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世界海洋デーとは?具体的に何をする?目的やテーマ、私たちにできることも

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地球上の面積の約7割を占める海には、海洋資源や生態系などが存在し、私たちはその恩恵を受けて暮らしています。しかし近年は、気候変動や違法・過剰な漁業などによって、海洋のバランスが崩れつつあります。そんな海洋環境や生態系を守るために、国際連合が定めたものの1つが、「世界海洋デー」です。

本記事では、

  • 世界海洋デーの歴史
  • 世界海洋デーが必要な理由
  • 何をする日なのか
  • 私たちにできること
  • 世界海洋デーとSDGsとの関係性

などを紹介します。

まずは、世界海洋デーとは何かを知りましょう。

世界海洋デーとは

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「世界海洋デー(World Ocean Day)」とは、海と人のつながりや、海の大切さ、海を守る方法などについて考える日のことです。

主に、

  • 人間の行動が海にもたらす影響について考える
  • 海洋保護のための国際的な市民運動の促進
  • 海洋の持続可能な管理プロジェクトを進めるために世界中の人々と団結する

などを目的に制定されました。

世界海洋デーは、国連によって年ごとにテーマが設定されており、世界各国でイベントが開催されます。

歴史

世界海洋デーは、1992年にリオデジャネイロで行われた地球サミットにて、カナダが「世界海洋デー」の構想を提案したことがきっかけとなり始まりました。その後、2002年にはオーシャンプロジェクトが各国のパートナーと協力し、世界海洋デーの世界的な推進と調整を開始しています。

2003年には、世界海洋デーに関するイベント主催者を支援するWEBサイト「World Ocean Day」も開設されました。そして、2008年12月に開催された国連総会にて、「2009年から、6月8日を世界海洋デーにすること」が正式に決定しました。

なぜ世界海洋デーが必要?

世界海洋デーが必要な理由として、下記の問題が挙げられます。

海洋プラスチックごみ問題

近年問題になっている海洋ごみですが、その中でも最も多いのが「プラスチックごみ」であり、全体の65.8%を占めています。毎年、約800万トン(ジャンボジェット機5つ分)ものプラスチックごみが海に流出しているのです。そして、プラスチックは消失しにくい素材のため、物によっては400年以上も海中を漂うこともあると言われています。

また海洋生物たちへの影響も大きく、魚類や海鳥、ウミガメ、海洋哺乳類などが被害に遭っています。これ以上の被害を増やさないためにも、プラスチックごみ削減に取り組まなければいけません。

【関連記事】プラスチック問題とは?現状の排出量と環境・海への影響、SDGsとの関連性

海洋酸性化

海洋酸性化は、本来弱アルカリ性である海水が酸性になる、または酸性に近づくことです。これにより、

  • 地球温暖化が加速する可能性
  • 海洋生物の成長を阻害
  • 漁業における予測が立てにくくなる

などの問題が懸念されています。

【関連記事】海洋酸性化とは?原因や生物に与える悪影響をわかりやすく解説

増加する水産物需要の裏で起きている乱獲やIUU漁業

近年、水産物の需要は世界的に高まっており、1人あたりの魚介類の消費量は、過去半世紀で約2倍に増加しています。国連も、2040年の世界人口が90億人になると予測しており、世界の水産物需要はますます増加していくでしょう。しかし世界の水産資源は、満限利用状態が53%、過剰利用または枯渇状態が32%と、あまり良い状況とは言えません。

過剰利用や枯渇状態の原因の1つとして乱獲やIUU漁業(※)が挙げられます。このまま、海洋環境や生態系に配慮せずに獲り続けると、海洋生態系のバランスが崩れ、水産資源の減少に拍車をかけてしまうでしょう。

(※)IUU漁業

違法・無報告・無規制で行われる漁業のこと

これらの問題が発生しているため、その現状を知り、「どのような対策がとられているのか」「私たち個人にも、できることはないのか」と調べ、行動に移すために世界海洋デーは必要なのです。

世界海洋デーのテーマ

先述した通り、世界海洋デーは年ごとにテーマが設定されています。例えば、2009年に初めて開催された世界海洋デーのテーマは、「Our oceans, our responsibility(私たちの海洋、私たちの責任)」でした。そして、2023年に設定されたテーマは「Planet Ocean: Tides are Changing(プラネットオーシャン:潮流の変化)」です。

2023年のテーマは「Planet Ocean: Tides are Changing」

2023年のテーマである「Planet Ocean: Tides are Changing(プラネットオーシャン:潮流の変化)」には、海洋問題に対する意識(潮流)も変化しつつあるが、更なる変化を目指して、行政や研究機関、NGO、企業、個人などすべての人々が、一丸となり取り組んでいくことを促進しようというメッセージが込められています。このテーマを基に、さまざまな企業や団体がイベントを開催しています。

世界海洋デーは何をする日?

では、世界海洋デーは具体的にどのようなイベントが開催されているのでしょうか。

世界で開催されたイベント

まずは、世界で開催されているイベントを見ていきましょう。

【国連】「UNWorldOceansDay2023」

国連は、世界海洋デーである6月8日に、オンラインイベント「UN WorldOceansDay2023」を開催しました。このイベントでは、あらゆる分野で海洋を優先する必要性についての議論が行われ、国際宇宙ステーションからのメッセージも上映されました。その他にも、世界海洋デー写真コンテストの受賞者の発表なども行われています。

イベントの様子は下記URLから視聴できますので、気になる方は覗いてみてください。

>> UNWORLD OCEANS DAY2023公式サイト

【Ocean Week Canada】多様な海洋関連のイベントを開催

Ocean Week Canadaは、世界海洋デーを含む6月2日~11日の期間に行われる海洋イベントです。期間中は、ビーチクリーンやワークショップ、映画の上映、アート展示、講座など、多様な海洋関連イベントが開催されます。参加者は、このイベントを通じて、海が私たちの生活の中ではたしている重要な役割や、人と海とのつながりなどを認識できます。

【Twinkl 】海洋生物に関する教材や子供向けの海洋保護活動への参加方法を公開

幼児から小学生を対象とした、知育・学習教材の出版社であるTwinklは、2023年の世界海洋デーに向けて海洋生物に関するゲームやパズル、電子書籍などを公開しました。そのなかでも「World Ocean Day lapbook(世界海洋デーのラップブック)」は、「子どもたちが海洋について学ぶ方法として、最も実践的な方法だ」と評価を得ています。

さらにTwinklは、オーシャンプロジェクトと協力し、小さい子どもたちも海洋保護活動に参加できる方法をブログに投稿しました。

(※)ラップブック

アメリカのホームスク―ルの先生が考案した、紙製のフォルダーを使ったプレゼンテーションボード

日本で開催されたイベント

日本でも、様々なイベントが開催されています。

【日本財団】「春の海ごみゼロウィーク2023」

「海ごみゼロウィーク」とは、海洋ごみ問題へ対する活動を広めようと、「海ごみゼロ」を合言葉に、日本財団が2019年から開催している全国一斉清掃活動です。期間は、5月30日の「ごみゼロの日」と6月5日の「環境の日」、そして6月8日の「世界海洋デー」を含む、5月27日~6月11日までとなっています。

期間中は、ユニークなイベントが多数開催されます。例えば、今年の海ごみゼロウィークのキックオフイベントでは、「コスプレde海ごみゼロ大作戦2030」と題し、コスプレイヤーの人々が大阪府なんばの街を清掃。その後、きれいにした街の中で撮影会を行います。毎年SNSでも盛り上がるイベントの1つとなっています。

またイベント以外にも、個人でごみ拾いを行い、SNSに「#umigomi」をつけて投稿するという参加方法もあります。

【株式会社サンリオ×南房総市】海洋ごみからできたアート動画を公開

南房総市は、以前から海洋汚染問題に対する取り組みとして、月1回のビーチクリーンの開催と、回収した海ごみをアート作品にする活動を行っています。今回は、SDGsについて動画配信を行っている株式会社サンリオが活動の様子を取材し、世界海洋デーの日に公開しました。

動画では、プラスチックごみや南房総市の浜辺の現状、活動の様子などが分かります。「世界海洋デーだから何かしたいけれど、忙しくてイベントに参加できない」という方にも、動画の視聴であれば気軽にできるためおすすめです。

世界海洋デーに私たちができること

ここからは、私たちにできる取り組みを紹介します。世界海洋デーが過ぎても、取り組めるものばかりですのでぜひ参考にしてみてください。

まずは海洋環境や生態系の現状を知ろう

まずは世界や日本の海の現状、どのような問題が起きているのかなどを調べてみましょう。

「海洋環境を改善したいから、ごみ拾いをする」「持続可能な方法で獲られた水産物を購入したいから、認証マークのついた製品を選ぼう」など、自身が行うアクションに、どのような効果があるのか理解したうえで行動できるようになれば、継続にもつながるはずです。

プラスチック製品の使用を控える

プラスチック製品の使用を控え、ごみを生み出さないようにすることも大切です。

主な行動としては、

  • 外出先でペットボトルの飲み物を購入するのではなく、マイボトルを持ち歩く
  • レジ袋やプラスチックカトラリーを受け取らない
  • 過剰包装ではない製品を選択する
  • 使い捨てのビニール傘の使用を控える
  • プラスチック製品を購入する前に、代替できないか考える
  • 使用した場合は決められた場所に捨てる(放置したりポイ捨てをしたりしない)

などが挙げられます。

今日からでも始められるアクションばかりですので、ぜひチャレンジしてみてください。

魚介類を購入する際は認証マークがついたものを選ぶ

海洋環境や生態系に配慮し、持続可能な方法で獲られた水産物には「MSC認証マーク」が、養殖された水産物には「ASC認証マーク」が付いています。私たちが認証マークのついた水産物や加工品を選ぶことによって、持続可能な海洋環境や水産資源の保全につながります。

最近は、自社製品にMSCまたはASC認証の水産物を活用している企業も多く、

  • マクドナルド
  • イオントップバリュ
  • IKEA
  • セブン-イレブン
  • co-op
  • マルハニチログループ
  • ニッスイグループ

などが取り扱っています。

どちらも魚のマークがついているため見つけやすいと思いますので、水産物を購入する際は探してみてください。

街中や浜辺のごみ拾いに参加する

「海洋ごみ」を削減するために、ごみ拾いを個人で行ったりイベントに参加したりしましょう。海洋ごみの8割は街からきていると言われているため、街中のごみ拾いも海洋環境や生態系の保全につながります。なかには、ごみ拾いをしながら通学や通勤している人もいるようです。

また最近は「スポGOMI」や「清掃中」など、ゲーム感覚で楽しくごみ拾いを行えるイベントも増えています。世界海洋デーに合わせて開催するごみ拾いイベントも多いため、職場の人や友人を誘って参加してみましょう。

【関連記事】ビーチクリーン活動に参加しよう|参加方法や服装・持ち物、取り組み団体の紹介も

世界海洋デーとSDGs

最後に、世界海洋デーとSDGsの関係性を見ていきましょう。

SDGsとは、2015年9月に開催された国連総会にて、193カ国が賛同し決定した国際目標のことです。地球上で起きている、環境・社会・経済の課題を解決するために、17の目標と169のターゲットが設定されました。

現在、政府や企業、個人が、2030年までにすべての目標達成を目指し、様々なアクションに取り組んでいます。そして、世界海洋デーをきっかけに、海洋環境や生態系について考え行動に移す人が増えると、SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」の達成につながると期待されているのです。

目標14「海の豊かさを守ろう」

目標14は、キャッチコピーの通り「海」に関する内容となっており、

  • あらゆる海洋汚染の防止と大幅削減
  • 海洋や沿岸に暮らす生態系の保全と持続的管理
  • 海洋酸性化の最小化
  • 水産資源を持続可能な生産量のレベルまで回復させる
  • 海洋や沿岸を最低でも10%保全する
  • 過剰漁業につながる漁業補助金とIUU漁業につながる補助金の禁止や撤廃

などが挙げられます。

そのため、海洋環境や生態系の大切さ、保全する方法などについて考える「世界海洋デー」が広まることによって、行動を起こす人が増え、結果的に目標14の達成に近づくのです。

【関連記事】SDGs14「海の豊かさを守ろう」現状と課題、日本の取り組み事例、私たちにできること

SDGsは「国連海洋科学の10年」とも密接に関わっている

また2021年からは、世界海洋デーとも関係が深い、「国連海洋科学の10年」もスタートしています。

「国連海洋科学の10年」とは、「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」の略であり、SDGs目標14を達成するために、ユネスコが中心となり2021年~2030年の10年間、

  • 各国政府
  • 科学者
  • 産業界
  • 市民団体

などと共に、海洋環境を守るために集中的に活動することを宣言しています。

「国連海洋科学の10年」では、下記の達成すべき7つの目標が掲げられています。

きれいな海汚染物質の人や生物への影響を調査する
健全で回復力のある海海洋環境の急変によって起こる生態系の異変を調査する
予測できる海海洋で発生する様々な現象を正確に測定できるようにする
夢のある魅力的な海世界中の人々が対話や議論を通じて、海の魅力や価値を十分に理解し利用する。海洋環境や生態系を、守るための行動ができる社会を目指す
安全な海多様な海洋災害から暮らしを守るために、新技術を活用した災害警報システムの開発を行う
生産的な海漁獲量の減少を改善し、持続的に水産物を確保できる海を目指し研究を行う
万人に開かれた海海洋調査で得た情報を、誰もが利用できる仕組みを構築。発展途上国への、海洋情報の正しい活用方法を啓発する

この7つの目標達成には、科学者が研究を進めることは勿論ですが、「Ocean Stakeholder(海洋利害関係者)(※)」と協働でプロジェクトを行うことも重要だと言われています。

(※)海洋利害関係者

政策決定者(文部科学省)や外部資金提供者、財団、民間企業、海洋関係の職に従事している人々など

まとめ

海洋環境や生態系の大切さ、保全の方法などを考える日である「世界海洋デー」。毎年6月8日は、海や世界海洋デーのテーマに沿ったイベントが世界各国で開催されます。多くの人が海に関心を持ったり、行動に移したりするきっかけとなるでしょう。

1人ひとりが現状や課題を把握し、無理のない範囲で取り組むことによって、海洋環境の保全や海洋資源の回復につながります。そして、その取り組みが結果的に、SDGs目標14の達成にも貢献するのです。日本でも世界海洋デーの日は、さまざまな場所でイベントが開催されています。ぜひ参加してみてください。参加が難しい方は、海洋について調べたり自分にもできそうなことを探してみたりすると良いかもしれません。

〈参考文献〉
6月8日(金)、世界海洋デー記念「日本から考えるSDG14:海の豊かさを守ろうシンポジウム」開催|国際連合広報センター
6月8日は World Ocean Day(世界海洋デー)|公益財団法人 日本自然保護協会
「世界海洋デー」(6/8)|公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター
「世界海洋デー」(6/8)|ユネスコスクール
使命と歴史-世界海洋デー|The World Ocean Day Youth Advisory Council
【増え続ける海洋ごみ】今さら聞けない海洋ごみ問題。私たちにできること|日本財団ジャーナル
海洋酸性化の知識|気象庁
【解説】海から貝が消える? 海洋酸性化の危機|国立研究開発法人 国立環境研究所
(1)世界の水産物需給をめぐる状況|水産庁
海洋酸性化の知識|気象庁
【解説】海から貝が消える? 海洋酸性化の危機|国立研究開発法人 国立環境研究所
私たちの水産資源~持続的な漁業・食料供給を考える~|水産庁
IUU漁業について|WWFジャパン
World Oceans Day|UNESCO
Ocean Week Canada
World Ocean Day 2023: Partner spotlights|World Ocean Day
「春の海ごみゼロウィーク2023」始まります! 各地のイベントにもご注目|日本財団
日本財団・環境省主催!コスプレイヤーと共に盛り上げるごみ拾いイベント「コスプレde海ごみゼロ大作戦2023春」参加募集開始!!|PRTIMES
6月8日“世界海洋デー”にハローキティチャンネルにて「海のゴミ拾いでアート」動画公開!|PRTIMES
今、知っておきたい 海洋ごみの事情|日本財団 海と日本PROJECT
持続可能な開発のための国連海洋科学の10年パンフレット|国立研究開発法人 海洋研究開発機構
「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」(2021-2030)が始まりました|国立研究開発法人 海洋研究開発機構
SDGs(持続可能な開発目標)|蟹江 憲史 著|中央公論新社