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ISO規格?14001とは?意味ない?ISO9001との違い・認証取得方法と企業の取り組み事例を簡単に解説

ISO14001とは?読み方やメリット・デメリット、企業の取り組み事例・SDGsとの関係

持続可能な開発が世界的に進められている今、企業などの組織が長期的に成長していくためには、地球環境に配慮した経営が欠かせなくなっています。

その中で、組織は取引先や顧客からの信頼を高めるために、環境に対する取り組みとその成果を示すことが重要です。環境に関する国際規格である「ISO14001」を取得することは、組織の姿勢を打ち出す一つの手段になるでしょう。

この記事では、ISO14001とは何か、メリットやデメリット、認証を取得する流れや取り組み事例を、ISO14001とISO9001を持つメーカーに勤務していた著者が紹介します。

目次

ISO14001とは?読み方は?簡単に解説

ISO14001とは、製品の製造やサービスの提供といった活動による企業の環境への負荷を最小限にするように定めた国際規格です。

環境を保護する取り組みの成果を向上させるために、組織が方針や目標を定めて管理する仕組みのことで、主に環境保護に取り組む企業が取得しています。

ISO14001の読み方は「アイエスオーイチマンヨンセンイチ」です。

詳しい内容に入っていく前に、まずISOとその後ろの数字の意味について確認していきましょう。

ISO規格とは|数字の意味も確認

ISOとは、国際標準化機構(International Organization for Standardization)の略で、電気・通信、電子技術分野を除く全産業に関する国際規格の策定を行っている民間の機関です。

ISOの後ろの数字は規格番号を指しており、現在1から90000番代まであります。この番号は、規格が検討された時点で振られますが、実際は採用されない場合もあるため、必ずしも連番になっている訳ではありません。

例えば、14001の次は14004ですが、その間の番号の規格は存在していても、発行はされていないということになります。

ISO14001は環境マネジメントシステム

ISO規格の中のISO14001は、「環境マネジメントシステム」のことです。略して「EMS:イーエムエス」(Environmental Management System)と呼ばれることもあります。

1992年の「地球サミット」(UNCED:国連環境開発会議)において、地球環境の保全と持続可能な開発がテーマになったのをきっかけにISOの規格策定が始まり、1996年より発行されています。

具体的な規格内容は、「ISO14001規格要求事項」にまとめられており、組織はそれに沿って環境に対する取り組みを決めて文書化します。大まかな項目は下記の通りです。

  1. 組織が環境に対してどのような影響を与えているかを整理する
  2. 組織のリスクへの備えや、環境影響を管理するなどの計画をつくる
  3. 計画を運用するための手順を整える
  4. 取り組みの成果を評価する方法を決める
  5. 取り組みの改善をする方法を決める

上記を実際に運用した後、ISO審査機関にて審査を受けます。

日本の認証機関でISO14001を取得しているのは12,342。産業別では、建設が最も多く3,057件、次に基礎金属、加工金属製品の2,549件です。(2025年3月10日現在)[1]

ISO14001における環境とは

ISO14001における環境とは、「大気、水、土地、植物、動物、人」に加えて、「それらの相互関係を含む組織の活動をとりまくもの」とされています。

つまり、組織だけでなく、顧客や取引先、従業員、また近隣地域や地方のほか、世界に向けても環境への配慮が必要ということです。ボランティア活動に参加して、地域の環境保全に努めるなどの活動も含まれます。さらに、生物多様性や生態系、気候などへの影響も考えなければなりません。※[2]

その他のISO|ISO9001との違いは?

 ISO規格はISO14001以外にもあります。

  • ISO9001(品質マネジメントシステム)
  • ISO27001 (情報セキュリティマネジメントシステム)
  • ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム)など

このうち、ISO9001はISO14001と共に取得している企業も多いといわれています。

ISO9001とISO14001の違い

ISO9001は製品・サービスの品質向上にフォーカスを当てた規格です。
一方、ISO14001は製品を作る上での環境リスクの低減など環境にフォーカスを当てた規格となっています。

では、ISO14001を取得する理由や目的について、実際に認証を受けた企業のアンケートなども参照しながら見ていきましょう。

なぜISO14001が大切なの?取得理由や目的

イメージ画像

ISO14001が重要視される背景には、近年の環境に関する法律の制定や環境汚染、気候変動などの解決を目指すために、持続可能な社会の実現が求められていることが挙げられます。

これは、組織においても求められているもので、環境に対して貢献することを事業活動の中に盛り込まなければならないとの認識が持たれるようになっています。

そこで、環境に配慮した優良で信頼できる組織であることの証として活用するISO14001が注目されているのです。

続いてはより踏み込んで、企業がISO14001の取得を目指す理由をアンケートをもとに見ていきましょう。

今回参考にするアンケートは、すでにISO14001認証を受けた企業のうち、製造業と建設業のISO14001の担当者と内部監査員、それぞれ100名程度を対象にした、取得や継続の目的を聞いたものです。

 顧客や発注者に自社の透明性、環境への配慮を示すため

■質問:「あなたが所属する企業のISO14001の認証取得または認証継続の意図について、最も当てはまるものを一つ選んでください」

ISOマネジメントシステム認証制度の活用の実態調査とその活用に向けて
出典元:公益財団法人日本適合性認定協会「ISOマネジメントシステム認証制度の活用の実態調査とその活性化に向けて」2019年度実施

「非常にあてはまる」と「あてまはる」と答えた人を合わせると、上から4つ目までは、顧客または発注者に対して自社の事業活動の透明性や環境への配慮を示す」ことが目的であり、8割を超えています。

また、「顧客または発注者から、ISO14001の取得を要求されたため」という回答も半数近くあり、必要に迫られて取得するケースも少なくありません。

社外に向けた自社の戦略的な理由以外にも、やむを得ずに取得する状況になることも考えておく必要があるでしょう。

ISO14001のメリット

では、ISO14001にはどのようなメリットがあるのでしょうか。早速見ていきましょう。

取引先や顧客へアピールできる

一つ目のメリットは、取引先や顧客に対してプラスのイメージを持ってもらえることです。

前項で取り上げたアンケートの別の質問とその回答を見てみましょう。

■質問:「通常、ISO14001の認証を取得することによって得られるメリットについて、最も当てはまるものを一つ選んでください」

ISOマネジメントシステム認証制度の活用の実態調査とその活用に向けて
出典元:公益財団法人日本適合性認定協会「ISOマネジメントシステム認証制度の活用の実態調査とその活性化に向けて」2020年度実施

「ISO14001を取得すると企業のプラスイメージになる」と回答したのは70%余りに上り、非常に高い数字になっていることが分かります。

反対に、「取得していないことで企業のマイナスイメージになる」と回答している人も半数と、認証取得が不可欠になっている傾向も見られます。

それだけISO14001は国際規格としての信頼を得ており、企業イメージを上げることができると考えられるでしょう。

投資家へのアピールにもなる

ISO14001を取得すると、投資家へのアピールにもなります。

もう一つのアンケート結果を見ていきましょう。

■質問:「ISO14001を取得して、企業にどのような効果をもたらしたと思いますか」

ISOマネジメントシステム認証制度の活用の実態調査とその活用に向けて
出典元:公益財団法人日本適合性認定協会「ISOマネジメントシステム認証制度の活用の実態調査とその活性化に向けて」2019年度実施※赤枠は著者

下から3番目の投資家に対し、透明性を示すことができたという回答は60%を超えており、投資家に対して規格取得が好材料に働いていることが分かります。

近年、環境・社会・企業統治の観点から、企業の長期的な成長を分析して投資や融資を行う「ESG投資」が広まり、市場規模も拡大しています。

繰り返しになりますが、ISO14001は環境マネジメントであるため、取得することで投資家へのアピールに繋がり、資金調達を有利に進められることが考えられるのです。

【関連記事】ESG投資とは?仕組みや種類、メリット・デメリット、企業の事例も

コスト削減

ISO14001の環境マネジメントシステムを準備する中で、環境に対する行動計画などを作成していくと、より、自組織の資源やエネルギー、作業の無駄や効率の悪さに気づくきっかけになる場合があります。

これまでのやり方を見直して体系的に取り組むことで、環境への配慮という面だけでなくランニングコストや人件費などの削減も可能になるでしょう。

保険料を節約できる

ISO14001認証を受けた企業を対象に、企業賠償責任保険の保険料を割り引く損害保険会社もあります。


損害保険会社がISO14001の認証取得に対するインセンティブを出すことで、ISO14001システムはより導入する企業が増えることが予想され、損害保険会社は環境配慮型金融としての役割を果たすことができます。

また、環境リスクの低い企業だと、保険金支払いの可能性が低いと考えられることも理由の一つです。

そのため、ISO14001認証を受けることでが保険料の節約につながります。

ISO14001は意味ない?デメリット

一方で、ISO14001にはデメリットもあります。3つのポイントを見ていきましょう。

取得・維持にはコストがかかる

メリットの章では、これまでの無駄を省けるという観点からコスト削減を提示しました。しかし、ISO14001を取得・維持していくためにはコストが発生することを理解しておかなければなりません。

ISO14001の審査機関は35ありますが(2023年6月23日現在)、料金はそれぞれ異なります。例として、審査機関の一つである公益財団法人日本適合性認定協会の初回登録時にかかる費用を確認していきましょう。

※すべて税抜きです。

■手数料等

申請料基本500,000円

登録料基本500,000円

■審査関連費用

初回審査費用644,000円~

審査付帯費用:移動費/宿泊費10,000円×審査員数×泊数

■維持費

年間200,000円~

年収リンク維持料:固定額の場合20万円~

取得後には、正しく運用されているかを確認するサーベイランス審査料もかかります。[3]

上記は、取得する上でかかる最低限の費用です。加えて、申請内容や組織の規模によっては追加料金も必要となり、合計すると、決して小さな額ではありません。

🖋認証機関は、公益財団法人日本適合性認定協会のデータベースで探すことができます。

従業員への教育が必要

環境マネジメントシステムを作成して運用手順や取り組みなどを決めても、従業員がそれらを確実に実践するための教育が必要です。そのため、業務が定着するまでにはある程度の期間がかかる可能性があります。

また、ISOを導入したことにより業務の負担が増える場合、従業員に説明して理解してもらう必要があるでしょう。

ここまでISO14001について説明してきました。では、実際にISOを取得する手順について次に解説していきます。

継続的な改善が求められる

ISO 14001の継続的な改善の要求は、企業が環境管理システムを導入した後も、環境パフォーマンスを向上させるために不断の努力を求めるものです。具体的には、定期的に内部監査やレビューを行い、環境目標の達成状況を評価し、必要に応じて改善策を講じます。

このプロセスは、環境負荷の低減を目指すだけでなく、法規制の変更や新しい技術の導入にも柔軟に対応することが求められます。

改善活動が継続的に行われることで、企業の環境への配慮が深化し、より効率的な運営が可能になりますが、その分、リソースや時間が必要となるため、管理負担が増えることもあります。

ISOの資格一覧

ISOの資格には多くの種類がありますが、代表的な資格は以下の通りです。

  • ISO 9001(品質管理)
  • ISO 14001(環境管理)
  • ISO 45001(労働安全衛生)
  • ISO 27001(情報セキュリティ)
  • ISO 22000(食品安全)
  • ISO 50001(エネルギーマネジメント)
  • ISO 13485(医療機器)
  • ISO 20121(イベント持続可能性)
  • ISO 22301(事業継続管理)
  • ISO 17025(試験所及び校正機関)

これらの資格は、企業の品質管理や環境管理、安全管理など、さまざまな分野に関連しています。

ISO 9001(品質管理)

ISO 9001は、企業が製品やサービスの品質を一貫して提供するための管理システムに関する規格です。主に、品質管理システムを構築・運用するためのガイドラインを提供します。

この認証は、組織の効率性を向上させ、顧客満足度を高めるために必要な手順や基準を整備するため、品質マネジメントシステムの監査員資格や内部監査員資格を取得できます。

ISO 14001(環境管理)

ISO 14001は、企業が環境管理を体系的に行うための基準を示す規格です。組織が環境に与える影響を最小限に抑えるための環境マネジメントシステムを構築し、実施することが求められます。

この規格を遵守するためには、環境マネジメントシステム監査員や内部監査員の資格が必要です。環境保護を推進する企業には不可欠な認証です。

ISO 45001(労働安全衛生)

ISO 45001は、労働者の安全と健康を守るための労働安全衛生管理システムの規格です。リスク管理を通じて、職場の安全文化を構築し、事故や病気の発生を減少させることを目的としています。

ISO 45001認証を取得した企業は、労働安全衛生管理システムを適切に運用していることを証明できます。安全衛生管理監査員や内部監査員資格が求められます。

ISO 27001(情報セキュリティ)

ISO 27001は、組織の情報を保護するための情報セキュリティ管理システム規格です。企業の情報資産を守り、リスクを管理するためのフレームワークを提供します。

この規格に従うことにより、企業は情報セキュリティの観点からも信頼性を高めることができます。ISO 27001認証を取得するには、情報セキュリティ監査員や内部監査員の資格が必要です。

ISO 22000(食品安全)

ISO 22000は、食品業界での食品安全を確保するための規格です。食材の調達から最終消費者に届くまでの全工程での安全管理を保証するためのシステムを提供します。

食品安全管理システムに従って運営することで、食品業界でのリスクを減らし、消費者に安全な製品を届けることができます。食品安全監査員や内部監査員資格が求められることがあります。

ISO 50001(エネルギーマネジメント)

ISO 50001は、エネルギー管理システムに関する規格です。企業がエネルギーの使用を効率的に管理し、エネルギーの消費を削減することを目的としています。

エネルギー管理の最適化により、コスト削減や環境負荷軽減が期待できます。この規格に基づく認証を取得するためには、エネルギーマネジメントシステム監査員や内部監査員資格が必要です。

ISO 13485(医療機器)

ISO 13485は、医療機器の品質管理システムに関する規格です。医療機器の設計、製造、販売において安全性や効果を確保するための基準を提供します。

この規格に準拠することで、医療機器の品質を高水準で保ち、規制機関からの認証を得ることができます。ISO 13485認証を受ける企業は、監査員や内部監査員資格を有する人材が必要となることがあります。

ISO 20121(イベント持続可能性)

ISO 20121は、イベントの持続可能性を管理するための規格です。イベント開催時における環境、社会、経済に対する影響を最小限に抑えることを目的としています。

この規格を採用することで、イベント主催者は環境負荷を減らし、地域社会への貢献を強化することができます。イベント業界における持続可能性監査員の資格が求められる場合があります。

ISO 22301(事業継続管理)

ISO 22301は、事業継続管理システムに関する規格です。災害や事故などによって業務が中断するリスクに対して、事業活動を継続するための計画や準備を整えることが求められます。

事業継続計画(BCP)を構築するためのフレームワークを提供し、企業はリスク管理を徹底できます。事業継続管理に関連する監査員資格が必要です。

ISO 17025(試験所及び校正機関)

ISO 17025は、試験所や校正機関が信頼性のある結果を提供できることを示す規格です。試験や計測を行う施設の品質や能力を保証するための基準を提供します。

この認証を受けた試験所や校正機関は、精度の高いデータと信頼性のある結果を提供することができます。ISO 17025に関連する資格には、試験・計測機関の監査員や技術者資格があります。

ISO14001認証を取得するには

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「ISO14001を取得する」と決めてから、どのようなプロセスを踏むのかを順に見ていきましょう。

社内の体制をつくる

まずは取得に向けて、活動する担当者やチームをつくります。コンサルタント会社に依頼する方法もありますが、その場合にも、担当者やチームを決めて一緒に進めていきます。

要求事項を理解する

これから作成する、環境マネジメントシステムを構築するための手順が書かれた「環境マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引」を入手して内容を理解します。

「環境マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引」は以下で入手できます。

閲覧のみ:日本産業調査会(JISC)(「q14001」を検索します。ユーザー登録が必要です)

購入:日本規格協会グループ

環境方針を設定する

環境を考慮した企業活動を行うに当たり、その方針を立てます。また、その方針に沿って組織が達成すべき目標を決めます。

環境マネジメントシステムを構築する

環境方針や環境目標を達成するための行動計画などを文書化します。さらに、それらの成果を評価する方法を示した資料を作成します。

運用する

構築した環境マネジメントシステムを運用します。問題点や改善点などがあれば修正し、よりよく運用できるように運用→修正を繰り返します。

審査

審査機関により、作成した文書や資料の確認(第一審査)と、運用記録や立ち合いの検査(第二次審査)を受けます。

主なポイントは、①環境マネジメントシステムが正しく機能しているか、②環境に対して適切な取り組みがなされているか、③要求事項を満たしているかです。

審査には数カ月かかります。審査を通過すると登録証が発行され、ISO14001認証を取得できます。

有効期限は3年ですが、その間も維持審査などを受けなければなりません。また、有効期限を過ぎた後も継続する場合は、更新審査を受ける必要があります。

ISOを取得すると品質保障につながる?

ISO認証を取得すると、品質保証に繋がるという点で大きなメリットがあります。ISO規格に基づく認証は、企業が品質管理のための標準的なプロセスを実施していることを証明します。

この認証を受けることで、主に3つの品質保証の効果が期待できます。

一貫した品質管理

ISO認証を取得すると、企業は品質管理のための標準的なプロセスを導入することが求められます。これにより、製品やサービスの品質が一貫して管理され、問題が発生した際には原因の特定や改善策の実施が迅速に行えます。

ISO規格では、品質方針、目的、手順が明確に定められており、すべての業務において品質管理が徹底が可能です。

これにより、製品の品質にばらつきがなくなり、長期的な安定性が保証されるため、顧客に対して信頼性を提供し続けることができます。

顧客の信頼獲得

ISO認証を取得している企業は、品質管理が第三者によって認証されているため、顧客に対して高い信頼性を示すことができます

顧客は、ISO規格を遵守している企業から製品やサービスを購入することで、品質やサービスの一定水準が保たれることを期待できます。

特に、ISO 9001の認証は顧客満足度を向上させるための重要な証拠となり、企業の競争力を高める要因です。顧客の信頼を得ることで、リピーターを増やし、良好な口コミを広めることができます。

法規制や市場要求に対応

ISO規格は、業界標準や国際的な規制に準拠するための基盤を提供します。企業は、ISO認証を受けることで、各種法規制や市場の要求を遵守しやすくなります。

たとえば、製品の安全性や環境への配慮に関する法律を遵守することが求められる場合、ISOの枠組みを活用して効果的に対応できえるでしょう。

また、ISO規格は国際的にも認知されているため、海外市場への進出時にも信頼性が向上し、グローバルな規制や基準に柔軟に適応できるという利点があります。

ISO14001取得企業の取り組み事例

ISO14001は、環境がテーマになっていることから、あらゆる業種で取得されています。ここでは、3つの取組事例を取り上げます。

食料品の製造・販売|アヲハタグループ(本社:広島県竹原市)

食品の製造・販売を行うアヲハタグループは、1999年にISO14001を、2005年にジャム工場にてISO9001を取得しています。

■登録範囲

  • ①ジャム類、スプレッド類、調理食品類、産業用加工食品類の製造及び販売
  • ②その他(食品製造機械の設置・保守管理、環境衛生のための防虫防鼠・サニタイズ、地域特産品の販売)

環境方針として、汚染の予防や持続可能な資源の利用、健康に配慮した原材料の選択などに努めて実行していくことを定めています。[4]

ホテル|ホテルニューアワジグループ(本社:兵庫県洲本市)

ホテルニューアワジグループでは、2011年にISO14001を取得。現在3つのブランドで運用しています。

  • ホテルニューアワジ
  • ホテルニューアワジ別亭 淡路夢泉景
  • ホテルニューアワジプラザ淡路島・夢海游 淡路島

■登録範囲

  • 宿泊・料飲・入浴サービスの提供

ホテルニューアワジの環境方針には、宿泊・料飲のホテルサービス事業活動において、周辺の環境保全や、二酸化炭素排出削減として風力発電の導入・運用に取り組むことを掲げています。[5]

畜産|株式会社松永牧場(島根県益田市)

牛の畜産を営む株式会社松永牧場は、2003年にISO14001を取得しています。資源の循環、廃棄物、エネルギーを環境の3大テーマに掲げて環境活動を実践しています。

■登録範囲

  • 肉牛の肥育及び繁殖
  • 堆肥の製造
  • 食品副産物のサイレージ化
  • 飼料(牧草)の生産

また、「農業が地域環境に大きく依存している産業」であるという考えに基づき、環境保全活動の推進と地域との共存共栄、環境問題に関する啓発活動の推進などを行う環境方針を定めています。[6]

ISOに関するよくある疑問

ISOに関するよくある疑問について、3つ紹介します。

ISO認証を取得するにはどのくらいの時間がかかりますか?

ISO認証を取得するための期間は、企業の規模や業務の複雑さ、準備状況により異なります。一般的には数ヶ月から1年程度が必要とされます。まずはISO規格に準拠した管理システムを構築し、その後、外部の認証機関による監査を受ける必要があります。

ISO認証を取得すると、企業の競争力はどう向上しますか?

ISO認証を取得することで、製品やサービスの品質、効率性、安全性、環境への配慮などを国際的に証明できます。これにより、顧客や取引先からの信頼が増し、ビジネスチャンスの拡大が期待できます。また、企業内部での管理体制が強化され、業務の効率化にも繋がります。

ISO認証は一度取得すれば永久に有効ですか?

ISO認証は一度取得すれば終わりではなく、定期的な監査が必要です。認証を維持するためには、3年ごとに再認証を受ける必要があります。その間、企業は継続的に規格に準拠した管理システムを運用し、必要な改善策を講じなければなりません。

ISOとSDGs

ISO(国際標準化機構)とSDGs(持続可能な開発目標)は、どちらも企業や組織の活動において重要な役割を果たす枠組みですが、その目的やアプローチには異なる点があります。それぞれについて説明します。

ISOとSDGsの関係

ISOは、国際的に通用する標準を策定し、品質、安全性、環境保護、エネルギー効率など、さまざまな分野で組織が一定の基準を満たすことを求めるシステムを提供します。

一方、SDGsは、2030年までに持続可能な社会を実現するために国連が定めた17の目標で、貧困の撲滅、環境保護、平等の促進などを含みます。

ISOの基準や規格(例えばISO 14001やISO 45001など)は、SDGsに直接関連する活動のサポートが可能です。たとえば、ISO 14001(環境マネジメントシステム)は、環境への配慮を高め、SDGsの目標13(気候変動に具体的な対策を)に貢献します。

ISO 26000(社会的責任)は、SDGsの目標16(平和と公正)や目標8(働きがいも経済成長も)といった目標を支援します。

SDGs達成に向けたISOの役割

ISO規格は、企業がSDGsを達成するためのツールを提供します。ISOの規格を導入することで、企業は環境に配慮した運営や、社会的責任の遂行、効率的なリソース管理を行い、持続可能な開発の実現に貢献可能です。

ISOは、SDGsの目標達成に向けた企業や団体の活動を支援し、具体的な成果を生み出すための枠組みとして機能します。

結論として、ISOはSDGs達成に向けた実行可能な基準を提供し、企業がその目標に沿って活動を推進するためのガイドラインを提供します。SDGsの進展にはISO規格の実践が欠かせません。

まとめ

世界が持続可能な社会を目指す中、ISO14001は組織が環境に配慮した事業活動を行っていることを示す国際認証です。

取引先や顧客などへのアピールになるメリットがありますが、初回登録時や認証を維持するためのコストがかかるなどのデメリットもあります。

著者の経験では、業務が増えるという印象があった一方で、対外的な信用を得られることや、自社を誇りに思えるなどのプラスに感じる面もありました。

メリットやデメリットを慎重に検討した上で、導入を判断する必要があるでしょう。


<参考文献>
[1] 公益財団法人日本適合性認定協会「適合組織検索
※[2] 日本産業標準調査会「環境マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引
※[3] 公益財団法人日本適合性認定協会「認定に関する料金規定
※[4] アヲハタ「社会・環境への取り組み
※[5] ホテルニューアワジ「2010.11.01 ISO14001 への取り組みについて
※[6] 株式会社松永牧場「取り組み – 環境について