NASAとは?役割や目的、歴史などをわかりやすく解説!

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NASAは、宇宙探査という壮大な目標を追求しながら、地球観測や技術革新を通じて気候変動対策やイノベーション推進に貢献しています。

NASAの活動から生まれた気象予測GPSなど、私たちの日常生活は宇宙技術で支えられているのです。NASAの宇宙開発の役割と目的、そして歴史をわかりやすく解説していきます。

NASAとは

【スペースX クルードラゴン「エンデバー」打ち上げ(NASAケネディ宇宙センター)】

NASAとは「National Aeronautics and Space Administration」の略称で、日本語では「アメリカ航空宇宙局」と訳されています。1958年10月1日に正式に活動を開始した、アメリカ合衆国政府の連邦機関です。

その最大の特徴は、大統領に直属する独立機関として、軍事目的ではなく平和利用のための宇宙開発と航空技術の研究を担う文民機関※であることです。本部はワシントンD.C.に置かれており、2020年にはNASA初の黒人女性エンジニア、メアリー・ジャクソンを称えて「メアリー・W・ジャクソンNASA本部」と改称されました。

文民機関

軍人による統制ではなく、民間人(市民)が主導する機関。軍事組織から独立しているため、研究成果が国際協力に開放され、平和利用の原則が守られやすい。NASAがアルテミス計画でJAXAなどの国際パートナーと協力できる基盤となっている。

設立の背景と理念

1957年にソ連が人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功した「スプートニク・ショック」により、アメリカは宇宙開発体制の強化を迫られました。1958年7月に制定された「国家航空宇宙法」により、航空研究機関NACA(国家航空諮問委員会)を母体としてNASAが誕生しました。

この法律には「宇宙活動は、すべての人類の利益のために平和目的に専念されるべきである」という理念が明記されています。冷戦による軍事的競争を背景に持ちながらも、科学と人類全体の利益に貢献することが設立時から明確に位置づけられました。

組織構造と主要な拠点

NASAは本部とワシントンD.C.から全米各地に点在する10のフィールドセンター、複数の小規模施設で構成されています。主な施設には以下のようなものがあります。

  • ジョンソン宇宙センター(テキサス州):宇宙飛行士の訓練と有人宇宙飛行の管制
  • ケネディ宇宙センター(フロリダ州):ロケット打ち上げ
  • ジェット推進研究所(カリフォルニア州):無人惑星探査機の開発・運用
  • マーシャル宇宙飛行センター(アラバマ州):ロケットエンジンなど推進システム

組織規模と現在の動向

近年は約1万8,000人規模の職員によって運営されてきたNASAですが、2025年5月のトランプ政権による2026年度予算要求は前年度から約60億ドル削減された約188億ドルとなり、1961年以来の低い水準です。

これに対応して2025年7月には約3870人(約21%)の職員が退職予定であり、大規模な人員削減が進行中です。この削減の背景には、政府予算配分の政策的変更と、SpaceXなど民間宇宙企業への業務委託拡大により、NASA直接雇用の必要性が減少していることが挙げられます。

しかし、このような予算と人員の削減は、進行中のアルテミス計画や火星探査、地球環境観測といった科学ミッションに大きな影響を与える可能性が懸念されています。次の章では、NASAの役割と目的に焦点を当てて行きましょう。*1)

NASAの役割と目的

【ロケットの上部ステージから分離したJWST(ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡)】

NASAは設立以来、その活動は遠く離れた宇宙空間の探査から、私たちの足元にある地球環境の監視、そして日々の空の移動手段の革新に至るまで、驚くほど幅広い領域に及んでいます。これら多様な活動は「NASA戦略計画」に基づいており、科学、探査、技術、そして組織能力の最適化といった明確な目標のもとで遂行されています。

NASAが掲げる主な役割と目的について見ていきましょう。

宇宙探査:人類の知識と活動領域の拡大

NASAの最も象徴的な役割は、宇宙の謎に挑み、人類の知識のフロンティアを拓く「宇宙探査」です。これはNASA戦略計画の核心でもあります。

無人探査では、2022年に運用を開始したジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が宇宙誕生初期の銀河の姿を捉え、火星では探査車「パーシビアランス」が生命の痕跡を探し続けています。これらのミッションを通じて、宇宙の起源や惑星の進化、そして生命の可能性に関する科学的理解を深めています。

【ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の構造】

一方、有人探査では、アポロ計画以来となる有人月面着陸を目指す「アルテミス計画」が進行中です。2026年4月以降の「アルテミスⅡ」で4名の宇宙飛行士が月を周回し、2027年半ば以降の「アルテミスⅢ」で有人月面着陸を実現する予定です。

これは単に月を訪れるだけでなく、月を拠点として将来の火星有人探査へとつなげる長期的な戦略であり、月周回有人拠点「ゲートウェイ」の建設を含め、国際的なパートナーや民間企業と協働して、持続可能な宇宙探査の基盤を築くことを目的としています。日本もこの計画の重要なパートナーとして参加しており、日本人宇宙飛行士の月面着陸の機会も確保されています。

地球観測:私たちの惑星の監視と保護

NASAのもう一つの非常に重要な役割は、宇宙からの視点で「地球」そのものを観測し、気候変動をはじめとする地球規模の課題解決に貢献することです。

Terra、Aqua、Auraといった多数の地球観測衛星群を運用し、

  • 大気組成
  • 海洋温度
  • 氷床の融解
  • 森林の状態

などを24時間体制で継続的に監視しています。これらのデータは、地球温暖化のメカニズムを解明し、将来の気候を予測するための重要な科学的根拠となります。

2021年には欧州宇宙機関(ESA)と気候変動対策に関する戦略的パートナーシップを締結し、2024年にはJAXA※とESAとの三機関協力により、世界中の人々が利用できる地球観測データとツールの提供体制を強化しました。これらの科学的知見は、各国の政策決定や、干ばつ・洪水といった災害対応のための実務的なリスク評価にも活用されており、社会の安全保障にも直結しています。

※JAXA

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(Japan Aerospace Exploration Agency)

技術革新と社会・経済への貢献

NASAの活動は、宇宙や空の研究開発だけに留まらず、そこで生まれた技術を地上の生活や経済に還元することも重要な目的としています。

航空技術の革新では、2024年に初飛行した実証機「X-59」がソニックブーム(衝撃波)を大幅に低減する技術を実証し、将来の静かな超音速旅客機の実現に道を開きました。また、SpaceX※などの民間企業と連携し、国際宇宙ステーションへの物資輸送や宇宙飛行士の往還を委託することで、コスト効率を高めると同時に、宇宙産業という新たな経済圏の創出を強力に後押ししています。

SpaceX(Space Exploration Technologies Corp.)

イーロン・マスクが2002年に設立した米国の宇宙輸送サービス企業。再利用可能なロケット「ファルコン9」や有人宇宙船「クルードラゴン」の開発に成功。NASAから国際宇宙ステーション(ISS)への宇宙飛行士や物資の輸送を請け負うほか、衛星インターネット「スターリンク」も展開する。

NASAが開発した技術は技術移転によって積極的に民間へ展開され例えば、

  • 人工呼吸器
  • 形状記憶合金タイヤ
  • 医療用画像処理ソフト

など、2000件以上の技術がすでに実用化されています。加えて、2025年には米国教育省と提携し、全米10州の60以上の施設で約1000名の生徒を対象とした放課後プログラムを開始するなど、STEM教育(科学・技術・工学・数学)プログラムを通じて、次世代の科学者や技術者を育成することも、未来に向けた重要な役割と位置づけられています。

このようにNASAは、宇宙探査という壮大な目標を追求すると同時に、地球環境の保全、航空技術の革新、経済への貢献、そして次世代の人材育成という多面的な役割を果たし、人類社会全体の持続的な発展に貢献し続けています。*2)

NASAの歴史

【月面でオルドリン飛行士が撮影したアームストロング飛行士】

NASAが設立されてから65年以上の歳月が流れました。その歴史は、そのまま人類の宇宙への挑戦の歴史とも言えるでしょう。

NASAの歴史を主な時代区分に沿って、その変遷を辿ってみましょう。

創設期と初期の有人宇宙飛行(1958年~1960年代前半)

NASAの誕生は、冷戦下の宇宙開発競争、特に1957年のソ連による世界初の人工衛星「スプートニク1号」の成功が直接的な引き金となりました。アメリカは宇宙開発体制の構築を急ぎ、1958年7月29日にアイゼンハワー大統領が「国家航空宇宙法」に署名し、同年10月1日にNASAは正式に業務を開始しました。

発足直後の任務は、ソ連に対抗し、まず人間を宇宙空間へ送ることでした。1958年に始まった「マーキュリー計画」では、1961年5月5日にアラン・シェパードがアメリカ人として初の宇宙飛行(弾道飛行)に成功し、翌1962年2月20日にはジョン・グレンが初の地球周回飛行を達成しました。

この流れを決定づけたのが、1961年5月25日のジョン・F・ケネディ大統領による演説です。ソ連のユーリ・ガガーリンによる世界初の有人宇宙飛行の直後、ケネディは「この10年以内に人間を月に到達させ、無事に地球に帰還させる」という壮大な国家目標を宣言し、「アポロ計画」が本格的に始動しました。

アポロ計画と月への到達(1960年代後半~1970年代)

【月面に立てた星条旗のかたわらに立つオルドリン飛行士】

月面着陸という目標に向け、NASAはまず「ジェミニ計画」(1961年~1966年)で2人乗りの宇宙船を用い、

  • 長期間の宇宙滞在
  • 宇宙遊泳
  • 宇宙船のドッキング(結合)

といった、月飛行に不可欠な技術を着実に習得しました。

しかし、アポロ計画は1967年1月27日、アポロ1号の地上試験中に火災が発生し、3名の宇宙飛行士が犠牲となる痛ましい事故に見舞われました。この悲劇を乗り越えるため、NASAは設計の徹底的な見直しと安全対策の抜本的な強化を行いました。

この事故からの学習プロセスは、組織の安全文化を根本から変え、後のNASAの運営方針に大きな影響を与えることとなります。

そして1969年7月20日、アポロ11号が月面に着陸しました。ニール・アームストロング船長が人類として初めて月面に降り立ち、「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」という歴史的な言葉を残しました。

アポロ計画は1972年12月のアポロ17号まで続き、合計6回の有人月面着陸に成功しましたが、莫大な国家予算と国民の関心の低下により、予定より早く終了しました。

スペースシャトルと国際協力の時代(1981年~2011年)

アポロ計画終了後、NASAはより持続的かつ実用的な宇宙利用へと舵を切りました。その象徴が、世界初の再利用可能な宇宙往還機「スペースシャトル」です。1970年代に開発が進められ、1981年4月12日に「コロンビア号」が初飛行に成功しました。

スペースシャトルは、1990年4月24日にハッブル宇宙望遠鏡を軌道に投入し、その後も複数回にわたる修理や維持管理を実施するなど、多目的に活躍しました。最大の成果は、国際協力の象徴である「国際宇宙ステーション(ISS)」の建設における中心的な役割です。

ISS計画は1998年11月20日にロシアの基本機能モジュール「ザーリャ」が打ち上げられて始まり、アメリカ、ロシア、日本、カナダ、欧州が参加する宇宙開発の新時代を開きました。

しかし、この時代は2度の大きな悲劇にも見舞われました。1986年1月28日の「チャレンジャー号」爆発事故と2003年2月1日の「コロンビア号」空中分解事故です。

合計14名の宇宙飛行士が犠牲となり、これらの事故はNASAに技術面だけでなく、組織の意思決定プロセスの深刻な課題を突きつけました。スペースシャトルはこれらの教訓を乗り越え、2011年7月に最後のミッションを終え、30年間の運用に幕を下ろしました。

民間連携と新たな探査の時代(2011年~現在)

2011年のスペースシャトル退役により、アメリカは一時的に自国で宇宙飛行士を宇宙へ送る手段を失いました。この状況を打開するため、NASAはISSへの物資・人員輸送を民間企業に委託する「商業乗員輸送プログラム」を加速させました。

この転換点は、2020年5月30日、SpaceX社の「クルードラゴン」が民間企業として史上初のISS有人輸送に成功したことで結実しました。同時に無人探査でも大きな成果が上がっています。

2020年7月30日に打ち上げられた火星探査車「パーシビアランス」は2021年2月18日に着陸に成功し、現在も火星でのサンプル採集を継続しています。2021年12月25日に打ち上げられた「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」は、2022年7月から本格運用を開始し、宇宙誕生初期の銀河観測など革新的な科学成果を上げています。

現在、NASAはアポロ計画以来の有人月面探査「アルテミス計画」を、国際パートナーや民間企業と連携しながら強力に進めています。

NASAの歴史は、国家目標としての競争から始まり、技術的な挑戦と失敗からの学び、国際協働を経て、現在は民間との連携を深めながら再び月、そしてその先の火星を目指すという、新たな探査の時代へと踏み出しています。*3)

NASAで働くためには

【太平洋に着水後、ドラゴン宇宙船内で回収を待つ大西卓哉飛行士ら国際クルー】

NASAで働くことは、宇宙という無限の可能性に挑む、世界中の多くの人々にとっての憧れかもしれません。そのミッションは宇宙飛行士だけでなく、数多くのエンジニア、科学者、そして様々な専門家によって支えられています。

しかし、NASAはアメリカの連邦政府機関であるため、「狭き門」と言えるでしょう。国籍という大きな壁を含め、極めて高いハードルが存在する中で、どのような道が現実的に存在するのかについて解説していきます。

NASA宇宙飛行士への道

NASA宇宙飛行士になるための最大の前提条件は「アメリカ市民権を有すること」です。二重国籍者は応募可能ですが、米国籍は必須であり、永住権(グリーンカード)のみでは応募できません。

この時点で、日本国籍のみを持つ人がNASA宇宙飛行士として直接採用される道は閉ざされています。

アメリカ市民権を保有する者にとっても、競争は極めて厳しいものです。2024年春に締め切られた募集では、約8,000名の応募者から最終的に10名の宇宙飛行士候補者が選抜されており、競争率は800倍以上という現実があります。

年齢制限は設けられていませんが、過去の選抜実績では30代から40代中盤で採用されるケースが大多数です。これは、大学院修了後に十分な実務経験を積み、かつ長期間の訓練と複数回のミッションに対応できるキャリアが求められるためです。

応募要件

学歴としてはSTEM分野(科学・技術・工学・数学)の修士号取得が必須です。ただし、

  • STEM分野の博士課程2年以上の修了
  • 医学博士号の取得
  • 認定されたテストパイロット養成学校の卒業

で代替可能です。

実務経験として、修士号取得後に専門分野で最低2年間の実務経験、または1,000時間以上のジェット機の機長としての操縦経験が必要です。

身体条件はNASAの長期宇宙飛行に対応できる健康診断をパスする必要があります。

  • 視力:両眼とも矯正視力1.0以上
  • 血圧:座位で140/90以下

などが基準です。近視の場合、レーシック手術を受けた場合は手術後2年以上の期間経過が必須となります。

適性面では、

  • リーダーシップ
  • チームワーク
  • 高いストレス耐性
  • コミュニケーション能力

といった資質が厳しく評価されます。選抜プロセスは、

  1. 書類審査
  2. 面接
  3. 医学検査
  4. 心理評価

と複数段階で厳格に行われ、最終選抜後も約2年間の基礎訓練を経て初めて飛行任務に就くことができます。

NASAの職員・エンジニアとして働く

NASA職員として常勤採用される場合も、原則として「アメリカ市民権」が必須条件です。これはNASAが国家安全保障に関わる機微な技術を扱う連邦政府機関であるためです。

採用される職種の大部分は、

  • 航空宇宙工学
  • 生物学
  • コンピューター工学
  • 気象学

などSTEM関連分野であり、募集はアメリカ連邦政府の職員募集サイト「USAJOBS」を通じて行われます。

ただし、米国籍要件には限定的な例外が存在します。JPL(ジェット推進研究所)は火星探査車などの無人探査機を担うNASAの施設ですが、運営はカリフォルニア工科大学が行っています。

このため、職種によってはアメリカ永住権保持者や、卓越した技術を持つ外国籍の研究者が採用される可能性があります。

学生向けには「JVSRP(JPL訪問学生研究プログラム)」など、外国籍学生向けのインターンシップが存在します。ただし奨学金の自己確保と、JPL内でのメンター自力探索が必須条件であり、報酬は支給されません。

これは実務経験を積むための有力な機会ですが、ハードルは相当に高いのが実情です。

日本国籍を持つ人の現実的なルート

日本国籍を持つ人がNASAのミッションに最前線で関わるための最も現実的なルートは、

  • 日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)
  • NASAと契約する民間企業

を通じた国際協力プログラム参加です。

JAXAの宇宙飛行士として参加することが最も代表的な道です。JAXA宇宙飛行士選抜試験に合格し、JAXA職員として採用された後、国際宇宙ステーション(ISS)やアルテミス計画といった国際協力ミッションの一環として、NASAのジョンソン宇宙センターなどで訓練を受け、ミッションに参加します。

JAXAや研究機関の職員として協働するJAXA職員日本の大学・研究機関の研究者が、アルテミス計画のゲートウェイ(月周回拠点)開発や共同科学ミッションなど、日米プロジェクトメンバーとしてNASAと日常的に協働する機会があります。

民間企業経由で関わるNASAのプロジェクトの多くは、

  • SpaceX
  • ボーイング
  • ロッキード・マーティン

といった民間航空宇宙企業が請負実行しています。これらの企業に就職し、エンジニアや技術者としてNASAのミッション開発に間接的に関わることで、実務経験を積む道も重要性を増しています。

NASAで働く道は多様ではありますが、宇宙飛行士や正規職員への直接採用は、国籍という制度的な障壁を含め、極めてハードルが高いのが現実です。しかし、JAXAを通じた国際協力、民間企業や研究機関との連携など、そのミッションに関わる方法は確実に広がっています。

どの道を選ぶにせよ、大学・大学院レベルの高い専門性、実務経験、そして国際的に協働できるコミュニケーション能力(英語力)が不可欠となります。*4)

NASAとSDGs

【セルミレク・フィヨルド東岸の海氷域に浮かぶ氷山(NASA Operation IceBridge)】

NASAが設立時に掲げた「全人類の利益のための平和目的」という理念は、SDGs(持続可能な開発目標)が目指す「誰一人取り残さない」地球社会の実現と深く響き合います。NASAは宇宙からの「観測データ」と「実用技術」の提供を通じて、地球規模の課題解決に貢献しています。

SDGs目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう

宇宙探査で培われた技術(医療、素材など)は民間に移転され、地上の技術基盤の強化に直結しています。また、民間企業との連携を通じて宇宙経済圏の拡大を推進し、イノベーションと新たな雇用を創出しています。

SDGs目標13:気候変動に具体的な対策を

NASAの地球観測衛星(Terra、Aqua等)は、温室効果ガス、海面上昇、氷床の融解を精密に監視しています。JAXAのGOSAT衛星などと連携したこれらの観測データは、IPCCの報告書や各国の気候政策を支える、不可欠な科学的根拠となっています。

SDGs目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

国際宇宙ステーション(ISS)の運用やアルテミス計画、JAXAとのデータ共同利用など、国境を越えた技術とデータの共有が、全球的な課題解決を加速させています。これは人類共通の課題に取り組む実質的なパートナーシップの表れです。

これらの協力スキームは、先進国と途上国が共同で科学的課題に取り組むためのプラットフォームとなり、全ての国が気候変動や災害リスクの科学的理解に基づいた意思決定を行うことを可能にしています。宇宙からの観測という国家の壁を超えたデータ共有により、人類共通の課題解決に向けた実質的なパートナーシップが実現しているのです。

このようにNASAは、宇宙からの地球観測データと先端技術のスピンオフを通じて、地球規模の課題解決に貢献しています。 特に気候変動対策、産業革新、国際パートナーシップの達成において具体的な役割を果たしています。*4)

>>SDGsに関する詳しい記事はこちらから

まとめ

【NASAなど国際機関が協力する海面水位観測ミッション「Sentinel-6B」】

NASA宇宙探査と地球観測、技術革新を通じて人類共通の課題解決に取り組むアメリカの機関です。その活動は、設立時の「全人類の利益」という理念に今も貫かれています。

現在、日本を含む多くの国々や民間企業が参加する「アルテミス計画」は、宇宙開発が一国のものから多様な主体が協働するグローバルな領域へ移行していることを象徴しています。2026年2月以降に予定されている「アルテミスⅡ」打ち上げは、半世紀ぶりに人類が月圏に戻る歴史的瞬間となります。一方で、2026年度予算の約24%削減と3,870人の職員退職という現実は、NASAが岐路に立たされていることを示しています。

NASAについて知ることは、気候変動といった私たちの未来に直結する問題を理解することの一端です。宇宙から得られた地球環境データは、世界のあらゆる地域・立場の人々の間でも共通の科学的根拠となります。

今後の宇宙開発では、宇宙ゴミ問題への対処、気候変動データの公平な分配と活用、民間と公共セクターの協力が重要な課題となります。NASAで働くことを志す人はもちろん、そうでない人も個人レベルでできることとして例えば、

  • NASAやJAXAの地球観測データに関心を持つ
  • STEM教育の重要性を認識し次世代を支援する
  • 宇宙開発は人類全体の未来に関わる営み」という視点を持つ

などが挙げられます。宇宙から得られる知見と国際協力の精神は、より良い地球の未来を築くためのヒントを与えてくれるはずです。*6)

<参考・引用文献>
*1)NASAとは
NASA『About NASA』
NASA『Missions』
NASA『Commercial Space』
JAXA『「すべてを推進するのは科学」JAXAとNASAの宇宙科学における協力とは』(2024年10月)
Wikipedia『アメリカ航空宇宙局』
*2)NASAの役割と目的
NASA『What We Do』
NASA『Why Go to Space?』
NASA『Artemis』
JST『NASAとESAが地球規模の気候変動に対処するための新たな取り組みで協力』(2021年7月)
総務省『宇宙×ICTに関する懇談会 報告書(案) 概要』
*3)NASAの歴史
NASA『NASA History』
NASA『National Aeronautics and Space Act of 1958 (Unamended)』
NASA『Commercial Crew Program』
NASA『James Webb Space Telescope』
Smithsonian National Air and Space Museum『Apollo 11』
*4)NASAで働くためには
JAXA『宇宙飛行士になるにはどうすればよいのですか』 
JAXA『NASAの宇宙飛行士になるにはどうすればよいのですか』
NASA『Astronaut Requirements』(2020年1月)
NASA『NASA Selects All-American 2025 Class of Astronaut Candidates』(2025年9月)
NASA『JPL Visiting Student Research Program』
*5)NASAとSDGs
NASA『Sustainable Development Goals』
NASA『Technology Transfer and Spinoff』
UNOOSA『Space Supporting the Sustainable Development Goals』
環境省『環境省、JAXA、国立環境研究所、NASA間の温室効果ガスに関する衛星データ相互比較等の協力継続の決定』(2024年12月)
*6)まとめ
NASA『Artemis Accords – Signatories』
NASA『Fiscal Year 2026 Budget Request』
JAXA『国際的な宇宙探査の実現に向けて』
国際連合広報センター『国連宇宙部』
気象庁『WMO 温室効果ガス年報』(2025年10月)

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この記事を書いた人

松本 淳和 ライター

生物多様性、生物の循環、人々の暮らしを守りたい生物学研究室所属の博物館職員。正しい選択のための確実な情報を提供します。趣味は植物の栽培と生き物の飼育。無駄のない快適な生活を追求。

生物多様性、生物の循環、人々の暮らしを守りたい生物学研究室所属の博物館職員。正しい選択のための確実な情報を提供します。趣味は植物の栽培と生き物の飼育。無駄のない快適な生活を追求。

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