新電力とは?メリット・デメリットをはじめ今後の展望についても解説!

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電力完全自由化が決まった頃から「新電力」という言葉をよく耳にするようになりました。

2025年現在では新電力の評判や知名度は日本全国に広がり、新電力を利用する人が増え続けています。

しかし、一部には「やばい」「やめとけ」という悪い評判があるのも事実です。

新電力とはどんな仕組みでどんなサービスを提供し、どんな注意点があるのかをご確認ください。

新電力とは?仕組みや特徴について解説

新電力という存在が生まれたのは、1999年度に改正電気事業法が成立したときのことです。

従来は、小売電気事業を展開していたのは、以下の大手電力会社だけでした。

  • 北海道電力
  • 東北電力
  • 東京電力
  • 北陸電力
  • 中部電力
  • 関西電力
  • 中国電力
  • 四国電力
  • 九州電力
  • 沖縄電力

この10社が一般電気事業者として一般家庭に電気を供給しており、新電力の供給範囲は2000kw以上の特別高圧電力を活用する企業などに限定されていました。

しかし、2004年度に500kw以上の高圧大口需要家に、2005年度に50kw以上の高圧小口需要家に供給範囲が拡大していきました。

そして2016年4月に電力の小売全面自由化が実施されたことにより、50kw未満の一般家庭や小規模な店舗などを対象にした電力プランが提供されるようになったのです。

2025年6月時点で、日本全国の小売電気事業者は764事業者となっています。

(出典:資源エネルギー庁「登録小売電気事業者一覧」

新電力の仕組み

新電力の仕組みをサービスと料金に分けて解説します。

サービスの仕組み

電気事業は、基本的に発電・送配電・小売の3つの部門で成り立っています。

新電力の大半は自社で設置した発電設備ではなく、発電事業者やJEPX(卸電力市場)から調達した電気を、一般送配電事業者(従来の大手電力会社の送配電部門)が管理している送配電網を利用して利用者に供給しています。

つまり、ほとんどの新電力は電気事業の「小売」部門のみを担当しているので、新電力だからといって中身も新しい電力になるわけではないということです。

料金の仕組み

電力自由化前と後の料金の仕組みを計算式で見てみましょう。

  • 電力自由化前:電気料金=総原価
  • 電力自由化後:電気料金=電源費+託送料金

電力自由化前は、総原価(電気を安定供給するために必要な費用)を電気料金として請求していました。

しかし、電力自由化後は電源費(電力を調達・購入する費用)と託送料金(送配電網利用料金)を足したものが電気料金になっています。

託送料金は法律によって定められていますが、電源費は新電力が電力を自社調達するか他社調達するかによって異なります。

新電力の特徴

新電力の主な特徴を見てみましょう。

  • 基本料金が無料のプランがある
  • 大手電力会社よりも安い料金プランを用意している
  • 利用者のライフスタイルや家族構成別の料金プランを設定している
  • 他事業も運営している新電力なら他事業サービスがお得になる

新電力は新規利用者を呼び込むために電力会社よりも安価なプランを用意していることが多く、中には基本料金を0円にしている新電力もあります。

利用者の生活スタイルや世帯人数に対応した料金プランを準備している新電力も多いです。

石油・ガス・通信といった異業種を運営している企業なら、自社のサービスと電気料金をセットにしたりセットにする特典を設けたりするなど、利用者にお得なサービスを提供している新電力も増えています。

上記以外のメリットは次の章で紹介します。

新電力のサービスって?選ぶメリットを紹介

従来の電力会社にはなかったサービスを提供していることで話題を集めている新電力。

そんな新電力を選ぶ際に得られる主なメリットは以下の通りです。

  • 電気料金の節約が可能
  • 契約・解約が比較的簡単
  • ポイントやサービスが充実
  • 選択肢が豊富

これらのメリットの概要を解説します。

電気料金の節約が可能

新電力に切り替えた人の多くは、電気料金がこれまでの電気料金よりも節約できるようになったという理由で切り替えています。

これまでの大手電力会社はほぼ統一された料金設定で、高すぎるということはないものの、各家庭の生活習慣に対応したプランなどが乏しいため、電気料金を節約しにくいのが難点でした。

しかし、新電力は利用者のライフスタイルや世帯の人数、在宅している時間などを考慮した料金プランを用意していることが多いので、各家庭ごとに自宅に合った料金プランを選択することにより、それまでの電気料金よりも節約できるようになったのです。

また、新電力の数は電力自由化当初より増えているため、自宅に適した料金プランを見つけやすくなっています。

契約・解約が比較的簡単

新電力はネットからの申込みで契約と解約が完了できる会社が大多数なので、大手電力会社よりも契約と解約が簡単なことが多いです。

新電力の中には、期間縛りの料金プランを契約していた場合などに解約金が発生するケースもあります。

しかし、解約金がない新電力も多いので、遠くない未来に解約する可能性がある場合には解約金なしの新電力や料金プランを選べば大丈夫です。

大手電力会社から新電力への切り替えや新電力A社から新電力B社への切り替えの際には、基本的に解約手続きが必要ありません。解約手続きは新規契約する新電力が代行してくれるからです。

しかし、ごくまれに解約手続きを代行しない新電力があるので、解約手続きを行なってくれるかどうかを新規契約する際に確認しておきましょう。

ポイントやサービスが充実

新電力に乗り換えた人の多くが歓迎しているメリットは、ポイントやサービスの充実度の高さです。

ほとんどの新電力は他の業種も運営しており、その業種で提供しているポイントを新電力分野でも提供できるようにしています。

また、ポイント還元を実施している企業と提携してポイントを付与している新電力もあります。

他業種でも業績を上げているような大手の新電力だと、ポイントだけではなく割引サービスも用意していることがほとんどです。

従来の電力会社が電気とガスのセット割を実施してきたように、新電力では自社が運営する他業種のメイン商材とのセット割などを実施しているのです。

バラエティに富んだセット割を準備している新電力も多いので、ネット検索で探してみましょう。

選択肢が豊富

新電力は、選択肢が多い点でも歓迎されています。

各家庭のライフスタイルに対応した料金プランも豊富ですが、前項に記したセット割やサービスだと、大手電力会社にはガスとのセット割のみというのが一般的ですが、新電力の多くは以下のようなセット割・サービスを提供しています。

  • インターネットとのセット割
  • 携帯電話とのセット割
  • ガソリン代の割引
  • 動画配信サービスの割引
  • ポイント還元率アップ

また、新規入会キャンペーン特典などが充実している新電力が増えているので、キャンペーンの特典を目当てに新電力を選ぶという人も多いです。

従来の電力会社や他の新電力にはない独自のサービスや料金プランをPRしている新電力を探すという楽しみもあります。

選択肢は電力自由化以前とは比較できないほどあるので、口コミやネット記事などで評判が良い新電力を見つけましょう。

新電力はやばい?デメリットや注意点を紹介

電気料金の安さや充実したサービスなどで脚光を浴びている新電力ですが、以下のようなデメリットも利用した人や利用を考えている人から指摘されています。

  • 価格変動のリスクがある
  • 急なサービス終了や撤退の可能性
  • 契約条件の比較が複雑

これらのデメリットの概要を見ていきましょう。

価格変動のリスクがある

特に多く指摘されているデメリットは、価格変動リスクです。

新電力は企業ごとに電気料金プランのタイプが異なるので、選ぶ新電力やその新電力の電気料金プランタイプ、その時点での燃料単価などによって価格が変動する可能性があります。

電気料金プランのタイプは以下の2タイプに分かれます。それぞれの特徴をご覧ください。

電力量料金特徴
市場連動型変動する市場価格により電力料金単価が決まる
従量電灯型固定電力会社が決めた電気料金単価で固定される

市場連動型は市場価格に経費をプラスした金額が電力量料金単価になるので、燃料費調整額に関連したリスクが低めというメリットがあります。

しかし、価格変動でライフプランが崩れることを避けるため、価格が変わりにくい従量電灯型を選ぶ人も少なくありません。

急なサービス終了や撤退の可能性

新電力には大手電力会社と違って突然のサービス終了や撤退などの可能性もあります。

実際に、2021年以降、電力事業から撤退したり企業自体が倒産したりした新電力会社もかなりの数にのぼっています。

新電力のサービス終了や撤退の代表的な理由は、コロナウイルス感染症の拡大やウクライナ情勢などにより、電気の原料価格が高騰したことです。

これにより、電力自由化以降増え続けていた新電力が100社以上事業休止や廃止や倒産に追い込まれました。

しかし、現在は原料価格も安定しつつあり、事業停止していたけれど再開している新電力も多いです。

また、仮に電気事業終了や撤退という事態に陥っても、突然電気の供給が停止するわけではないのでご安心ください。

万が一に備えて、次に切り替える新電力を探しておきましょう。

契約条件の比較が複雑

電気料金プランが多様化したことが歓迎されていますが、その一方で「契約条件比較が複雑になって分かりづらい」と嘆く声もあります。

「自分のライフスタイルに則したプランを選ぶために契約条件を調査しているときりがない」という意見もありました。

しかし、そういう人のために、多くの新電力や新電力を紹介する企業サイトなどが、電気料金シミュレーションツールなどを無料公開しています。

シミュレーションツールで割り出せるのはあくまで目安です。実際に請求される電気料金と一致するとは限りませんが、どのシミュレーションツールも精度が高いので、契約条件の比較に悩んだ際に活用してみてください。

新電力は今後どうなっていくのか

新電力が日本国内で広く活用されるようになってからもうすぐ10年になりますが、新電力は今後さらに注目され、新電力に切り替える人が増え続けていくことでしょう。

新電力が今後さらにクローズアップされるという予測を裏付ける現在の情勢をご覧ください。

脱炭素化が進んでいる

近年世界的に異常気象が発生しやすくなっていることで、地球環境悪化への危機感や環境保全意識と環境保全への関心は高まる一方です。

そういった世界情勢に呼応して、世界各国で「2050年にカーボンニュートラルを達成する」という目標の元に脱炭素化が推進されています。

日本政府や全国の自治体で「2050年カーボンニュートラル達成」を果たすために脱炭素化を目標に掲げています。

日本国内でも公式サイトで脱炭素化に取り組んでいることをPRする企業が増えてきました。脱炭素化に前向きという企業の方が取引先や顧客にアピールしやすいという面も作用しています。

そうした背景により、従来の電力会社よりも電力に対して柔軟性が高く、脱炭素化実現への意識も高いとされている新電力に切り替える企業・一般消費者が増えているのです。

再生可能エネルギーの価格が低下

脱炭素化推進に欠かせないのが再生可能エネルギーで、脱炭素化を推進する政府・自治体・企業の多くが再生可能エネルギーの普及に努めています。

その再生可能エネルギーは、需要が高まる反面、価格が下降し続けています。

日本で最も導入が進んでいる太陽光発電も、2024年から2025年上半期にかけて下がり、風力発電・水力発電など他の再生可能エネルギーの価格も下降気味または横ばい状態です。

再生可能エネルギーの価格が下がると一部の新電力には打撃になり、再生可能エネルギーの価格下降や燃料材料費の高騰の影響で倒産する新電力もあります。

しかし、それを機に電気料金の値下げを実施して新規顧客を増やす新電力も多いです。再生可能エネルギー価格が下がったことをプラスに転じさせているのです。

地域密着型のサービス

新電力の中には、供給範囲を全国ではなく特定の地域に限定している企業もあります。そういった新電力は、その地域に特化したサービスを提供しています。

この地域密着型サービスに特化している新電力は「地域特化型電力企業」と呼ばれており、特定の地域の地形や気候を考慮し、地元の自治体やコミュニティと密接に結びついて独自のサービスを実施しているのです。

地域密着型の新電力には「転居が多い人には向かない」「全国区に供給していない」というデメリットがありますが、その地域にこれから住む人や今後も住み続ける人にとっては非常に有益な新電力です。

地域に密着している新電力は、業績が上がるにつれて供給範囲を拡大していきます。そういった新電力が増えることにより、新電力の利用率はさらに増えていく可能性が高いです。

新電力会社同士の競争が激化している

記事冒頭で書いたように、現在電力供給を実施している新電力会社は2025年6月時点で764事業者に上っているため、新電力同士の競争も電力完全自由化当時より激化しています。

競争の激化によって倒産したり電力事業から撤退する企業も少なくありませんが、残っている企業はサービス内容を利用者のニーズに合わせて練り上げているため、電力完全自由化当初よりサービス内容は飛躍的に向上しています。

こういった事情から、従来の電力会社から新電力に切り替える人がさらに増えているのです。

新電力の競争が激しくなることが新電力利用者の増加に結びつき、新電力の需要を高めているため、新電力は今後ますます発展していくでしょう。

電力自由化の深化

2016年に電力が完全自由化して以降、電力分野の市場が大きく変化し、それに伴って電力自由化の深化も進んでいます。

新電力が電力市場に進出することによって新電力の競争が激しさを増し、従来の電力会社は新電力に匹敵するような料金プランやサービスを考案し、提供するようになりました。

電力自由化が深化することにより、自分や同居家族のライフスタイルに則したプランを自由に選びたい、という要求が以前より実現しやすくなり、新電力だけではなく新電力に挑もうとしている従来の電力会社も活性化しています。

電力自由化の深化は、新電力などの電力市場にも電力を消費する一般消費者や企業にも歓迎できる状況なのです。

新電力に関するよくある質問

新電力への切り替えを考えている人、切り替える前に新電力をより深く知りたい人から寄せられる事が多い質問とその回答を紹介します。

「新電力」とはどういう意味ですか?

「新電力」の名前が広く知れ渡ったのは電力完全自由化以降ですが、かつての名称はPPSです。

新電力自体は1999年の改正電気事業法が成立時に生まれ、2012年までは「特定規模電気事業者」という意味を表すPPS(Power Producer Supplier)という名称で呼ばれていました。

しかし、わかりにくいという意見が多かったことで経済産業省が新電力という名称を考案したのです。

新電力とは、新たに進出した電力会社という意味からきた名称なので、意味も2012年以前の「特定規模電気事業者」という意味ではなく、「新規に進出してきた電力会社」という意味を表しています。

新電力と電力会社の違いは何ですか?

新電力と従来の大手電力会社の主な違いは以下表の通りです。

新電力電力会社
電力調達方法自社調達または他社調達自社調達のみ
送配電網の有無持たない場合もあるあり
料金・サービス内容自由度が高い制約がある

従来の大手電力会社は発電所を保有する義務があったので必ず自社の発電所を持っているので、電力は自社調達です。

それに対して、新電力には発電所保有義務がないので、発電所を保有していない新電力が多く、発電所を持つ電気事業者やJEPXから調達しています。

送配電網も従来の電力会社は保有義務があるので現在も保有していますが、新電力には送配電網の保有義務もないので、大手電力会社の送配電網を活用しています。

料金やサービスは、これまでの電力会社は特定法人に対して特定の料金・サービスを提供することを禁じられていましたが、新電力にはその禁忌がないため、自由な料金プラン・サービスを提供可能です。

新電力と契約するメリットは?

新電力と契約を交わすメリットは以下の通りです。

  • 大手電力会社よりも料金プランが豊富
  • 自分のライフスタイルに合わせやすい
  • 地球に優しい再生可能エネルギーも選べる

新電力は大手電力会社よりも自由に料金プランを組めるので、日中家にいないとか日中の電力消費が多いとか家族の人数が少ないといったライフスタイルに対応した料金プランやサービスを選択可能です。

また、再生可能エネルギーをメインに供給している新電力も増えています。

自宅に太陽光発電システムを設置するなど自宅で再生可能エネルギーを使えるような設備を整えなくても、CO2排出量を実質0にするサービスなどを用意している新電力も多いので、地球環境保護に貢献できるというメリットがあります。

そのため、近年は再生可能エネルギーを導入している新電力の人気が上昇中です。

新電力は安全ですか?

新電力を利用したことがない人や利用し始めたばかりの人は、新電力の安全性に疑問を抱いていることが多いです。

しかし、新電力の安全性は保証されています。新電力という名前だからといって新しく生まれた電力ではなく、新電力会社が供給している電気はこれまでに電力を供給してきた発電事業者が用意したものだからです。

新電力会社は、従来の発電事業者が発電した電力を発電事業者やJEPXから購入し、従来の大手電力会社が管理している送配電網を使って利用者に提供しているので、電気の安全性や品質は従来と変わりません。

契約する新電力会社の経営状態が不安定だと危険ですが、会社自体の運営を確認した上で契約すれば大丈夫です。

基本的に新電力が供給する電力自体には危険はないので、安心してご利用ください。

まとめ

新電力について「やばい」「潰れやすいのではないか」という声も多く寄せられています。

しかし、悪い評価以上に良い評価が多く、電力完全自由化当初より新電力・料金プラン共に選択肢が増え、サービス内容も充実しています。

しかし、リスクがあるのは事実なので、リスクを回避するため、新電力に関する正しい知識を身に着けましょう。

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この記事を書いた人

fuyuhome ライター

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