束する制度です。

これにより、再エネ発電事業のリスクを抑え、日本全体で再エネ発電普及を目指しています。

しかし、依然として高い発電コストや国民負担の増加など様々な問題も発生しています。

今後も再エネ発電を普及していくならば、FIP制度のような新たな制度や、既存制度の見直しが必要となってくるでしょう。

<出典>
1.経済産業省 資源エネルギー庁 2030年に向けた今後の再エネ政策
2.経済産業省 資源エネルギー庁 固定価格買取り期間 買取価格・期間等(2022年度以降)
3.経済産業省 エネルギー庁 国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案

この記事の監修者
阪口 竜也 フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)