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WOOOLY株式会社|羊のように「楽しく、温かく、柔らかく」業界に新風を吹き込む障がい者就労継続支援B型事業所

WOOOLY株式会社

WOOOLY株式会社 佐藤絵理さん インタビュー

佐藤絵理

WOOOLY株式会社広報担当。同社100%子会社creW株式会社の代表取締役。2009年に津田塾大学を卒業し、商社に13年勤務。勤務年数の半分は営業職として、残りは製パンメーカーに出向しアレルギー対応パンの企画開発を行ったり、レッグウェアメーカーに出向しマネジメント職として企業と商品PRに尽力。のちに、その体験を活かしてcreW株式会社を起業。WOOOLY株式会社の和光市の事業所に併設するかたちで、「ぷりんクルーズ」(creW株式会社が運営)というプリンのテイクアウト専門店にて、障がいがある方々が美味しいプリンを楽しく作り、販売できる環境作りをしている。

introduction

社名WOOOLYに三つ並ぶにOには、ご利用者様、スタッフ、事業者の「三方良し」という想いがこめられています。障がいがある方々に多彩な仕事の選択肢が用意され、従業員の温かなサポートのもと、「三方に良い」事業所が次々とオープン。同社の先進的な取り組みは、従来の業界の在り方の変革にもつながっています。

今回は、広報担当の佐藤絵理さんに、同社が目指す「新しい障がい者就労支援」とはどのようなものかを伺いました。

楽しく、温かく、柔らかく、人に役立つ羊はWOOOLYの象徴

-まずは、業務の概要をご紹介ください。

佐藤さん:

当社は、障がいがある方々の社会参加を、就労を通してサポートする「障がい者就労継続支援B型事業所」を経営している会社です。事業所数は、埼玉県を中心として、関東・東海で約50店舗に達しました。ご利用者様にてきぱきと仕事をしていただくことが目的ではなく、就労にあたっての社会参画の準備として利用できるサービスを提供しています。利用者様にとって最善の環境を常に模索しつつ、新しいB型事業所への変革も実践中です。

-「障がい者就労継続支援B型事業所」について、ご解説いただけますか?

佐藤さん:

まず、雇用契約あっての就労となるA型事業所と異なり、B型の場合は利用者様と雇用契約を結びません。従って、A型の労働の報酬は給与形式ですが、B型は作業の工賃としてのお支払いになります。

利用対象者は、身体、知的、精神(発達障がいを含む)障がい、難病等があり、かつ利用について主治医の了解がある方、就労の経験はあるが、体力や年齢から一般企業に雇用されるのが困難な方、などを主とします。

-続いては、ビジョン、ミッションをお聞かせください。

佐藤さん:

ミッションは、社名WOOOLY(ウーリー)に込めた意味にも深くかかわっています。WOOL、すなわち羊毛は温かく柔らかですし、羊は可愛らしく、人の役に立ち、寄り添う存在です。そんなWOOLにちなんで、ミッションは「楽しく、温かく、柔らかく」をモットーに、就労支援を通して地域に貢献することです。通いやすく、無理のない仕事、楽しい作業、そして温かいスタッフがいる職場作りを目指しています。

さらに、WOOOLYのスペルに三つ並んでいるOは、ご利用者様、従業員、事業者の「三方良し」を意味しています。この経営理念「三方良し」を業界に広げ、ご利用者様、従業員ともに働きやすい業界を創っていきたいと考えています。

-御社は、どのような背景によって設立されたのでしょうか?

佐藤さん:

設立者でもある代表取締役は、佐藤孝信です。もともとは、総合商社で営業をしていたり、メガバンクで働いたりという経歴でした。のちに、整骨・介護・障がい福祉業界の会社に取締役として転職しました。そこでの仕事を通じ、この業界の様々な課題や現実を実感したそうです。例えば、業界の体質の古さや、ご利用者様の仕事の選択肢の少なさなどを肌で感じたといいます。それらの課題の解決のためには、一役員としてではなく、自分が会社の代表になればやれることも増えると感じ、当社を起業したという経緯です。

-障がい者就労支援の事業にはどのような課題、現実があるのでしょう?

佐藤さん:

直近の調査によりますと、日本で精神・身体に何らかの障がいがある人は、全人口の9.2%に当たるという統計があります。人数で言えば約1,160万人です。令和2年の937万人から増加傾向にあり、おもに精神障がいがある方がきわめて増えている状況です。

その中で、そのような方々がどのように自立に向けて取り組まれているかというと、厳しい現実があります。B型事業所は全国に1万5,000か所ほどあり、数としてはかなり多い印象だと言われることもあります。ですが、当事者それぞれの方に見合う受け入れが可能な事業所が少ないと感じています。

例えば、障がい特性によっては、ひとりで電車に乗ることが困難な方がいます。また、一般就職し、後天的に統合失調症を発症された方などが、入院治療を終えてからそのまま企業に戻れるかというと、なかなか厳しい現実があります。そのような方々の就労の第一歩を支える場としてB型事業所があるんですが、就業のルールが厳しかったり、仕事の選択肢がきわめて少なかったり、働く時間や体調によって在宅就労支援などがあって当然というところも、いまだ不十分だったりするんです。

私どものような株式会社の形態もありますが、社会福祉法人などの団体さんの中には、健常者のスタッフを先生と呼ぶ、勤務体系の融通性や仕事の選択肢が少ないなど、ご利用者様に緊張やハードルの高さが生まれることも少なくありません。

障がいのある方が社会に出ていく中で、仕事を選べない状況や、多少なりともプレッシャーを感じさせてしまう古い体質があることは、ご利用者様のみならず、業界としても社会全体としてもよろしくはない状況です。

駅に近い立地、多彩な仕事内容で利用者を迎える温かな職場

-それでは、御社のご業務の詳細を、特色や利用者にとっての利点なども含め、ご紹介ください。

佐藤さん:

ウーリーの従業員は「先生」という立場ではなく、厳しい指導もありません。ご利用者様に伴走するイメージですね。昼には温かい食事を用意し、声かけも頻繁にして、楽しく働いていただけるように気を配っています。

働く条件も、相談に応じて週に一度からでも可能ですし、終日の作業も、体調や通院などのご予定にあわせて午前、午後のどちらかだけ、という選択もできます。不調による長期欠勤があっても、問題なく復帰ができます。ご利用者様の体調に合わせて無理なく働いていただけることを第一と考え、そのための環境を整えています。

何よりもの特色は、仕事の選択肢をご利用者様の特性に併せて適宜見直していくということです。箱を作る、おしぼりを巻く、などのシンプルな軽作業が向いているご利用者様もいますので、その分野の作業も殆どの事業所が用意しています。それとは別に、絵が得意であったり、何かを作ることにやりがいや関心を持っている方々向けに、事業所ごとにご利用者様の興味関心や特性を考慮し、スタッフで知恵をしぼり、「創作」系の作業を考案して提供しています。

事業所ごとの例をいくつか挙げさせていただきます。

例えば、和光の事業所では、100%子会社のかたちで、プリンの製造とテイクアウト販売の専門店『ぷりんクルーズ』を併設しています。また、プリンを作ってみたいけれど、まだそこまでの自信と経験がない、というご利用者様には、「事業所で軽作業から仕事に慣れていき、いずれはプリン作りに挑戦しよう」と、夢を持っていただくアドバイスもしています。

上尾の事業所では、近くに畑を作り、さつまいもとトマトを育て始めました。取手の事業所では、ネイルアートの資格を持ったスタッフがいることから、ネイルのイベントを開催し、そのノベルティをご利用者様と作ったりもしました。与野本町事業所では、美味しい紅茶やジュースなどをご提供する『カフェ・ウーリー』をオープンし、ご利用者様の作品である絵も飾っています。

それ以外にも、多くの事業所が創作アートやアクセサリー製作の作業を多彩に用意しています。例としては、オリジナルキャンドル、アロマサシェ、デコパージュ石鹸、ビーズアクセサリーなどで、これらのハンドメイドの自社製品はインスタグラムにアップしたり、近隣のショップ、オンラインのハンドメイドサイトに出品したりして販売しています。     

ウーリーの業務上のもう1つの特色は、立地が駅に近いこと、交通機関での来所が困難な方のために送迎のシステムを完備していることが挙げられます。通いやすいと、非常に評判が良いですね。 

親子の心の安定にも繋がるウーリーの存在

-「三方良し」が、ご利用者様にどのように功を奏しているかが判りました。あとの二つ、スタッフ、事業者への「良し」をご紹介ください。

佐藤さん:

福祉、障がい者関係の仕事は、どうしても長時間労働だったり、組織の風通しが悪いともよく言われます。もう一点、ご利用者様だけでなく、スタッフにも仕事の選択肢を増やしてやりがいを感じてもらいたいと思っています。スタッフからの前向きな提案にしっかりと耳を傾け、採用できるものは実現するようにしています。

上尾の事業所のスタッフの例を挙げさせていただきます。彼女は美大卒、デザイン関係企業出身という、ウーリーの中では異色の存在です。ある時、彼女が支援員の仕事に加え、ご利用者様それぞれの個性を引き出せるような創作のお仕事も考案したいという意志があるのを知り、自由にリサーチをしてもらいました。結果、ご利用者様にヒアリングをしながら試作を繰り返し、ビーズアクセサリーの商品化が実現しました。

本人も、「スタッフのやる気次第で、クリエイティブな経験を活かして様々な体験をさせてもらえるのも、ウーリーの面白さです」と言ってくれています。

「事業者への良し」については、障がい者就労支援業界全体、ひいては社会全体への「良し」も考えています。ウーリーは若い会社であり、これまでに話させていただいたような様々な取り組みをしていくことで、古いと言われる業界の体質に、新風というのも大げさかもしれませんが、変革を起こして貢献していきます。それが、事業者・業界、ひいては社会全体の課題解決につながると考えています。

どの事業所であっても、仕事内容がどのようなものであっても、ウーリーの「楽しく、温かく、柔らかく」という精神が実践されるように、月に一度程度、全事業所の責任者が集うミーティングを開き、方向性の周知を徹底しています。

‐利用者、保護者などからの主な感想があればご紹介ください。

佐藤さん:

プレッシャーやストレスがなくて安心して働ける、送迎や昼ごはんの提供がありとても助かっている、自分のペースで作業ができるので楽しく通える、などがご利用者様からの主な感想といえます。親御さんの立場からは、例えばお子様がプリンを作るという成長をとても喜ばれ、それを購入してくださることも多いですね。お子様のほうは、逆に自分が作ったプリンを自分で買って親御さんにプレゼントできることが嬉しい、と話してくれます。親御さんからは、事業所の存在が親子の心の安定につながっている、という喜びの声がよく寄せられます。

また、ご利用者様が引っ越しをされる場合も、移住先の近くにあるウーリーの事業所でまたお仕事を続けられる方々もいます。ウーリーならどこでも安心、と思ってくださることは、とても嬉しいですね。

業態の改善・業界の改革のために100店舗への拡大を目指す

-利用者には、長期欠勤も受け入れるなどの寛容なご対応ですし、スタッフへの待遇改善も目指していらっしゃいます。事業所として収益的なサステナビリティが確保できてこその課題解決となりますが、そのあたりははどのようにお考えでしょうか?

佐藤さん:

障がい者就労継続支援B型事業所とは、障害のある方の支援などについて定めた法律である、「障害者総合支援法」に基づいて提供されるサービスの一環です。当社のサービス、つまり就労訓練の内容を魅力的にし、ご利用者様ご本人及び関係者の方々が当社を選んでいただくことが重要になってきます。

一般的にB型事業所というものは、世間からは見えにくく、どんな仕事をしているかも社会から認知されづらい存在です。そのような解決をはかる小さな一歩ですが、最近、ウーリーとして、東京FM様の子会社で、コミュニティFMというジャンルのラジオ番組を制作しているミュージックバード様に協賛し、スポンサーとなりました。障がいのある方がMCをなさっていて、会社としてもSDGsに取り組まれるとのことで、ご縁が繋がりました。

私どもが出演させていただいたり、番組のステッカーをウーリーが作ってアピールに努めたりなど、双方の認知を高める活動ともなっています。このような外部とのコラボレーションや取り組みも、今後さらに広げていきたいと考えています。

最後に、これからのご展望をお聞かせください。

佐藤さん:

いくら業界や社会を変えていきたいと願っても、10か所、20か所などの展開では、全国に15,000か所のB型事業所があるなかで、やはり影響は小さくなります。現在、ウーリーができる最大の事業所数として、2025年までに100店舗に拡大することを「チャレンジ100」と称し、目標に掲げています。

小規模な経営のB型事業所では、ご利用者様やスタッフの生活スタイルに変化があった場合の対応や、提供できる作業内容、工賃についても限りがあります。経営を拡大することによって、こうした問題にもフレキシブルに広く対応できますし、スタッフの働きやすさや待遇の改善にも繋げることが可能です。

古い体質ではない新しい事業所、ご利用者様も楽しく明るく通いやすい事業所をどんどん増やしていくことで、業界も良くなり、ご利用者様も良くなり、スタッフもやりがいを感じて仕事を続けることができます。そういう会社を作り、業界を引っ張っていく立場になりたいと考えています。

-一般社会・企業にも「そうあってほしい」と感じるお話でした。今日はありがとうございました。

関連リンク

WOOOLY株式会社公式HP:https://woooly.jp/