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子育て支援が充実している自治体4選・SDGs未来都市に選ばれた自治体のユニークな取り組みを紹介

2023年9月、厚生労働省が発表した出生率の確定値は1.26で、7年連続で前の年を下回りした。

内閣が「異次元の少子化対策」を掲げる中、少子化や人口減少に歯止めをかけたいと、子育て支援策を充実させる地方自治体が増えています。

子育て支援策は地方自治体によって様々です。

地域や家庭に密着したユニークな取り組みを行っている自治体を4つ取り上げてご紹介します。

子育て支援が充実している自治体

夫婦の共働きが当たり前になる中、子育てを家族以外の者がサポートすることが求められています。

少子化を解消するためにも子育て世帯の支援は国や自治体にとって重要な課題であり、自治体も子育て支援策として様々な工夫を行っているのです。

特に子育て支援が充実している自治体として以下の4つの自治体を取り上げ、具体的な取り組み内容について紹介していきます。

  • 千葉県松戸市
  • 東京都板橋区
  • 愛知県一宮市
  • 鳥取県鳥取市

代表的な子育て支援を紹介

自治体の子育て支援策には様々なものがありますが、代表的な子育て支援策としては以下の3つのタイプが挙げられます。

子育て支援金

中学生までの子どもに給付される児童手当は市町村から給付されますが、自治体によってはそれにプラスして様々な子育て支援金制度を実施しています。

ひとり親や低所得世帯向けに追加の手当金を給付しているところもあれば、健康保険の自己負担分を無料にする医療費助成という形で還元している自治体も多くあります。

子育て支援パスポート

子育て支援に力を入れる自治体では、子育て世帯に対し子育て支援パスポートを発行し、協賛する企業などを募って、様々な優待制度が受けられるようにしています。

子育て支援パスポートで受けられる特典や優待は、地域の企業や店舗がそれぞれに趣向を凝らし様々なメニューやサービスを用意しています。

子育てイベントの実施

子育て支援に熱心な自治体では、育児サークルなど様々な子育てイベントを実施して、子ども達の遊びの場の提供や、子育て世帯同士の交流の活発化などを図っています。

千葉県松戸市の取り組み

千葉県松戸市は、都心まで電車で20分程度とアクセスが良くベッドタウンとして人気がある市です。近年は、首都圏への人口流出を食い止めるため子育て支援に力を入れており、待機児童7年連続ゼロを達成、日経新聞社と日経xwomanが発表する「共働き子育てしやすい街ランキング2021」において、2020年に引き続き2年連続総合編1位を受賞しています。

2022年5月には、内閣府が推奨する地方創生プログラムで「SDGs未来都市」に認定され、古い団地の再開発や子育て支援など、若いZ世代たちにも積極的な参加を促し独自の創造的な取り組みを行っています。

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子育て支援金

松戸市では、中学生までの通常の児童手当に加え、2023年には児童1人につき、1万円の「子どもの成長応援臨時給付金」を給付しています。物価高騰の影響を踏まえ、習い事や体験活動などにかかる経費の負担を軽減するための施策です。

また、子どもの医療費助成についても、中学生から高校生にまで対象を拡大。高校3年生までの医療費助成拡大は、千葉県下人口40万人以上の大規模市としては松戸市が初めての取り組みとなっています。

他にも、子育て世帯が親世帯との同居や近居で家を取得する場合に最大100万円を補助する三世代同居等住宅取得支援、幼児同乗用自転車の購入費の一部助成など、ユニークな子育て支援金制度が充実しています。

アプリで子育てコミュニティ作りを支援

松戸市では2017年から子育てアプリ『まつどDE子育てアプリ(母子モ)』を提供しています。『まつどDE子育てアプリ』では、予防接種のスケジュール管理や母子健康手帳の記録ができるほか、松戸市の子育てやイベント情報などを見ることができます。特に、子供が小さいうちは合計40回以上の予防接種を受けなければならず、煩雑で忘れがちな予防接種のスケジューリングを自動で行ってくれるので便利です。妊娠中の胎児から生まれた後の慎重体重まで自動でグラフ化してくれ、子どもの成長記録をつけながら、発育や発達状況に合わせたアドバイスも確認できるようになっています。

松戸市からのお知らせや子育て情報、地域のイベント情報などがリアルタイムにプッシュ通知で届くので、地域と親を繋ぐツールとしても活躍しています。

ひとり親家庭への支援

松戸市ではひとり親家庭の支援も充実しています。ひとり親家庭は、医療費について保険診療分の自己負担医療費を一部助成する制度があり、親についても、通院1回、入院1日につき300円が助成され、調剤も無料となっています。(市民税所得割非課税世帯については自己負担分全て無料)

また、低所得のひとり親世帯には、児童1人あたり5万円の子育て世帯生活支援特別給付金も実施しています。

さらに、ひとり親家庭など生活困窮世帯の生活保護受給世帯を含む生活困窮世帯の子どもに対して、学習場所や居場所を提供し、学校の勉強の復習や受験支援、カウンセリングなどを行う特別の学習支援策を実施しています。

東京都板橋区の取り組み

東京都板橋区は、23区内でありながら赤塚の森や荒川河川敷などの自然が残る緑豊かな住宅地であると共に、光学・印刷等産業が集積する「ものづくりのまち」としても発展してきました。1993年には、人と環境が共生する都市づくりを目指す「エコポリス板橋」環境都市宣言を行い、2020年には第1回SDGs先進度調査で全国8位(都内1位)の評価を受けています。

印刷産業等の関係から、イタリア・ボローニャ市と連携し「ボローニャ国際絵本原画展」を区立美術館で開催、「絵本のまち」をアピールしながら幅広い年齢層の交流や生涯学習、子育て支援などの取り組みを強化しています。

日本経済新聞社による「第2回SDGs先進度調査」では東京都で2位、「共働き子育てしやすい街ランキング2021」では、東京23区で首位に選出されています。

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子育て支援金

東京都板橋区では、中学3年生までの児童を対象に児童手当を給付している他、ひとり親や障害児を扶養する世帯については、20歳までの児童扶養手当を支給しています。さらに、2023年度には食費などの物価高騰への支援策として、ひとり親や低所得世帯向けに児童1人につき5万円の生活支援特別給付金制度を実施しています。

医療費助成については、東京都23区で自己負担金分の助成を18歳まで延長している他、赤ちゃんの出生体重が2,000g以下の場合に指定の医療機関に入院すると医療の給付が受けられる養育医療、喘息などの呼吸器系疾患がある児童への医療費助成、入院による精神医療を必要とする18歳未満の子どもへの医療費助成など、板橋区独自の支援制度が充実しています。

ショートステイ・トワイライトステイ

板橋区では、入院や介護など保護者の事情により、一時的に子どもの面倒をみることができなくなった場合に、2~12歳の子供を一時的に預かるショートステイ・トワイライトステイ事業を展開しています。

社会福祉法人松葉の園が運営するショートステイ専用施設「子育て支援サービス」で、午後4時から10時までのトワイライトステイ、ショートステイでは最大7連泊まで宿泊の利用も可能です。

ショートステイ・トワイライトステイは、保護者が疾病や出産のため入院する場合や家族の介護、事故や災害に遭った場合の他、育児疲れや育児不安などで養育が困難な場合、仕事の冠婚葬祭への出席などの都合で他に面倒をみる人がいない場合なども利用できます。

ショートステイ専用施設は1日最大6名までで、非常にアットホームな雰囲気の中、保育士や児童支援員が手作りのご飯を出してくれ、お風呂まで入れてくれます。お友達と一緒に参加するなど、核家族化が進む中で、「おばあちゃんの家」の代わりとして使う人が増えています。

すくすくカードの発行

板橋区では、子育て家庭を応援するため、3歳未満の乳幼児の保護者に対し、「すくすくカード」を発行しています。

「すくすくカード」では、以下のような多様なメニューの中から、自分で好きなものを選んで支援を受けることできます。

  • 育児支援ヘルパー
  • 産後1年以内の訪問型産後ケア
  • 保育園等の一時保育
  • 病児・病後児保育
  • スポーツクラブでのベビースイミング体験
  • ベビー&産後ヨガ・ヨガ・ピラティス・バレエストレッチなどの体験
  • フラメンコ・フラダンスなどの体験
  • おくるみタッチケア・ベビーマッサージ・ファーストサインの体験
  • 英語 de ベビーマッサージ、親子英会話
  • アートひろば・ダンスエクササイズ・よもぎ蒸し
  • 子育てサロンの利用
  • 赤ちゃんカフェや赤ちゃんひろばでのランチ・ケーキセットの提供
  • 区立施設の利用(区立体育館、熱帯環境植物館、区立美術館)

愛知県一宮市の取り組み

愛知県一宮市は、繊維産業を基盤に名古屋市に隣接するベッドタウンとして発展してきましたが、ここ近年は人口は減少傾向にあり、税収も減少していました。そのため、一宮市では、都市計画にSDGsを取り入れ、自然と調和を計りつつ持続可能な経済成長のできる都市づくりを目指しています。

木曽川の豊かな自然に恵まれた特性と市内に9つの高速道路インターチェンジがあり大都市名古屋に隣接しているという立地を生かし、適度に都会で適度に田舎である「トカイナカ」の特徴や子育てのしやすさなどをPRし、市の活性化に役立てています。

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子育て支援金

愛知県一宮市では、中学3年生までの児童を対象に児童手当を給付している他、2023年度には児童1人あたり5万円の子育て世帯生活支援特別給付金を実施しています。また、ひとり親や障害児を扶養する世帯については、18歳までの児童扶養手当を支給する他、両親と士別した維持への手当金や一時金、低所得世帯向けの高等学校等就学助成などの制度があります。

さらに、名古屋市のベッドタウンとして発展してきた一宮市の特徴を生かし、児童扶養手当を受給する世帯にはJRの通勤定期の3割引を行うJR通勤定期券割引制度というユニークな手当も実施しています。

医療費助成については、中学3年生までの子どもの保険診療分の自己負担額を全額助成する他、入院に係る保険診療分の自己負担額は18歳まで全額助成する制度を導入しています。

はぐみんカードの発行

一宮市では、18歳未満の子どもがいる家庭に、各種の子育て支援が受けられる「はぐみんカード」を発行しています。「はぐみんカード」を提示することで、愛知・三重・岐阜県を中心に全国にある協賛店で各種の優待制度を受けることができます。

優待制度の一例を挙げると、ドラッグストアで医薬品やベビー用品の5%オフや特別のカードポイント追加、携帯ショップでのお菓子や日用品のプレゼント、レストランでの子ども用追加メニューの無料提供など様々なメニューがあります。

子どもに人気のマクドナルドではハッピーセットが特別価格で購入できたり、コメダ珈琲店でミニソフトクリームのプレゼントがある店舗も。銀行では教育ローンの金利が優待されるなどのサービスもあります。

「はぐみんカード」は、母子手帳と同時に配布されるので、妊娠中から優待制度を利用することができます。

市内6ヶ所の子育て支援センター

一宮市では市内6ヶ所に子育て支援センターを開設しています。子育て支援センターでは、滑り台やパズル、木や布のおもちゃなどを豊富に揃えた「あそびの広場」やおままごとコーナー、親子で気軽に利用できるランチルーム、子育て情報を共有する展示などを用意しています。水遊びできる庭や、一時預かり施設を併設しているセンターもあります。

さらに、各子育て支援センターでは、毎週子育てサークルを開催し、子育て親同士の交流をサポート。子育てサークルは支援センターを始め、26種類もの場所で開催されています。

その他、車におもちゃなどを積んで地域の施設に出向く「うごく子育てサロン こっこ」や市内67ヶ所で保育園の園庭開放を行うなど、親子が一緒に楽しめる機会や場所を提供しています。

鳥取県の取り組み

早くから人口減少や高齢化の問題に直面してきた鳥取県は、2010年に「子育て王国とっとり建国宣言」を行い、病児病後児保育の充実や小児医療費の助成対象の拡大などの子育て支援策を実施してきました。子育て支援策を2019年には「子育て王国とっとり条例」を制定し、2023年からはさらなる子育て支援策の拡充を目指して「シン・子育て王国とっとり運動」を推進しています。

県庁所在地の鳥取市は、今では各地方自治体が取り入れている子育て支援策をいち早く導入し、2020年には宝島社『田舎暮らしの本』が発表する「住みたい田舎」ランキングの【子育て世代部門】で1位を獲得しています。子育て支援に加え環境面、農業面、人と人との交流の取り組みを重ね合わせたまちづくりを掲げ、2021年には、内閣府が推奨する地方創生プログラム「SDGs未来都市」に選定されています。

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子育てパスポートの発行

鳥取県鳥取市では、18歳未満の子どもがいる家庭に、各種の子育て支援が受けられる「とっとり子育て応援パスポート」を発行しています。このパスポートを提示することで、協賛店舗から商品等の割引、買い物ポイントの加算、ドリンクサービスなど色々な特典を受けることができます。あらかじめ予約しておけば子ども1人で移動できる「子育て応援タクシー」、生協での満1歳の誕生日までの商品の宅配手数料無料、豆腐店による玉子アレルギーの子ども用誕生日ケーキ対応など、ユニークな特典もたくさんあります。

従来は紙のパスポートを発行していましたが、2023年からは「子育て王国アプリ」をリリース。スマホのアプリ提示で特典を受けられるようになった他、マップが表示されるので近くの協賛店舗をすぐに探すことができる便利機能もつきました。アプリでは地域の子育てイベントの情報提供やAIチャットによる子育て相談などをすることができます。

また、子どもが3人以上いる家庭には、「とっとり子育て応援パスポート」とは別に「とりっこカード」を発行し、さらに充実した特典が受けられるようになっています。

子育てサークル

鳥取市では、子育て世帯の交流を活性化するため市内の公民館など25を超える場所で子育てサークルを実施しています。1998年という早い段階から、鳥取市内で自主的に活動する子育てサークルをまとめる「ゆうゆうとっとり子育てネットワーク」を結成。交流会やイベントを実施する他、ゆうゆう新聞の発行や行政会議への出席など積極的に活動を続けています。

ボランティアのメンバーが積極的に活動を続ける中で、通常の子育てサークルの他、ふたご・みつごサークル「ふたりっこクラブ」や食物アレルギーっこ親の会「しろうさぎ」などのユニークなサークルも登場しています。

その他、0~3歳の乳幼児とその 子どもを家庭で子育てしている保護者が気軽に利用できる「0.1.2.3子育てひろば」や子ども達の遊び場と保護者の育児相談が両方できる「地域子育て支援センター」なども設置されています。

子ども食堂

孤食状態や家庭の事情で十分に食事がとれない子どもに「温かいご飯をたべさせてあげたい」という願いから民間の活動を中心に広まった子ども食堂。鳥取市内では、25ヶ所を超えるこども食堂が開設されていて、食事の提供だけでなく、学習や遊び、創作などさまざまな活動を通して大人と交流しながら、生活習慣やマナーを身につけるなど、家庭や学校とは違った「子どもの居場所」を提供しています。

鳥取市のHPでは子ども食堂の一覧を開示し、近所の食堂がどこにあるかや開催日などを確認することができます。子ども食堂の形態やサービスは様々で、弁当の宅配を行っているところや、ボランティアの学習支援が受けられるところ、おもちゃの貸出をしてくれるところなどがあります。

まとめ

子育て支援に力を入れている自治体として、千葉県松戸市、東京都板橋区、愛知県一宮市、鳥取県鳥取市の4つの自治体を取り上げ、取り組み内容を紹介しました。

持続可能な活気ある街づくりのため、子育て支援とSDGsを組み合わせて取り組んでいるところも多いようです。

少子高齢化が進む日本において、個性溢れる自治体の子育て支援策が今後さらに拡大していくことが期待されています。