タビオ株式会社 長宗さん インタビュー
長宗
◆会社概要タビオ株式会社は、1968年に創業し、日本国内外で靴下専門の小売・製造・販売を行う企業です。メイドインジャパンにこだわり、高品質な靴下の提供を通じて、多くの顧客に支持され続けています。タビオは、「靴下屋」「Tabio」「Tabio MEN」などのブランドを展開し、全国に230以上の店舗を構える一方、ヨーロッパやアジアにも進出し、世界で唯一の靴下専業企業として成長を続けています。特徴は素材選びや国内生産にこだわり、ダブルシリンダーの編み機やリンキングの生産手法を重視している点です。それ以外にもSDGsが注目される前から環境配慮に取り組み、POSシステムを活用した精密な在庫管理によって、廃棄削減や顧客への迅速な提供を実現しています。
introduction
近年、サステナビリティに対する意識が高まる中、アパレル業界でも廃棄物の削減や環境に配慮した取り組みが注目されています。
靴下専業企業のタビオ株式会社は、環境に配慮しながら日本製の高品質な商品を提供する会社です。国内生産にこだわりながらも、在庫管理や廃棄削減にも早くから対策を行い、持続可能なビジネスモデルを展開しています。
今回、タビオ株式会社が取り組むSDGs、品質へのこだわり、そして廃棄問題への対策について詳しくお話を伺いました。
世界で唯一の靴下専業企業。高品質にこだわる靴下づくり
–まずはタビオ様の企業について、事業内容やブランドを簡単に教えてください。
長宗さん:
タビオ株式会社は、1968年に創業され、1977年に法人として設立された会社です。私たちの主な事業は、国内で生産されるメイドインジャパンの靴下の企画から製造、卸売、そして小売りまでを一貫して行うことです。靴下に特化した会社としては世界一の店舗数を誇ります。
代表的なブランドとしては「靴下屋」と「Tabio」があり、それぞれ異なるコンセプトで消費者のニーズに応えています。これらのブランドを全国展開し、私たちは高品質で快適な靴下を提供し、多くの人々に支持され続けています。
特に靴下屋は、全国に展開している直営店とフランチャイズ店舗を持ち、長年にわたり多くのファンに愛されているブランドです。
–経営理念や創業の誓いについても簡単に教えてください。
長宗さん:
私たちの経営理念は、4つの柱で成り立っています。まずは「熱愛」。これは情熱を持って仕事に取り組むという意味です。次に「顧客中心主義」。お客様を最優先にし、お客様のために最良の靴下を提供することを指しています。そして、「不易流行」。これは、時代を超えて変わらない価値と、時代に合わせて変化していく柔軟性の両方を持つという意味です。最後に、「和」。これはすべての関係者と心を一つにし、チームワークを大切にして目標に向かって進んでいくという考え方です。
創業時に掲げた誓いとしては、「商品は作って喜び、売って喜び、買って喜ぶようにすべし」という言葉があります。商品が単なる物ではなく、製造者と販売者、そしてお客様のすべてに喜びをもたらすものであるという考えに基づいています。
創業の誓いは、毎回の朝礼でも唱和しているほど、私たちが創業以来大切にしてきたものであり、心のよりどころでもあります。今後も変わらずに守り続けていきたいと考えています。
–長宗さんがタビオに入社したきっかけは何ですか。
長宗さん:
私がタビオに入社したきっかけは、実は親戚の紹介でした。当時、私は学生で靴下に特別な興味は持っていませんでした。しかし、親戚である会長との出会いが転機となり、「明日から来い」と言われたことがきっかけで入社することになったのです。
最初は想像よりも規模の小ささに戸惑いもありましたが、すぐに会長の人間性や働き方に魅了され、今ではこの会社で多くのことを学び、日々やりがいを感じています。
こだわり抜いた高品質靴下タビオ。海外からも支持される理由とは?
–タビオの靴下の特徴といったら何でしょうか。
長宗さん:
タビオの靴下の最大の特徴は、何といっても「メイドインジャパン」で作られている高品質な商品であることです。日本の熟練した職人技術と編み機を活用することで、他では味わえない快適な履き心地を実現しています。特に、1足売りの商品はダブルシリンダーの編み機を使うことで、非常にきめ細かく肌触りの良い靴下になっています。ダブルシリンダーは一般的なシングルシリンダーと比較して多くの手間と製造時間がかかりますが、優れた風合いを持つ靴下を作ることができ、長く愛用できる靴下に欠かせない存在です。
さらに、履き心地だけでなく、デザインや機能性にもこだわりがあります。例えば、抗菌防臭加工や吸水速乾機能など、日常生活での快適さを追求した機能が備わっている点も、多くのお客様に支持されている理由です。タビオの靴下は、ただ履くだけでなく、履くことで日常生活がより快適になる製品を目指しています。
–メイドインジャパンにこだわる理由を教えてください。
長宗さん:
タビオは、創業当初から日本国内での生産にこだわりを持ってきました。日本の靴下製造の技術、特に使用している編み機や匠の技術力は世界でもトップクラスであると確信しています。私たちは、その技術をいかに継承して守っていくかということ、そしてお客様に高品質な靴下を届けることを使命と考えています。
現在、日本の靴下の約95%は輸入品が占めている状況ですが、私たちはあえて国内生産にこだわり続けることで、他にはない製品を提供しています。具体的には、耐久性や履き心地において、他の製品と明らかに違いを感じていただける品質です。これにより、メイドインジャパンの価値を次世代に引き継ぎながら、世界に誇れる靴下を作り続けていきます。
–輸入品の靴下とタビオの靴下の違いを教えてください。
長宗さん:
輸入品の靴下とタビオの靴下の違いは、その製造工程から異なります。輸入品は主に大量生産で作られ、コスト削減を優先した製品が多い傾向にあります。一方で、タビオの靴下は職人の技術によって一つ一つ丁寧に作り上げられています。そのため、履き心地や耐久性、見た目の美しさにおいて大きな差が生まれます。
例えば、つま先部分の縫製では、多くの輸入品が「ロッソ」という簡便な方法を使っていますが、タビオでは「リンキング」という一目一目を丁寧に縫い上げる手法を可能な限り採用しています。ロッソの場合は継ぎ目に凸凹ができてしまいますが、リンキングではそれがありません。これらが、足に違和感がなく、肌触りや耐久性に優れた靴下が作れる大きな理由といえるでしょう。タビオの靴下は、デザインの面でもこだわりがあり、機能性とファッション性を兼ね備えた商品を提供しています。
–お客様から特に評価していただいているのは品質でしょうか。
長宗さん:
お客様から特に評価されているのは、やはり履き心地の良さです。タビオの靴下は、耐久性や色落ちのしにくさにも優れており、長く愛用していただける商品です。また、アイテムの種類が豊富で、さまざまなニーズに応えられることも高く評価されています。
これまでタビオを利用してきたお客様の多くが、品質の高さと商品力に信頼を寄せてくれていると感じています。
過剰在庫削減を目指す。革新的在庫管理システムと廃棄削減の取り組み
–ここからは、サステナビリティに関して伺っていきます。アパレル業界が抱える課題について教えてください。
長宗さん:
アパレル業界全体では、毎年膨大な量の在庫が廃棄されています。これは半年単位での見込み生産となっていることが要因で、シーズンごとの販売量の予測が外れることで起こります。靴下業界でも、シーズンごとに製品が大量に生産されることが多く、売れ残りが発生すると廃棄されてしまうのです。これは地球環境にも大きな影響を及ぼし、無駄な資源の消費にもつながります。
このような課題に対し、タビオでは早くからPOSシステムを導入し、売れた商品のデータをリアルタイムで収集しています。このデータを基に、工場で必要な数だけを生産することで、過剰生産を防ぎ、廃棄を最小限に抑えています。また、在庫を細かく管理することで、売れ残りの商品ができるだけ発生しないような体制を構築しています。私たちの取り組みは、環境への配慮と同時に、企業としての持続可能な成長にもつながっています。
これらは、国内生産にこだわっているからこそ実現できたことです。国内の生産設備は、顧客の需要変動に応じた小ロット生産が可能であり、在庫を過剰に抱えるリスクを最小限に抑えています。また、シーズンを超えて販売できるベーシックなアイテムを中心に商品ラインナップを展開することで、トレンドに左右されない安定した売上を確保しています。こうした取り組みを通じて、不良在庫の発生を極力抑え、持続可能なビジネスモデルを実現しています。
今後のタビオの展望。海外展開の戦略やこれから挑戦していくこととは?
–今後注力したいブランドや新規事業はありますか。
長宗さん:
現在注力しているブランドは、「TABIO SPORTS」です。近年は品質の高さが口コミで広がり、多くのトップアスリートに愛用されています。例えば、Jリーガーの約400名がTABIO SPORTSの靴下を使用しており、サッカー以外にも野球やゴルフ、バスケットボール、ランニングといったさまざまな競技で広がりを見せています。
それ以外には、メンズの専門店の「Tabio MEN」というブランドもあります。現在レディース商品が主力で80%を占めているのですが、今後はメンズに力を入れていきたいと考えているところです。
長宗さん:
また、最高品質の糸である海島綿(シーアイランドコットン)について国内で栽培を開始し、今後は「TABIO’S COTTON」として展開予定です。特に東日本大震災の塩害を受けた農地での復興支援としても活用されています。現在は地元奈良での休耕田でシルバー人材センターと協力しながら栽培を進め、一部商品に使用されています。国内での栽培はコスト面での課題もありますが、世界最高級の綿花を使用した靴下作りを目指し、今後も事業を展開していく予定です。
–事業を進めるうえでの課題と解決策を教えてください。
長宗さん:
現在の大きな課題の一つは、原材料の高騰と物価上昇です。これにより、一部商品では値上げを余儀なくされています。また、メイドインジャパンにこだわっているため、国内の製造設備や職人の高齢化、後継者不足という課題にも直面しています。これらの問題に対しては、サプライチェーン全体を強固にし、生産効率を上げることが必要だと考えています。
また、もう一つの課題は、オンライン販売に力を入れていくことです。ネットでの売上を拡大し、職人たちの技術を守り続けるためにも、利益率を上げていくことが重要だと認識しています。
–海外展開も加速されるようですが、どのように進めていますか。
長宗さん:
海外展開については、現在、イギリスやフランス、中国、韓国に店舗を展開しています。特に中国では、ここ数年で店舗数が33店舗まで増加し、アジア市場における成長が著しい。アジアでは、日本に訪れる観光客が多く、タビオの靴下を日本で知ってから現地で購入するというようなリピーターも増えています。今後もアジア市場を中心に展開を加速させ、各国のニーズに合わせた品揃えで市場拡大を進めていく計画です。
–靴下の生産と社会貢献の取り組みに関して、興味深いお話をいただきありがとうございました。
靴下のTabio公式通販:https://tabio.com/jp/
タビオ株式会社公式サイト:https://tabio.com/jp/corporate/company/