新電力会社の倒産相次ぐ訳とは?安心できる新電力会社について解説!

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新電力の台頭がめざましい反面、新電力会社の倒産・事業撤退などのニュースがが2021年以降急増しています。

なぜ新電力会社が倒産や事業撤退をする状況になったのでしょうか?

新電力会社の倒産が相次ぐ理由について調査した結果を解説します。

契約している新電力会社が倒産したときの対応、安全な新電力会社の選び方などもあわせてご覧ください。

新電力会社の倒産が相次ぐ理由とは?

資源エネルギー庁によると、2025年6月現在、2015年以降に設立された小売電気事業者は764事業者になっています。

しかし、2024年10月末に資源エネルギー庁が公表した情報では、2024年9月末時点で登録している事業者件数と事業停止・事業承継・事業廃止・解散・取消をした事業者件数は以下のような状態になっています。

登録した事業者734件
事業停止した事業者57件
事業承継した事業者171件
事業廃止・解散・取消をした事業者123件

(引用:資源エネルギー庁「電力小売全面自由化の進捗状況について」

こういった状況になった主な理由は以下の通りです。これらについて解説していきます。

  • 市場価格の急騰
  • 利益率の低さと資金力不足
  • 規制の強化

市場価格の急騰

電力自由化以降順調に増え続けていた新電力会社が2021年以降次々と倒産や事業撤退といった状況になっているのは、2020年から2021年冬までの悪天候の影響により、電力市場の価格が急騰したことが大きな要因です。

この寒波によって電力の需要が高まったのにも関わらず天然ガスなどの燃料が不足したため、電力市場価格が一気に上がったのです。

その結果、電力事業を開始して間もない新電力会社は電気事業の休止や撤退、最悪の場合には倒産してしまいました。

また、2020年以降は世界中で新型コロナウイルスが大流行して経済活動が停滞したり、ウクライナ紛争で国際情勢が不安定になったことも、電力市場価格の高騰につながったのです。

利益率の低さと資金力不足

次に多いのは、利益率が低いことと資金力不足で倒産・事業撤退に陥る新電力会社です。

新電力会社は従来の電力会社のように電力を自社で調達する義務や送配電網を持つ義務がないため、JEPX(卸電力市場)や発電事業者から調達し、利用者に供給するシステムです。

2020年以前はJEPXの相場も安定して安価だったため、大手電力会社よりも安い料金プランを組んで多くの顧客を獲得していました。

しかし、2020年以降電力市場価格が急騰したために想定していた利益が得られなくなり、元々資金力が十分と言えなかった新電力会社は次々と電力市場から手を引かなければならなくなったのです。

大手企業が立ち上げた電力事業部門の一部も、事業を一時的に休止する措置を取っています。

復帰するのを前提に休止したものの、資金繰りに失敗したために復帰の目処が立たず、事業停止・倒産となった新電力会社も少なくありません。

規制の強化

電気料金の規制が強化されたことも、新電力会社の経営破綻に拍車をかけています。

電気料金は規制料金と自由料金の2種類に分かれますが、従来の電力会社は基本的に規制料金を、新電力会社は自由料金を設定しています。

2022年7月までは新電力会社が設定する自由料金の方が規制料金より安価に設定できていたのですが、2022年8月以降規制料金の上昇が規制された結果、「従来の電力会社より安い」という新電力会社の長所が失われました。

規制料金上昇の規制は、電気料金が高騰した事態を終息させるため、日本政府が電気料金の負担軽減措置を講じたからです。

その措置が新電力会社には不利に作用してしまい、新電力会社の倒産や事業停止に結びついたのです。

新電力会社が潰れたのはどこ?倒産事例を紹介

2016年の電力完全自由化以降700社以上に及んだ新電力会社ですが、200社近くが倒産しています。

そのうち、特に有名で利用者が多かった新電力会社4社の倒産事例を見てみましょう。

ホープエナジー

電気事業設立時期2021年12月
電気事業停止時期2022年3月
倒産・事業停止理由電力市場の価格急騰

ホープエナジーは2020年10月に設立された新しい会社で、2021年12月に親会社であるホープ社から電気事業を承継・運営していました。

しかし、2020年12月から2021年1月にかけて電力市場の価格が急騰したことによって事業計画に大幅なズレが生じ、赤字を出してしまったのです。

電力市場価格給湯で電力調達コストが急激に増加したことに加えて、高額なインバランス料金が生じました。

その結果、ホープエナジーの経営状態は再建が難しいほど悪化し、ホープエナジーは親会社から分割してから約3ヶ月で破産に至ったのです。破産理由となったインバランス料金は総額65億円に達していました。

F-Power

電気事業設立時期2010年1月
電気事業停止時期2021年3月
倒産・事業停止理由電力市場の価格高騰

F-Powerは、株式会社ファーストエスコが電力ビジネス事業を分割したことで2009年4月に創業、2010年1月に電気小売事業を営む株式会社G-Powerを設立しました。

2015年10月に沖縄県以外の全国に電力供給を行うようになり、2016年3月には契約電力が300万kWに達しています。

しかし、2020年以降の電力市場の状況が悪化したことによって経営破綻に陥り、2022年4月に電気小売事業を株式会社FPSに譲渡するという形で電気事業を停止しています。

倒産ではなく会社更生手続きを取って株式会社エフ管財に商号変更しましたが、電気事業は再開していません。

エルピオ

電気事業設立時期2016年4月
電気事業停止時期2022年4月
倒産・事業停止理由燃料費高騰・電力市場状況悪化

株式会社エルピオは1965年4月に設立されたLPガス供給・ガス機器販売・電力小売業などを運営している企業で、2016年4月に電力小売事業部門・エルピオでんきを設立しました。

しかし、ウクライナ紛争などによる燃料費高騰で電力市場の状態が悪化したことで経営状態が下降し、2022年4月に電力小売事業停止を公表しました。

企業は倒産していないので他の業務は続行していましたが、電力市場が安定したことで電気小売事業復帰の目処がたち、2023年6月から供給エリアを絞って電気小売事業を再開しています。

あしたでんき

電気事業設立時期2018年3月
電気事業停止時期2022年6月
倒産・事業停止理由資源価格の高騰

あしたでんきは2017年8月に設立されたTRENDE株式会社の電気小売事業部門で、北海道と沖縄県と一部の離島を除く全国区に事業を展開していました。

しかし、2022年4月にあしたでんきのサービス停止を発表して同年6月をもって電気小売事業を停止しました。

TRENDE株式会社は、電気小売事業停止の原因について、燃料資源価格が高騰したことと、現況が好転する見通しが立たないことだと説明しています。

TRENDE株式会社自体は倒産に至っておらず、現在は太陽光・蓄電池サービスを提供していますが、あしたでんき復旧の予定は2025年6月時点ではありません。

契約中の新電力会社が倒産したらどうなる?利用者の動きについて

契約している新電力会社が倒産することを恐れる利用者が多いのですが、新電力会社が突然倒産してもいきなり電気が止められることはないのでご安心ください。

しかし、停電リスクはなくても倒産に備える必要があります。この章では、倒産した際に利用者がどう動くべきなのかを解説します。

新電力会社倒産時の基本的な利用者の動き

契約している新電力会社が倒産・事業撤退・休止といった状態になった場合の、利用者の基本的な動き方を見ていきましょう。

状況確認を行う

契約中の新電力会社が倒産あるいは事業停止や休止という状況になった場合には、まず状況確認をしましょう。

  • 契約している新電力会社はいつ電力供給を停止するのか
  • 電気料金を先払いしていた場合、そのお金は戻ってくるのか
  • 自宅にはいつまで電力が供給されるのか
  • 契約中の新電力会社と同条件の電力会社や料金プランはあるか

この4点は、契約している新電力会社から倒産などの通知が届いてからすぐに確認しましょう。

新しい電力会社を探す

章の序文に記したように、倒産・事業停止になっても、突然電気が止まるわけではありません。電力会社は倒産や事業撤退になる場合、利用者に契約解除15日前までに知らせる義務があるからです。

契約停止後も地域の大手電力会社が最終保障供給を行うので、すぐに電気が止まるわけではないのですが、放置しておけば当然電気供給はストップします。

停止前に新しい電力会社を探しましょう。

新しい電力会社も間を置かずに倒産すると面倒なので、ネットやSNS、目星をつけた電力会社の公式サイトで情報収集し、事業停止の危険性が少ない電力会社かをご確認ください。

新しい電力会社へ契約の申し込みを行う

新しい電力会社に契約を申し込む際には、以下の情報・書類が必要です。

  • 基本情報(契約中の電力会社名・契約者の名義など)
  • 供給地点特定番号
  • 本人確認書類

契約中の電力会社のマイページ・これまでに届いていた検針票や通知などに上記の情報が記載されています。

新しい電力会社の公式サイトなどにこれ以外に必要な情報や書類が記載されていることもあるので、確認の上契約手続きを行いましょう。

切り替え手続きを行う

続いて、切り替え希望日を新しい電力会社に伝え、切り替え時に必要な対応がないかどうかを確認しましょう。

切り替え前に契約中の新電力会社の解約手続きは不要です。新しく契約する電力会社が解約手続きを代行してくれるからです。

非常にまれですが解約手続きを行ってくれない電力会社もあるので、念のために新規契約する電力会社に契約中の電力会社との解約手続きを行うかどうかを確かめておきましょう。

その際の注意点について

新しい電力会社に切り替える際に注意するポイントは以下の通りです。

  • 自宅が新しい電力会社の供給エリア内か
  • 料金プランが自分・同居家族のライフプランに合っているか
  • 安全性と信頼性が高い電力会社か

従来の大手電力会社なら供給エリアを心配する必要がありませんが、新電力会社は全国に電力供給していないことがあるので、供給エリアは必ずご確認ください。

自分と同居家族のライフスタイルに対応できる料金プランがあるかも大事なポイントです。

また、再度倒産や事業停止の憂き目を見ずに済むように安全性・信頼性も調査しておきましょう。

新電力会社は全部やばい?おすすめの選び方を紹介

新電力会社を新規契約する場合、供給エリアや料金プラン以外にも抑えておくべき要素があります。

新電力会社のおすすめの選択方法をチェックしてみましょう。

大手グループ系企業か

倒産や廃業に陥る新電力会社かどうかは、大手グループ系企業に属しているかどうかも判断の目安になります。

大手グループ系企業なら、倒産や事業停止になっても系列会社に業務を移行するなどの措置を取ることが多いので、契約内容を変えずに利用し続けられる可能性が高いからです。

しかし、大手でも潰れる可能性が0というわけではないので、新電力会社が属している大手グループ系企業の経営状態も調べておきましょう。

発電力・調達力があるか

新電力会社の多くは自社で発電設備を所有せず、電力市場から調達しています。

自社で発電設備を所有して電力供給をしている場合、その新電力会社が倒産すると発電力も失われるため、調達力をより重視するのがおすすめです。

安定した電力市場から電力を調達している新電力会社なら突然倒産・事業停止となる可能性は低いので、安心して契約できます。

口コミが安定しているか

ネットやSNSなどの口コミもチェックしておきましょう。業者による口コミやライバル会社によるネガティブな口コミなども混ざっていますが、全体を見れば世間の評価を確認可能です。

口コミに書かれていることを検索したときに裏付ける情報があれば、口コミが正しいかも簡単に確かめられるので、口コミを丸ごと信用するのではなく、10件程度の口コミを確認し、検索して裏付けを取りましょう。

解約に対するペナルティがないか

新電力会社の中には解約の際に違約金などのペナルティが発生する料金プランを提供している場合もあります。

例を挙げると、2年契約を継続することを条件に安い料金にしているプランは、契約期間内に解約すると違約金が発生するのが一般的です。

安価な料金に釣られて解約時に違約金が発生するプランを契約してしまう人が非常に多いので、料金プランを契約する前に解約時に不利益が生じないかを必ず確かめておきましょう。

まとめ

2020年以降の燃料費急騰による電気料金高騰は、数多くの新電力会社を倒産や事業停止に追い込みました。

新電力会社には大手電力会社より倒産の可能性が高いというリスクがあるのは事実です。

しかし、リスクを理解して対応策を取れるようにしておけば問題ありません。

また、倒産事例で紹介したエルピオのように電気小売事業を再開するケースもあります。

気に入った新電力会社が倒産した場合は、復帰の可能性があるのかを調査し、別の電力会社に切り替えた後も再契約できるようにしておくことをおすすめします。

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この記事を書いた人

fuyuhome ライター

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