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ネイチャーポジティブとは?実現に向けた世界・日本・企業の取り組み事例も

ネイチャーポジティブとは、経済、社会、政治、技術などの全てにまたがって改善を促していくことで、豊かな自然を取り戻し、自然と共生していくための取り組みです。ネイチャーポジティブの意味、実現に向けた世界・日本・企業のネイチャーポジティブな取り組み事例など、わかりやすく解説します。

ネイチャーポジティブは、自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止めることを目指す取り組みです。これまで、環境保全や気候変動対策についてさまざまな議論がされ、積極的に取り組みも行われてきました。

それではネイチャーポジティブは、これまでの取り組みとどのように違うのでしょうか?未来を担う重要なキーワード「ネイチャーポジティブ」について理解を深めるため、その意味や実現に向けた世界・日本・企業の取り組み事例なども、わかりやすく解説します。

目次

ネイチャーポジティブとは

【環境省のネイチャーポジティブイメージキャラクター「だいだらポジー」】

ネイチャーポジティブとは、日本語に訳すと「自然再興」といい、「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、世界のエコシステムを本来の循環に戻すこと」、また、「人間社会もこの自然のエコシステムの中に戻り、地球全体で循環していくこと」を目指します。地球は過去1,000万年間の平均と比べて10倍~100倍もの速度で生物が絶滅しており、生態系が脅かされています。

ネイチャーポジティブは、これまでの自然環境保全の取り組みだけでなく、経済から社会、政治、技術までの全てにまたがって改善を促していくことで、豊かな自然を取り戻し、自然と共生していくための取り組みです。

ネイチャーポジティブの具体的な目標は、2030年までに生物多様性の損失を止め、反転させ、自然を回復軌道に乗せることです。

そもそも生物多様性とは

生物多様性とは、地球上の環境、生物種、遺伝子、生態系の多様性のことです。生物多様性は、私たち人間を含むすべての生物の生存基盤であり、食料、水、空気、医薬品など、さまざまな恵みをもたらしてくれます。

地球の生態系は、すべてが相互依存関係にあり、生物多様性の維持は地球環境の安定や持続可能な未来の実現に不可欠です。

【関連記事】生物多様性とは?世界・日本の現状と問題点から考える危機、保全の取り組み具体例

今、生物多様性喪失は深刻な状況!

地球上の生物多様性は、過去1000万年間の平均と比べて10~100倍の速度で失われています。これは、人類の経済活動やライフスタイルが自然環境に与える負荷が大きいためです。

生物多様性喪失は、

  • 地球温暖化
  • 気候変動
  • 食料危機
  • 経済損失

など、さまざまな問題を引き起こします。

ネイチャーポジティブは、生物多様性喪失という深刻な問題を解決し、持続可能な社会を目指すための重要な考え方です。これは国や企業だけでなく、私たち一人ひとりがネイチャーポジティブについて理解し、地球の未来を守るために、価値観や生活習慣を見直すなど、行動を起こすことが必要です。*1)

なぜネイチャーポジティブが必要なのか

【人間と自然の共生:日本の美しい里山】

私たちの地球には、目に見える大きな生き物から見えない微生物まで、数多くの生物が共生しています。これらの生物多様性が、私たちの日々の暮らしを支えています。

しかし近年、人間活動の影響により、生物多様性が急速に失われつつあります。その深刻な現状を知り、再び自然と共生していくために、ネイチャーポジティブが提唱されるようになりました。

日本の生物多様性の現状

地球には、過去にも自然現象による大量絶滅が数回起きていたことが明らかになっています。そして現在、人間活動による影響で第6回目の大量絶滅が進行していると言われています。日本の生物多様性も例外ではなく、環境省によると大きく4つの危機に直面しています。

【日本の野生動植物種のうちの絶滅危惧種の割合(2020年)】

第1の危機:開発や乱獲による種の減少・絶滅、生息・生育地の減少

鑑賞や商業利用のための乱獲や過剰な採取

多くの動植物が乱獲過剰な採取によって絶滅の危機に瀕しています。

・埋め立てなどの開発

都市や沿岸地域などの開発によって、動植物の生息地が破壊され、個体数が減少しています。

第2の危機:里地里山などの手入れ不足による自然の質の低下

・二次林や採草地の利用減少

二次林※や採草地が利用されなくなったことで、生態系のバランスが崩れ、里地里山の動植物が絶滅の危機にさらされています。

※二次林

自然災害や伐採などによって失われた森林が、その後自然に再生した森林。

・シカやイノシシなどの個体数増加

シカやイノシシなどの個体数増加が、植生や動物相に大きな影響を与えています。シカやイノシシは、

  • 餌となる植物の増加
  • 天敵の減少
  • 積雪量の減少
  • 捕獲数の減少

などの要因で、個体数が増加していると考えられています。

第3の危機:外来種などの持ち込みによる生態系のかく乱

・外来種による捕食や競争

外来種は、在来種の生息地を奪ったり、在来種と競合したりして、生態系に大きな影響を与えています。

【関連記事】外来種が引き起こす問題は?日本の現状や対策、私たちにできること

・化学物質による毒性

  • 排水
  • 大気汚染
  • 農薬・除草剤
  • マイクロプラスチック
  • 産業廃棄物

などのルートにより、自然環境に化学物質が流入していることが問題になっています。化学物質の中には、動植物への毒性をもつものがあり、生態系に影響を与えています。

第4の危機:地球環境の変化による危機

・地球温暖化

地球温暖化によって、

  • 平均気温の上昇
  • 氷が溶け出す時期が早まる
  • 高山帯が縮小
  • 海面温度が上昇

などが起こっています。

・異常気象

台風や洪水などの異常気象が頻発し、動植物の生息環境に大きな影響を与えています。

世界の生物多様性の現状

【生物多様性の損失を減らし、回復させる行動の内訳】

生物多様性の損失や自然環境の破壊によって、世界のGDPの半分に相当するおよそ44兆ドルが崩壊危機に瀕しています。このような状況を打破し、ネイチャーポジティブな社会を実現するためには、気候変動対策循環経済への移行など、社会全体が一丸となって取り組むことが必要です。

地球の限界を、

  1. 気候変動
  2. 海洋の酸性化
  3. 新規化学物質
  4. 窒素
  5. リン
  6. 淡水の利用
  7. 土地の改変
  8. 生物多様性の喪失
  9. 大気汚染
  10. オゾン層の破壊

に分けて考える「プラネタリーバウンダリー」でも、生物多様性の喪失は限界に達しています。

【プラネタリーバウンダリーと地球の現状】

【関連記事】地球の限界が分かるプラネタリーバウンダリーとは?SDGsとの関係も

世界の生物多様性の現状

地球上の生物多様性は、かつてない速度で失われています。世界的に見た生物多様性減少の原因は、

  • ​​生息地の喪失・劣化:森林伐採、都市開発、農業拡大などにより、生物の生息地が失われています。
  • 外来種の侵入:ペットや観賞用として持ち込まれた生物が、本来の生態系を破壊することがあります。
  • 乱獲:食用や薬用など、人間による生物の乱獲が深刻な問題となっています。
  • 気候変動:地球温暖化などによる気候変動は、生物の生息環境を変え、絶滅に追い込んでいます。
  • 汚染:農薬や化学物質などの汚染は、生物の健康に悪影響を与え、死滅させることがあります。

などが挙げられます。

世界でも特に生物多様性が豊かで、生物が多く集中している地域を「生物多様性ホットスポット」と呼びますが、これらの地域の多くも危機に直面しています。例えば、

  • 南米アマゾン熱帯雨林:世界最大級の熱帯雨林。多くの生物種が生息していますが、森林伐採や開発によって急速に失われています。
  • 東南アジア:世界で最も多くの生物種が生息する地域の一つ。しかし、森林伐採やプランテーション開発によって、生物多様性が脅かされています。
  • マダガスカル:多くの固有種が生息する島。しかし、森林伐採や外来種の侵入によって、生物多様性が失われています。
  • ガラパゴス諸島:独自の生態系を持つ島々。しかし、観光客の増加や外来種の侵入によって、生物多様性が脅かされています。
  • サンゴ礁:海の生物多様性を支える重要な生態系。しかし、気候変動や海洋汚染によって、サンゴ礁が白化・死滅しています。

などが、よく知られています。

【関連記事】【2023年版】絶滅危惧種とは?原因と日本の有名な動物とレッドリスト一覧

生物多様性の保全は、地球環境のバランスを守り、生態系サービスを維持するために不可欠です。国際的な枠組みや地域ごとの取り組みが進められていますが、さらなる努力が求められています。

このような現状から、日本でも世界でもネイチャーポジティブな行動が重要と考えられるようになりました。次の章からは実際にどのような取り組みが行われているか見ていきましょう。*2)

ネイチャーポジティブの実現に向けた国際的な取り組み

近年、環境問題持続可能な経済成長に向けた取り組みがますます重要視される中、世界経済フォーラム(WEF)※をはじめとする国際的な組織や取り組みが注目を集めています。特に、TCFD※からTNFD※への展開や、ネイチャーポジティブ経済への移行による新市場の創出など、環境への配慮を促進する動きが世界的に加速しています。

※世界経済フォーラム(WEF)

グローバルな重要課題について議論・提言を行う団体。スイスのダボスで毎年開催される年次総会が最も有名で、世界各国の政治家、企業経営者、有識者などが参加して、経済、社会、環境といった分野の課題について協議している。

※TCFD

気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の略称で、企業が気候変動による財務的影響を自主的に開示することを推奨する国際的な枠組み。

【関連記事】TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)とは?開示するものやシナリオ分析・戦略を解説

※TNFD

自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)の略称で、企業が自然資本への依存と影響を自主的に開示することを推奨する国際的な枠組み。

【関連記事】TNFDとは?TCFDとの違いや賛同するメリットをわかりやすく解説!

TCFDからTNFDへ

これまで取り組みが進められてきたTCFDに加え、2021年にはTNFDが設立されました。

TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は、2015年に金融安定理事会(FSB)によって設立された、気候変動が金融機関に与える影響について情報開示を推奨する枠組みです。

一方、TNFD(Task Force on Nature-related Financial Disclosures)は、2021年に設立された、生物多様性が金融機関に与える影響について情報開示を推奨する枠組みです。

TCFDとTNFDの共通点

  • 金融機関による情報開示を推奨する枠組みであること
  • 気候変動および生物多様性が、金融機関の事業リスクに与える影響に焦点を当てていること
  • 情報開示を通じて、金融機関がこれらのリスクを適切に管理し、持続可能な事業活動を行うことを促すこと

TCFDとTNFDの相違点

  • 対象となる環境課題:TCFDは気候変動、TNFDは生物多様性
  • 情報開示の内容:TCFDは温室効果ガス排出量、TNFDは生物多様性への依存度、生物多様性への影響など
  • 設立主体:TCFDは金融安定理事会(FSB)、TNFDは民間主導

ネイチャーポジティブの実現には、TCFDとTNFDの両方の取り組みが重要です。金融機関や投資家、企業は、TCFDとTNFDに基づいた情報開示を通じて、気候変動と生物多様性へのリスクを適切に管理し、持続可能な事業活動を行う必要があります。

ネイチャーポジティブ経済への移行による新市場の創出

ネイチャーポジティブ経済への移行による新市場の創出は、2030年までに年間10兆ドルのビジネスチャンスと、約4億人の雇用を生み出す可能性が期待されています。世界経済フォーラム(WEF)による報告では、適切に管理された自然は社会の幸福や繁栄の基盤となることが強調されています。

気候変動への対処が重要である一方で、生物多様性の喪失に対処するためには、より抜本的な改革が必要とされています。絶滅や準絶滅危惧種の約8割が直面する危機の主な原因は、従来の短期的な利益を追求した、

  1. 食糧・土地・海洋の利用
  2. インフラ・建設
  3. エネルギー・採取

などの社会経済活動です。これらの課題に対処するためには、ネイチャーポジティブ経済への投資と移行が重要です。

世界経済フォーラムのより持続可能で公平な社会へと変革していくための構想は、「グレートリセット」という言葉でも話題になりました。ネイチャーポジティブという言葉自体は、世界経済フォーラムの公式文書や発言において明確に使用されていませんが、自然との調和、生物多様性の保全、持続可能な開発といったネイチャーポジティブの理念につながる考え方は、さまざまな形で発信されています。

【関連記事】グレートリセットとは?何が起こる?私たちが備えておくべきことは?

このような国際的なネイチャーポジティブ経済への移行がもたらす新たなビジネスチャンスと雇用創出の可能性は、環境と経済の両面でプラスの影響をもたらすことが期待されています。*3)

ネイチャーポジティブの実現に向けた日本の取り組み

【J-GBF(2030生物多様性枠組実現日本会議)ネイチャーポジティブ宣言】

日本政府は、2023年3月に「生物多様性国家戦略2023-2030」を閣議決定しました。この戦略は、2030年までにネイチャーポジティブを実現することを目指し、以下の5つの基本戦略を掲げています。

①30by30目標の達成

2030年までに、陸地の30%、海域の30%を生物多様性保全の地域として確保することを目指す「30by30目標」の達成に向けた取り組みを推進します。具体的には、

  • 国立公園や国定公園などの保護地域の拡大
  • 生物多様性に配慮した森林管理
  • 海洋環境の保全

などに取り組んでいます。

②自然資本を活用した社会課題の解決

自然を単なる資源として捉えるのではなく、自然資本として価値を認め、社会課題の解決に活用することを目指します。具体的には、

  • 自然災害の防備
  • 水資源の確保
  • 都市部の緑化
  • 健康増進

など、様々な分野で自然の力を活かした取り組みを進めています。

③ネイチャーポジティブ経済の実現

企業活動においても、生物多様性への配慮を重要視し、ネイチャーポジティブな経済活動を推進します。具体的には、

  • 環境負荷の低減
  • 生物多様性に配慮した製品開発
  • 地域社会との連携

などに取り組む企業を支援しています。

④ライフスタイルの変化

私たち一人ひとりの意識と行動を変えることが、ネイチャーポジティブ実現の鍵となります。政府は、生物多様性に関する情報提供や教育活動を通じて、国民の理解を深め、持続可能な生活様式への転換を促します。

⑤国際連携の強化

生物多様性問題は地球規模の課題であり、国際的な連携が不可欠です。政府は、国際会議への積極的な参加や、途上国への支援などを通じて、国際的な取り組みを強化しています。

この取り組みには、2030年のネイチャーポジティブの実現に向けた具体的な戦略と行動目標が設定され、関連省庁が367の施策を実施しています。さらに、昆明・モントリオール生物多様性枠組のヘッドライン指標※に基づいた評価指標を設定し、進捗状況を定期的に評価しています。

【昆明・モントリオール生物多様性枠組】

※昆明・モントリオール生物多様性枠組のヘッドライン指標

2030年までの生物多様性目標達成の進捗状況を測定するための指標。生物多様性の状態(アウトカム)を測定する指標や生物多様性保全のための行動(アウトプット)を測定する指標など、12の指標からなる。

*4)

ネイチャーポジティブの実現に向けた自治体の取り組み

日本では、自治体においても、ネイチャーポジティブの実現に向けた取り組みが活発化しています。代表的な事例を紹介します。

名古屋市の取り組み

【100年後の夢のなごやの姿】

名古屋市は、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)※の開催都市として、生物多様性保全の重要性を強く認識し、積極的に取り組んでいます。2023年10月には、2030年までの重点的な取り組みを定めた「生物多様性なごや戦略実行計画2030」を策定しました。

この計画は、市民、事業者、行政が協働で推進することで、名古屋市における生物多様性の保全と持続可能な利用を目指しています。名古屋市のネイチャーポジティブへの取り組みの主な柱は、以下の5つです。

  1. 協働による環境教育・普及啓発:市民や事業者と連携し、生物多様性に関する理解を深めるための活動を実施します。
  2. 緑のまちづくり:都市における緑の確保、里山環境の保全・育成、市民が農に親しむ機会の創出などに取り組みます。
  3. 健全な水循環の保全と再生:雨水浸透ますや透水性舗装の整備、多自然川づくり、地下水や湧き水に関する取り組みなどを推進します。
  4. 名古屋とつながる上流域との連携:木曽三川上流域の自治体と連携し、森林の保全や水源涵養活動などを協働で進めます。
  5. 自治体間の連携・交流:生物多様性自治体ネットワークやラムサール条約登録湿地関係市町村会議などを通じて、他の自治体と情報共有や協働を進めます。
※生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)

2010年10月18日から29日までの日程で、愛知県名古屋市で開催された、生物多様性保全に向けた国際的な取り組みを大きく前進させた会議。2020年までの生物多様性目標や愛知ターゲットの採択は、世界各国が生物多様性保全に取り組むための指針となった。

なごや生物多様性センター設立

【なごや生物多様性センターの仕組み】

なごや生物多様性センターは、COP10の開催を契機に設立され、身近な自然環境を保護・育成する活動を促進するための拠点です。2011年に設立されたこのセンターは、市民の協力による生物調査や保全活動を推進し、なごや市内の生き物に関する情報を蓄積・発信し、次世代に引き継ぐことを目的としています。

福岡市の取り組み

【福岡市 新・緑の基本計画の概要】

福岡市は、緑豊かな自然と共生する持続可能なまちづくりを目指し、さまざまな取り組みを進めています。具体的な取り組み例は以下の通りです。

  • Fukuoka Green NEXT:市域全体の緑のネットワークを形成し、生物多様性の保全、防災・減災機能の強化、市民の憩いの場づくりなどを推進するプロジェクト。
  • リバーフロントNEXT:河川沿いの緑地を整備し、水辺空間の活性化、市民の憩いの場づくり、生物多様性の保全などを推進するプロジェクト。
  • Park-PFI制度:民間事業者と連携して公園の整備・管理を行い、公園の質の向上、利用の活性化などを図る制度。
  • インクルーシブな子ども広場整備:すべての子どもが安心して遊べる、ユニバーサルデザインの考え方を活かした子ども広場の整備。
  • Well-beingの向上:緑地を活用した健康づくりプログラムの提供、緑の癒し効果に関する研究など、市民のWell-beingの向上に向けた取り組み。
  • 緑ストックの有効活用:民有地の緑地を有効活用するための制度整備、緑化啓発活動など、緑のストックの有効活用に向けた取り組み。
  • 災害レジリエントなまちづくり:防災・減災機能を備えた緑地の整備、市民への防災意識の啓発など、災害に強いまちづくりに向けた取り組み。
  • コミュニティパーク事業:地域住民が主体となって公園を整備・管理する事業。
  • 一人一花運動:市民一人ひとりが花を植え、育て、愛でることで、緑豊かなまちづくりを目指す運動。
  • 都心の森1万本プロジェクト:民間企業や市民と連携して、都心部に1万本の木を植えるプロジェクト。

このような多様な福岡市の取り組みは、市民、事業者、行政が協働して進められています。 また、国際的なネットワークや協定を活用し、世界レベルでの取り組みも進めています。

では、ネイチャーポジティブの実現に向けて、企業はどのように取り組みを進めれば良いのでしょうか。*5)

ネイチャーポジティブの実現に向けて企業はどのように取り組めばいいのか

近年注目されているのが、企業による「ネイチャーポジティブ経営」です。ネイチャーポジティブ経営とは、企業が事業活動において自然環境への負荷を最小限に抑え、生物多様性の保全に貢献しながら、社会課題の解決や新たな価値創造を目指す経営手法です。

企業がネイチャーポジティブ経営に取り組む上で重要なポイント

企業がネイチャーポジティブ経営に取り組む上で、効果的に成果を出すための5つのポイントを紹介します。

①経営陣が強く関わる

ネイチャーポジティブ経営を成功させるためには、経営層の強いコミットメントが不可欠です。経営層が率先して取り組みを進めることで、組織全体にネイチャーポジティブ経営の重要性が浸透し、より効果的な取り組みが可能になります。

具体的には、

  • ネイチャーポジティブ経営に関するビジョンを策定し、全社に共有する
  • ネイチャーポジティブ経営の目標を定め、進捗状況を定期的に評価する
  • ネイチャーポジティブ経営に関する研修や教育を実施する
  • ネイチャーポジティブ経営に関する成果を社内外に積極的に情報開示する

などが重要です。

②長期的な視点で計画を立てる

ネイチャーポジティブ経営は、短期的な利益ではなく、長期的な視点に立って取り組む必要があります。自然環境の保全や生物多様性の回復には時間がかかるため、長期的な視点で継続的に取り組むことが不可欠です。

③科学的根拠に基づいて取り組む

ネイチャーポジティブ経営は、科学的根拠に基づいた取り組みを進める必要があります。自社の事業活動が自然環境にどのような影響を与えているのかを定量的に評価し、効果的な対策を講じる必要があります。

④関係者との連携

ネイチャーポジティブ経営は、顧客、サプライヤー、地域社会など、様々な関係者との連携が重要です。関係者と協力して、自然環境の保全や生物多様性の回復に向けた取り組みを進める必要があります。

⑤情報開示

ネイチャーポジティブ経営に関する取り組みを積極的に情報開示することが重要です。ステークホルダーに対して、自社の取り組みを透明性を持って説明することで、理解と協力を得ることができます。

ネイチャーポジティブ経営に取り組むことで得られるメリット

ネイチャーポジティブ経営は、地球環境の保全に貢献するだけでなく、企業の経営にも多くのメリットをもたらすことができます。

  • リスクの低減:気候変動や資源価格変動などのリスクを低減することができます。
  • コスト削減:資源の効率的な利用や廃棄物の削減などにより、コストを削減することができます。
  • ブランド価値の向上:環境に配慮した企業であるというイメージを顧客に訴求することで、ブランド価値を高めることができます。
  • 新たな市場の創出:環境問題に関心を持つ消費者のニーズに応えることで、新たな市場を創出することができます。
  • 従業員のモチベーション向上:社会貢献活動に参加することで、従業員のモチベーションを高めることができます。

自然環境の保全だけでなく、気候変動対策や循環経済の推進など、幅広い取り組みがネイチャーポジティブ経済移行に向けて重要です。ネイチャーポジティブ経営は、単なる環境対策ではなく、企業の長期的な成長戦略にもつながる重要な取り組みです。*6)

ネイチャーポジティブの実現に向けた企業の取り組み事例

企業がネイチャーポジティブを実現するためには、さまざまなアプローチでの取り組みが求められます。実際に成功を収めている企業の事例をいくつか見てみましょう。

海外の取組事例:Unileveによるパームオイル調達における森林破壊禁止

Unileve(ユニリーバ)は、日用品や食品に広く使われるパームオイルの持続可能な調達に積極的に取り組んでいます。その中でも、森林伐採による環境破壊を防ぐために、2023年までにパームオイルのサプライチェーンにおける森林伐採をゼロにするという目標を掲げています。

パームオイルは、アブラヤシの実から抽出される油です。近年、需要が急増している一方で、熱帯雨林の伐採による森林破壊が問題視されています。森林破壊は、生物多様性の喪失、土壌流亡、二酸化炭素排出量の増加など、さまざまな環境問題を引き起こします。

ユニリーバは、パームオイルの持続可能な調達を実現するために、以下の取り組みを行っています。

  • RSPO認証の取得:RSPO (Roundtable on Sustainable Palm Oil) は、持続可能なパームオイル生産のための国際的な認証制度です。ユニリーバは、RSPO認証を受けたサプライヤーからのパームオイルのみを調達しています。
  • サプライチェーンの透明化:ユニリーバは、衛星技術などを活用して、サプライチェーンにおける森林伐採を監視しています。また、サプライヤーに対して、森林伐採を行っていないことを証明する資料の提出を求めています。
  • 小規模農家の支援:ユニリーバは、小規模農家が持続可能なパームオイル生産を行うための支援を行っています。具体的には、農業技術の指導や、資金調達支援などを提供しています。

日本企業の取組事例①:SynecOによる多様な植物が生息できる農法

SynecO※は、中南米地域やアフリカで活動するソニーグループの子会社です。SynecOは、Synecoculture(協生農法)と呼ばれる、多様な植物が生息できる農法を開発しています。

Synecocultureとは、不耕起、無肥料、無農薬で、生態学的に最適な環境を植物に提供することで、食料を生産する農法です。この農法は、生物多様性を促進し、土壌の健康を改善し、農薬の使用量を削減する効果があります。

※SynecO

ソニーグループのコーポレートベンチャーキャピタルSony Innovation Fund: Environmentの第一号案件として2021年4月に設立された。拡張生態系に関連した環境技術に特化した事業を推進するソニーグループ100%子会社。

例えば、エクアドルのカカオ農園において拡張生態系に基づくSynecocultureを導入するプロジェクトを展開しています。この取り組みは、カカオの木の周囲に約200種の有用な植物を植え、農薬や肥料を使用せずに栽培します。

この取り組みにより、以下のような効果が期待されています。

  • 食料生産と生物多様性の向上:様々な植物の共生により、生態系の多様性が増し、生物の生息環境が向上します。
  • サステイナブルなカカオ豆の調達:生態系の拡張により、カカオ豆の調達を持続可能なものとし、環境に配慮した生産を実現します。

炭素吸収と環境貢献:生物多様性や生態系サービスの向上とともに、炭素吸収効果も期待され、気候変動への対策に貢献します。

日本企業の取組事例②:清水建設による高解像度衛星画像と生態系評価を組み合わせたUE-Net

【UE-Net(Urban Ecological Network Evaluation system)】

東京スカイツリーや東京ドームを築き上げてきた清水建設が、今、都市開発の概念を大きく変革する挑戦をしています。清水建設が開発したUE-Net(Urban Ecological Network Evaluation system)と呼ばれるこのシステムは、高解像度衛星画像と生態系評価を組み合わせた革新的な技術で、都市の緑を蘇らせ、生物多様性に配慮したネイチャーポジティブな都市開発に挑戦しています。

UE-Netは、人工衛星から取得した高解像度画像を解析し、都市の緑地を草地、樹林、水辺など、様々なタイプに詳細に分類します。さらに、それぞれの緑地における生物多様性を評価し、生き物にとっての棲みやすさをマッピングします。

従来の緑地調査方法では、専門家が現地調査を行うため、時間とコストがかかり、精度も限定的でした。しかし、UE-Netは衛星画像を解析することで、広範囲の緑地を短期間で、低コストかつ高精度に調査することができます。

【コサギ(水鳥)の生息適性ネットワーク評価図】

UE-Netは、都市公園や緑道の整備計画、開発計画の環境アセスメントなど、さまざまな場面で活用されています。このシステムを導入することによって、具体的には以下のようなことが可能です。

  • 生物多様性に配慮した緑地の配置:UE-Netを使って、生き物にとって最適な緑地配置を設計することができます。
  • 希少種の保護:希少種が生息する緑地を特定し、保護することができます。
  • 生態系ネットワークの構築:孤立した緑地を繋ぎ、生物の移動を促進する生態系ネットワークを構築することができます。

UE-Netは、実用化第一弾として、東京都が行う生態系ネットワークの評価において、臨海副都心地域を含む、約25km2の領域にわたり、環境指標生物の生息適性を見える化しました。この結果、開発計画における緑地配置の最適化や、生物多様性の保全に貢献することができました。

近年、ますます多くの企業がネイチャーポジティブを実現するために積極的な取り組みを行っており、その成果が徐々に現れ始めています。持続可能な経済活動を通じて自然環境を保護し、地球環境への貢献を目指す企業の取り組みは、社会全体にポジティブな影響を与えています。*7)

ネイチャーポジティブの実現するために私たちができること

ネイチャーポジティブの実現するためには、私たち個人ができることから行動を起こすことも重要です。私たちにできることの代表的な例を紹介します。

日々の生活の中でできること

まずは、日々の生活の中でネイチャーポジティブを意識して、無理なくできることから始めてみましょう。

マイバッグ・マイボトルの利用

プラスチック製のレジ袋やペットボトルの使用量を減らすことで、廃棄物を削減し、海洋プラスチック汚染を防ぐことができます。マイバッグマイボトルを持ち歩き、使い捨てプラスチック製品の使用を控えましょう。

節水・節電

水資源は有限であり、地球温暖化の影響で水不足が深刻化する地域も増えています。人口増加や経済発展による都市部の水需要の増加も懸念されています。

こうした状況下において、水資源の有効活用と持続可能な管理と、普段の生活での節水は重要です。また、節電によるエネルギーの節約は、CO2排出量削減にもつながります。

シャワー時間を短くしたり、こまめに電気を消したりすることで、水資源やエネルギーを節約することができます。

食品ロス削減

食品ロスは、世界中で深刻な問題となっています。毎年、世界では25億トン、日本でも523万トンもの食品が無駄に捨てられていると推定されています。

食品ロスは、CO2排出量や水資源の浪費にもつながり、特に先進国で顕著です。必要な量だけ食材を購入し、食べきれる量だけ調理しましょう。

地産地消

食品輸送にかかる距離により、CO2の排出量はかなり変化します。また、地産地消は地域経済の活性化にもつながります。

地元で生産された食材を購入することで、食品輸送に伴うCO2排出量を減らすことができます。

自然と触れ合う

公園や森林に出かけたり、ハイキングや登山をしたりすることで、自然の大切さを実感することができます。また、自然環境の保全活動に参加するのも良いでしょう。

自然と触れ合うことは、心身の健康にも良い効果をもたらします。

消費活動における選択

私たちの消費活動は、社会の方向性に大きな影響を与えます。

環境に配慮した製品を選ぶ

FSC認証※やエコマーク※などの認証を受けた製品を選ぶことで、持続可能な森林管理や環境負荷の低い生産方法を支援することができます。

※FSC認証

森林管理協議会(FSC)が定める国際的な森林認証制度で、持続可能な森林管理を行っている森林の木材で作られた製品に与えられる認証。

※エコマーク

公益財団法人日本環境協会が制定する環境ラベル制度で、環境負荷の低い製品に与えられる認証。

リサイクル製品やリユース品を選ぶ

リサイクル製品リユース品を選ぶことで、資源の節約や廃棄物削減に貢献することができます。

フェアトレード製品を選ぶ

フェアトレードとは、途上国の生産者に対して適正な価格で取引を行う国際的な仕組みです。フェアトレード製品を選ぶことで、途上国の生産者に対して適正な価格で取引を行い、生活向上を支援することができます。

【関連記事】フェアトレードコーヒーとは?メリット・デメリットや日本の現状、認証マークの見分け方

エシカル消費を心がける

エシカル消費とは、製品やサービスを購入する際に、環境や社会に配慮した持続可能な選択をする消費行動のことです。完璧なエシカル消費は難しいかもしれませんが、常に心がけ、できることから始めてみることで、ネイチャーポジティブな社会の実現に貢献することができます。

私たちの小さな取り組みが地球環境に与える影響は大きく、ネイチャーポジティブの実現に向けて、できることから積極的に行動することが大切です。*8)

ネイチャーポジティブに関してよくある疑問

ネイチャーポジティブ経済移行とは?

ここでは、ネイチャーポジティブに関するよくある疑問をわかりやすく解説し、理解を深めていきましょう。

ネイチャーポジティブ経済移行とは、生物多様性を保全し、自然環境の価値を高めることで、経済社会の発展を目指す取り組みです。具体的には、以下の3つの柱に基づいて推進されます。

  • 生物多様性の保全:絶滅危惧種の保護、森林の保全、海洋環境の改善など
  • 自然環境の価値の向上:自然資本への投資、生態系サービスの利用促進、持続可能な農業・漁業の実践など
  • 経済社会の発展:環境負荷の低い産業の育成、グリーンジョブの創出、地域経済の活性化など

ネイチャーポジティブ経済移行は、単なる環境対策ではなく、経済成長と持続可能性の両立を目指す新しい経済モデルです。

経済効果はどのくらい?

ネイチャーポジティブ経済移行による経済効果は、さまざまな試算がされています。例えば、世界経済フォーラムの2020年の報告書によると、2030年までにネイチャーポジティブ経済移行を達成することで、世界では3億9,500万人の雇用と年間約1,070兆円規模のビジネス機会の創出が可能になると推計されています。

また、日本では同じ時期に約47兆円のビジネス機会が推計されています。

ネイチャーポジティブ経済移行は、リスクの低減にもつながります。例えば、気候変動や資源価格変動などのリスクを低減し、企業の安定的な成長を支えることができます。

30by30って何?

30by30は、2030年までに世界の陸地の30%、海洋の30%を生物多様性保全地域とすることを目指す国際的な目標です。これは、生物多様性喪失を食い止めるために必要な最低限の目標とされています。

30by30目標の達成に向けて、世界各国で様々な取り組みが進められています。例えば、アメリカでは、30×30 National Blueprintと呼ばれる計画を発表し、2030年までに30%の公有地を生物多様性保全地域とすることを目指しています。*9)

ネイチャーポジティブとSDGs

【経済・社会の基盤としての自然資本】

ネイチャーポジティブSDGsは、地球環境の保全と持続可能な社会の実現という共通の目標を持っています。一方で、両者にはいくつかの相違点もあります。

ネイチャーポジティブとSDGsの共通点と相違点

ネイチャーポジティブとSDGsの共通点を考えてみましょう。例えば、

  • 地球環境の保全:どちらも地球環境の保全を重要な目標
  • 持続可能な社会の実現:どちらも持続可能な社会の実現を目指している
  • 多様な主体による取り組み:どちらも政府、企業、市民社会など様々な主体による取り組みが必要

などが挙げられます。一方で、相違点としては、

  • ネイチャーポジティブは、生物多様性に焦点を当てた取り組みであるのに対し、SDGsはより広範な目標を含む包括的な枠組み
  • ネイチャーポジティブは、経済活動における自然環境への負荷を最小限に抑えることを目指すのに対し、SDGsは経済、社会、環境の3つの側面における持続可能性を目指す。

などを挙げることができます。

ネイチャーポジティブと関係の深いSDGs目標

ネイチャーポジティブと特に関係の深いSDGs目標を確認していきましょう。

SDGs目標12:つくる責任、つかう責任

持続可能な消費・生産は、地球環境を守るために重要です。ネイチャーポジティブは、資源の効率的な利用、廃棄物削減、リサイクルの促進などに貢献することができます。

SDGs目標13:気候変動に具体的な対策を

気候変動は、地球環境にとって最大の脅威の1つです。ネイチャーポジティブは、CO2排出量の削減、再生可能エネルギーの利用促進、気候変動適応策の強化などに貢献することができます。

SDGs目標14:海の豊かさを守ろう

海洋は地球上の生命の源であり、気候変動や海洋汚染などの深刻な問題に直面しています。ネイチャーポジティブは、海洋生物多様性の保全、持続可能な漁業の実践、海洋ごみの削減などに貢献することができます。

SDGs目標15:陸の豊かさも守ろう

森林破壊生物多様性喪失は、地球環境に大きな悪影響を及ぼしています。ネイチャーポジティブは、森林の保全、生態系サービスの利用促進、持続可能な農業・林業の実践などに貢献することができます。

SDGs目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

ネイチャーポジティブとSDGsの目標達成には、政府、企業、市民社会など様々な主体が連携することが重要です。ネイチャーポジティブは、多様な主体による協働を促進し、持続可能な未来の実現に貢献することができます。

各目標に関する詳しい記事はこちらから

まとめ

【環境省のネイチャーポジティブイメージキャラクター「だいだらポジー」】

上のイラスト「だいだらポジー」は、環境省のネイチャーポジティブを推進するためのイメージキャラクターです。このキャラクターは、自然を生み出したという逸話を持つ「だいだらぼっち」という巨人がモチーフとなっています。

企業、団体、個人などが「だいだらポジー」のイラストを無償で使用することができるため、多くの人々が自然環境の重要性やネイチャーポジティブの取り組みに関心を寄せ、プラスとなる消費や選択を行う意識の向上が期待されています。

このように、日本政府も積極的にネイチャーポジティブな経済モデルの構築に取り組んでいます。

ネイチャーポジティブの今後

ネイチャーポジティブへの考え方は、今後さらに進化していくことが予想されます。

科学技術の進歩

人工知能ビッグデータなどの科学技術の進歩は、ネイチャーポジティブの取り組みを加速させる可能性があります。例えば、AIを用いた生物多様性モニタリングや、ビッグデータ分析による資源効率化などが期待されます。

消費者の意識の変化

消費者の間では、環境問題への関心が高まっており、持続可能な商品やサービスを求める声が高まっています。企業は、こうした消費者のニーズに応えるために、ネイチャーポジティブな商品やサービスの開発・提供を積極的に進めていくことが重要です。

政策の強化

政府は、ネイチャーポジティブな経済活動への移行を促進するために、さまざまな政策を推進しています。例えば、環境規制の強化、財政支援の拡充、情報発信の強化などが挙げられます。

これらの政策の推進により、企業や消費者のマインドシフトがさらに進み、自然と調和した経済活動への変革が加速するでしょう。

ネイチャーポジティブのビジョンを明確に持つことが重要

ネイチャーポジティブな未来は、地球環境と経済社会が共生する持続可能な社会です。この社会が具体的にどのようなものなのか、私たち一人ひとりが明確なビジョンを持つことが重要です。

例えば、

  • 生物多様性が保全され、豊かな自然環境が維持されている
  • 経済活動は環境負荷を低減し、持続可能なものとなっている
  • 人々の生活は豊かで、幸福なものである
  • 人間社会は自然の循環とともに営まれている

など、あなたが目標となる未来の様子を具体的に考え、行動することで、そのビジョンを実現することができるのです。

「未来を予測しにくい時代」「不確定な未来」と言われる現代こそ、私たちは個人単位でも将来の自然豊かな地球のために、できることからネイチャーポジティブを意識したアクションを起こしましょう。先述のように、

  • マイバッグやマイボトルを持ち歩く
  • 食品ロスを減らす
  • 地産地消を心がける
  • 自然と触れ合う
  • ネイチャーポジティブに関する情報収集を行う

など、無理のないことから、習慣にしていくといいでしょう。地球が、今よりもっと生物多様性の豊かな、自然の恵みがあふれる場所になり、私たちが幸せに暮らし続けられる未来を目指して、協力して進んでいきましょう。*10)

<参考・引用文献>

*1)ネイチャーポジティブとは
環境省『ネイチャーポジティブ』(2024年2月)
生物多様性とは?世界・日本の現状と問題点から考える危機、保全の取り組み具体例
環境省『J-GBFネイチャーポジティブ宣言』
J-GBFネイチャーポジティブ宣言『ネイチャーポジティブとは』
環境省『生物多様性とはなにか』
日経ESG『ネイチャーポジティブ』(2022年12月)

*2)なぜネイチャーポジティブが必要なのか
環境省『みんなで守る、生物多様性豊かな未来 自然共生サイトってなんだろう?』
環境省『生物多様性に迫る危機』
環境省『ネイチャーポジティブ経済の実現に向けて』(2023年3月)
環境省『令和5年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第1章 気候変動と生物多様性の現状と国際的な動向』(2023年6月)
外来種が引き起こす問題は?日本の現状や対策、私たちにできること
地球の限界が分かるプラネタリーバウンダリーとは?SDGsとの関係も
【2023年版】絶滅危惧種とは?原因と日本の有名な動物とレッドリスト一覧
国立環境研究所『日本の生物多様性を脅かす「4つの危機」』(2016年12月)
環境省『我が国の生物多様性の損失要因にかかる現状と課題』
国立環境研究所『生物多様性×気候変動 −同時解決に向けた科学のいま−』(2021年12月)
福岡県保健環境研究所『生物多様性』(2023年3月)
環境省『次期生物多様性国家戦略(案)地方説明会』(2023年2月)
気候変動適応情報プラットホーム『ネイチャーポジティブと気候変動適応』
国立環境研究所『持続可能な発展に向けた対策は生物多様性の損失を抑え生態系サービスを向上させる』(2024年4月)

環境省『地球規模生物多様性概況第5版 Global Biodiversity Outlook 5』
*3)ネイチャーポジティブの実現に向けた国際的な取り組み
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)とは?開示するものやシナリオ分析・戦略を解説
TNFDとは?TCFDとの違いや賛同するメリットをわかりやすく解説!
グレートリセットとは?何が起こる?私たちが備えておくべきことは?
WORLD ECONOMIC FORUM『New Nature Economy Report II The Future Of Nature And Business In collaboration with AlphaBeta』(2020年1月)
環境省『ネイチャーポジティブ経済の実現に向けて』(2023年3月)
環境省『G7ネイチャーポジティブ経済アライアンス国際ワークショップの結果について』

*4)ネイチャーポジティブの実現に向けた日本の取り組み
環境省『ネイチャーポジティブ』(2024年2月)
環境省『ネイチャーポジティブ』(2024年2月)

三菱総合研究所『「ネイチャー・ポジティブ」に企業が取り組む意義』(2023年11月)
農林水産省『食品産業におけるネイチャーポジティブ経営に向けた取組』
環境省『令和5年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第3節 自然再興(ネイチャーポジティブ)』(2023年6月)

*5)ネイチャーポジティブの実現に向けた自治体の取り組み
名古屋市『生物多様性なごや戦略 実行計画2030〜ネイチャーポジティブの実現に向けて〜』(2023年10月)
福岡市『第1回 福岡市緑の基本計画検討委員会』(2023年11月)
Nomura Research Institute『ネイチャーポジティブ実現に向けた 地方自治体の役割と施策』(2022年11月)
清水建設『「ネイチャーポジティブ」をかなえる鍵は、街のみどりを育て、つなげることから。』(2024年2月)
環境省『生物多様性民間参画事例集 事業者による取組の参考のために』(2020年5月)

*6)ネイチャーポジティブの実現に向けて企業はどのように取り組めばいいのか
日本経済新聞『自然資本に配慮した経営、大企業の5割に浸透 政府戦略』(2024年3月)
環境省『ネイチャーポジティブ経済移行戦略について』

*7)ネイチャーポジティブの実現に向けた企業の取り組み事例
環境省『生物多様性ビジネス貢献プロジェクト 企業の取組事例 空間計画の設定』
清水建設『UE-Net®(都市生態系ネットワーク評価)』
Unilever『自然の保護と再生』
清水建設『UE-Net®(都市生態系ネットワーク評価)』
環境省『G7ネイチャーポジティブ経済アライアンス国際ワークショップの結果について』
SynecO『SynecOがエクアドルにおいてSynecoculture™ (協生農法®)実装プロジェクトを開始~拡張生態系に基づくSynecoculture(協生農法)をカカオ農園に実装~』(2022年8月)
清水建設『企業情報 清水建設について』

*8)ネイチャーポジティブの実現するために私たちができること
消費者庁『食品ロスについて知る・学ぶ』
日本財団『世界で捨てられる食べ物の量、年間25億トン。食品ロスを減らすためにできること』(2023年1月)
フェアトレードコーヒーとは?メリット・デメリットや日本の現状、認証マークの見分け方

*9)ネイチャーポジティブに関してよくある疑問
自民党『自然に配慮する企業が評価される社会へ「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」を策定』(2024年4月)
日経ESG『30by30』(2022年12月)
環境省『30by30ロードマップ』(2022年3月)
*10)ネイチャーポジティブとSDGs・まとめ
環境省『事業者のための生物多様性民間参画ガイドライン』
環境省『次期生物多様性国家戦略素案のポイント』
環境省『ネイチャーポジティブ』(2024年2月)