観光振興とは?環境業に向いてる人やこれからを簡単に解説!やりがいや資格・種類なども紹介

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新型コロナウイルスの流行により、観光スタイルは大きな変化を迎えています。

2022年以降は、制限緩和が進み、徐々に世界中から日本に訪れる外国人観光客も増えてきました。また、円安が加速している日本にとって観光は、経済効果としても重要な役割を担っています。

本記事では、観光振興の目的や、メリット・デメリット、取り組み事例などについて説明します。これからの日本を支えになるであろう観光分野の現状を把握しておきましょう。

観光振興とは

まずは簡単に「観光振興」というワードについて確認しておきましょう。

観光振興とは、観光を通してその地域の文化や伝統を活用し、経済活性化を目指す取り組みを指します。観光に力を入れることで、新たな雇用が生まれたり、経済に良い影響をもたらしたりするきっかけとなるのです。

観光とは

詳しい内容に入る前に、観光とは何かを理解しておきましょう。

観光とは主に

  • 旅行先にある景色や文化遺産などを訪れること
  • その地域の文化や伝統に触れること

を指します。

旅行と観光の違い

同じシチュエーションで使用される機会が多い「旅行」は、観光したい地に訪れるまでの道のり、またその地で一定の期間過ごすことを指します

英語でも旅行は「travel」、観光は「tourism」や「sightseeing」とそれぞれ区別されています。つまり、観光振興はただ過ごすだけではなく、観光客にその地域の特産物や文化に触れてもらうことが目的となります。

観光業とは?簡単に解説

観光業とは、旅行者や観光客に向けて宿泊、交通、飲食、ガイド、イベントなどのサービスを提供する産業の総称です。地域の文化や自然を活かし、訪れる人に魅力的な体験を届ける役割があります。

国内外の交流促進や地域経済の活性化にも重要な役割を果たす業界です。

観光業の職種

観光業には多様な職種が存在します。代表的なのはホテルや旅館のスタッフで、フロント業務や客室サービスを通して快適な滞在を提供します

旅行代理店の企画・販売職は、ツアーや旅行プランを立案し、予約や手配を行います。観光ガイドは、観光地や文化財を案内し、その魅力を直接伝える役割です。

さらに、航空会社や鉄道会社の客室乗務員・車掌、観光地でのイベント企画運営、テーマパークの運営スタッフなども含まれます。近年では、地域の観光資源を活用したまちづくりや、インバウンド向けのプロモーションを担うマーケティング職も増えています

それぞれの職種が連携することで、旅行者に満足度の高い体験を提供できるのが観光業の特徴です。

観光業のやりがい

観光業のやりがいは、訪れた人の笑顔や「来てよかった」という言葉を直接もらえることです。自分が関わったサービスや企画が旅行者の思い出に残り、再訪や口コミにつながる瞬間は大きな達成感があります

また、観光業は地域の魅力を再発見し、文化や伝統を守りながら発信する役割も担います。そのため、地元や好きな地域に貢献できる喜びがあります。さらに、多様な国籍や背景を持つ人と接する機会が多く、語学力やコミュニケーション能力を磨ける点も魅力です。

日々変化するニーズや季節ごとのイベントに対応するため、柔軟な発想力や企画力が求められますが、それが自分の成長にもつながります。観光業は人とのつながりを大切にしながら、自らも楽しみを見つけられる仕事です。

観光業に向いてる人

観光業に向いているのは、人と接することが好きで、相手の立場に立って考えられる人です。旅行者のニーズは多様で、時には予想外のトラブルも発生します。そのため、柔軟に対応できる判断力や問題解決力が求められます。

また、国内外から訪れる観光客と円滑にコミュニケーションを取るため、英語などの語学力があると有利です。さらに、地域の文化や歴史、観光資源に興味を持ち、自ら学び続ける姿勢も重要です。

忙しい時期や不規則な勤務時間にも対応できる体力や精神力も必要ですが、その分、感謝の言葉や笑顔を直接もらえるやりがいがあります。チームワークを大切にしながら、サービス精神を持って行動できる人は、観光業で活躍しやすいでしょう。

観光業のこれから

観光業は今後、持続可能性とデジタル化が大きなテーマとなります。世界的に環境保護や地域資源の保全が重視され、サステナブルツーリズムへの取り組みが進んでいます

例えば、環境負荷の少ない移動手段や、地元の文化・自然を守る体験型プランの提供が求められます。また、オンライン予約やAIを活用した観光案内、VRでの事前体験など、デジタル技術の活用も拡大しています。

インバウンド需要はパンデミック後に回復基調にあり、訪日外国人観光客向けのサービスや多言語対応も重要になります。さらに、地域ごとの特色を打ち出した観光振興策が求められ、自治体や民間企業の連携も増えるでしょう。観光業は変化の波に柔軟に対応しながら、より価値の高い体験を提供する方向に進んでいきます。

観光業に関する資格

観光業で活躍するためには、専門的な知識やスキルを証明できる資格が役立ちます。資格は就職や転職時のアピールポイントになるだけでなく、業務の幅を広げたり、昇進・昇給につながる場合もあります

観光業界では接客スキル、語学力、企画力、地域知識などが求められるため、それぞれの分野に合った資格を取得することが重要です。以下では、観光業で特に活用される資格を種類ごとに紹介します。

国家資格・公的資格

観光業では、国や自治体が認定する国家資格・公的資格が信頼性の高いスキル証明となります。代表的なのは「通訳案内士」で、外国人観光客を対象に有償でガイドを行うために必要な国家資格です。

外国語の運用能力や日本文化・歴史の知識が求められます。「総合旅行業務取扱管理者」や「国内旅行業務取扱管理者」も旅行業界で必須級の資格で、ツアー企画や旅行契約の管理責任者として働くために必要です。

また、地域限定の観光ガイド資格や、自治体主催の観光ボランティアガイド認定制度もあり、地元観光振興に直結します。これらの資格は受験条件や試験範囲が広く、事前の学習計画が不可欠です。

民間資格・業界団体認定資格

国家資格以外にも、業界団体や企業が認定する民間資格は多数あります。たとえば「サービス接遇検定」は接客マナーや顧客対応力を証明でき、ホテルや観光施設でのサービス業務に役立ちます

また、「旅行地理検定」は国内外の地理や観光資源に関する知識を問う資格で、ツアー企画や観光案内の質向上に直結します。その他、クルーズコーディネーター資格やテーマパーク運営に関する研修修了証など、職種特化型の資格もあります。

民間資格は比較的取得しやすいものも多く、学生や社会人がキャリアの土台作りとして取得するケースが増えています。観光業界では、こうした民間資格の組み合わせで専門性を高める方法も有効です。

語学関連資格

観光業は外国人観光客との接点が多く、語学力が大きな強みになります。「TOEIC」や「英検」は英語力を示す代表的な資格で、ホテルや旅行会社、空港業務など幅広い職種で評価されます

また、中国語の「HSK」や韓国語の「TOPIK」もアジア圏の観光客対応に有効です。さらに、外国語と観光知識を組み合わせた「観光英語検定」は、観光業務に特化した英語表現や文化説明のスキルを測る資格として人気です。

語学資格はスコアや級によって評価が分かれるため、目標とする職種や企業に求められるレベルを確認しながら計画的に学習を進めることが重要です。

観光振興の目的

続いては、観光振興の目的を確認していきましょう。

観光振興の目的として主に

  • 経済振興
  • 観光地の成長

の2つです。

経済振興

観光は大きな経済効果をもたらします。上記の図は、観光庁が発表している、2019年に日本人が国内旅行で消費した額のグラフです

2019年の国内消費額は年々増加しており、2011年と比べると約2兆円も増えていることがわかります。

一方で新型コロナウイルスが流行し、外出自粛を余儀なくされた2020年の旅行消費額は、前年に比べて半分以上の11.0兆円に減少しました

例えば、日本の観光地代表として有名な京都府は、2019年の国内旅行消費額が約909億円でしたが、翌年の2020年は約603億円でした。結果的に、京都市の宿泊施設は580軒が廃業となり、多くの従業員も職を失うこととなりました。

日本全体として見ても、2019年の宿泊業の雇用者数は約59万人なのに対し、翌年2020年は約52万人に減少しています。

続いて、日本に訪れた外国人観光客の消費額も見ていきましょう。観光庁は2019年に訪れた外国人観光客は、どの国から多く来日していたのか調査を行ったところ、

  1. 中国
  2. 台湾
  3. 韓国
  4. 香港
  5. アメリカ

の5ヵ国がランクインしました。

上記は経済産業省が発表した2019年訪日外国人旅行消費額です。2019年の訪日外国人旅行消費額は全地域の総額は4兆8,135円。国別に見ると、中国が1兆7千704億円と圧倒的な消費額であるのが分かります

その後、コロナ禍により訪日外国人は減少しましたが、2022年以降、状況が緩和したことで、国内・海外ともに旅行客の足は戻りつつあります。

さらに円安の影響によって、ますます海外からの観光客は増加していくと考えられ、国全体で観光について十分に取り組む機会と言えるでしょう。

観光地の成長

2つ目の目的としては、観光地の成長が挙げられます。全国各地にはそれぞれ伝承されてきた伝統や歴史的文化遺産、重要文化財などが多く存在します。

それらを継承していくためには、自治体や住民、お店などが協力し、観光客に伝えていくことが大切です。結果的に、その動きが観光地の成長につながると言えます。

国をあげて観光振興を推進

このような背景がある中で、国も観光庁を中心に観光振興を推進しています。日本には観光に関わる法律として「観光立国推進基本法」があります。どのような法律か詳しく見ていきましょう。

観光立国推進基本法について

上記の図は観光庁が提示している観光立国推進基本法の概要です。

観光立国推進基本法とは、昭和38年(1963年)に制定された「観光基本法」を改定した法律で、平成19年(2007年)に施行されました

観光基本法では、

  1. 国際親善を増進
  2. 国民の生活安定
  3. 勤労意欲の促進

などが主な内容でしたが、観光立国推進基本法では、少子高齢化を鑑みた内容となっており、観光基本法よりも国際交流の活発化を図っている法律と言えます。

また、2017年に観光立国推進基本法をもとにした「観光立国推進基本計画」が閣議決定されました。これは、2017年から2021年までの4年間の計画期間となっており、基本的な方針は

1.国民経済の発展

2.国際相互理解の増進

3.国民生活の安定向上

4.災害、事故等のリスクへの備え

 引用:観光立国推進基本計画|観光庁

の4つが掲げられています。

観光立国推進基本計画まとめ

主な計画目標は以下の通りです。

国内旅行消費額
平成32年までに21 兆円にする。【平成27年実績:20.4 兆円】訪日外国人旅行者数
平成32年までに4,000万人にする。【平成27年実績:1,974 万人】訪日外国人旅行消費額
平成32年までに8兆円にする。【平成27年実績:3.5 兆円】訪日外国人旅行者に占めるリピーター数
平成32年までに2,400万人にする。【平成27年実績:1,159万人】 訪日外国人旅行者の地方部における延べ宿泊者数
平成32年までに7,000万人泊にする。【平成27年実績:2,514万人泊】アジア主要国における国際会議の開催件数に占める割合
平成32年までにアジア最大の開催国(3割以上)にする。【平成27年実績:26.1%】日本人の海外旅行者数
平成32年までに2,000万人にする。【平成27年実績:1,621万人】

 引用:観光立国推進基本計画|観光庁

施策内容は下記の通りです。

 国際競争力の高い魅力ある観光地域の形成観光産業の国際競争力の強化及び観光の振興に寄与する人材の育成国際観光の振興観光旅行の促進のための環境の整備

 引用:観光立国推進基本計画|観光庁

目標に対する進捗

2019年、訪日外国人観光客は3,188万人まで増加しましたが、2020年までに4,000万人にするという目標は達成できていない状況です。

なお、観光立国推進基本計画の期間は2021年3月末まででしたが、期間の約半分が新型コロナウイルスの影響で達成できておらず、2022年現在、これからの計画に関しては改定の目処が経っていません。

観光振興計画について

観光立国推進基本計画は国全体の計画ですが、自治体ごとに計画を立てる観光振興計画も存在します。計画期間は約3〜5年間となっており、期間終了次第、次の計画を策定するという流れです

例えば、厚木市の第二次観光振興計画では

  • 策定した背景
  • 目指すべきビジョンと目標
  • 施策内容
  • 取り組みのための体制や計画の進行管理

など、事細かに決められています。このように自治体ごとに計画を立てることによって、それぞれの特長や課題感、目標を達成するためのモチベーション向上にもつながると言えるでしょう。

「観光振興計画」と検索すると、それぞれの自治体の計画内容が確認できます。

観光振興のメリット

観光振興の概要が見えてきたところで、取り組むメリットを確認します。ここでは、

  • 観光客の確保
  • 新たな雇用の確保
  • 関係人口の増加

の3つについて詳しく見ていきましょう。

観光客の確保

観光振興を行うことで、観光客の確保が見込めるでしょう。観光地であっても、観光客が訪れるまちづくりを行わなければ、その地域は衰退していく一方と言えます。

例えば市の公式サイトやツアーを充実させたり、SNSで宣伝したりすることで、さまざまな国や地域から観光客が訪れます。また1人の観光客がその土地を気に入った場合、口コミやSNSなどで拡散されるきっかけにもなります。

結果的に観光客の確保、その地域の経済発展や人口の増加など、地域活性化にもつながるのです。

新たな雇用の確保

観光は新たな雇用も生み出します。JICA(独立行政法人 国際協力機構)によると、観光産業の経済が成長することで、世界の経済成長率も上がると発表しています

また、世界的に見ても旅行・観光産業における雇用は大きな割合を占めており、10人に1人が旅行・観光に関わる職業に就いているという結果が出ています。

コロナウイルスの規制緩和によって、今後観光客は増加していく可能性はかなり高く、経済発展の鍵を握ると言っても過言ではありません。結果的に、新たな多くの雇用を確保できることで、働く人のやりがいにもつながるのです。

関係人口の増加

観光振興を推進することで、関係人口の増加にもつながります。関係人口とは、その地域に住む人々と観光客の間にいる人口を指します

例えば、その地域にルーツがあるが定住はしていない人や、その地域が好きで関わりたいと考える人なども関係人口に該当します。

関係人口が増えることで、観光客と定住者の関係をつなぐ役割を果たし、結果的に地域活性化につながります。

観光振興の取り組み事例

では、実際に観光振興を行っている自治体の事例を3つ紹介します。

観光客のリピーター率58%(石川県金沢市)

まずは、石川県金沢市で取り組まれている事例を紹介します。金沢城や兼六園、ひがし茶屋街、九谷焼など、さまざまな観光スポットや伝統工芸で有名な金沢市。

2015年に北陸新幹線が開通したことをきっかけに、金沢市の観光客は2014年に比べて年々増加しており2019年には1,068万人を超えました

金沢市観光協会公式サイトでは、季節ならではのツアー体験を展開しています。

例えば

  • 「五感にごちそう金沢冬季宿泊キャンペーン」
  • 「金沢の和菓子特集」
  • 「金箔貼り体験」
  • 「KANAZAWAディナーフェス」
  • 「お座敷遊び体験」

など、年齢層問わず興味を引くようなキャッチーなツアーを組んでいるのも魅力の一つと言えるでしょう。また、「旅行プランを決めるのが苦手……」という方でも公式HPからモデルコースを検索できます。

金沢駅にある観光案内所も金沢市のみならず、富山県や福井県、岐阜県などを含めた旅行プランの提案も行ってくれます。

これらの取り組みにより、金沢市に訪れた観光客のリピート率が58.0%と高い数値を実現。今後さらに観光地として発展していく街と言えるでしょう。

>>石川県金沢市観光公式サイト「金沢旅物語」

佐渡クリーン認証制度で安心な観光を推進(新潟県佐渡市)

新潟県佐渡市は人口約5万人、東京23区の約1.5倍の大きさの島です。

海産物はもちろんのことりんご、柿、お米、佐渡牛など農業や畜産業も盛んなのが特徴です。佐渡市公式観光情報サイト「さど観光ナビ」では、さどの楽しみ方というページを展開しています。

  • サイクリング
  • マリンレジャー
  • 大自然を感じるキャンプ場

など、山も海もある佐渡だからこそ味わえる観光スポットを紹介しています。また、リモートワークの増加においてコワーキングスペースがある施設も紹介。関係人口が増えるきっかけづくりも行っているのも特徴です。

また、渡クリーン認証制度を設けており、十分に感染症予防を行うことで観光客に安心を提供しています。

さらに無料WiFiの提供もスタートしており「島だと電波届くのかな……」と不安な方にも安心して観光できるとプロモーションしているのも、観光客に対する佐渡市の配慮がうかがえます。

>>佐渡について – 一般社団法人 佐渡観光交流機構 (sado-dmo.com)

>>佐渡の楽しみ方 | さど観光ナビ (visitsado.com)

【関連記事】新潟県佐渡市|自然と共生のシンボル トキと共生する佐渡島

地域住民の声から始まった阿寒湖温泉の再生(北海道釧路市)

阿寒湖の温泉は、1858年にはアイヌの人々がすでに利用していたという歴史ある温泉地です。阿寒湖で有名な北海道釧路市は、地域住民の声を機に「阿寒湖温泉再生プラン2010」を策定しました。

その後、観光協会とまちづくり協議会が統合し、NPO法人を設立。観光振興が本格的に始まります。さらに阿寒湖温泉は、2014年に入湯税を150円から250円に値上げし、差額分を観光振興の財源とする条例が制定されました。

阿寒湖は温泉のみならず、アイヌ文化に触れることができる地域です。阿寒湖付近には約120人のアイヌ人が実際に生活している集落「アイヌコタン」があります。

また、阿寒湖アイヌシアターイコロという劇場が存在し、「ユネスコ世界無形文化遺産」に指定されています

デジタルアートを使用した演目などを上映しており、アイヌの文化を学ぶことができます。現在は阿寒湖温泉2030が策定途中であり、世界にも注目される地域の一つとなっています。

>>モデルコース | 【公式】北海道の観光・旅行情報サイト HOKKAIDO LOVE! (visit-hokkaido.jp)

>>NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構(阿寒湖まりむ館観光インフォメーションセンター) | 基本情報 | 釧路・阿寒湖観光公式サイト SUPER FANTASTIC Kushiro Lake Akan (kushiro-lakeakan.com)

>>(特非)阿寒観光協会まちづくり推進機構

観光振興の課題・デメリット

さまざまな地域で観光振興の取り組みが始まっていますが、多くの課題も残っています。

ここでは、

  • 人手不足
  • 施設の老朽化・感染症対策

の2つの観点から詳しく見ていきましょう。

人手不足

観光において人手不足は大きな課題となっています。少子高齢化に伴い、どの業種でも人手不足に悩まされていますが、宿泊業においては約8割が不足しているとされており、職種別で見ても第一位となっています。

観光業の改善点としては

  • 長時間勤務
  • 低賃金
  • 作業効率向上のためのシステムを導入

などが挙げられます。宿泊業は20~24歳の平均年収は約180万円という結果が出ており、他の職種と比べても賃金が低いのが現状です。

賃金の低さは離職率の原因にもなっており、この状況を打破しない限り人手不足解消は難しいと言えます。観光客だけではなく、働く人たちの生活も豊かにできるような観光振興が大切なのです。

参考:観光業界における人材課題 ~日本の経済発展のために求められること~(PDF)

施設の老朽化・感染症対策

施設の老朽化も観光振興における課題の一つです

1986~1991年頃に起きたバブル景気によって経済が回り、観光業も盛んだったため、多くのホテルが建てられました。そして30年以上経った現在、当時建てられたホテルの多くは老朽化が進んでいます。

また、当時の旅行形態は団体ツアーが一般的でしたが、時代の変化やコロナウイルス流行を機に、個人旅行もしくは少人数で行動する観光客が増加している傾向にあります。

そのため、宿のサービスや満足感などが求められるようになっています。また、コロナウイルスの影響もあり、清潔感や従業員の感染リスクにおける対応も重視する人が増えているのも現状にあります

もともと観光地で人気だった地域は、従来のスタイルではなく、現代に合ったサービス提供や施設の環境を整える必要があるでしょう。

観光振興・観光業に関するよくある質問

ここでは、観光振興・観光業に関するよくある質問に回答します。

観光業は英語を話せないとできない?

観光業では、必ずしも英語を話せなければ働けないわけではありません。国内観光客を主な対象とする施設や地域では、日本語だけで十分に対応できる職種も多く存在します。

しかし、インバウンド需要が高まる現在、外国人観光客とのコミュニケーション機会は増えており、英語をはじめとする外国語スキルは大きな強みになります。特にホテルのフロント、空港業務、観光ガイド、旅行会社の国際部門などでは、英語力が採用や昇進の評価に直結します。

日常会話レベルでも、基本的な挨拶や案内ができれば業務の幅が広がり、接客の質向上にもつながります。英語力は入社後に研修や自己学習で伸ばすことも可能なので、語学に不安があっても意欲的に学ぶ姿勢があれば十分挑戦できます。

観光業はきついって本当?

観光業は「きつい」と言われることがありますが、その背景には勤務時間や業務内容の特徴があります。観光業は土日祝日や大型連休が繁忙期となり、休日出勤や長時間勤務が発生しやすい傾向があります。

また、観光シーズンやイベント時には来客数が急増し、接客や準備で体力的にもハードになります。さらに、顧客対応では柔軟な対応力やトラブル解決力が求められ、精神的にも負担を感じる場面があります。

ただし、その分お客様の「ありがとう」や笑顔を直接感じられるやりがいが大きいのも事実です。職場によってはシフト制の工夫や業務分担で負担を軽減しているところもあり、働き方次第で無理なく続けられるケースも多くあります。

観光業はどんな勤務形態が多い?

観光業では、シフト制が主流です。ホテルや旅館、テーマパーク、観光施設などでは、早番・遅番・夜勤といった交代制勤務が多く、営業時間や宿泊客のスケジュールに合わせて勤務時間が決まります

旅行会社や観光案内所など、主に平日昼間の業務が中心となる職場もありますが、繁忙期には残業や休日出勤が発生する場合があります。また、観光業は繁忙期と閑散期がはっきりしているため、シーズンによって勤務日数や時間が変動することもあります。

パート・アルバイトから正社員まで雇用形態も幅広く、短期リゾートバイトなど期間限定の働き方も人気です。自分の生活スタイルや希望する働き方に合った職場を選ぶことが、長く続けるためのポイントです。

観光振興とSDGsの関係

最後に観光振興とSDGsの関係について確認しましょう。今後観光地において、持続可能な観光を目指す必要があります。コロナウイルス流行以前、観光地に多くの海外客が訪れました。

一方でゴミを路上に捨てたり、撮影禁止の場所で撮影したりとマナーを守れない観光客も多くいたのも事実です。このような状況が続けば、地域のイメージ低下や治安の悪化にもつながってしまうでしょう。

そこで観光庁では「日本版持続可能な観光ガイドライン」を開発し、

2020年度には

  • 北海道ニセコ町
  • 三浦半島観光連絡協議会
  • 岐阜県白川村
  • 京都府京都市
  • 沖縄県

の5つの地域で持続可能な観光に向けた取り組みを実施。結果「2020年の世界の持続可能な観光地100選」に選ばれました。観光客に対してだけではなく、住んでいる人々にも配慮を行うことが大切です。

特にSDGs目標8「働きがいも経済成長」と関係

そして観光振興は、特に目標8と密接な関わりがあります。目標8では以下のターゲットが掲げられています。

目標8‐9.2030年までに、地方の文化や商品を広め、働く場所をつくりだす持続可能な観光業を、政策をつくり、実施していく

「本当は観光業として働きたい……」と考えても、低賃金が理由で仕方なく退職した人もたくさんいるでしょう。観光振興の推進は地域の活性化だけではなく、新たな雇用や賃金アップ、働く人のやりがいにつながるのです

まとめ

今回は

  • 観光振興とは
  • 旅行と観光の違い
  • 観光振興の目的
  • 国をあげて観光振興を推進
  • 観光振興のメリット
  • 観光振興の取り組み事例
  • 観光振興の課題・デメリット
  • 観光振興とSDGsの関係

について説明しました。観光振興は地域活性化のみならず、雇用の増加や経済成長、観光に訪れた人が定住を検討するきっかけとなる可能性を秘めています

とはいえ、観光地を成長させるためには、施設の整備やアクセスの利便性向上を図る必要があります。また2020年以降、新型コロナウイルスの流行に伴い、観光客が安心できる空間を作っていかねばならないという課題もあります。

自治体ごとにその地域の特性を生かした計画策定が重要となってくるでしょう。

>>さまざまな旅行形態についての解説は以下をご参照ください。

<参考文献>
旅行・観光産業の経済効果 に関する調査研究
令和3年版観光白書について(概要版)|観光庁
京都市観光協会データ年報(2020年)
訪日外国人旅行消費の蒸発の影響試算;年間で9割減少すると、GDPに0.8%の押し下げ効果|経済産業省
観光立国推進基本計画|観光庁
関係人口とは|総務省
観光地域づくり事例集
観光業界における人材課題 ~日本の経済発展のために求められること~
モデルコース | 【公式】北海道の観光・旅行情報サイト HOKKAIDO LOVE! (visit-hokkaido.jp)
NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構(阿寒湖まりむ館観光インフォメーションセンター) | 基本情報 | 釧路・阿寒湖観光公式サイト SUPER FANTASTIC Kushiro Lake Akan (kushiro-lakeakan.com)
(特非)阿寒観光協会まちづくり推進機構
佐渡について – 一般社団法人 佐渡観光交流機構 (sado-dmo.com)
佐渡の楽しみ方 | さど観光ナビ (visitsado.com)
石川県金沢市観光公式サイト「金沢旅物語」
観光の今を知る
「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」に係るモデル事業を実施しました!~今から始められる、withコロナ、afterコロナ禍での持続可能な観光を実現するための情報が満載です!~ | 2021年 | トピックス | 報道・会見 | 観光庁 (mlit.go.jp)

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