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【SDGs未来都市】沖縄県恩納村 | 豊かな自然環境を守り、持続可能な地域へ

沖縄県恩納村 冨着さん インタビュー

冨着 開

1993年沖縄県宜野湾市生まれ、大学卒業後、祖父の地元であり、昔から親しみのあった恩納村を盛り上げていきたいという思いから恩納村役場に入庁。親戚関係以外わからない状況から、今では地域の青年会長をし、地域に溶け込もうと日々奮闘中。最近は「もともと恩納村出身者だと思っていた」という声を頂き、とてもやりがいを感じています。2017年4月~2021年3月まで商工観光課で観光イベント、スポーツキャンプ等の職務を経て、2021年4月から企画課でSDGs業務に携わっている。

introduction

沖縄本島のほぼ中央部、西海岸側に位置する恩納村。白い砂浜とサンゴ礁が広がる青い海や亜熱帯性気候に育まれた植生など、豊かな自然環境に恵まれた地域です。恩納村は、これらの豊かな自然環境を活かし、観光リゾート地として成長してきました。人口は1万1,000人ほどですが、年間約300万人の観光客が宿泊します。

今回、SDGs未来都市に選定された恩納村に、その取り組み内容を伺いました。

豊かな自然環境を守る取り組み

–本日はよろしくお願いします。豊かな自然環境に恵まれた恩納村ですが、環境を保全する取り組みがいくつかあるそうですね。

冨着さん:

はい。村で力を入れて取り組んでいる「サンゴの村宣言」とサステナブルツーリズムについて紹介します。

1 サンゴの村宣言

恩納村の美しいサンゴ礁(写真提供・沖縄ダイビングサービス Lagoon(ラグーン))

冨着さん:

現在、恩納村だけではなく、沖縄県全体で抱えている問題としてサンゴの減少があります。その主な原因として、赤土の流出、オニヒトデの大量発生、高い海水温によるサンゴ白化現象などが挙げられます。そこで恩納村では、世界一サンゴにやさしい村を目指す「サンゴの村宣言」を、2018年に出しました。恩納村が観光業で発展してこれたのは、恵まれた自然環境があってこそなので、サンゴをキーワードに豊かな自然環境を次の世代に残したいと考えています。

–具体的には、どのような活動をされているのでしょうか?

冨着さん:

「サンゴのむらづくりに向けた行動計画」では、4つの理念を制定しました。

サンゴのむらづくりに向けた行動計画

  1. 優しさと誇り(普及啓発に関する事業)
  2. 人づくりと協働(人材育成に関わる事業)
  3. 交流と活力(産業振興に関わる事業)
  4. 共生と持続(環境保全、事業継続に関する事業)

この理念を掲げ、サンゴを中心とした自然環境にやさしい地域づくりに取り組み、持続可能な観光リゾートの形成を目指しています。具体的には、赤土の流出防止の対策やオニヒトデの駆除、サンゴの養殖・植えつけなどを関係団体と連携して取り組んでいます。村が積極的にサンゴ保護の活動をすることで、住民も自然環境の重要性を再認識してくれていると感じますね。

–サンゴは恩納村にとってシンボルのような存在なんですね!

2 サステナブルツーリズムの推進

–観光業が主力産業となっている恩納村では、サステナブルツーリズムの取り組みもされているんですよね?

冨着さん:

はい。恩納村では、観光客が真栄田岬だけに集まったり、他の地域に観光客が分散しなかったりする、いわゆるオーバーツーリズムによる課題がありました。

–その課題に対応するために、サステナブルツーリズムを始めたんですね。

3 日本初「Green Fins」の導入

冨着さん:

サンゴの減少も少なからず、オーバーツーリズムが原因になっていた部分もあり、恩納村では、日本ではじめて「Green Fins」を導入しました。これは、国連環境計画が行っている取り組みで、環境にやさしいダイビングやシュノーケリングのガイドラインです。ダイバーを中心に人々の意識を高め、サンゴ礁保護に取り組むことを通して、持続可能な観光産業を推進することが目的です。主に東南アジアで取り入れられていますが、他国は国主導で行っているのに対して、恩納村はいち自治体で取り組んでいます。

ダイビングの様子

–恩納村はダイビングの需要が高く、観光業の中で重要な位置づけとなっているんですよね。そのダイビングを持続可能なものにすることで、環境保護に大きなインパクトがあるんですね!

冨着さん:

はい。Green Finsでは、「サンゴの上に立たない」「魚に餌をあげない」など様々なルールがあります。このガイドラインを導入することで、ダイバーおよび観光客の自然環境への意識向上につながります。また、美しいサンゴを保護、再生することで、ダイビングやシュノーケリングの高付加価値化になり、恩納村の観光業全体のブランディングにもなるんです。

–環境を破壊せず、持続可能な産業として、人と自然がうまく共存していく事業なんですね。

冨着さん:

はい。恩納村では約50の事業者がダイビング協会に入っているのですが、Green Finsの取り組みはこの方たちの理解や協力がなければ進められません。この取り組みを通して、環境保全やSDGsへの関心が高まり、協力してくれる事業者さんが増えています。「Green Finsを導入したい」と、自ら申し出てくれる事業者さんも出てきて、うれしく思いますね。

–環境保全の意識が広がっていっているんですね!

冨着さん:

この流れを大事にして、今後はさらに持続可能な観光資源を増やしていきたいと考えています。

経済の取り組み「恩納村版ローカル認証」

冨着さん:

また、経済面の取り組みとして、恩納村版のローカル認証を導入する予定をしています。

–それは、どのようなものでしょうか?

冨着さん:

「恩納村版ローカル認証」とは、恩納村内の特産品やお土産など、一定の条件を満たした商品に村が太鼓判を押すことで高付加価値化し、売り出すものです。産品の高い品質を保証し、恩納村ブランドをつけて地域内外で販売することを目指しています。

ローカル認証のハチミツ

–具体的にどういった商品を販売される予定ですか?

冨着さん:

環境にやさしい栽培方法でできた農産物を考えています。また、環境にやさしいGreen Finsのダイビングのように、物品だけではなくサービス商品もローカル認証に加える予定です。ローカル認証による高付加価値化、ブランディングで販売力が高まれば、農業や漁業に従事する人の所得向上につながり、新規就業者の増加も期待できます。

–ローカル認証制度を活用することが、恩納村の経済活性化につながるんですね!

SDGs教育「中学校での実践的な授業」

–子どもへのSDGs教育にも取り組まれているんですよね?

冨着さん:

はい。村内唯一の中学校である「うんな中学校」で、半年間SDGsの授業に取り組みました。この授業では、机上でSDGsについて学ぶだけではなく、恩納村の特産品を使った商品開発に取り組んでもらいました。取り組む背景には、多くの観光客が訪れているにも関わらず、特産品が村内観光施設で取り扱われていない問題などがありました。

そこで、次世代の恩納村を担う中学生たちに地域の課題を肌で感じ解決していく成功体験を持ってもらおうと考え、商品開発から、PR、販売まで一貫した流れを中学生が主体となって行ったんです。

中学校での授業の様子

–どのような商品を作ったんですか?

冨着さん:

恩納村の特産品であるフルーツ「アテモヤ」を使ったお菓子や、パッションフルーツを使った酢などの商品を開発しました。これらは出荷基準を満たしていないB級品を使用しており、もともと廃棄されていた農産物を活用、商品化することで、無駄をなくしたんです。他にも、環境にやさしい日焼け止めも開発しましたね。

【SDGs未来都市】沖縄県恩納村 | 豊かな自然環境を守り、持続可能な地域へ|Spaceship Earth
アテモヤを使ったお菓子
パッションフルーツを使った酢

–実際に商品化して販売するなんて、すごく実践的な授業ですね!子ども達の学びは大きかったのではないでしょうか?

冨着さん:

はい。最初の頃は、よくわからなさそうな反応を示していた子ども達も、半年授業を続けていく中で、次第に盛り上がり、理解が深まっていく様子が見られました。中学生という早い段階で、地域の課題や特産品について考えられただけではなく、仕入れから販売までの成功体験を得られたのは、彼らにとって非常によい経験になったと思います。

また、この商品開発を通して、関わる仕入れ業者や加工業者、販売業者など多くの大人達もSDGsについて考える機会が増えるなど、よい影響が広がってると感じています。

–多くの世代に影響を与えられる、素晴らしい取り組みですね!

今後の展望

Green Finsに参加している事業者さん達

–今後の展望はいかがでしょうか?

冨着さん:

Green Finsやサステナブルツーリズムなどの取り組みによって、環境や経済面での良い効果は出てきていると感じています。とはいえ社会面ではまだまだ課題を残していると考えています。

恩納村は2035年をピークに、人口減少が予測されています。少子高齢化の原因として、スーパーマーケットやアパートが少ないこと、働く場所が限られていることなどがあり、就職や大学進学をきっかけに村外に出てしまうんです。

買い物難民をなくすため、高齢者向けの移動販売車などで対応している地域もありますが、今後はさらに住民が暮らしやすい地域を作ることに注力していきたいですね。村出身の人が、帰って来やすい環境を整えることが大事だと考えています。

–人口流出は多くの地方自治体が抱える課題ですね。

冨着さん:

はい。この問題を解決するためにも、恩納村の特色ある自然環境を保全し、持続可能な観光業をますます推進していきます。産業が活性化し、経済が豊かになれば、住民の所得も増える。このように環境・経済・社会の好循環をますます強化していくためにもSDGsへの取り組みは欠かせないですね。今後も、住民と一体となり、まちづくりを進めていきたいと思います。

–本日は、ありがとうございました。

インタビュー動画

関連リンク

>>恩納村公式サイト

>>恩納村 SDGs未来都市計画