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スーパーでのフードロスを削減するには?取り組み事例やできること

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日本では、毎年500万トンを超える食品が廃棄され、フードロスになっています。中でも、わたしたち消費者が日常的に利用するスーパーでは、解決に向けた取り組みが求められています。

そこでこの記事では、日本のスーパーにおけるフードロスの現状と問題点、現時点で行われている取り組みについてご紹介します。後半では、個人でできるヒントについても触れているので、ぜひ最後まで読んでみて下さいね。

スーパーにおけるフードロスの現状

はじめに、スーパーにおけるフードロスの現状について知っていきましょう。

スーパーで発生する食品ロスの現状

各スーパーが具体的にどれくらいの食料ロスを出しているのかについて、具体的な数字を知るのはなかなか難しいのが現状です。

しかし中には、毎年公表している環境報告書の中で、食品廃棄量が分かる場合があります。

例えば、日本の大手スーパー・AEONに代表される株式会社イオンは、環境報告書の中で毎年その数値を報告しており、2022年度の食品廃棄量が129、663トンだったと発表しました。

このうちの71.4%が、肥料など別の形で再利用されているものの、店頭で発生するフードロスの量が決して少なくないことが見て取れます。

また、スーパー「ヤマナカ」を展開する株式会社ヤマナカでは、2019年の食糧廃棄量が1,858トンだったと発表しています。

ただし、食品廃棄量の数値を具体的に示しているスーパーはあまりなく、廃棄量の実態がつかみにくいところです。

それでも、政府が発表している推計データから、スーパーが毎年どれくらいのフードロスを出しているのか推測できます。

次で、そのデータを見ていきましょう。

食品小売業における食品ロスの割合は?

まず、日本政府が発表している「事業系ロス」の割合についてご紹介します。

フードロスには大きく分けて、個人の家庭から出る「家庭系ロス」と、企業から出る「事業系ロス」の2つがあります。

このうち、スーパーを含む企業が出すフードロスは「事業系ロス」です。

下の図は、農林水産省による、2012年度から2021年度の事業系ロスを業界別にまとめたグラフです。

2000年度と比較をすると、全体としては少しずつ減少していますが、それでもスーパーを含む食品小売業は毎年60万トン以上のフードロスを排出しており、ほかの業界に比べるとあまり起きな改善がみられていません。

次に、農林水産省による、あるメーカーの余剰生産率とスーパー店頭における各商品の廃棄率の事例を示した表を確認します。

スーパーの店頭に並んだ後も推計18,600トンものロスが派生しています。また、商品が納品される前の製造・輸入の段階で、すでに余剰生産のせいで6,000トン以上ものフードロスが出てしまっていることが見て取れます。

この表からも分かるように、ひとつの業界だけがフードロスに取り組むのではなく、取引先である別業界とも連携して、問題の解決に向かわなければなりません。

スーパーでフードロスが発生する原因

ここで改めて、なぜスーパーでフードロスが発生してしまうのでしょうか。いくつか原因を挙げて解説していきます。

1/3ルール

日本のスーパーをはじめとした食品業界では、品質の低下した商品を販売しないよう、厳しいルールが設けられています。

中でも「1/3ルール」と呼ばれる縛りは、多くのフードロスを出し続けてきています。

1/3ルールとは、製造・輸入業者がスーパーなど小売業者へ納品する際、賞味期限の1/3の日付までしか入荷を受け付けないことです。

製造日から賞味期限までの期間全体を1とした場合、製造日→納品日、納品日→販売期限、販売期限→賞味期限を、それぞれ1/3ずつ分割し、納品と販売の日付を決定しています。

つまり、製造日から賞味期限までの期間のうち、1/3の日付を超えてしまうと、スーパー側が商品の入荷を拒否することになり、結果としてフードロスが発生してしまうのです。

さらにスーパーでの販売期限が過ぎてしまった商品についても、同様にフードロスと化してしまいます。

こうした厳しい商習慣によって、まだ食べられるはずの食品がロスになってしまう現状があります。

生鮮食品のフードロス

野菜や果物・乳製品といった食品は、鮮度が問われるために販売期限が短く、売れなければすぐに廃棄になってしまいます。

たとえ消費者のニーズに合わせていても、スーパーの店頭に並ぶ商品の購入数までを正確に予測するのは難しいものです。

その結果、どうしても生鮮食品が売れ残ってしまい、フードロスと化してしまいます。

スーパーのフードロスを削減するための取り組み事例

次に、フードロスを削減するために、スーパーがどのような取り組みを行っているのかを見ていきましょう。

「1/3ルール緩和」業界全体の動き

先ほど、フードロスが発生する原因のひとつとして「1/3ルール」をご紹介しました。

しかし海外に目を向けると、メーカーが小売店に納品できる期限を長くし、すこしでもフードロスを削減しています。

そこで日本でも、平成24年度から1/3ルールを1/2へ緩和するよう、環境省が通知を出しました。

同時に、加工食品において賞味期限を緩和する動きも出ており、納品起源と賞味期限を延ばすことによって、事業系ロスをなくそうと取り組んでいます。

また、納品期限が過ぎてしまった食品に関しては、フードバンクなどに寄付するよう、農林水産大臣が2022年に述べています。

出来るだけフードロスをなくし、食品を無駄なく活用するために、業界が大きく動いているのです。

商品の予約を促しロスの削減へ

恵方巻やクリスマスケーキといった季節限定商品のフードロスについて、よくニュースなどで取り上げられているのを見たことがある人は多いのではないでしょうか。

1年のうち数日しか販売できないにもかかわらず、適切な商品管理ができておらず、大量発注・余剰生産によって毎年多くの食品が廃棄されているのです。

そこで株式会社ヤマナカでは、余剰生産によるフードロスをなくすため、事前の予約をお客様にお願いし、適切な売り切りを目指す取り組みを行っています。

2019年度は恵方巻の廃棄削減に注力し、廃棄率を95%にまで削減できました。

こうした地道な取り組みによって毎年少しずつ食糧廃棄率を減らしており、適切な発注管理と売りきりの努力がフードロスの削減に繋がることが分かる事例といえます。

加工した後の食べ物も無駄にせず商品化

埼玉県でスーパーを展開する株式会社ヤオコーでは、カットフルーツとして販売するパイナップルの切れ端を廃棄せず、端材をドライフルーツとして加工し販売しています。

果物のおいしい部分を無駄にせず活用した商品は、日持ちがするためお客様からの評判もよく、フードロスの削減にも貢献しています。

海外のスーパーではどのようにフードロス対策を行なっているのか

次に、海外のスーパーにおけるフードロス対策についても見ていきましょう。

スーパーの食糧廃棄の禁止を義務付ける法律が成立(フランス)

先進的な法律によって環境問題への積極的な取り組みを行っているフランスですが、2016年には食品廃棄削減に関する法律が成立しました。

店舗面積が400平方メートルを超えるスーパーを対象とし、賞味期限切れなどの理由による食品の廃棄を禁じる内容となっています。

余った食品は、事前に契約した慈善団体に寄付するか、肥料・飼料として転用することが義務付けられています。

優先順位も定められており、以下の順番でなるべくフードロスを出さないようにルールづけを行っています。

  1. そもそも食品を廃棄しないよう予防策を講じる
  2. 余ってしまったら、人間がまだ消費できるよう、寄付か加工を行う
  3. 動物飼料向けの再利用
  4. 農業用・メタン化を含むエネルギー再利用のための堆肥へ活用する

この法律が成立する前は、路上生活者が食べないよう、廃棄された食品に塩酸をかけて捨てるなどの処置を講じており、そのための費用もかさばっていることが問題となっていました。

現在は、不当に食品を廃棄した場合、3,750€以上の罰金と、罰金の公表までもが義務付けられています。

食品を無駄にすることなく、必要な人と場所へ届けられるようになったこの法律のおかげで、多くのスーパーがフードロスの削減に貢献しています。

廃棄されるはずの食品を販売するスーパー(デンマーク)

環境問題への関心が高い傾向にある北欧諸国ですが、中でもデンマークでは2016年に世界初の「食品ロス専門スーパー」であるWefoodがオープンしました。

2024年現在は6店舗が展開され、ボランティアの力を借りながら、全国のスーパーから集まった「賞味期限切れ」「規格外」などの食品が割安の価格で販売されています。

2023年は473トンもの食品が廃棄から救い出され、消費者のもとへ渡りました。

またWefoodで買い物をすると、利益の一部が慈善団体の気候変動へのプロジェクトに寄付される仕組みになっているので、フードロスと気候変動への取り組みの2つに貢献できるのが嬉しいポイントです。

スーパーでのフードロスを削減するために私たちができること

ここまで、スーパーにおけるフードロスの現状や取組について紹介してきました。

さまざまな問題を知って「自分たちに何ができるの?」と思った人もいるでしょう。

そこで次に、わたしたちが個人の範囲で「スーパーでのフードロスを削減するためにできること」についてお伝えします。

食品の期限表示について理解する

まずは、消費者として食品の「賞味期限」と「消費期限」の違いを理解することが大切です。

似たような2つの言葉ですが、それぞれ意味が異なります。

賞味期限:おいしく食べることができる期限  →期限を過ぎても食べられる
消費期限:過ぎたら食べないほうがよい期限 →期限を過ぎたらフードロスになってしまう

食品の種類や状態にもよりますが、賞味期限はおおむね「期限を過ぎても食べられる」という認識でよいでしょう。

「てまえどり」に協力する

賞味期限と消費期限について理解したうえで、スーパーでの買い物の際に意識したいのが「てまえどり」です。

てまえどりとは、陳列棚に並ぶ商品のうち、期限が近い「手前」の商品から購入するように呼びかけている消費行動をいいます。

賞味期限はあくまでも「おいしさの目安」なので、すぐに食べきる努力をしたうえで賞味期限の近い商品を購入すれば、味の品質が変わらないまま楽しめるだけでなく、スーパーのフードロス削減につながります。

スーパーのフードロス削減とSDGs

最後に、スーパーのフードロス削減とSDGsの関連について知っておきましょう。

フードロスは、食糧の生産から消費の過程において発生するものであり、本来は貴重な資源を使って生産された食べ物です。

その意味で、SDGs目標12「つくる責任つかう責任は、フードロスと深い関係があるといえます。

フードロスはスーパーなど食品小売業だけの問題ではなく、生産にかかわる農家や輸入・製造企業といった多くの人々が関わっており、食品業界全体の問題といえます。

それぞれの過程で発生する問題の連鎖によって、膨大な量のフードロスが起こるものです。

消費者のニーズに合わせて生産量を増やすのではなく、消費者が口にするまでの過程に責任を持ち、本当に必要な分だけを生産・販売することも、フードロスの問題解決につながるのではないでしょうか。

また万が一余ってしまったロス分は、フードバンクや肥料に活用することで、少しでも無駄をなくしていくことが求められます。

まとめ

今回はスーパーのフードロスについて、現状や問題点・取り組みなどを幅広くご紹介しました。

企業の活動の中で発生するフードロスは、決して少ない量ではありません。だからこそ、業界全体が一丸となり、問題の解決に向けて真摯に取り組む必要があります。

同時に、わたしたち消費者側も、今一度フードロスについて見直し、日常生活の中で食べ物の廃棄を出さないように意識していくことが大切ではないでしょうか。

<参考リスト>
イオン サスティナビリティデータ集(2022年度)|株式会社イオン
環境報告書 2020年|株式会社ヤマナカ
3 事業系食品ロスの削減に向けた取組|農林水産省
食品ロス削減関係参考資料(令和5年6月9日版)|消費者庁消費者教育推進課 食品ロス削減推進室
社会環境報告書 社会に向き合う② ~商品のライフサイクルを通じて環境に配慮する~|株式会社サミット
環境 | サステナビリティ | ヤオコー
食品ロス削減ガイドブック|消費者庁
『フランス・イタリアの食品ロス削減法 ― 2016 年法の成果と課題 ―』岩波 祐子(内閣委員会調査室) 
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