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【熱帯雨林の中にあるワニ園】オーストラリアのハートレーズクロコダイルアドベンチャーズは自然との共存を目指す動物公園

オーストラリアの動物=コアラやカンガルーを思い浮かべがちですが、実は野生のワニも広範囲に生息していることはご存知でしょうか?

大型の河口ワニと小型の淡水ワニの2種類が生息しており、河口ワニはクイーンズランド州内にて「1992年自然保護法」の下で保護されています。

今回は、そんな河口ワニを飼育するワニ園・ハートリーズクロコダイルアドベンチャーズが行うエコ活動に着目していきます。

環境保全への取り組みはもちろん、哺乳類と比べて軽視されやすいワニの保護に関する啓発活動も併せてご紹介するので、オーストラリアの野生動物に興味がある方はぜひチェックしてくださいね。

ハートレーズクロコダイルアドベンチャーズの歴史

ハートリーズクロコダイルアドベンチャーズ(Hartley’s Crocodile Adventures)は、ケアンズの農場の跡地に建てられたワニ園です。

作物の栽培と馬の牧草地を確保するために1960年代から1970年代にかけて開墾されたものの、土壌が粘土質であったことから農場として不向きな土地でした。

1980年代には荒廃し、雑草による森林火災によって周辺の熱帯雨林が被害を受けるなどのトラブルが度々発生していましたが、1990年代後半になって動物公園として開園するための準備がスタートします。

雑草の撲滅と在来種の植樹によってオーストラリアの本来の自然に近い状態を取り戻し、2002年に河口ワニと淡水ワニを飼育するハートリーズクロコダイルアドベンチャーズとして開園しました。

熱帯雨林の中にある唯一のワニ園!

ケアンズの市街地から車で45分程度のハートリーズクロコダイルアドベンチャーズは、世界遺産に登録されている熱帯雨林の中にあります。

敷地は約3.5ヘクタールと広大で、湿潤熱帯管理局との登録協定によって土地開発や伐採などが禁止されているエリアに位置しています。

ワニだけじゃない!ハートレーズクロコダイルアドベンチャーズで見られる動物とは?

クロコダイルアドベンチャーズという名称から、ワニしかいないというイメージを抱く方も多くなっているものの、ハートリーズクロコダイルアドベンチャーズではさまざまな種類の動物を飼育しています。

コアラ、カンガルー、ワラビーといったオーストラリアを代表する動物はもちろん、ウォンバット、ヒクイドリ、コウモリ、小型の爬虫類、鳥類をはじめとする多種多様な動物を見られます。

入場料金にはボートに乗ってワニを観察するアクティビティが含まれており、ほかにも飼育スタッフによるガイドツアー、動物への餌やり体験、コアラとの記念撮影などを楽しめる点が特徴です。

ハートレーズクロコダイルアドベンチャーズが取り組む環境保全マネジメント

世界遺産である熱帯雨林の中に位置していることから、ハートリーズクロコダイルアドベンチャーズでは環境保全に力を入れています。

建物の設計におけるエネルギーと節水の効果が認められ、持続可能な建築部門においてハリー・マークス賞を受賞しました。

ここでは、ハートリーズクロコダイルアドベンチャーズが実際に行っているエコ活動の詳細を見ていきましょう。

節水

ハートリーズクロコダイルアドベンチャーズが位置するエリアには水道がないため、各施設では主にハートリーズクリーク(Hartleys Creek)から汲み上げた水を利用しています。

飲料用以外の水は雨水を有効活用しており、園内にある貯蔵タンクに雨水を貯めています。

また、限りある資源を大切に使用するために導入されているのが、二連水洗トイレです。

水圧の異なる2種類のボタンが付いており、大と小で水圧を使い分けることによって余分な水の消費を抑えています。

環境に優しいエネルギー

ハートリーズクロコダイルアドベンチャーズでは、環境負荷低減を目指して再生可能エネルギーを導入しています。

295枚のソーラーパネルを完備し、99Kwの電力をオフィス、園内施設、レストランなどに供給しています。

また、屋根と壁には断熱パネルを設置しており、室内温度を下げることでエアコンの使用率を下げているのも特徴です。

特に園内にある2つのレストラン・リリーズレストラン及びゴンドワナグリルは、オープンレストラン風のデザインにすることで自然な喚起と照明を取り入れています。

日が当たりにくい屋内の照明には低電圧タイプのLEDを使用しており、環境に優しい電力を選択しています。

リサイクルの強化

ハートリーズクロコダイルアドベンチャーズは、プラスチックごみの削減を目指して一般ごみやリサイクルといった分別用のごみ箱を長年にわたって設置しています。

しかし、ごみの分別に関心のない観光客や、誤った認識による不適切なごみの投棄が続いたことから、ハートリーズクロコダイルアドベンチャーズではスタッフによる廃棄物の分別が行われています。

分別されたプラスチック製品は、ペットボトルリサイクルプログラムとして地元の生息地と野生生物を助ける環境プロジェクトに役立てられています。

また、バックヤードで出た段ボール箱などに関しては、毎日回収した後に商業リサイクル品として処理されています。

廃棄物の有効活用

ワニ以外にも多種多様な動物が見られるハートリーズクロコダイルアドベンチャーズでは、1日中滞在する観光客向けにレストランを運営しています。

揚げ物などを多く取り揃えていますが、レストランでは本来廃棄となる天ぷら鍋の廃油をバイオ燃料として再活用しています。

ワニの生態系に関する啓発

ハートリーズクロコダイルアドベンチャーズでも飼育されている河口ワニ (Crocodylus porosus) は、クイーンズランド州の保護種です。

狩猟によって戦後に約3,000頭まで減少したものの、現在では約10~20万頭まで回復しており、個体数を再度減らさないためにもワニに関する正しい知識を持つことが大切です。

しかし、人やペットを襲うこともある河口ワニ=害獣と認識されることも多く、人々が保全への関心を持ちにくい傾向にあります。

爬虫類はコアラやカンガルーと比べると軽視されやすいこともあり、ハートリーズクロコダイルアドベンチャーズでは飼育スタッフによるガイドツアーやトークアクティビティなどを徹底しています。

河口ワニの生態はもちろん、絶滅が危惧されていること、保全の必要性が高いことなどを伝えることで、来場者が正しい知識と認識を持つことを目的としています。

植樹プログラムと樹木のケア

ハートリーズクロコダイルアドベンチャーズの敷地内には、7,000本以上の樹木や低木が植えられています。

農場から動物公園に作り替える際、雑草を除去して在来種の苗木を植えるという植樹プログラムが行われました。

苗木は樹木として育った後もケアが続けられ、現在では熱帯雨林の生態系の一部として機能しています。

また、樹木の周辺には人口の水域なども形成されており、水鳥、爬虫類、水生生物などの野生生物が見られる希少な生息地となっています。

森林火災への対策

赤道に近いオーストラリア北部は気温が上昇しやすく、乾燥による干ばつが頻発しています。

空気が乾燥することで山火事の発生率が高くなるため、国内では何に数回の森林火災が起きている状況です。

熱帯雨林の中に位置しているハートリーズクロコダイルアドベンチャーズでは、熱帯雨林の生態系を守るために森林火災マネジメントを徹底しています。

元々農場であったことから、敷地内には広範囲にわたって雑草が生い茂っていました。

しかし、雑草はオーストラリアの在来種よりもバイオマスが多く、熱帯雨林の中では森林火災の被害が深刻になりやすいという特徴があります。

ハートリーズクロコダイルアドベンチャーズは長い年月をかけて雑草の除去と在来種の植え替えを行い、現在は29ヘクタールの敷地内を森林火災のリスクが低い在来種が埋め尽くしています。

また、森林火災に備えて消火設備なども完備しており、いざという時でも迅速に対応できるようにスタッフのトレーニングを強化している点もポイントです。

まとめ

ハートリーズクロコダイルアドベンチャーズは、ワニへの保全意識向上や自然環境との共存を目指しているワニ園です。

節水、再生可能エネルギー、廃棄物などの環境問題はもちろん、森林保護にも力を入れることでワニを含む生態系の維持や保護に貢献しています。

地球の未来を守るためにも、可愛い野生動物だけでなくワニなどの爬虫類の保全についても考えていきたいですね。