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アクアポニックスとは?自作方法や家庭用キット、デメリットなど簡単に解説!

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最近耳にするようになったアクアポニックス。1980年代からNGOや国連で実用化されていましたが、当時の認知度はそれほど高くはありませんでした。しかし2005年あたりから検索される回数がゆるやかに増えています。

さらには2015年に採択されたSDGsにより、人々は持続可能な世界を目指し始めました。その一環として、化学肥料や農薬による環境汚染や生産量の安定化などの課題解決のカギとなるアクアポニックスに注目が集まっています。

本記事では、アクアポニックスの概要から注目の理由、実用例などをまとめました。

アクアポニックスについて理解を深め、導入する際の参考にしてみてください。それでは最初に、アクアポニックスとは何かを見ていきましょう!

目次

アクアポニックスとは?

アクアポニックスは、水産養殖(Aquaculture)と水耕栽培(Hydroponics)を合わせた言葉です。淡水魚と野菜を同時に育てることで、持続可能な循環型農業システムを実現しました。

養殖と水耕栽培を同時に行う農業

続いてはアクアポニックスが、どのような構造になっているのか見ていきましょう。

【アクアポニックスの構造】

アクアポニックスは、

  1. まず淡水魚を飼育する際に出たフンを微生物が分解
  2. 配管を通って水耕栽培のエリアへ運ばれる
  3. 栽培している野菜が栄養分として吸収
  4. 水は浄化され再び淡水魚のいる水槽へ戻る

という流れが主な仕組みです。

アクアポニックスで育てた野菜は、土壌栽培のように雑草も生えません。さらに害虫も付きにくいため、除草剤や殺虫剤を使用せずに育てられます。淡水魚の養殖も、つねに浄化した水を水槽へ送っているため水を交換する手間もなくなりました。排出された魚のフンも栄養分として吸収しており、化学肥料も不要です。

育てる魚や植物を選べる

アクアポニックスの特徴として、育てる植物や魚を選べる点も挙げられます。

一般的な種類としては、下記の植物や魚を育てられるケースが多く見られます。

野菜
・レタス、クレソン、サンチュ、バジル、ビーツ、ワサビなどの葉物野菜類
・スナップエンドウなどの豆類
・白菜、人参、大根、生姜などの根菜類
・パッションフルーツ、イチゴ、ブルーベリーなどのフルーツ類
・バラ、菊、チューリップなど・ティラピア、チョウザメ、エビ、錦鯉、イワナ、サクラマス、鮭類など

このようにアクアポニックスを活用してさまざまな植物や魚が育てられますが、豆類については、同じ畑で栽培すると連作障害(※)を起こします。すると、次第に成長が阻害され、最終的には、ほとんど育たなくなることも少なくありません。

その点アクアポニックスで栽培した豆類は、連作障害を起こさないため1年に複数回の収穫も可能です。このような課題を解決し生産性の向上を期待できるところも、アクアポニックスの特徴でしょう。

魚も植物と同様に幅広い種類の養殖が可能なうえ、淡水で生きられるのであればエビも育てられます。なかでもティラピアは、育てやすいという理由から世界的に養殖実績の多い魚です。

連作障害とは

同じ科の野菜を同じ畑で繰り返し育てると生育不良を起こし、収穫量の減少につながります。最終的には、ほとんど収穫できなくなることも。さらに同じ野菜を作り続けたことで、土壌バランスも崩れ、菌や病害虫の密度が上昇し、微生物にも偏りがでるため、病気になりやすい環境になってしまいます。

なぜアクアポニックスが注目されているの?

ここからはアクアポニックスが注目されている理由を、環境・農業・持続可能性に分けて紹介します。

環境

これまでの農業は農薬や化学肥料を使うことで、土壌汚染や二酸化炭素の排出が課題となっていました。

その一方でアクアポニックスは、土壌栽培のように農薬や化学肥料を使用しません。水槽で養殖している魚のフンを微生物が分解し、栄養素へ変えたものを与えています。そのため土壌汚染の心配もなく、地球環境に優しい農業システムといえます。また、汚れた水は農作物によって浄化され、再び養殖している水槽へ戻すため、節水効果も期待できるでしょう。

農業

農薬や化学肥料は病気や害虫から農作物を守り、安定した生産量を保てますが環境への影響を考えるとあまり良いものとは言えません。それに対してアクアポニックスは、農薬と化学肥料を使用せずに有機野菜を生産できます。さらに土壌栽培と比べると、害虫被害も軽減され殺虫剤も不要です。

アクアポニックスのシステム構造自体はシンプルですが、高い生産性を期待できます。近年は研究の成果もあり、安定して農作物の生産もできるようになりました。栽培から収穫の期間も土壌栽培の半分、しかし生産量は液肥栽培の約2倍とメリットの多い農業システムです。

液肥栽培とは

溶液肥料と培養土を使う方法で、土耕栽培と水耕栽培の中間のような栽培方法。

持続可能性

従来の農業は見た目がきれいな農作物を育てるために、農薬や化学肥料を大量に使用していました。その結果、土壌環境が悪化し生態系のバランスが崩れてしまうことも多く、持続性の点ではさまざまな課題が残ります。その一方でアクアポニックスは農作物・魚・微生物のバランスを整え、生産と環境配慮を両立させる循環型農業です。

規模も自由自在に決められるため、都市農業家庭菜園としても広がりはじめています。同時に、資源が不足している国や地域から発展したこのシステムは、食料の持続可能性を高める手段として世界からも注目されています。さらに低コストで安定した生産が望め、手間もかからない、持続的に行うための条件も揃っているのです。

アクアポニックスのメリット

アクアポニックスのメリットは、今までの農業生産システムでは叶わなかったことが可能になったところにあります。それぞれどのようなメリットがあるのか1つずつ見ていきましょう。

農作物の生産と環境配慮を両立

アクアポニックスは先述した通り微生物が分解した魚のフンを栄養分に、農作物を育てる農業システムです。一緒に育てる淡水魚の水槽の水も、農作物によって浄化され清潔な状態を保っています。そのため、頻繁に水の交換や水を捨てることもありません。これにより、80%以上の節水に成功。水耕栽培と養殖の組み合わせだからこそ、このような循環型農業システムの実現を可能にしました。この点がアクアポニックスのメリットと言えます。

土壌栽培より短期間で育つ

通常の土壌栽培と比較すると、アクアポニックスは1/2の期間で収穫できます。アクアポニックス新規参入を手助けしている株式会社プラントフォームがレタスの栽培を行った際は、通常60~90日かかるものが、最短25日で収穫できる大きさまで成長したという結果が出ています。

また、施設内で育てるため気温や天候の影響を受けない分、生産量も安定します。このように、通常より早く収穫でき安定した収穫量が望めるアクアポニックスは、廃棄をほぼ出さず計画的に栽培できるのです。

液肥より生産性が高い

通常、水耕栽培を行う際は化学肥料である「液肥」を使用します。この液肥を与えることによって、植物を育てるために必要な栄養分を含んだ水になるのです。対してアクアポニックスでは、養殖している魚のフンが微生物によって分解され肥料代わりになります。

それぞれどのくらいの量の植物が育つか比較すると、5,000円の液肥を約4㎏を使用しトマトを栽培すると約3株分の収穫が期待できます。

一方でアクアポニックスは、同じ5,000円で魚のエサを23㎏購入すると約8株のトマトが収穫できるのです。さらに水耕栽培と同時に養殖も行っているため、約17㎏の魚も収穫できます

魚から排出されるフンを使用するため肥料代もかからず、通常の水耕栽培より収穫量の増加も見込めます。加えて魚も収穫できるアクアポニックスは、生産性の高い農業システムと言えるでしょう。

LEDを利用した植物工場より低コスト

施設内で植物を育てるために光や温度・湿度などを制御する植物工場は、施設とLEDのコストが負担となっています。

例えば、1,000㎡の施設で初期投資にかかる費用は約3億円ほど。その後も生育環境を管理するために、電気や空調管理費などのランニングコストに600~800万ほどかかってしまいます。そのため販売先も確保できない状態で始めてしまうと、失敗する可能性が高くなります。

それに対して、どの会社のアクアポニックスシステムを導入するかにもよりますが、初期コストは1/4、ランニングコスト1/10で行えるため、参入のハードルも下がります。

ここまでの話からアクアポニックスには、さまざまなメリットがあることが分かりました。しかし、デメリットや課題があることも事実です。

アクアポニックスのデメリットと課題

アクアポニックスのデメリットである、

  • システムの変更や増設が難しい
  • 葉物野菜の販売価格が安い

課題として、

  • アクアポニックスの認知度が低い
  • 講習会など学習の場が整えられていない

について見ていきましょう。

【デメリット①】栽培システムの変更や増設が難しい

アクアポニックスで栽培できる農作物は、葉物野菜から実物野菜・観賞用の植物などさまざまです。しかし農作物の種類によってシステムの設計がことなります。例えばアクアポニックスを活用して、葉物野菜であるリーフレタスを栽培していたとしましょう。

このリーフレタスの栽培を実物野菜のトマトに変えたいと思っても、リーフレタスを栽培するためのシステム設計になっているため育てることは不可能です。つまり、トマト専用のシステム設計が必要になります。さらに同じ作物の生産量を増やす場合も、システムの設計によっては初めから作り直す場合もあるのです。

【デメリット②】葉物野菜の販売価格が安い

アクアポニックスを活用し生産する農作物として、葉物野菜を選ぶ人は大勢います。そのなかでも、早く収穫でき栄養価も高いリーフレタスが人気です。しかし、アクアポニックス自体の認知度がまだまだ低いため、消費者は何がどう違うのか分からず高い金額だと手に取ってもらえないのが現状です。そのため、植物工場で生産された農作物と同じ値段で販売されています。

有機野菜と同じ品質で、安定した生産量を維持できるにもかかわらず、低価格で販売しなければならない現状を変えなければいけません。

現時点での対策としては、

  • コスト構造を1株100円で経営が成り立つようにする(栽培施設の設計の見直し)
  • 卸以外の販売先を見つけ、少しずつ単価を上げていく

上記2つが挙げられます。

【課題①】アクアポニックスの認知度が低い

日本のアクアポニックスに対する認知度は、世界に比べると低い状況です。そのため市場に商品が並んでも、

  • 消費者には聞き慣れない言葉であること
  • 日本にアクアポニックス産を前面に出した野菜ブランドがほとんどない
  • 消費者は、普通の農作物と何が違うのかわからない

などの理由で、手に取ってもらいにくいでしょう。

認知度を上げるためには、世間にアクアポニックスのメリットを知ってもらう必要があります。アクアポニックスを導入したことでメディアの取材を受けた場合、その価値や生産方法などの背景を伝えましょう。

【課題②】講習会など学習の場が整えられていない

先述した通り、日本でのアクアポニックスの認知度はあまり高くありません。そのため講習会などが開催される機会も少なく、学習の場が整えられていないのが現状です。しかし、アクアポニックスのシンプルな構造をマニュアル化すれば、広まる可能性は大いにあります。

そのため、

  • システムの構造
  • 使い方
  • 毎日行う作業の把握
  • トラブル対処法

など、基本的なことを把握し、実践しながら覚えていきましょう。

少数ですが、アクアポニックス導入を支援している日本企業もあります。セミナーを開催している場合もあるため、参加することも1つの方法です。

アクアポニックスの世界と日本の現状

ここからは世界と日本の現状を見ていきます。世界と日本ではアクアポニックスに対して、どのくらいの意識の差があるのでしょうか。

世界

世界の国々では、これだけの企業がアクアポニックスに関連する事業を展開しています。

【アクアポニックスに関する世界の企業マップ】

ReportOceanの発表によると、世界のアクアポニックス市場は2026年までに10億1,9001900万ドルに達すると予想されています。なかでもとくにアメリカ・オーストラリア・イスラエル・カリブ海諸国などは、アクアポニックスの先進国と言われているほど熱心に取り組んでいる国です。

ここまでアクアポニックスが急速な広まりを見せているのは、

  • 世界的な人口増加や食糧需要の伸び
  • シンプルな設計のため、資源が不足している国でも取り入れやすい
  • 生産性の向上と環境配慮が期待でき、持続可能な農業の実現を可能にする。

など、現代に必要な要素が詰まった農業システムであることから世界で注目されているのです。

世界の現状を理解したところで、次は日本の現状を見ていきます。

日本

日本は、きれいな淡水が簡単に手に入り海洋資源にも恵まれた国です。さらに有機栽培も通常の野菜より値は張りますが、良いものを手軽に購入できます。ここがアクアポニックスが浸透しなかった理由の1つと言われています。資源不足の国で発展した農業システムであるアクアポニックスは、資源を豊富に持っている日本では必要性を感じられなかったのです。

しかしSDGsが広まったことによって、日本でもアクアポニックスへの注目度が高まりました。現在ではアクアポニックスの導入支援を行う企業も少しずつ増え、企業や農家・自治体のサポートを行っています。世界と比べるとまだまだですが、これから少しずつ浸透していくでしょう。

アクアポニックスに適している企業・事業

アクアポニックスがどのような農業システムか理解したところで、次は導入に適している事業者について見ていきます。アクアポニックスは農業分野の方々が参入できるだけではなく、現在介護や観光・支援事業などの事業者でも導入しやすい特徴もあります。

農業・養殖業の事業者

農業や養殖業の事業者は、もともと農作物の生産や養殖を行っているため、アクアポニックスをゼロから始めるより初期投資を抑えられます。また、現在の事業と平行してアクアポニックスを導入することで、新たな収益源にもなります。

もし土壌栽培で育てていた野菜が天候の影響を受け収穫量が減ったとしても、アクアポニックスで育てた農作物や魚のおかげで収益減少などのリスクを回避できるのです。

このように、もともと農業または養殖業を行っていた企業が導入すると相乗効果を受けられ、さらにはリスク回避も期待できます。

農業体験事業

旅行・観光事業者が、アクアポニックスを導入している農家と連携することで、一般の人や導入を考えている企業向けに農業体験事業を行えます。多くの人が、アクアポニックスに触れるきっかけとなるでしょう。

さらに農業体験を通して関心が高まった人は、自宅で気軽にアクアポニックスを行えるキットも販売されているため挑戦するかもしれません。企業も実際に体験したことで、自社で導入した際のイメージをより具体的に想像できます。

農業体験事業を行う側も、ほかの農業体験事業と差別化でき話題性も高いため、地域の体験型観光スポットとして注目を浴びる可能性もあります。このように農業体験事業がアクアポニックスと連携することで、導入へのハードルを下げつつ新たな観光スポットとして地域活性化にも貢献するでしょう。

障がい者の自立支援事業

アクアポニックスは、

  • システムの構造が分かりやすくシンプルな設計になっている
  • 施設内で作業を行うため、マニュアル化し仕事を工程ごとに分けられるる

というように、複雑な作業がなく役割分担がしやすいため、障がい者の自立支援事業に適した農業だと言えるでしょう。働く側も自然の循環を実際に見ることができ、生き物を育てることで働きがいも感じられる職場になります。

介護・リハビリ事業

介護やリハビリ事業も、アクアポニックスを取り入れることで多くのメリットを感じられます。

例えば、何らかの原因で身体や精神に傷を負ってしまった人が健康を回復する方法の1つとして「園芸療法」があります。園芸療法とは観賞用の花々や野菜など、身のまわりの自然と触れ合うことで心・体・社会的健康を取り戻すことを目的とした療法です。

そして、この園芸療法とアクアポニックスは相性が良いと言われています。介護施設や高齢者施設に設置することによって、施設利用者に「生き物の世話をする」という役割ができます。すると、モチベーションの向上にもつながるでしょう。

貧しい地域や途上国への支援事業

ここまで挙げた事業と関係のない企業でも、途上国にあくアポニックス設備を整えることで、雇用を生み出したり、持続可能な農業が根付くきっかけとなるため、CSR(※)的な活動にも向いていると言えます。

もともとアクアポニックスは、資源が不足している国や地域で発展した農業システムです。そのため、農業システムや技術の整備が十分に行われていない地域や途上国に向いています

土壌栽培のように定期的に水を与える必要もなく、農薬や化学肥料を使用しないため人や環境にも負荷がかかりません。施設内で育てる場合は、途上国などで多い自然災害による農作物への被害も軽減できます。

企業が組織で活動するにあたって担う社会的責任を指す言葉。

ここまでは、アクアポニックスの導入に最適な事業をお伝えしました。次は実際に導入している企業の事例を見ていきましょう。

企業のアクアポニックスの導入事例

アクアポニックスはどのように導入されているのでしょうか。ここでは2つの事例を紹介します。

小豆島アクアポニックスプロジェクト

株式会社FOOD STORY PROJECTは、香川県の小豆島にある飲食店「キッチンUCHINKU」と「小豆島アクアポニックスプロジェクト」を開始しました。このプロジェクトでは、生ごみの堆肥化設備とアクアポニックスを合わせた「都市型アクアポニックス農法」を導入しています。

駐車場1台分の広さの場所にアクアポニックスの設備を設置し、成長した食材はお店の料理に使用されます。アクアポニックスで栽培した野菜はやわらかく雑味がないため、生のままでも抵抗なく食べられるそうです。

さらに、アクアポニックスによって出た生ごみは堆肥化され、ごみの減量化にもつながります。その後堆肥は再びアクアポニックスに使用され、循環型農業を実現しています。

アクアポニックス長岡プラント

株式会社データドックと株式会社プラントフォームは、国内最大規模となる「アクアポニックス長岡プラント」を建設しました。

この施設では、

  • アクアポニックスを活用した野菜や果物の栽培
  • 魚の養殖
  • 加工食品の開発
  • モニタリングシステムの開発

など、アクアポニックスをより良いシステムへするための開発が行われています。

また長岡プラントで生産された野菜は、長岡市の飲食店へ出荷・販売されています。さらに隣接する施設で余ったエネルギーを、アクアポニックスに利用する循環型アクアポニックスプラントの開発も行っているそうです。

アクアポニックスは自宅でも実践できる

ここまでは、あくアポニックスを企業が導入する場合について詳しく見てきました。実は、アクアポニックスは自宅でも簡単に実践できるのです。

その方法について、ここでは見ていきましょう。

家庭用アクアポニックスキットを使ってみよう

近年、自宅で簡単に導入できるようアクアポニックスキットが販売されています。

コトブキ工芸|レグラスポニックス3040

はじめてアクアポニックスを実践する場合、水槽メーカーであるコトブキ工芸から販売されている、レグラスポニックス3040がおすすめです。

水槽に加えて、植物を育てるためのプランツバスケット、水中ポンプなど、アクアポニックスに必要なものがセットになった商品です。魚、ライト、植物、砂利はセット内容には含まれていないものの、お近くのホームセンターで揃うので、製品が届き次第すぐに始められます。

アクアポニックスを自作してみよう

キットを使わずにアクアポニックスを自作する方法もあります。

・魚タンク(魚を入れる容器)

・野菜ベッド(野菜を育てる容器)

・魚タンクから野菜ベッドに水を運ぶ水中ポンプ

・水を吸い上げたり供給するためのパイプ

などを準備する必要がありますが、ご自宅のスペースに合わせたサイズのものが作成できるメリットがあります。

ぜひ一度、家庭でアクアポニックスを試してみてはいかがでしょうか。

アクアポニックスとSDGs目標2「飢餓をゼロに」との関係

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持続可能な農業の実現を可能にするアクアポニックスは、SDGsの目標達成にも貢献する農業システムです。アクアポニックスがSDGsのどの目標と関係しているのか確認する前に、まずはSDGsが何かを見ていきましょう。

SDGsとは2015年に開催された国連総会にて、全加盟国が賛同した国際目標です。2030年までに世界が抱える環境・社会・経済の課題解決を目指し、17の目標と169のターゲットが設定されました。そしてSDGsは政府や企業だけが行うものではなく、1人ひとりが無理のない範囲で継続的に取り組むことが重要とされています。

では、アクアポニックスと関連性の深いSDGsの目標を1つずつ見ていきましょう。

SDGs目標2「飢餓をゼロに」

SDGs目標2は、「世界中の人々が飢餓で苦しむことのない世界」や「持続的な農業の確立」を目指します。ターゲットも、ただ単純に「食料で空腹を満たせるようにする」だけではなく、食料問題や、生産面、栄養面など、飢餓の問題を多様な方面から解決する内容が揃っています。

そのなかでもアクアポニックスは、農業に関するターゲット【2.4】に当てはまるでしょう。

2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。

農林水産省

アクアポニックスは、少ない資源とシンプルな方法で安定した生産量を確保し、さらに今まで一般的であった土壌栽培よりも、早く収穫でき魚も一緒に育てられます。食料不足や農業技術が整えられていない国にとって、アクアポニックスは理想的なシステムと言えるでしょう。

SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」

あらゆる淡水に関する課題の解決を目指すSDGs目標6。そのなかでも、特にアクアポニックスと深い関わりのあるターゲット【6.3】に注目してみましょう。

2030年までに、汚染の減少、投棄廃絶と有害な化学物や物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模での大幅な増加により、水質を改善する。

農林水産省

アクアポニックスでは養殖と農業を同時に行います。魚のフンやエサで汚染された水はまず微生物によって分解され、その後農作物によって浄化される仕組みです。これにより汚染を出すことなく、アクアポニックスを運用できます。

SDGs目標12「つくる責任つかう責任」

持続可能な消費・生産形態を確実にすること」を目指すSDGs目標12は、消費から消費のもととなる生産活動まで、人と環境に優しく持続可能である状態の実現に向けた内容となっています。

そして目標には、農産物の生産に対するターゲットも含まれているのです。

そのなかでもアクアポニックスは、食品ロスに関するターゲット【12.3】に当てはまるでしょう。

2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。

農林水産省

土壌栽培の場合は台風や大雨など自然災害の影響を受け、農作物に傷が付き売り物にならなくなることも少なくありません。しかしアクアポニックスは室内での生産が中心となるため、自然災害によって傷が付き廃棄になるリスクを避けられます。さらに栽培計画が立てやすいため、廃棄物の削減にもつながるでしょう。

廃棄が減れば焼却処理時に発生する二酸化炭素の削減にも貢献します。

SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」

SDGs目標13は、地球温暖化の原因の1つである気候変動に関する目標です。これらは、ターゲット【13.3】と関連しています。

気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。

農林水産省

アクアポニックスは脱炭素に貢献しており、

  • 農業と養殖を同じ場所で行うことで、使用するヒーターやポンプのエネルギーを効率的に使用できる
  • 農薬や化学肥料が不要なため、飼料を輸送する際に出るCO2を大幅に削減
  • 太陽光や地熱などの再生エネルギーを活用できる

などが挙げられます。

アクアポニックスを導入することで、地球温暖化の原因となる二酸化炭素排出量を減少できるのです。

SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」

SDGs目標15は、陸の生態系の保護や回復、持続可能な利用の推進などに関するターゲットが設定されています。そのなかでも【15.1】は、アクアポニックスと関連性の深いターゲットです。

2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。

農林水産省

アクアポニックスを導入する企業や自治体・個人が増えることで、CO2の削減や土壌・淡水の汚染を防ぐことになり、最終的に陸の豊かさを守ることになるのです。

まとめ

土壌栽培よりも少ない水で育ち、農薬や化学肥料を使用しないのにもかかわらず生産性は向上するなど、メリットの多いアクアポニックス。持続可能な農業が求められる現代に、最適な農業システムだと言えるでしょう。連携できる事業の分野も幅が広いため、さまざまな可能性を秘めています。

しかしデメリットや課題があることも事実です。良い面と悪い面の両方をしっかりと把握し、アクアポニックスを事業に生かしてみましょう。正しく活用することで、生産性と環境配慮の両立が実現するだけではなく、SDGsの目標達成にも貢献します。

まずは実例などを確認し、アクアポニックスの知識を深めることから始めてみましょう。

〈参考文献〉
アクアポニックスで育つ野菜と魚|株式会社プラントフォーム
アクアポニックスとは|株式会社プラントフォーム
アクポニ『さかな畑』アクアポニックスの世界へようこそ|株式会社アクポニ
アクアポニックス農業のメリット、デメリット、課題は?【植物工場と比較】|株式会社アクポニ
アクアポニックスの超基礎① 海外ではどのように活用されているのか?|株式会社アクポニ
アクアポニックス3つの活用法|株式会社アクポニ
SDGs(持続可能な開発目標)|蟹江憲史著