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人工甘味料は体に悪い?危険度ランキングや入っている食品一覧と発がん性の可能性を解説

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「甘い」と「美味い」は語感がとても似ています。 疲れた時のほんのり甘いおやつ、寒い中での温かい甘酒、確かに「美味い」ですね。反面「甘いもの」はダイエットの大敵ですし、人工甘味料は悪者のイメージがつきまといます。幸福感と危険が併存しているのが甘味料です。身近になってきた人工甘味料を正しく理解し、上手に摂取するにはどんな点に気を付ければよいか、一緒に学んでいきましょう。

人工甘味料とは

人工甘味料とは化学的に合成されて造られたもので「化学合成甘味料」または「合成甘味料」とも言われます。

甘味料とは、食品に甘味を与える目的で使用される食品添加物※のことで、大きく「人工甘味料」と「天然(由来)甘味料」に分けられます。人工甘味料にはいろいろな種類があり、清涼飲料水や菓子類など、食品を中心に広く利用されています。

※ 食品添加物

「食品の製造過程で使用する物または食品の加工・保存の目的で使用する物」(食品衛生法による)

天然甘味料との違い

人工甘味料が、砂糖やはちみつに代表される天然甘味料と1番大きく違う点は、カロリー0なのに、甘さが数百倍あるということです。中には甘さ数万倍という人工甘味料もあります。

このことが、人工甘味料が安全性への不安と利便性の両方をもつ諸刃の剣になる大きな理由と言えます。

ではまず、人工甘味料にはどんなものがあるか見ていきましょう。

人工甘味料の種類

現在、日本で食品添加物として使用が許可されている人工甘味料は6種類です。表にまとめてみました。

人工甘味料砂糖と比較した甘味度特徴
サッカリン200~500倍発がん性を疑われたことがあるが、サッカリン本体にではなく、生成の際に出る不純物が原因と分かった。
アスパルテーム約200倍フェニルケトン症 ※ の人のために表示が義務づけられている。
アセスルファムカリウム約200倍加熱に強く、非常に多くの食品に使用されている。
スクラロース約600倍分子構造が砂糖に近く、多くの食品に使用されている。
ネオテーム約10,000倍アスパルテームのネオ(新しい)として2007年に新たに認められた。
アドバンテーム約20,000倍非常に甘味が強いので、実際に添加される量はわずかになる。
砂糖以外の甘味料について・「食品添加物の基礎知識」より筆者作成
※ フェニルケトン症

フェニルアラニンを分解できない。アスパルテームはL-フェニルアラニンの化合物なので、「L-フェニルアラニン化合物」と表示することが義務付けられている。

体に悪い、発がん性がある可能性があると危険視されている人工甘味料

人工甘味料の使用に関して1番心配されるのは安全性、特に発がん性です。過去にも安全性が問題視され、使用が禁止になった人工甘味料があります。

チクロ(サイクラミン酸)

チクロは、日本では1969年に認可リストからはずされ、使用禁止になりました。

チクロは、砂糖の約30〜70倍の甘味を持ち、水によく溶けるので清涼飲料水などに多く利用されました。しかしその後、腸内細菌によって分解されると発がん物質に変化する可能性が指摘され、動物実験の結果でも立証されたため、アメリカで使用が禁止されました。その結果を重く見た日本でも使用が禁止されたのです。

一方、1972年にスイスではチクロの発がん性に否定的な実験結果が出ており、それを受けてヨーロッパでは認可している国もあります。カナダや中国でも認可されており、国によって対応が分かれています。

ズルチン

同じく1969年に食品への添加が全面的に禁止されたものにズルチンがあります。

ドイツで発明された人工甘味料で、砂糖の約200〜400倍の甘味をもっています。

死に至るほどの中毒事故を起こす場合があり、早くから多くの先進国で肝機能障害や発がん性への心配がされていました。アメリカでは1954年に使用禁止になっています。

しかし日本では、合成が容易で砂糖に比べて安価なので戦後広く利用され、ようやくチクロと同じ年に使用禁止となりました。

外国からの輸入食品にズルチンが検出された例もあり、検疫所での検査は現在も続いています。

酢酸鉛(Ⅱ)

現在は使用されていませんが、古代から甘味料として使われたものに酢酸鉛(Ⅱ)があります。甘味を持つ鉛化合物の一種で、鉛中毒の原因物質の1つです。古代にはワインに甘味を加えたり果物の保存に使われたりしました。

これらの他にも、いったんは認可されても動物実験の結果や事例研究から、後になって発がん性を指摘されたり、やはり発がん性は認められないと訂正されたりしたものは、少なくありません。

アスパルテーム

2023年7月14日、FAO/WHO/IARC ※ の合同食品添加物専門家会議(JECFA ※)は、アスパルテームの発がん性について、

〇ヒトに対して「発がん性がある可能性がある」に分類する。

〇許容可能な一日の摂取量は(今までと同様)体重1㎏当たり40mg。

引用元:Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives 

と発表しました。

FAO / WHO / IARC

FAO:Food and Agriculture Organization of United Nations 国連食料農業機関

WHO:World Health Organization 世界保健機構

IARC:International Agency for Reseach on Cancer 国際がん研究機関

JECFA

Joint Expert Committee on Food Additives 

IARCは、発がん性を次のような4段階に分類しています。

  • グループ1:ヒトに対して発がん性がある。
  • グループ2A:ヒトに対しておそらく発がん性がある。
  • グループ2B:ヒトに対して発がん性がある可能性がある。
  • グループ3:ヒトに対する発がん性について分類できない。

今回の発表では、今までの<グループ3>という段階から、「可能性がある」段階になったのですが、ラット・マウスの実験結果が限定的だったり、その研究手法についてヨーロッパの研究機関から疑問の声が上がったりし、「可能性」のとらえ方に幅があるようです。その結果、当面「許容可能な1日の摂取量は今まで通り」ということになったのです。

参考:人工甘味料「アスパルテーム」に発がん性の可能性 | 公益社団法人 日本WHO協会
アスパルテームに関するQ&A | 食品安全委員会 – 食の安全、を科学する

他にも指摘されている人工甘味料のデメリット

アスパルテームがフェニルケトン症の方に危険だったり、発がん性の可能性が危惧されたりするばかりではなく、人工甘味料には次のようなデメリットも指摘されています。

腸内環境への悪影響

ラットの実験や糖尿病患者の調査から、人工甘味料が腸内細菌のバランスを壊しているという結果が出ています。

腸内には腸内細菌(腸内フローラ)が約1,000種類、100兆個も生息していることが知られています。善玉菌の割合を多くして環境を整えていくことが、健康を保つ上でとても大切です。

また近年の研究で、腸も甘味を感じることが分かってきました。人工甘味料は少量でも甘いので、腸は糖分に対して本来とは違った判断をしてしまい、腸内環境を正しく整えられなくなってしまうのです。

参考:腸内細菌と健康 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
No.26 「味」を感じる体の仕組み – 国立大学法人 岡山大学

甘さへの依存・習慣化

甘さに対する満足感は、ヒトが生まれながらに持っているものです。生まれたばかりの赤ちゃんでも甘味を喜びます。その甘味の質や量は脳が判断しています。脳は人工甘味料の甘さに慣れると、もっと甘いもので満足度を上げようとします。つまりさらに甘いものが好みになってしまうのです。

また、人工甘味料はカロリーがないので、脳から胃や腸に消化指令が出ません。逆に満腹感が生まれず、「もっと食べよう」「食べたい」という指令を出しやすくなってしまいます。そのため、ダイエットのために人工甘味料を利用していても、食欲増進させてしまうのです。

また、血糖値が上がらないため、血糖値を下げるホルモンも出なくなります。このこともデメリットの1つですが、「糖尿病との関係」で詳しくお話しします。

参考:甘味の文化:山辺典子(ドメス出版)

人工甘味料が入っている食べ物

心配な点が少なからずある人工甘味料ですが、どのような食べ物に入っているのでしょうか。身近にあるものを見ていきましょう。

菓子類:表示に注意

ガムやキャンディを始め、身近にある多くの菓子類に人工甘味料は使われています。入っているかどうかは表示で確認することができます。

下のキシリトールガムの包装にはアスパルテームが表示されています。

商品情報出典:アマゾン

添加物の表示は法令で義務付けられていますが、表示面積が小さかったり包装されてない食品もあるので、摂取許容量内に抑えられているとは言え注意が必要です。詳しく知りたいときは、製造元や販売元のホームページなどで調べることもできます。

他にもジャム、漬物、佃煮、かまぼこなどの加工食品にも使われています

飲み物類:冷たいダイエット飲料に注意

商品情報出典:アマゾン

人工甘味料は飲料にも多く使われています。カロリー0ですからダイエット飲料として最適と言えます。製造者側にとっても、わずかな量で甘味を生成できるのでコストの点でも良いわけです。

液体である飲料は、固形の食べ物より吸収が容易です。また、甘味の感じ方は温度によって違い、冷たい飲み物甘さを感じにくくなります。つまり、飲み過ぎてしまう傾向にあると言えます。

1商品に含まれる人工甘味料の量が許容範囲内でも、暑い時に冷えた清涼飲料水の飲み過ぎには気をつけたいものです。

他にも、調味料やアルコール0・糖質0・カロリー0のノンアルコールビールにも人工甘味料が使われているものがあります。

食べもの以外にも使われている

歯磨き粉に使われているものがあります。「さわやかな」と表示のある筆者の歯磨き粉には「サッカリン」と表示がありました。

人工甘味料に関するよくある疑問

ここまで読んでいただいて、人工甘味料の安全性や許容量について不安や疑問を持たれた方も多いのではないでしょうか。この章では、よく耳にする疑問にお答えしていきます。

メリットはある?:「糖分無し」を有効に!

人工甘味料のメリットとしては、次のことが挙げられます。

  1. ダイエットに有効
  2. 虫歯の予防
  3. 血糖値を上げない

ダイエットに有効

人工甘味料の最大の特徴は、甘味が強いのにカロリーが0ということです。甘味を我慢せずに摂取カロリーを抑えることができれば、ダイエットもとてもしやすいことでしょう。肥満に悩む方には大きな助けとなるにちがいありません。

虫歯の予防

虫歯の原因となるミュータンス菌は、糖分をもとにして歯垢をつくり、そこで増殖する過程で酸を生成します。この酸が歯を溶かしていき虫歯になります。糖分が含まれないことが、虫歯予防につながるのです。

血糖値を上げない

人工甘味料は糖分が含まれないので、摂取しても血糖値は上がりません。そのため、糖尿病の予防や治療に利用されてきました。しかし最近では「ダイエット飲料の摂りすぎは糖尿病のリスクを高める」とする報告もあります。

人工甘味料と糖尿病の関連について、もう少し考えてみましょう。

糖尿病との関係は?:気になるインスリンの働き低下

下のグラフは、ダイエット飲料水と糖尿病発症の関連を調べた結果を表すものです。週に1カップ以上飲む人は、飲まない人と比べて発症の危険が1.7倍になっています。

出典:人工甘味料と糖代謝(農業産業振興機構)

糖尿病は高血糖が慢性的に続く病気で、進行すると動脈硬化や網膜・腎機能・神経への疾病へつながります。

通常は、食べ物が消化・吸収されると血糖値は上がり、膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンは血液中の糖分をエネルギー源として細胞に取り込む助けをし、血糖値を下げようと働きます。

人工甘味料は糖分を含まないので、インスリンは分泌されません。インスリンが分泌されない状況が続くと、膵臓はインスリンを分泌しないことに慣れてしまい、細胞もうまく糖分を取り入れられなくなります。こうなると本来の糖分の消化・吸収もうまくできなくなり、少しの糖分を摂取しても高血糖になってしまいます。

インスリンがうまく働かないと、かえって糖尿病に近づいたり重くしたりしてしまうのです。

危険度ランキングはある?

多くの食品や製薬企業や関連グループがランキングを出しています。大きく3つに分けてみました。

危険度の高い方がC

ABC
ネオテーム
アドバンテーム
サッカリン
アセスルファムカリウム
スクラロース
アスパルテーム

着目点によって多少順位は変わっていますが、どのランキングも第1位に挙げているのが

アスパルテームです。理由は次の2つです。

  • フェニルケトン症に対して危険であることが分かってる。
  • 最近あらたに発がん性が話題になった。

アドバンテームとネオテームは6種の内では危険度が低いとされていますが、非常に強い甘味をもつので、実際に食品に添加される量はかなり少量になるためです。

残念ながら「これは安全」と断定されているものはありません。人工甘味料はまだ歴史が浅く、人体に与える影響について十分な検証が済んでいるとはいえません。関連機関の研究の経過に注目していく必要があります。

1日の摂取許容量は?

摂取許容量は通常ADI( Acceptable Daily Intake )を使って表され、厚生労働省はADI

次のように定義しています。

6種の人工甘味料のADIを下の表にまとめました。

人工甘味料ADI( mg/kg体重/日)
アスパルテーム40.0
サッカリン1.5
アセスルファムカリウム1.5
スクラロース15.0
ネオテーム1.0
アドバンテーム5.0
令和元年度 マーケットバスケット方式による 甘味料の摂取量調査の結果について」より筆者作成

たとえば体重60kgの人は、アドバンテームに関しては毎日300mg(5.0mg × 60kg)摂り続けても大丈夫という計算になります。この許容量を守らなければ使用は認可されません。

ひとりが1回に摂取する量としてはわずかですが、私たちは多くの食品を毎日口にします。総量として摂り過ぎないようにしたほうが良いことは確かです。

人工甘味料を摂取しすぎないようにするためのポイント

では、摂り過ぎないようにするにはどうしたらよいでしょうか。そのポイントをまとめていきます。

下のパンフレットは、肥満や糖尿病などの生活習慣病を予防するために厚生労働省から出されたものの一部分です。ここに挙げられた3つの柱は、人工甘味料を摂取しすぎないための道しるべにもなります。

ポイント①日頃から味覚を育てる習慣

上のパンフレットにも1番に「日頃から予防する」とあります。

甘味に慣れていくと、脳がさらに甘さを求めるようになります。体が必要としていなくても嗜好として甘味を多用することが習慣化してしまいます。

甘さを厳しく我慢する必要もありません。自然食材の本来の甘さを楽しめるよう、生まれ持った味覚を大切にしたいですね。

ポイント②自分の体を知る

「高血糖」であるかどうかは自分で見て判断できません。太っていなくても血糖値が高くなることがあります。健康診断等の結果と年齢・体質・運動量等から医師の判断を仰ぐのが最も近道と言えます。

心配なのは、自分の体を客観的にとらえることがまだ難しい子どもの場合です。

日本糖尿病対策推進会議でも下のようなポスターで、子どもへのケアを呼びかけています。

画像出典:https://www.med.or.jp/dl-med/tounyoubyou/poster_syouni.pdf(日本糖尿病対策推進会議)

ポイント③食品について知る:表示を利用

貼られている表示を利用して、食品について知ることも大切です。

容器や包装で確認

食品添加物の表示は食品表示法(平成25年制定)で義務付けられています。容器や包装があれば表面の「添加物表示」で確認できます。

<生鮮食品>
<加工食品>

参考・画像出典:“食品添加物表示に関するマメ知識”

バラ売りの場合

バラ売りの場合、ポップや値札等の表示で確認できます。

表示がない時は?

容器・包装の表示面積が小さかったり、小さなお店の手づくり食品など小規模業者の販売形態への配慮もあり、表示が免責されている場合があります。知りたい時は、販売店舗や製造者に問い合わせましょう。

参考・画像出典:“食品添加物表示に関するマメ知識”

人工甘味料とSDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」との関係

最後に人工甘味料とSDGsの関係をみていきましょう。

人工甘味料について正しく知り、有効に利用していくことは、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」に深く関わっています。

目標3には13のターゲットがあります。その1番最後のターゲットは「健康リスクの早期警告やリスク軽減・管理のための能力を強化する」です。

人工甘味料について正しく知り、摂り過ぎに気を付けながらメリットも利用していくことは、発がん性や高血糖リスクの軽減・管理に直結します。

人生100年時代と言われる中、健康を維持しながら生き続ける仕組みを持つことは、持続的な社会をつくる基本と言えるのではないでしょうか。

【関連記事】SDGs3「すべての人に健康と福祉を」私たちにできること・日本の取り組み事例

まとめ

糖は私たちの体に不可欠なエネルギー源であり、全く摂らないわけにはいきません。そして甘味は私達ヒトに生来備わっているもので、満足感・幸福感を味わわせてくれます。

人工甘味料のもつ<カロリー0>という特徴は、正に諸刃の剣となることをお話ししてきました。研究や臨床経過もまだ途上であることを考えれば、私達一人ひとりが、摂り過ぎに十分気を付けて上手に利用していくことがとても大事です。

健康志向が広がってきた現代ですが、食ベ物・飲み物の「表示」を今までより少しでも数多く、深く読むなど、さらなる1歩を踏み出していただければと思います。

<参考資料・文献>
人工甘味料(じんこうかんみりょう)とは? 意味や使い方 – コトバンク
砂糖以外の甘味料について
腸内細菌と健康 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
内閣府食品安全委員会
Aspartame hazard and risk assessment results released(WHOホームページ)
人工甘味料「アスパルテーム」に発がん性の可能性 | 公益社団法人 日本WHO協会
アスパルテームに関するQ&A | 食品安全委員会 – 食の安全、を科学する
WHO 人工甘味料「アスパルテーム」に発がん性の可能性示す | NHK | WHO
大阪府/一般用加工食品の表示について
令和元年度 マーケットバスケット方式による 甘味料の摂取量調査の結果について
“食品添加物表示に関するマメ知識(厚生労働省)”
甘味の基礎知識
人工甘味料「アスパルテーム」に発がん性の可能性 | 公益社団法人 日本WHO協会
https://www.who.int/groups/joint-fao-who-expert-committee-on-food-additives-(jecfa)
アマゾン
食の安全性:上田成子(朝倉書店)
食品添加物用語の基礎知識:小藪浩二郎(マガジンランド)
甘味の文化:山辺典子(ドメス出版)
食をめぐるほんとうの話:阿部尚樹他(講談社)
人はなぜ太りやすいのか:M.L.パワー/J.シュルキン;山本太郎訳(みすず書房)
SDGs:蟹江憲史(中央公論社)