SDGs14「海の豊かさを守ろう」現状と取り組み、私たちにできること

わたしたちに恵みを与えてくれる海。しかし、人間がこれまであらゆる方法で発展してきた結果、多大なる負荷をかけてきました。

わたしたちが今の生活を続ければ、

  • 2050年には海に捨てられるプラスチックが魚の量を上回る
  • 温暖化が加速し、海面上昇や気候変動による生態系バランスの崩壊

など、さまざまな問題が発生します。これらを解決しなければ海も人間も持続性は失われるでしょう。

これから先、海と人間が良い関係を保つために目標14「海の豊かさを守ろう」が重要になります。

海との共存を目指すため、

  • 目標14に何が書かれているのか
  • 地球で何が起きているか
  • 解決に何ができるのか

を学んでいきましょう。

目次

目標14「海の豊かさを守ろう」とは?

目標14では以下の課題が掲げられています。

  • 海洋汚染の改善
  • 海の酸性化の防止
  • 海洋資源の乱獲
  • 生態系の保護
  • 陸上からの汚染物質の流出を削減

そしてこれらの課題の解決を目指し、10個のターゲットが掲げられているので確認しましょう。

目標14を構成する10個のターゲット

SDGs 目標14のターゲットは、どの課題に対してどういう解決をしていったらいいのか、より具体的な1〜7の達成目標とa〜cの実現方法、合計10個のターゲットで定義されています。

14.01 2025年までに、海洋堆積物や富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。

“海洋ゴミの80%は陸から流れ出ているゴミなんだって。ゴミゼロに向けて取り組みが必要だね!”

14.02 2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う。

“ウミガメやサンゴ礁、海の生き物が海洋汚染によって次々と被害にあってるんだよ。豊かな海を取り戻して生態系を守ることが大事だね”

14.03 あらゆるレベルでの科学的協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響を最小限化し、対処する。

“海は大量のCO2を吸収しているけど、濃度が濃いと海洋酸性化が進んでしまうんだよ”

“海洋酸性化が進むと海はどうなるの?”

“海が吸収しきれなくなったCO2は大気に放出されて地球温暖化が加速するんだよ”

14.04  水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する。

“漁獲量や漁獲努力量を適切に管理して、資源状況の悪化を防ぐ必要があるんだね”

14.05   2020年までに、国内法及び国際法に則り、最大限入手可能な科学情報に基づいて、少なくとも沿岸域及び海域の10パーセントを保全する。

“沿岸部は海のゆりかごと呼ばれ、多くの生き物の生息地、繁殖場所になっているんだよ”

“稚魚が無事に海へ戻るための大切な場所を海洋プラスチックゴミから守る必要があるね”

14.06  開発途上国及び後発開発途上国に対する適切かつ効果的な、特別かつ異なる待遇が、世界貿易機関(WTO)漁業補助金交渉の不可分の要素であるべきことを認識した上で、2020年までに、過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業につながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金の導入を抑制する。

“許容量を超えた過剰な漁獲を促す有害な補助金をなくさないとね”

14.07 2030年までに、漁業、水産養殖及び観光の持続可能な管理などを通じ、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増大させる。

“海面上昇が加速すると地球で一番最初に沈むと言われているキリバスの話は知ってる?最高標高が5mにも満たない国だから海洋汚染のリスクも当然高くなってしまうよね。”

“国が海に沈むなんて驚きだよ。地球温暖化と海洋汚染の両方をストップさせなくちゃ”

14.a   海洋の健全性の改善と、開発途上国、特に小島嶼開発途上国および後発開発途上国の開発における海洋生物多様性の寄与向上のために、海洋技術の移転に関するユネスコ政府間海洋学委員会の基準・ガイドラインを勘案しつつ、科学的知識の増進、研究能力の向上、及び海洋技術の移転を行う。

“海が健康であるために開発途上国の開発支援や科学的知識の増進、研究能力の向上をめざす必要があるね”

14.b  小規模・沿岸零細漁業者に対し、海洋資源及び市場へのアクセスを提供する

“海洋資源や市場へのアクセスを提供するということだね”

14.c 「我々の求める未来」のパラ158において想起されるとおり、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用のための法的枠組みを規定する海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映されている国際法を実施することにより、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用を強化する。

“2012年に「リオ+20」で採択された「われわれの求める未来」について、海洋と資源の保全、持続可能な利用などについて書かれた内容を理解してみよう”

Check!  リオ+20とは

1992年地球サミットから20年目の会議。次世代が住みやすい世界を残すためにブラジルのリオ・デ・ジャネイロに世界中から各国の代表や民間の人々が集まり、環境や貧困、災害など多くのテーマについて話し合った。

なぜ、目標14「海の豊かさを守ろう」が必要なのか?

では、なぜ海の豊かさを守ることが求められているのでしょうか。

海の3つの役割

海には大きく分けて3つの役割があります。

1 気温と気候の調整

太陽から届いた熱を海は地球全体に送り出し、大気中に水分を放出させます。また海水を蒸発させ湿度を保ちます。海に届く太陽の光は熱となり海水の温度を上げながら海流として地球全体へ送ります。

このように海は太陽からのエネルギーを受け止め、気温と気候の調整役となっています。

2 二酸化炭素の吸収

海は大気中に放出された二酸化炭素の交換(吸収と放出)を交互に繰り返しています。

また、人間の活動による二酸化炭素の約30%を海が吸収しているのです。気象庁によると(※3)2019年の吸収量は28億トン、その量は1990年以降の期間で最大となりました。

引用:気象庁

3 資源の提供

海は私たちに資源を提供してくれます。

魚や貝の水産物はもちろんのこと、鉱物やエネルギーももたらしてくれるのです。

人間活動による4つの問題

このように地球にとって欠かせない役割を持つ海ですが、近年わたしたちの人間活動によって、

  1. 海洋ゴミによる汚染
  2. 化学物質の流出
  3. 海の酸性化
  4. 魚の減少

などさまざまな問題が発生しています。

地球を持続可能なものにするためにも、世界規模で解決する必要があるのです。

では、現在地球で起きている問題を掘り下げて見ていきましょう。

①海洋ゴミによる汚染

海洋ゴミとは、その名の通り海にあるゴミのことです。

ゴミの中でもプラスチックが圧倒的に多く、全体の65%に達します。つまり海洋ゴミ=プラスチックゴミというわけです。

引用:WEF

THE NEW PLASTIC ECONOMY(※2)によると現在の海洋プラスチックゴミは年間で800万トンあり、このまま問題を放置すると2050年に魚と同じ量、もしくは上回ると推測されています。

では、このプラスチックゴミの現状を確認しましょう。

2018年に日本財団が行なった「海洋ゴミに関する意識調査」(※3)によると海洋ゴミについて知っていると答えた人は全体の80%でした。

引用:日本財団

約8割の人が知っているのにも関わらずなかなか問題が解消されない原因は、実際に行動に移せていないもしくは行動の仕方がわからないという場合が多いです。

 ②化学物質の流出

海へ化学物質が流出することで引き起こされる海洋汚染も問題です。

海洋汚染の原因って?

引用:日本財団

日本財団と日本コカ・コーラ株式会社が実施した「陸域から河川へ廃棄物流出メカニズムの共同調査」(※8)によると、海洋汚染の原因は大きく分けて下記の2種類。

  • 街中のポイ捨て、不法投棄
  • 化学物質の暴露・漏洩

化学物質の暴露・漏洩とは有害な化学物質を扱う工場排水、化学染料などです。

工業排水には有害物質である水銀やカドミウムが含まれる場合があり、それらは生物に悪影響を及ぼします。

イタイイタイ病などがその例です。

古い工場跡地などの地下水や土壌には有害な化学物質が染み込んでしまっているため汚れた状態で海に流れ出ているのです。

※現在は工場で化学物質を処理して排出されない仕組みになっています。

③海の酸性化

増え続けるCO2により、海の酸性化が進んでいます。

海の酸性化って?

海は大気中のCO2を吸収する役割をもちます。しかし、海に溶け込んだCO2排出量増加の影響で海洋環境は大きく変わり、酸性化していると指摘されているのです。

海が酸性化するとはどういうことでしょうか。

まず酸性とアルカリ性について触れてみましょう。

純粋な蒸留水は中性で、pHは7です。値が低くなればなるほど強い酸性となります。

通常、海水中のpHは弱アルカリ性を示し海面近くのpHは約8前後なのですが、CO2吸収量が増加した産業革命後10年間でpHは0.018のペースで低くなっています。

酸性化の影響

酸性化が進むことで懸念されるのは海洋生物への悪影響です。

サンゴや貝などの骨格や殻を持つ生き物はカルシウムイオンと炭酸イオンを結合させた炭酸カルシウムで形成されています。

海水が酸性化すると、カルシウムイオンと結合する炭酸イオンが減少し、生き物たちは体を形成することができなくなります。

地球環境研究センター(※9)では卵からかえったばかりのムラサキウニをCO2の低い濃度と高い濃度それぞれ別の環境で育て、成長具合を観察しました。

引用:地球環境センター

図の左が濃度の低い環境、右が濃度の高い環境で育てられたムラサキウニです。

CO2濃度の高い方はあしが短く成長不足がみられました。

海洋酸性化は1970年代はじめにすでに指摘されてきました。しかし、当時はpHを正確に測定する方法がなかったため酸性化を明らかにすることができなかったのです。

2000年代になり海洋生物に影響が出はじめたことで、研究者から酸性化の声が次々とあがり、問題意識が高まりました。

二酸化炭素の増加による影響は他にも

【再掲】海洋による二酸化炭素吸収量

引用:気象庁

上記のグラフを見ると、2000年を境に海洋の二酸化炭素吸収量が増加していることがわかります。

二酸化炭素の増加要因
  • 南半球中緯度の吸収量増加
  • 2019年まで続いたエルニーニョ現象

エルニーニョ現象は、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象を指します。

エルニーニョ現象が続くと海の役割である「気温の調整」がうまくできず海水温度が高温状態になり、冷夏や暖冬が続くなどの影響を及ぼします。

この影響により、

  • 野菜の成長不良
  • 漁獲量の低下

などで農業と漁業にも深刻な被害をもたらします。その結果、価格の高騰化が進み経済に影響が出てきます。

海の機能が低下することで、

  • 農業や漁業を中心に生計を立てる人々へ打撃(目標1「貧困をなくそう」目標2「飢餓をゼロに」)
  • 安全な食が確保できない(目標3「すべての人に健康と福祉を」)
  • 温暖化などの気候変動の加速(目標13「気候変動に具体的な対策を」)

など、他の目標の達成を鈍化させてしまうのです。

④魚の減少

海洋が抱える最後の課題は魚の減少です。

現在世界では、

  • 人口増加による魚介類消費量の増加
  • 欧米の食生活の多様化や生活水準の向上

などにより世界中で魚介類の需要が増えています。

引用:Ledge.ai

一方で世界の漁獲量は適正レベルを超え、水産資源が枯渇しています。

世界中の海には生物学的に持続可能なレベルが存在していますが、すでにその上限に達しているのです。

では、持続可能な水産資源の利用とはどのような状態でしょうか。

本来、水産資源は、産卵、成長、新たな世代を産む、のサイクルを乱すことなく漁業を行えば永続的な漁業を行えます。

しかし、水産物の需要が高まったことで親魚でなく稚魚の状態から漁獲されたり、乱獲による先取り競争が生じ、水産資源の再生産サイクルが奪われ資源が衰退してしまいます。

乱獲の防止、生産サイクルの回復が必要となるのです。

この課題を受け、近年では「獲る漁業」から「育てる漁業」つまりは養殖へと移行しています。

引用:WWF

1986年ごろまではほとんどが天然のものでしたが、1990年代に入ると養殖が急激に増加していることがわかります。

増加する養殖漁業ですが、一方で課題を残します。

養殖産業の課題

・海洋環境の悪化(※10)

養殖場で使われる餌・飼料の食べ残しや糞尿が海底に堆積し海洋環境を悪化させています。

・餌原料となる天然資源の大量消費

養殖魚に与える餌は天然魚を与えるため養殖が増えるほど天然魚が減るという問題があります。

・養殖場から魚が脱走することによる生態系の破壊

養殖場から脱走した養殖魚が天然魚を食べてしまったり、外来生物となる問題があります。

さらには国によっては児童労働や奴隷労働が社会問題にもなっており、目標14に加え目標8や目標10の達成に向けて課題となります。

また、気候変動への対策も不可欠です。

養殖業は自然災害や気候変動で生産量や出荷量が変動します。2018年夏に日本を襲った集中豪雨で赤潮被害に遭い、愛媛県ではブリやマダイが酸欠となってほぼ全滅、損失額は2億3,070万円でした。(※11)

世界の海の現状

ここまで現在地球上で起きている海の課題について見てきました。ここからは、さらに踏み込んで世界・日本の現状を確認していきましょう。

世界中のゴミが集まる太平洋ゴミベルトの実態

引用:NATIONAL GEOGRAPHIC

世界には6つの大陸があります。

しかし、近年では海洋ゴミが蓄積したことで7番目の大陸が生まれました。

これを「太平洋ゴミベルト」と呼び、海中でプラスチックが粒子化したゴミが集まってスープ状になった広大な集合体です。

NPO・オーシャンクリーンアップの研究者たちが飛行機を使って上空から観察した結果、北太平洋上の海域に大きな潮の流れに乗って世界中のプラスチックゴミが集まっていることがわかりました。

その面積はスペインの3倍、日本面積の4倍以上です。

さらに研究者によると(※4)太平洋ゴミベルトは急速に拡大しており、より多くのプラスチックゴミが集まってきているといいます。

上空から観察しただけでは本当のゴミの総重量は不明ですが、表面上に浮遊しているゴミ量よりも海にもぐってしまっているゴミは表面上の16倍の可能性もあると考えられ、1兆9,000万個のプラスチックゴミ、重量にして7万9,000トンあるといいます。

日本近郊の海の現状

続いては日本近郊の海の現状です。

環境省の調べによると、海洋ゴミの65.8%(3分の2)が漁具や発泡スチロール、ペットボトルなどのプラスチックであることがわかります。

では、このプラスチックゴミはどこからやってくるのでしょうか。

水産振興ONLINEが東京海洋大学及び九州大学の協力を得て実施した調査(※5)によると、漂着物は外国から流れ着いたものと、日本のものと両方があることがわかりました。

中国や韓国から近い九州沿岸部は、中国や韓国から漂着したゴミが多く、太平洋側や北日本では日本のゴミが多いことがわかります。

なぜ外国のゴミが日本近海にたまるのでしょうか。

それは海流と季節風の影響です。海流は黒潮や親潮、対馬海流があり中国や台湾、韓国から日本にゴミが流れやすいようになっています。

季節風は夏は南東から、冬は北西から吹くので夏は太平洋側にゴミが集まりやすく、冬は日本海側に集まりやすいのです。

プラスチックの発生源は?

海に漂うプラスチックゴミの発生源は下記が挙げられます。

プラスチックゴミの発生源
  • 海水浴
  • 釣り
  • 漁業関係者
  • 海外の不届き者
  • 水路、上流地域
  • 海外に輸出された廃プラスチック
  • 街から流出

このなかでも最も多いのが街から発生したプラスチックゴミで、全体の7割を占めています。

街中でポイ捨てされたゴミが風に飛ばされ、側溝を経て川に流出し、やがては海へ。海洋プラスチックゴミは、海水浴に遊びに行った人や漁業関係者が原因だと思われがちですが、実はわたしたちの身の回りから一番多く発生しているのです。

また、海外から流れ出るプラスチックゴミは、日本から輸出した廃プラスチックも問題になっています。2017年までは日本の廃プラスチックの半数を中国に輸出していました。

しかし蓋を開けてみると、中国が輸入した廃プラスチックは汚れたものや有害物が混入して資源化できないものが多く、野焼きや不法投棄されたりと環境悪化の原因となったのです。

これを受けて中国は大気汚染・土壌汚染の対策として2017年末から徐々に受け入れを減らし、2018年1月についに廃プラスチックの輸入を原則禁止としました。

世界的に脱プラスチックが進み、財務省(※6)によると日本の廃プラスチック輸出量は2014年の167万トンから7年連続で減少し、2020年には82万トンとなりました。

プラスチックゴミは海だけの問題ではなく、世界全体でゴミを削減しなければ解決できません。

プラスチックゴミの現状が分かったところで、続いては地球に及ぼす影響を見ていきましょう。

海洋プラスチックゴミの影響

海洋プラスチックゴミは特に海洋生物への影響が懸念されます。

  • 魚、海鳥、アザラシなど海洋哺乳類
  • ウミガメ

など約700種の生き物が傷つき死に追いやられているのです。

生物への具体的な被害
  • 海鳥が釣り糸に絡まって溺死
  • ポリ袋を餌と間違えて吸い込んでしまって呼吸困難になった魚
  • プラスチックが絡まってしまったウミガメ

これらの被害の92%はプラスチックゴミによるものです。

プラスチックはなくならない

引用:WWF

図は海洋ゴミが分解されて細かくなる年数を示します。

上記の種類でアルミ缶以外はすべてプラスチック製品です。

海を漂い、海岸に漂着したプラスチックは紫外線を浴びると強度を失います。それが風や雨で砂と擦れ合うことで粉々に砕け、再び海へ流れ出ます。(※7)

細かくなったプラスチックは

  • マイクロプラスチック(5mm以下)
  • ナノプラスチック(1~100ナノメートル)

と呼ばれています。

マイクロプラスチックは私たちの日常生活の洗顔料や歯磨き粉にもスクラブとして含まれます。それらが排水溝から河川へ、やがて海へたどり着いています。そしてサイズが小さいことで回収も困難となり、永遠に海を漂い続けるのです。

プラスチックゴミを生物が誤食する

海を漂うプラスチックゴミは、生物の誤食につながります。

先述したように、目に見える大きさのプラスチックゴミを誤食すると、海洋生物は命を落としかねません。その一方でマイクロプラスチックの場合は体内に取り込んでも生命の危機に至ることは少ないといいます。

しかし、

  • 食欲減退
  • 体長の低下

などのさまざまな影響を海洋生物は受けてしまうのです。

また、体内にプラスチックを取り込んだままの魚が水揚げされて市場に出回れば私たちが食べる可能性があると指摘されています。

このマイクロプラスチックは北極や南極も含む世界の海に広がっており、無視できない現状となっています。

目標14の達成に向けた対策は?

ここまで見てきたように、人間活動が原因で海は疲弊しています。今後持続可能な海を取り戻すための解決策はあるのでしょうか。

海洋汚染対策

まずは海洋汚染に歯止めをかける必要があります。

環境省(※12)が策定した「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」は下記の通り。

1.まず、廃棄物処理制度によるプラスチックごみの回収・適正処理をこれまで以上に徹底するとともに、ポイ捨て・不法投棄及び非意図的な海洋流出の防止を進める。

2.それでもなお環境中に排出されたごみについては、まず陸域での回収に取り組む。さらに、一旦海洋に流出したプラスチックごみについても回収に取り組む。

3.また、海洋流出しても影響の少ない素材(海洋生分解性プラスチック、紙等)の開発やこうした素材への転換など、イノベーションを促進していく。

4.さらに、我が国の廃棄物の適正処理等に関する知見・経験・技術等を活かし、途上国等における海洋プラスチックごみの効果的な流出防止に貢献していく。

5.世界的に海洋プラスチック対策を進めていくための基盤となるものとして、海洋プラスチックごみの実態把握や科学的知見の充実にも取り組む。

環境省「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」

水資源枯渇防止を目的とした認証機関

水産資源の枯渇対策のための認証期間があります。

そのなかの

  • 天然の水産物に付けられるMSC
  • 養殖版のASC

についてそれぞれ詳しくみていきましょう。

天然水産物認証MSC

引用:MSC

MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)は1997年に設立され、

  • 水産資源と環境に配慮し適切に管理された
  • 持続可能な漁業で獲られた
  • 天然

水産物の認証機関です。本部はイギリスのロンドンにあり、日本事務所は2007年に開設されました。

MSCの最大の目的は、消費者の力で世界の水産資源枯渇をなくすことです。

海のエコラベル商品を消費者が購入することで持続可能な漁業支援となります。加えて海洋天然資源や海洋環境が守られる仕組みとなっています。

MSCの3つの基本原則(※13)

1:資源の持続可能性

過剰な漁獲を行わず資源を枯渇させないこと。枯渇した資源については回復を論証できる方法で漁業を行う。

2:漁業が生態系に与える影響

漁業が依存する生態系の構造、多様性、生産力等を維持できる形で漁業を行う。

3:漁業の管理システム

地域や国内、国際的なルールを尊重した管理システムを有すること。また、持続可能な資源利用を行うための制度や体制を有する。

目標14のターゲットにも大きく関わるのがMSCの基本原則です。

また、MSC認証を受けることでメリットもあります。

  • ブランド認知度、ブランドイメージの向上につながる
  • 販売促進と宣伝の大きなチャンス
  • 新たな市場の開拓と新たな顧客の獲得につながる
  • 原料の安定的な調達に繋がる
  • CSR(企業の社会的責任)に関する、投資家、従業員、顧客の認識向上
  • 認証を通じたトレーサビリティの向上、管理体制の改善
  • 目標14「海の豊かさを守ろう」に貢献できる

もし買い物をしていて海のエコラベルを見かけたらぜひ購入してみましょう。

養殖版認証ASC

ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)は、

  • 環境に大きな負担をかけない
  • 労働者と地域社会にも配慮
  • 責任ある養殖水産物を市場や消費者に届けている

生産者に与えられる認証機関です。

2010年に設立され、WWF(世界自然保護基金)とIDH (オランダの持続可能な貿易を推進する団体)の支援のもと独立した国際的な非営利団体です。

これらの問題を解決するため、養殖業を持続可能な形にしようという取り組みがASC認証制度です。

ASC基準の基本7原則。基本的にこれら7原則に基づいて、各種群ごとに詳細な判定基準が定められている。
引用:WWF

認証を受けるには信頼性と透明性の担保のために

  • 客観的な証拠の提示
  • ASC、水産業界から独立した第三者認証機関

が必要になります。

ぜひ海のエコラベルに加えてASCラベルが貼られた商品を探してみてください。

天然水産物を守る養殖業の確立

水産庁(※14)では持続可能な養殖業を確立するために、以下のような項目を設定しています。

・漁場環境や天然資源への負担の少ない養殖

養殖魚の餌として人工稚魚を導入し、天然資源に影響を与えないように配慮する。

・安定的かつ収益性の高い経営の推進

飼料の価格安定、消費者ニーズに合わせた生産、輸出拡大を目指す

・安全、安心養殖生産物の安定供給および疾病対策の推進

貝毒、ノロウイルス、有害物質の状況把握と調査の実施

日本の企業/団体の取り組み事例

ここでは「海の豊かさを守ろう」の達成に向けた日本の企業や団体の取り組みを紹介します。

震災を機に持続可能な養殖業にシフト「南三陸戸倉っこかき」

引用:WWF

宮城県南三陸町の戸倉地区のカキ養殖業者たちは2011年の東日本大震災後、海洋環境負荷の低減のために養殖施設を震災前の3分の1に削減する取り組みを開始しました。

一般的に養殖業は海に養殖場を張るため、海の生態系に悪影響を与えるという問題がありました。これに対して地元の生産者たちは、元の方法に戻すのではなく、ゼロベースで海の環境に配慮した方法を考えたのです。WWFジャパン(※15)によると、震災復興から生まれた持続可能な養殖〜南三陸町戸倉の挑戦〜は以下の内容でまとめられています。

引用:WWF
  • 海洋環境への影響の軽減
  • 養殖カキの生産量の増加
  • 収益の増加
  • 労働時間の短縮
  • 災害リスクの低減
  • 若者の増加
  • 生産者の意識の変化

通常、カキは水中の微粒子を摂取し水を浄化する作用があると言われていますが、養殖の密集環境となると話は別。カキの排泄物により環境が悪化してしまうのです。

そこで戸倉地区では養殖用イカダの数を減らし、それまで3年かけて育成していた生産サイクルを1年まで短縮させ、海洋環境への負荷を減らすことに成功しました。

そして震災から5年後の2016年3月、日本で初となるASC(水産養殖管理協議会)認証を取得しました。

南三陸町戸倉地区のカキ養殖業は、人と海との共生を実現し新しい養殖モデルを確立しました。

世界の企業/団体の取り組み事例

では、世界の企業や団体の取り組み事例を見ていきましょう。

河川のプラスチックゴミを回収する「海洋清掃マシン」

NPO団体・オーシャン・クリーンアップ (※16)は海に漂う大量のプラスチックごみを回収するために太陽光で動く海洋ゴミ回収マシン「The Interceptor(インターセプター)」を東南アジアへ送り出しました。

実は2018年に同団体は全長600mのプラスチック製のプラスチック回収船を太平洋に送り出していました。

しかし、海に解き放たれた回収船は途中で真っ二つに破損したためゴミ回収どころか結果的に海洋プラスチックゴミを増やしてしまったのです。

そこで改良され復活したのが今回のインターセプターです。

太陽光で動く電気船インターセプターは一リチウムイオンで24時間稼働が可能で、1日で50,000キロの海洋ゴミを回収。地形や環境によっては最大100,000キロのゴミの回収ができ、20年間使えるといいます。(※17)

すでにジャカルタやマレーシアに導入され、ベトナムへの導入も決定しています。

使い捨てプラスチック製ストローの供給をイギリスで全面禁止

イギリス政府は2020年10月よりプラスチック製ストロー、マドラー、綿棒の販売を全面禁止する規制を施行しました。(※18) 

DEFRA(※19)によるとイギリスのプラスチック消費量は年間で

  • 約47億本のプラスチック製ストロー
  • 約3億1,600万本のプラスチック製マドラー
  • 約18億本のプラスチック綿棒

が消費されていました。海洋汚染につながるこれらの廃棄プラスチックを抑制する目的で規制が開始。

製造業や小売業は上記の使い捨てプラスチック製品を一部の人を除き提供すると違反となり罰金の対象にもなります。

さらに2021年7月3日以降、プラスチックストローが付いたパック飲料の提供も禁止されました。

10歳と12歳の姉妹が始めた「バイバイレジ袋」運動

引用:再生ネット

インドネシアのバリ島に住む姉妹、ムラティさんとイザベルさんの姉妹は、美しいバリ島の環境を守るために2013年にレジ袋ゼロ運動「BYE BYE PLASTIC BAGS」を立ち上げました。(※20)

活動開始時、姉妹は10歳と12歳で、世界の著名人がアイデアを語るTED(テッド)や国連で演説したほか、米TIME誌などから「最も影響力のある10代」に選ばれています。

バリ島では1日に約680立方メートルのプラスチックゴミが出ます。この量は14階建てビルに相当するのだそうです。

姉妹が具体的に行った活動
  • レジ袋廃止のため州知事に請願書を作成
  • ビーチの清掃活動
  • 空港で署名活動
  • ハンガーストライキの実施

彼女たちは活動を続けついに2015年1月、州知事は姉妹と面会し2018年までにバリ島でのレジ袋を廃止すると約束したのです。

姉妹はまだ10代と若い年齢でしたが、ムラティさんとイザベルさんはTEDの講演で「リーダーになるのに年齢は関係ない」と伝えています。

やがて二人は大人たちと並び先導を切り、レジ袋廃止宣言のシールを作成したりエコバッグを作るなど活動はどんどん広がっていったのです。

海の豊かさを守るために、私たちにできること

海の豊かさを守るために、私たちは日常からアクションを起こすことができます。

始められるアクションを詳しくみていきましょう。

「海のエコラベル」を選ぼう!

私たちが海のエコラベルが付いた商品を選ぶ直接的なメリットは下記の通り。

  • 海から魚がいなくなってしまい、魚が食べられなくなる危機を防げる
  • MSC認証を取得した持続可能な取り組みをする生産者を応援できる

海のエコラベルが付いた製品を選ぶことで、水産物を持続可能なものにすることができます。

例えば、

  • ツナフレーク
  • ファストフードの魚のナゲット
  • 鮮魚

等、日本のスーパーや飲食チェーン店にも海のエコラベルマークが付いているものが増えています。

買い物をする際に、海のエコラベル探しゲームをしてみても面白いですね。

プラスチック製品を減らし代わりになるものを使おう

海洋プラスチックゴミの削減には、日頃使っているものをプラスチックフリーのものに切り替えることが大切です。

今すぐできる6つのアクション
  1. ビニールレジ袋 → 布製のマイバッグを持ち歩く
  2. ペットボトル → ガラス製やステンレス製のマイボトルを持ち歩く
  3. プラスチックコップとふた → ガラス製、陶器、ステンレス製のマイカップを持ち歩く
  4. プラスチック製の食品容器 → ガラス製、ステンレス製、木製の容器を持ち歩く
  5. プラスチック製のナイフ・スプーン→ 竹、ステンレス、木製のものを持ち歩く
  6. プラスチック製ストロー → 竹、ガラス、ステンレス製のものを持ち歩く

探してみると、意外な生活用品がプラスチックフリーになっているので、ぜひ探してみてくださいね。

上記をクリアしたとしても実は大きな壁が立ちはだかっています。

それは製品プラスチックパッケージで包装されている場合です。

引用:mymizu

パッケージは世界のプラスチックごみの排出量の約半分(47%)を占めていることがわかっています。せっかくプラスチックフリー生活をしようと意気込んだのに製品がプラスチックでぴっちり包まれていては元も子もありませんよね。

では、どうするべきか。

仮に木製のキッチンツールなら木製品の直売所などでパッキングされずに製品そのままで販売されているケースが多くあります。

どうしてもギフト用でパッキングが必要だという場合は、バイオプラスチックを考慮してみるか、ケミカルな添加物を使わないパッケージを選ぶのがいいでしょう。

そうは言ってもなかなかナチュラルな包みを探すのは至難の技。根本的な解決には遠く、もっとも望ましいのはパッキングされていない商品を選ぶことです。

パッキングされていない製品として注目されるのが、液体シャンプーやコンディショナーをボトリングせずに固形化して販売するニュージーランド発のエティーク。

パッケージには生分解性のある原料を使用しているためプラスチックフリーで地球環境に配慮され、シャンプー成分もケミカルフリーなので人と環境に優しい商品に仕上げられています。

プラスチックボトルや詰め替えで発生するプラごみを削減でき、これまで面倒だった詰め替えの手間も省けます。

まとめ

私たちは、何かを失ったとき、初めてその大切さに気がつく生き物です。

そうした気づきから、元どおりに戻すのか、新しいものを構築するのか選択方法は私たちに委ねられます。後者を選ぶ場合、新しいやり方が地球環境に配慮した手段なのかをしっかりと考える必要があります。

南三陸町の養殖業の事例のように、海の環境負荷を低減するためというはっきりとしたビジョンがあったからこそ人々が賛同し、集まり、結果的に未来を変えるきっかけとなりました。

海の生態系や環境を守り持続可能にするには、

  • 現在海洋に浮遊しているゴミの回収
  • ゴミを出さない

大きく2つが求められます。

現在東南アジアを中心に活動しているゴミ回収船インターセプターのように、すでに流れてしまったゴミを回収すると同時に、私たちはゴミ発生のスタート地点に意識を向けるべきなのです。

海洋プラスチック問題に取り組むNPO「The 5 Gyres Institute」を率いるマーカス・エリクセンは次のように語っています。

海岸で毎週のように清掃活動を実施するほうが、(海洋で)ごみの回収事業を6~7年間かけて実施するよりも、ずっと多くのごみを集められるはずです

海に流れたあと、苦しむのは海に暮らす生き物です。

諸悪の根源をいかに食い止めるかが重要な課題となるのです。

私たちの日常生活において海を守るには、使い捨てプラスチックの利用を「買わない・使わない・拒否する」ことです。

安くて便利、耐久性はなく一度使ったら捨てるものとして作られる使い捨てプラスチック。

それらは私たちの生活に本当に必要でしょうか。

バリ島でレジ袋廃止を訴えかけた姉妹のように、地球環境を守るリーダーになるにはジェンダーや年齢は関係ありません。始めようと決意する勇気が何より大切です。

私たちが海の環境を守るには、ほんの小さな積み重ねが求められます。本記事に目を通してくださったあなたならそれが実現できます。

参考・引用
※1 ターゲット引用 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sdgs/sdgs_target.html
※2http://www3.weforum.org/docs/WEF_The_New_Plastics_Economy.pdf 
※3https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2019/20107
※4https://www.nature.com/articles/s41598-018-22939-w
※5https://lib.suisan-shinkou.or.jp/ssw618/ssw618-07.html
※6https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/02/2020e6e1a4099e98.html
※7 参考元 海洋プラスチックごみ問題の真実 マイクロプラスチックの実態と未来予測
磯部篤彦著 P74
※8https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/pr/2020/20200221-40860.html
※9 http://www.cger.nies.go.jp/ja/news/2014/140516.html
※10https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/r0511in1.pdf
※11https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34512650T20C18A8LA0000/
※12 引用:http://www.env.go.jp/press/106865.html
※13https://www.ted.com/talks/melati_and_isabel_wijsen_our_campaign_to_ban_plastic_bags_in_bali/transcript
※14 https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h29_h/measure/m_01_4.html
※15 https://www.wwf.or.jp/activities/data/20210308resource01.pdf
※16 https://www.asc-aqua.org/ja/
※17https://theoceancleanup.com/
※18 https://globescan.com/sdg-goal-14-leadership-forum-report/
※19 https://tenbou.nies.go.jp/news/fnews/detail.php?i=30438
※20https://www.gov.uk/government/organisations/department-for-environment-food-rural-affairs

この記事の監修者
阪口 竜也 フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)