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農業廃棄物のアップサイクル事例集!メリット・デメリットも!

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農業の現場では、実は大量の廃棄物が出ることを知っていますか?近年、このような農業廃棄物も、アップサイクルで資源として活用する動きに注目が集まっています。

農業廃棄物のアップサイクルについて、よくわからない人も多いかもしれませんが、これは資源循環型の社会を構築するうえで重要な取り組みです。本記事では、農業廃棄物のアップサイクルについて、現状やメリット・デメリット、取り組みの事例集などから、わかりやすく解説します。

目次

農業による廃棄物の現状

令和元年度における全国の産業廃棄物総排出量は3億8千万トンであり、前年度比で約700万トン(約1.9%)増加しました。このうち、農業・林業からの排出量は約8,126万トンで、全体の21.1%を占めています。

農業廃棄物の種類

農業廃棄物は、大きく分けて3つの種類に分類されます。

  1. 汚泥:田んぼや畑の排水処理で発生する沈殿物。排出量は約1億7,084万トン。(全体の44.3%)
  2. 動物のふん尿:家畜の排泄物。排出量は約8,079万トン。(全体の20.9%)。
  3. がれき類:農業資材や施設の解体・改築で発生する廃棄物。排出量は約5,893万トン。(全体の15.3%)

農業廃棄物が発生する主な要因

次に、農業の生産現場で廃棄物が発生する主な2つの原因ついて見ていきましょう。

①供給過多による低価格

豊作などで農産物が余る場合、出荷にかかるコストを考えると生産者にとって赤字になってしまうため、やむを得ず圃場で廃棄してしまうことがあります。特に日持ちの悪い葉物野菜などで顕著です。

②規格外農産物の出荷拒否

農産物は形状や大きさなどに一定の基準(規格)が設けられています。規格外の農産物は出荷できずに廃棄されることが多くなります。

農業廃棄物のアップサイクルとは

次に、本記事で取り上げる農廃棄物のアップサイクルについて、理解を深めておきましょう。

アップサイクルとは、不要になった製品やパーツを再利用し、より高い価値の新しい製品を生み出す取り組みです。従来のリサイクルは、製品の価値が下がってしまうという特徴があります。対して、アップサイクルでは創造性と工夫を凝らすことで、製品の機能や価値を向上させることができるのです。

農業廃棄物のアップサイクルは、

  • 非可食部分や稲わらなどを燃料や堆肥などのバイオマス資源として活用
  • 規格外農産物を加工してジャムやスムージーなどの新商品開発につなげる

など、これからますます開発が進むことが予想されます。

このように、従来の「廃棄」ではなく、「新たな価値創造」につなげることがアップサイクルの大きな特徴です。

農業分野におけるアップサイクルの取り組みは、食品ロス削減や循環型社会の実現に大きく貢献することが期待されています。*1)

農業廃棄物のアップサイクルが求められている背景

では、なぜ今、農業廃棄物のアップサイクルが求められているのでしょうか? その背景には以下のような要因があります。

膨大な農業廃棄物の実態

現代の大規模かつ集約的な農業生産システムにより、

  • 作物の刈り株や枝葉
  • 畜産業由来の糞尿や汚泥

など、膨大な量の農業廃棄物が日々発生しています。農業廃棄物は、大きく分けて以下の4種類に分類されます。

  1. 食品ロス:約3,000万トン
  2. 畜産業由来の糞尿:約2,000万トン
  3. 農作物の残渣:約2,000万トン
  4. 農業資材:約500万トン

これらの多くが焼却や埋立処理されており、環境負荷の増大や資源の無駄遣いにつながっているのが現状です。

食料生産における非効率性

従来の農業システムは、大量生産・大量消費・大量廃棄という非効率な構造を特徴としています。限られた農地や水資源で、できる限り多くの食料を生産し、短期的に多くの利益を生み出そうとする姿勢から、大量の廃棄物が生み出されてきたのです。

この大量生産・大量廃棄の悪循環を断ち切り、資源の有効活用を実現する必要性が高まっています。具体的には、以下のような取り組みが重要と考えられています。

  • 食品ロス削減に向けた取り組み
  • 規格外品の活用
  • 農作物の鮮度保持
  • 循環型農業への移行(持続可能な農業システムの構築)

循環型農業への移行

近年、持続可能な社会の実現に向けて、化学肥料や農薬に頼らない有機農業の推進や、農業廃棄物の堆肥化による土づくりなど、循環型農業への移行が推進されています。循環型農業は、

  • 環境負荷の軽減
  • 資源の有効活用
  • 農作物の品質向上
  • 生物多様性の保全

など、さまざまなメリットをもたらします。しかし、これらの取り組みには設備投資や労力の面で課題が残されており、より効率的な農業廃棄物の再利用方法の開発や設備投資のための支援策が求められています。

これらの課題に対して、農業廃棄物のアップサイクルは有効な解決策の1つとなります。廃棄物を単に再利用するだけでなく、高付加価値な製品や燃料に生まれ変わらせることで、環境負荷の軽減や新しい産業の創出につなげることができるのです。*2)

農業廃棄物をアップサイクルすることのメリット

【農山漁村及び都市部におけるバイオマスの総合利用】

農業廃棄物のアップサイクルは、地球環境を守りながら新たな価値を生み出す取り組みです。この取り組みには、私たちの暮らしや未来にさまざまなメリットがもたらされます。

食料ロスの削減による食料資源の有効活用

国連の持続可能な開発目標(SDGs)では、2030年までに小売りや消費者レベルの食料ロスを半減させることが目標とされています。しかし、日本の農林水産省の推計では、年間約612万トンもの食品ロスが発生しているといわれています。

この食品ロスの多くは、有効活用されていない農業残渣(残草、未出荷農産物など)も含まれています。これらの未利用資源をアップサイクルすることで、

  • 食品ロス量の削減量の削減
  • 飼料や肥料などの原料としての利用
  • バイオ燃料やバイオプラスチックなどの原料としての利用
  • 食品加工品の原料としての利用

などが期待できます。このような取り組みは、食料安全保障資源循環型社会の実現にも貢献できます。

環境負荷の低減と循環型社会の構築

また、農業廃棄物の多くは適切に処理されず、不法投棄や焼却処理されることで、大気汚染や土壌汚染など、深刻な環境への影響をもたらしています。一方で、これらの廃棄物をバイオ燃料や肥料などとして活用できれば、化石燃料の消費を抑えたり、化学肥料の使用を減らしたりと、環境負荷の低減にもつながります。つまり、

  • 有限な資源を有効活用することで、資源枯渇問題を防ぐ
  • 廃棄物を減らすことで、環境負荷を低減する
  • アップサイクル産業の発展により、新たな経済活動を生み出す
  • 地域産品のアップサイクルを通じて、地域活性化に貢献する

という、まさに循環型社会の実現につながる取り組みなのです。

新たな産業創出と地域活性化

さらに、農業廃棄物のアップサイクルは、地域経済の活性化にも効果を発揮します。例えば、

  • 地域産品の付加価値向上:アップサイクルにより、地域産品の付加価値を高める
  • 新規雇用の創出:アップサイクル産業の発展により、新たな雇用を生み出す
  • 地域ブランドの構築:アップサイクル製品を通じて、地域ブランドを構築する
  • 観光客誘致:アップサイクル製品を販売する観光施設などを整備することで、観光客を誘致

などの効果が期待できます。

また、農業廃棄物のアップサイクルへの取り組みは、単なる廃棄物処理の枠を超えて、新しい製品開発やビジネスモデルの創出にもつながります。地域の農業者と製造業者が協力し、新たな経済的価値を生み出すことができるのです。

このように、農業廃棄物のアップサイクルは、食料ロスの削減、環境保全、そして新産業の創出など、さまざまな面で大きな意義を持っています。これからの持続可能な社会実現に向けて、地域や産業の特性に合った形で、できることから始めていく必要があるのです。*3)

農業廃棄物をアップサイクルすることのデメリット・課題

アップサイクルによって農業廃棄物を有効活用することで、環境負荷の軽減と新しい産業の創出が期待されていますが、いくつかの課題や障壁もあります。

高額な初期投資

農業廃棄物のアップサイクルシステムの構築には、高額な設備投資が必要になります。特殊な前処理や分離、変換技術を導入するためのコストが大きく、中小規模の農家や事業者にとっては参入への障壁となっています。

安定的な供給量の確保

農業廃棄物は、季節や気候条件の影響を受けやすく、安定した供給量を確保することが難しいという特徴があります。アップサイクルに必要な原料を安定的に調達できるかが課題となります。

商品化や事業化の難しさ

加えて、農業廃棄物を活用した新製品の開発や事業化には、市場ニーズの把握販路開拓など、多くの課題が伴います。農業廃棄物をアップサイクルした製品は、既存の製品との競争力を持つことや、コスト競争力を確保することが難しい場合があります。

また、アップサイクル製品は、従来の製品よりも高価な場合が多く、消費者の理解を得ることが難しい場合があります。

技術的な課題

もうひとつ、技術的な課題もあります。農業廃棄物から高品質な製品を安定的に生産する技術はまだ十分に確立されていません。例えば、農業廃棄物は、種類や状態がさまざまであり、以下のような特性を持つため、アップサイクルに難しさがあります。

  • 不均一性:廃棄物は、形状、大きさ、成分などが不均一であり、安定した品質の製品を生産することが難しい。
  • 汚染:廃棄物には、農薬や重金属などの汚染物質が含まれている場合があり、製品の安全性に影響を与える可能性がある。
  • 水分:多くの廃棄物は水分量が多く、乾燥や加工にエネルギーを多く消費する。

さらに、アップサイクル製品には、従来の製品と同等の機能や性能を持つことが求められます。しかし、廃棄物から高機能素材を開発することは、技術的に難しい課題です。

技術開発の最新動向

近年、農業廃棄物のアップサイクル技術の開発において、数々の進展が見られます。

  • ナノテクノロジー:ナノテクノロジーを用いて、廃棄物から高機能素材を開発
  • バイオテクノロジー:バイオテクノロジーを用いて、廃棄物を分解・変換し、高付加価値な製品を生産
  • 3Dプリンティング:3Dプリンティングを用いて、廃棄物から複雑な形状の製品を製造

などの研究が進められています。これらの技術開発の進展により、農業廃棄物のアップサイクル技術は飛躍的に向上することが期待されます。

農業廃棄物のアップサイクルは、課題がいくつか存在しますが、克服に向けてさまざまな取り組みが進められています。これらの課題を克服することで、アップサイクルは環境問題と経済課題の両方を解決する重要な取り組みとなるでしょう。*4)

農業廃棄物のアップサイクル事例

それでは実際に行われている、農業廃棄物のアップサイクルを紹介します。

KEEN:農業廃棄物からスニーカーへ

【KEEN:HARVESTコレクションのスニーカー】

アウトドア・フットウェアブランドKEEN(キーン)は、2007年から「HARVEST(収穫)」というコンセプトのもと、産業廃棄物や農業廃棄物などをアップサイクルした製品を展開しています。

車のレザーシートの端材をサンダルに

HOWSER HARVEST SANDALは、車のレザーシートの端材という、本来であれば産業廃棄物として捨てられる運命だった素材をアップサイクルして作られています。この取り組みは、

  • 石油化学製品やヴァージンマテリアルの使用を削減
  • 廃棄物の埋め立てを減らす
  • メタンの発生を抑制
  • 温室効果ガスの排出を削減

など、さまざまなメリットがあるだけでなく、軽量で快適な履き心地、耐久性に優れ、長く愛用できる、環境に優しい素材を使用した製品として注目されています。

農業廃棄物を配合した植物ベースのスニーカーソール

HARVESTシリーズのスニーカーは、農業廃棄物となった殻・葉・茎などを配合した植物ベースのソールユニットを採用しています。アウトソールで51%、ミッドソールで35%の石油化学素材を植物由来の素材に切り替えながらも、従来のソールと同様の感触・パフォーマンス・耐久性を実現しているほか、

  • アッパーとソールは熱で圧着するダイレクト製法を用いて接着剤を削減
  • フットベッドには独自開発のLUFTCELL PU(ルフトセルPU)を採用し、PU※の使用を削減

などにより、資源循環や環境負荷削減に取り組んでいます。KEENは、ここで挙げた例のほかにも、食用牡蠣の殻リサイクルPETから生まれた多機能Tシャツやバッグなど、幅広いラインアップをそろえています。

PU

PUはポリウレタンの略称。軽量で弾力性に優れた特性がある。LUFTCELL PUはKEENが独自開発した、空気を注入する技術でポリウレタンの使用量を削減している。

バイオマス産業都市

【バイオマス産業都市のイメージ】

バイオマス産業都市は、地域の特色を活かしたバイオマス産業を軸に、環境負荷を低減しながら地域経済の活性化と雇用創出を目指す取り組みです。農業廃棄物林地残材などのバイオマス資源を活用し、エネルギー、素材、飼料などさまざまな製品を生み出すことで、持続可能な地域社会の実現を目指します。

バイオマス産業都市における農業廃棄物アップサイクルは、環境問題解決と地域活性化の両立において、とても重要です。具体的には、

  • 適切なアップサイクル技術により、農業廃棄物の発生量を抑制
  • 農業廃棄物を高付加価値な製品に生まれ変わらせることで、資源循環を促進
  • 化石燃料の使用量削減や温室効果ガスの排出抑制に貢献
  • 農業廃棄物アップサイクル産業の創出や雇用創出を通じて、地域経済を活性化
  • 地域産農業廃棄物を使った製品開発を通じて、地域の魅力を高め、観光客の誘致や移住促進

などの役割を果たします。

北海道下川町の取り組み:農業廃棄物からバイオ燃料を製造

【北海道下川町:エネルギー自給後のエネルギーとお金の流れ】

北海道下川町は、バイオマス産業都市のモデル地域として、農業廃棄物からバイオ燃料を製造する取り組みを進めています。地域の農家から、稲わら、麦わら、野菜くずなどの農業廃棄物を収集し、バイオ燃料を製造しています。このバイオ燃料は、地域内の公共施設や民間事業所で燃料として利用されています。

また、下川町はこれまで未利用だった木質バイオマスをエネルギーとして活用することにも取り組んでおり、これらを合わせて地域のエネルギーを自給することを目指しています。*5)

農業廃棄物のアップサイクルに取り組む際のポイント

持続可能な社会の実現に向けて、農業廃棄物のアップサイクルに取り組むことは重要な課題です。農業廃棄物をうまく活用するために、先述した課題を踏まえたいくつかのポイントに気を付ける必要があります。

初期投資コストと安定的な供給量の確保

農業廃棄物のアップサイクルシステムの構築には、高額な設備投資が必要になります。特殊な前処理や分離、変換技術の導入には大きなコストがかかるため、中小規模の事業者にとっては参入障壁となっています。

一方で、農業廃棄物の供給量は季節や気候条件の影響を受けやすく、安定確保が難しい側面もあります。このため、初期投資の抑制と安定的な原料調達の両立が重要なポイントとなります。

製品化や事業化の促進

アップサイクル製品の開発では、市場ニーズの把握や販路開拓など、事業化への課題が多く存在します。また、従来製品との競争力確保やコスト面での課題もあります。

しかし近年では、消費者の環境意識が高まる中、アップサイクル製品に対する需要も高まりつつあります。そのため、製品の付加価値向上地域ブランド化などのアピールにより、消費者の理解を深めながら事業化を促進することが重要です。

政府の支援策も活用を

政府は、バイオマス活用推進基本法※に基づき、バイオマス産業都市の選定や、技術開発・事業化への支援策を講じています。また、食品ロス削減や循環型経済の実現にも注力しており、アップサイクルを後押しする取り組みを行っています。

これらの支援策を最大限活用し、技術的・経済的な課題解決につなげることも大切です。

バイオマス活用推進基本法

2009年に施行された、バイオマスの利活用を総合的に推進することを目的とした法律。農林業の残渣や生活ごみなど、様々なバイオマス資源を活用し、エネルギー化や新製品開発などに役立てることで、循環型社会の実現を目指す。

地域産品の特徴を活かした差別化戦略

農業廃棄物アップサイクル製品には、地域産品の特徴を活かした差別化戦略を考えましょう。地域の特色や文化を反映した製品を開発し、地域ブランドとして確立することで、市場価値を高めることができます。

また、マーケティングの一環として、製品に込められたストーリーや想いを伝えることで、消費者の共感を呼び起こし、購買意欲を高めることができます。地域で生産された原料を使用することで、地域経済の活性化にも貢献します。

農業廃棄物のアップサイクルとSDGs

私たちが暮らす社会は、経済の発展と引き換えに、地球環境の悪化資源枯渇などの課題に直面しています。この課題に取り組むため、国際社会はSDGs(持続可能な開発目標)を掲げ、経済・社会・環境の統合的な向上を目指しています。

SDGsの達成に、農業廃棄物のアップサイクルは大きく貢献できる可能性があります。

SDGs目標2:飢餓をゼロに

食料生産には、大量の農業廃棄物が発生しますが、これらが適切に活用されていないのが現状です。農業廃棄物をアップサイクルし、飼料や肥料、食品原料などとして有効活用することで、食料ロスの削減食料生産の効率化につながります。

これは、世界の飢餓問題の解決のための具体的なアクションとなることが期待されます。

SDGs目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに

農業廃棄物には、バイオマスエネルギーとしての活用が期待されています。稲わらやトウモロコシの芯などを原料に、メタン発酵やガス化、熱分解などの技術でバイオ燃料を製造することができます。

このようなバイオマス由来の再生可能エネルギー利用拡大により、化石燃料への依存を減らし、クリーンなエネルギー供給に貢献できます。

SDGs目標11:住み続けられるまちづくりを

未処理の農業廃棄物が不法投棄されたり、焼却処理されたりすると、

  • 大気汚染
  • 水質汚濁
  • 土壌汚染

など、深刻な環境問題を引き起こします。一方で、アップサイクルすれば、廃棄物の適正処理と資源の有効活用が両立できます。これは、環境に配慮した持続可能な地域社会の実現につながります。

SDGs目標12:つくる責任、つかう責任

アップサイクルにより、農業廃棄物を新たな製品の原料として活用できるようになります。たとえば、未利用の作物の茎や葉を使ったバイオプラスチックの製造や、食品加工の副産物を活用した機能性食品の開発など、廃棄物の最小化と持続可能な生産・消費の実現に貢献できます。

SDGs目標15:陸の豊かさも守ろう

農業廃棄物は、適切に処理されないと、自然環境への人為的な影響を与えてしまう可能性があります。しかし、アップサイクルすることで、これらの廃棄物を有効活用し、環境負荷を低減することができます。

以上のように、農業廃棄物のアップサイクルは、SDGsが掲げるさまざまな目標の達成に重要な役割を果たすことができるのです。*6)

>>各目標に関する詳しい記事はこちらから

まとめ

農業廃棄物のアップサイクルとは、農業活動から発生する稲わらやトウモロコシの芯などの未利用資源を、新たな製品や燃料、肥料などとして再生利用する取り組みです。こうした農業廃棄物のアップサイクルは、今後の地域社会や産業の在り方にも大きな変革をもたらすことが期待されています。

現在日本では、地域に点在するバイオマス資源を最大限活用する分散型エネルギーシステムの構築や、食品・化学産業などでの新素材開発など、さまざまな分野での取り組みが進められています。特に、循環型農業循環型林業の推進は、食料自給率やエネルギー自給率の問題解決のための重要な鍵を握ります。

これらの取り組みでは、農業と林業の枠組みを越えて、地域の資源を循環利用する仕組みづくりが目指されています。このように、地域資源の循環利用を基盤とした新しい産業構造の構築は、持続可能な社会の実現に欠かせない取り組みなのです。

このためには、生産者、事業者、消費者それぞれが環境に配慮した行動を実践することが重要です。わたしたち個人も消費者として、地産地消の推進省資源型ライフスタイルの実践により、このような取り組みを応援できます。

農業・林業に関わる人、生産者、消費者のそれぞれの協力と行動によって、農業廃棄物アップサイクルを成功させ、より良い社会と資源の循環を実現させましょう。

<参考・引用文献>

*1)農業による廃棄物の現状
環境省『産業廃棄物の排出・処理状況等(令和元年度実績)』
農林水産省『最新の食品ロス量は523万トン、事業系では279万トンに』(2023年6月)
農林水産省『バイオマスの活用をめぐる状況』(2024年4月)
日本経済新聞『広がるアップサイクル商品 廃棄食材活用が付加価値に』
日経COMPASS『【横浜高島屋】農業廃棄物から染色する“農color” で地域活性に。<futashiba248(フタシバ)>POP UP SHOP開催。[高島屋]』(2022年2月)
日本経済新聞『アップサイクルって何? 元の商品より価値高めて再利用』(2023年7月)
*2)農業廃棄物のアップサイクルが求められている背景
藤原 俊六郎『農業系廃棄物肥料化の課題と展望』(2021年9月)
東京農業大学『農作物の生産現場で発生する食品ロス』(2020年)
折笠 俊輔『出荷されず、畑で捨てられている農産物がある』
*3)農業廃棄物をアップサイクルすることのメリット
農林水産省『バイオマスの活用をめぐる状況』(2024年4月)
日経BP『アップサイクルで加速するフードロス削減の動き地域の社会課題解決にも同時に取り組む』(2022年9月)
環境省『第1節 脱炭素型の持続可能な社会づくりに向けたライフスタイルイノベーション』
環境省『ローカルSDGs「地域循環共生圏」ビジネス実践の手引き』(2022年3月)
環境省『食品ロスの削減及び食品リサイクルをめぐる状況』
*4)農業廃棄物をアップサイクルすることのデメリット・課題
経済産業省『資源循環経済政策の現状と課題について』(2023年9月)
畜産環境整備機構『生物系廃棄物リサイクルの現状と課題』
経済産業省『サーキュラーエコノミーに係る地域循環モデル創出に関する調査分析 』(2024年3月)
佐藤 和憲『都市・農村の資源循環システムと地域農業』
*5)農業廃棄物のアップサイクル事例
KEEN『<HARVESTコレクション>:不用品のアップサイクルと温室効果ガスの排出削減』
農林水産省『バイオマスの活用をめぐる状況』(2024年4月)
環境省『エネルギー自立と地域づくり~北海道下川町のチャレンジ~』
植物工場・農業ビジネスオンライン『農業廃棄物などからスニーカーへ”アップサイクル” 温室効果ガスの排出削減へ』(2022年4月)
農林水産省『有機性廃棄物分解機能の取組事例』
農林水産省『食品廃棄物のメタン化に取り組んでみませんか?』
日本政策金融公庫『過熱蒸煎機をコアに“食”の循環システムづくりに貢献する
食品残渣のアップサイクル』
環境省『廃棄物系バイオマス利活用導入マニュアル』(2017年3月)
下川町『森林バイオマスエネルギーについて』(2023年8月)
農林水産省『FSSへのコミットメント』
*6)農業廃棄物のアップサイクルとSDGs
国際連合広報センター『SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン』
農林水産省『減らそう「食品ロス」「もったいない」大変革!』
農林水産省『17の目標と食品産業とのつながり』