
近年、政府や地方自治体の調査により問題視され始め、社会的関心が高まっている「ヤングケアラー」。日本におけるヤングケアラーの実態は少しずつ明らかになってきたものの、詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。
ヤングケアラーとは何か?なぜ問題なのか?という現状や原因をはじめ、具体的な支援策、海外での取り組みなどを解説していきます。
本記事を読んで、ヤングケアラーへの理解を深めるとともに、何が必要なのか一緒に考えていきましょう。
目次
ングケアラーとは?何歳まで?簡単に解説とは
ヤングケアラーとは、本来大人が行うべき家事や家族の介護・世話を、日常的に担っている18歳未満の子どものことを指します。法律上の明確な定義はありませんが、日本ケアラー連盟ではこのように位置づけられています。
※18歳~30歳代のケアラーのことを「若者ケアラー」と区別して呼ぶ場合もあります(日本ケアラー連盟の定義による)
以下のようなケースに該当する子どもが、ヤングケアラーにあたります
- 働いている親の代わりに幼い妹弟の面倒を見ている
- 障害のある親や兄弟の身の回りの世話をしている
- 精神疾患を抱え、目の離せない親を気づかい、料理や洗濯など大半の家事をしている
一見すると「家の手伝いをよくしている」「しっかりした子」に見えるかもしれませんが、問題は子どもが本来担うべきでない負担を背負い、心身に影響が出てしまうことです。
家族を助けること自体は悪いことではありません。しかし、無理をしていることに周囲が気づき、支援につなげることが大切です。
ヤングケアラーの問題点
ヤングケアラーの最大の問題は、子どもが過度な責任や負担を背負い、成長に必要な経験や学びが制限されてしまうことです。家族の介護や家事に追われて学校を休みがちになったり、進学や就職を諦めざるを得なかったりするケースもあります。
また、周囲に悩みを打ち明けにくく、孤立や精神的ストレスを抱えやすいことも深刻です。さらに、本人や家族が「手伝いの範囲」と認識している場合、支援の手が届きにくいという課題もあります。ヤングケアラーの存在は見えにくく、早期発見と支援体制の整備が不可欠です。
ヤングケアラーとお手伝いの違い
「お手伝い」は、家庭の一員として無理のない範囲で行う家事や世話であり、子どもの成長や責任感を育む良い機会にもなります。一方、ヤングケアラーは、日常的かつ継続的に大人が担うべきケアを引き受けており、学業や生活に支障をきたすレベルで行われている点が大きな違いです。
例えば、毎日家族の食事作りや洗濯をしている、介助や通院の付き添いをしているといったケースが当てはまります。見た目には「しっかりした子」と思われがちですが、過度な負担や責任を抱えていることが本質的な問題です。周囲の理解と見極めが重要となります。
ヤングケアラーの具体的な事例を紹介
ヤングケアラーの実態をより深く理解するためには、実際の事例を知ることが重要です。ここでは、日本で報告されている具体的なケースを紹介します。
大事なことを一緒に考え決められない(Aさん・10代女性)
Aさんの母親は朝早くから夜遅くまで仕事をしており、土日もあまり家にいません。たまに家にいるときは疲れているのかほとんど寝ています。Aさんには小さな妹がいるため、食事や学校の準備、毎日の生活のことは彼女がやっています。
母親に進路の相談をすると、「バカなんだから家のことをしていればいい」と言われたかと思えば「ただでこのうちにいるんだから、稼げるように手に職をつけろ」と言い放たれました。学校の保護者面談もドタキャンされてしまいましたが、先生に家や親のことをなかなか話すことができません。
複雑な家庭環境を1人で支える(Bさん・20代女性)
Bさんは自分の下にきょうだいが2人いる5人家族でした。10代のときに母親が病気にかかり、Bさんは長い間自宅で看病し、学校にも行けていませんでした。
その後母親が他界すると、次は父親が交通事故に遭い介護が必要となりました。現在、Bさんは生活を支えるためにアルバイトをしながら家事や通院、介護をしています。自分以外のきょうだいは精神的に不安定で、家から出られず小さい頃から引きこもりです。
このまま親の介護や家族のために家事をし続けて、自分の人生が終わるのかと思うと絶望すると言います。家族は大切で、面倒を見るのは当たり前だと思うものの、やりたいことができないことにストレスを感じているそうです。
事例参考:「ヤングケアラー」深層へのアプローチ SNSで出会う、つながり続ける 加藤雅江
日本のヤングケアラーの現状
ヤングケアラーがどんな存在かイメージがつかめたところで、日本におけるヤングケアラーの現状を解説していきます。
世代別の割合
2021年と22年の調査結果によると、「世話をする家族がいる」と答えた割合は以下の通りです。
- 小学6年生→6.5%(約15人に1人)
- 中学2年生→5.7%(約17人に1人)
- 高校2年生→4.1%(約24人に1人)
- 大学3年生→6.2%(約16人に1人)
また、世話をする頻度が「ほぼ毎日」と答えた中学2年生は45.1%、全日制高校2年生が47.6%に上ります。
世話をする家族で一番多いのは「きょうだい」
世話を必要とする家族は、「きょうだい」が突出して多いのが特徴です。中学2年生で「父母」を世話しているのが23.5%に対して、「きょうだい」は61.8%にのぼります。
埼玉県の調査結果によると、「きょうだい」を世話する理由としては、
- 1位:幼い(38.0%)
- 2位:発達障害(32.2%)
- 3位:知的障害(27.6%)
となっています。さらに、父母を世話する理由としては「病気」が一番多く、次いで身体障害や精神障害という結果になっています。とりわけ父親は「依存症」が12.0%と他に比べて高く、母親は「精神疾患」が18.5%と高い割合となっています。
世話で一番多いのは「家事」と「感情面のケア」
上図から、ヤングケアラーが担う世話で多いのは
- 1位:家事(食事の準備、後片付け、洗濯、掃除など)58.0%
- 2位:感情面のケア(その人のそばにいる、元気づける、話しかける、見守る、その人を散歩など外に連れ出すなど)41.0%
- 3位:家庭管理(買い物、家の修理、重いものを運ぶなど)32.4%
となっています。
世話に費やす時間は平日で7時間越えも

一日に費やす世話の時間の平均は、すべての年代で3時間未満と3時間以上7時間未満の割合が多く、「7時間以上」の回答もそれぞれ1割ずつあります。
さらに、世話別の時間割合を示したグラフによると、長時間になりやすいものは以下のとおりです。
- 医療的ケア(胃や腸にチューブを挿して栄養を摂取する経管栄養の管理、人工呼吸器をつけている場合に必要になる痰の吸引など)
- 家計支援(家族のためにアルバイトで働く)
- 金銭管理(請求書の支払いや銀行での入出金など)
- 通院介助(病院に行くのに付き添う)
- きょうだいのケア
中高生にとってこれらの世話は責任が重く、平日学校が終わったあとにも長い時間を家族の世話にかけている実態が読み取れます。
ヤングケアラーが受ける影響
ヤングケアラーは、単に家の手伝いをする子どもということではなく、年齢にしては重すぎる役割や責任を日常的に追っている子どもということがわかりました。
ここからは、ヤングケアラーであることによって生じる影響を大きく3つに分けて解説します。
進学や就職といった生活面
一番影響を受けるのは、以下の通り学校生活に関わることです。
- 学校を休みがち
- 遅刻や早退が多い
- 保健室で過ごしていることが多い
- 学力が低下している
- 授業に集中できない
- 進路や進学についてしっかり考えられる時間がない
- 希望の進学ができない(行きたい大学に行けないなど)
- 自分の時間が取れない
- 受験の準備ができない
- 宿題や持ち物の忘れ物が多い
- 保護者の承諾が必要な書類等の提出遅れや提出忘れが多い
- 学校生活で必要なものが用意できない
- 部活を途中でやめてしまった
- 修学旅行や宿泊行事等を欠席する
- アルバイトができない
健康面と感情面
また、世話による疲労から、心身に不調をきたすヤングケアラーもいます。
- 睡眠不足
- しっかり食べていない
- 身体がだるい
- ストレスを感じている
コミュニケーション・友人関係
さらに、余暇がとれないことで、同年代の友だちと過ごす時間が減ったり、自分の趣味や好きなことをする時間がなくなったりしてしまいます。
- 友だちと遊ぶ時間がない
- 周囲の人と会話や話題が合わない
- 世話について話せる人がいなくて孤独を感じる
- 孤立してしまう
以上のことから、学業との両立が困難であることが多く、それらは世話による慢性的な時間不足から表出した結果といえます。さらに、同年代の友人とのコミュニケーションが取れず、「自分は周りと違う」と悩みや孤独を抱えるヤングケアラーもいます。
ヤングケアラーになってしまう原因
ここまで見てきたように、ヤングケアラーは、将来にも影響する大きな負担を抱えています。ではなぜヤングケアラーとなってしまうのでしょうか?この理由に、現代の日本が抱える構造的な背景があります。
共働き世帯の増加と核家族化の進行
ケアをしている理由で一番多い「親が仕事で忙しい」に見られるように、昨今では共働きが増えたことにより、家のことに使える時間が減っています。つまり、親の手が回らない家事を子どもが引き受けているという実態が読み取れます。
また、核家族化の進行やひとり親家庭の増加などで、家族の人手が減っています。使える時間や体力が限られる中、親も仕事や家事、育児、介護などの役割を多く抱えすぎて、そのひずみが子どもに寄っていることもあります。
ヤングケアラーが注目されるようになった背景
ヤングケアラーは、最近になって特別に増えているということではなく、ひと昔前は子どもが一家の労働力としてきょうだいの面倒をみたり、働きに出たりすることは当たり前の時代もありました。その中で近年、ヤングケアラーという概念が認識されるようになったのは、大きく2つの背景があります。
「子どもの権利」の尊重
「子どもの権利」とは、全ての子どもが基本的人権のもと差別されることなく、教育や医療、福祉などの機会を均等に与えられるという考え方です。日本では、子どもの権利の保障を明記した「こども基本法」が2023年4月より施行されます。
ヤングケアラーは、「子どもの権利」に照らし合わせて考えると、
- 子どもが子どもらしく育つこと
- 子どもの意思が尊重されること
などに抵触し、子どもの権利が守られていません。
児童虐待問題
ヤングケアラーの問題には、児童虐待とつながっているケースが多々あります。たとえばネグレクトなどの育児放棄によって食事が与えられない場合、自分やきょうだいの料理を作らなければなりません。
また、冒頭の事例でも紹介したように、言葉の暴力など心理的虐待を受け続けることで、大事なことが話せず、周りに相談するという気力も失ってしまうのです。
年々児童虐待は増加傾向にあります。これに伴い、ヤングケアラーに対する注目が集まってきたと考えられます。
日本のヤングケアラー支援の取り組み
政府は、2022年度から3年間をヤングケアラーへの支援を強化する「集中取組期間」と定めています。2022年には、ヤングケアラー発見の着眼点、連携して支援する内容をマニュアルにまとめ、特定の自治体でのモデル事業が進められました。
ヤングケアラーへの支援として一番大切なのは関係機関同士の連携です。ここからは、今後の施策として定めているものを紹介します。
スクールソーシャルワーカーの配置
教育現場への支援の一つとして、スクールソーシャルワーカーの配置を支援します。
スクールソーシャルワーカーとは
スクールソーシャルワーカーとは、生徒宅を訪問、当該家族がかかっている医療機関に出向く、地域の支援機関に行くなど、さまざまな方向から橋渡しをする社会福祉の専門家です。
学校に常駐しているわけではなく、学校外での調整や多くの支援方法を提案することで課題解決をしていく人材です。
スクールカウンセラーとの違い

スクールカウンセラーとは、週に何日か学校にいて、主に心理分野から生徒の相談に乗る存在です。生徒は、話を聞いてもらうことによって自分の気持ちを整理したり、一緒に考えてもらったりすることができます。
話をしていくうちに家族の事情が明らかになり、必要に応じて専門機関につなげる役割も果たします。
スクールソーシャルワーカーとスクールカウンセラーが連携し、支援が必要な子どもを把握して関係機関につなげることを目指します。
社会的認知度の向上
中高生を対象にした実態調査で、8割以上がヤングケアラーという言葉を「聞いたことがない」と回答するなど、一般的な認知度が低いのが現状です。
広報媒体の作成、全国フォーラム等の広報啓発イベントの開催等を通じて、社会全体の認知度を調査するとともに、「中高生の認知度5割」を目指します。
適切な福祉サービスの運用
家庭介護の専門職として、ケアマネージャー、ヘルパー、訪問看護のスタッフ、保健師などがいます。これまで、これら専門職の人たちは「世話が必要な人」に対する仕事であり、「世話をしている子ども(ヤングケアラー)」を家庭介護の担い手として捉えてしまうこともありました。
そのため、福祉サービスが利用できない事例が発生しており、家族全体やヤングケアラーの状況を考慮した適切な福祉サービスを提供・運用することを目指します。
相互ネットワーク形成推進事業にかかる支援金(補助金)
ヤングケアラー同士のネットワーク形成を目的として、民間団体が全国規模のイベントやシンポジウムを開催するための事業に支援金(補助金)を創出しています。
参考:令和4年度ヤングケアラー相互ネットワーク形成推進事業に係る公募について
国の取り組みを見てきたところで、ここからは自治体それぞれの取り組みをご紹介します。
自治体のヤングケアラーに対する取り組み
ヤングケアラーを支援するため、全国の自治体でも独自の取り組みが進められています。ここでは、各地で実施されている主な支援策や相談体制の整備について紹介します。
埼玉県
埼玉県は、「ケアする人にもケアが必要」という考えに基づき、2020年3月に「ケアラー支援条例」を作りました。その中で、日本ではじめてヤングケアラーに対する支援条例を制定するなど、積極的な施策を打ち出しています。たとえば、
- オンラインサロン(ヤングケアラーが自分と同じ立場の人と話しができるイベント)
- ケアラー支援WEB講座(ケアラー・元ヤングケアラーの方の体験談を配信)
- ハンドブックによる啓発活動
など、ヤングケアラーが家族の世話をしながら、自分の健康や自立も確保できる支援体制を強化しています。
群馬県
高崎市では、2022年度からヤングケアラーがいる家庭にヘルパーを無償で派遣する事業が開始されました。これは、ヤングケアラーを「介護力」と見なさず、適切な福祉サービスにつなげようとする取り組みです。
参考:高崎市
ヤングケアラー支援における課題
これらの支援にあたって、一番の課題はヤングケアラーであることの把握が難しいことです。
ヤングケアラー本人が無自覚
子ども自身が自分の家庭状況が当たり前だと思い、ヤングケアラーであることに無自覚です。そのため、周囲も確信が持てず、早期発見と把握が難しいことが挙げられます。
表面化しにくい
ヤングケアラーは、家庭内のデリケートな問題とつながっていることが多いため、学校側が踏み込みにくい側面があります。また、親も子どもによる世話を当たり前だと思っていたり、教育方針やしつけと主張したりと理解が進んでいないことも原因の一つです。
支援体制が整っていない
支援につなぐための窓口が明確ではなく、多くの場合どこに相談すればいいかわからないケースが見受けられます。
関係機関での認知不足
学校などの関係機関でもヤングケアラーの概念や認識が不足していることで、ヤングケアラーの対象として支援の手が行き届きません。
世界のヤングケアラーの現状と取り組み
日本でのヤングケアラーの現状や課題、支援における取り組みを見てきました。ここからは、世界の現状と取り組みを確認していきましょう。
ヤングケアラーに対する取り組みが最も進んでいるのはイギリスです。次いでオーストラリア、ノルウェー、スウェーデンと続きますが、日本を含めアジア諸国は「ヤングケアラーを認識していない、また、ヤングケアラーに対する取り組みが実施されていないと思われる」と現時点で評価されています。
イギリスの取り組み
最も先進的な取り組みをしているイギリスでは、2014年にヤングケアラーの定義が明確化されました。これにより、地方自治体によるヤングケアラーのアセスメント(査定)の実施が義務付けられました。
自治体のソーシャル担当課と、各地で運営されているケアラーズセンターが連携し、必要な支援に結びつけています。ケアラーズセンターは、行政や財団から資金提供を受けてサービスを展開しており、各機関をつなぐ窓口として支援の中心的役割を果たしています。
イギリスでは、「子どもとしての権利」と「ヤングケアラーとしての権利」の両方から、ヤングケアラーが何を求めて良いのかを明確に打ち出しています。「家族の世話は大切だと思いながらも、自分のやりたいこともあきらめたくないという葛藤はわがままではなく、自分で決められる権利や選択肢はきちんと守られている」という大切な視点を国が明示していることも、取り組みが進む大きな要因といえます。
ヤングケアラーの解決に向けて私たちができること
ヤングケアラーの支援で一番大切なのは、学校や医療福祉機関との連携です。しかし、政府が認知度向上への取り組みを進めているように、私たち一人ひとりがヤングケアラーについて理解を深めることも、彼らの支援につながります。
本やニュースで情報収集するのも良いですが、まずは気軽に見られる以下の短編映画がおすすめです。
ヤングケアラーを知るおすすめの短編映画:「陽菜のせかい」
YouTube上で公開されている約16分ほどの短編映画「陽菜のせかい」は、障害のある兄弟のケアをしている「きょうだい児」にスポットライトを当てて制作されました。
自分の進路よりも家族の世話が優先されてしまう日常と、その葛藤をなかなか口に出すことができない様子を描いています。この映画を見ると、ヤングケアラーはとても身近な存在であると同時に、当人は相談しにくく、思い悩んでいることがわかります。
もう少し詳しく知りたい方は、以下のサイトが参考になるので、目を通してみてはいかがでしょうか。
ヤングケアラーの相談先
「自分はヤングケアラーかもしれない」「子どもの友だちがヤングケアラーかもしれない」と悩んだり思い当たる節があったら、以下の窓口に相談してみましょう。
子供のSOS相談窓口
子供のSOSの相談窓口は、電話やSNS、チャットボットなど、幅広い手段で相談を受け付けています。まずは気軽に困っていることを相談してみましょう。
24時間子供SOSダイヤル
電話をかけると、その所在地の教育委員会の相談機関に接続してもらえます。夜間休日も受け付けていますので、緊急時にも利用できます。
電話番号:0120-0-78310(なやみいおう)※通話無料
受付時間:24時間受付(年中無休)
子どもと家族の相談窓口
電話ではなかなか話しづらいときはメールでも相談することができます。家の中の「こまりごと」を、気軽に相談してみてください。
Eメール:kodomotokazoku@jamhsw.or.jp
各地域の児童相談所
以下のフリーダイヤルに電話をかけると、内容やお住まいの地域によって一番近い施設につないでくれます。
電話番号:0120-189-783(いちはやくおなやみを)※通話無料
受付時間:24時間受付(年中無休)
Yancle community(ヤンクルコミュニティ)
「Yancle community」は、おもに40歳以下のヤングケアラー、若者ケアラーが参加するオンラインコミュニティです。チャットサービスのSlackを使ってケアラー同士で相談や交流、情報収集・交換ができるオンライン上の居場所です。定期的なオンラインイベントも開催しており、当事者同士が支えあえるコミュニティを目指しています。
ヤングケアラーに関するよくある質問
ヤングケアラーに関しては、「どう見分けるの?」「何歳までが対象?」など多くの疑問が寄せられます。ここでは、よくある質問とその答えをわかりやすくまとめました。
ヤングケアラーの厚生労働省が定めている定義は?
厚生労働省はヤングケアラーを「家族の介護や世話を日常的に行っている18歳未満の子ども」と定義しています。具体的には、障害や病気、高齢、依存症などの理由で援助を必要とする家族に対し、介護、家事、感情面での支えなどのケアを日常的に担っている子どもを指します。
この定義は2020年度から始まった全国調査においても活用されており、学校や自治体による支援体制の整備や実態把握に活かされています。法律上の定義はまだありませんが、国としてヤングケアラーの支援に本格的に取り組む上で重要な指針となっています。
ヤングケアラーかわかる!診断チェックリスト
ヤングケアラーを早期に見つけ支援につなげるため、各自治体や学校ではチェックリスト形式の簡易診断ツールが活用されています。以下がチェックリストの一例です。
- 家族の代わりに毎日ごはんを作ったり洗濯をしている
- 家族の病院や施設への付き添いをしている
- 兄弟や姉妹の世話をするために、自分の時間がとれないことが多い
- 家族の体調や気分を常に気にして生活している
- 学校のことよりも、家のことを優先しなければならない
- 家族の代わりに役所や病院などの手続きをすることがある
- 学校に遅刻や欠席が多いのは、家族の世話が理由である
- 家族の話を友だちや先生に言いにくいと感じる
- 家事や介護をやめたいけれどやめられないと感じている
- 自分がヤングケアラーかもしれないと感じることがある
3つ以上あてはまる場合は、ヤングケアラーの可能性があります。文部科学省や自治体のホームページで公開されている場合もあります。信頼できる大人に相談してみましょう。
ヤングケアラーと家の手伝いの違いは?
「家の手伝い」は子どもの成長や責任感を育てる前向きな行動ですが、ヤングケアラーはそれとは異なります。ヤングケアラーは大人が本来担うべき家事や介護、精神的サポートを継続的かつ日常的に行っており、子どもの生活や学業に影響が出ている状態です。
例えば、毎日兄弟の世話をして宿題の時間が取れない、通院の付き添いで学校を休むことが続くなどが該当します。見た目には「しっかりした子」と思われがちですが、無理な状況に気づいてサポートすることが重要です。
何歳までがヤングケアラーとされるの?
一般的にヤングケアラーとは、18歳未満の子どもを指します。これは高校卒業年齢までを想定したもので、厚生労働省や文部科学省の調査でもこの年齢で区切られています。
ただし、18歳以上でも引き続き家族の世話や介護を日常的に担っている場合は「若者ケアラー」として扱われることもあります(日本ケアラー連盟による定義)。年齢が上がっても支援が必要な状況は続くため、ヤングケアラーをきっかけに長期的な支援のあり方を考えることが大切です。
周囲の大人ができる支援にはどんなものがある?
ヤングケアラーは自分が特別な立場にあると気づいていないことが多く、周囲の大人の理解と声かけが支援の第一歩になります。学校の先生や保護者、地域の大人が、子どもの変化や負担に気づき、必要に応じてスクールカウンセラーや福祉機関につなげることが重要です。
また、自治体やNPOによる相談窓口、居場所づくり、学習支援などのサービスを紹介するのも有効です。子どもに「あなたのことを気にかけている人がいる」と伝えるだけでも、大きな安心感につながります。
ヤングケアラーとSDGsの関係
最後に、ヤングケアラーとSDGsの関係について見ていきましょう。
ヤングケアラーに関する支援や対策を講じることは、SDGsの17の目標のうち以下の2つに貢献します。
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」
SDGs3では、すべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進することが掲げられています。ここで目指している健康的な生活とは、肉体的・精神的・社会的に満たされている状態です。子どもが子どもらしく安心して暮らしていくためには、ヤングケアラーの背景にある生活のしづらさを理解、改善していく必要があります。
SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」
SDGs4では、「すべての人々に対し、国や家庭・性別に関係なく平等に、教育を受けられる機会を提供すること」を目指しています。学業との両立に困難を抱え、希望の進学や就職をあきらめるヤングケアラーも少なくありません。ヤングケアラーに対する支援は、すべての子どもが与えられるべき教育の権利を守ることにつながります。
まとめ:子どもが自分自身の人生を生きるために
子どもが家の手伝いをしたり、きょうだいの世話をしたり、家族で支えあうのは大切なことです。しかし、子ども本人が不調になる、やりたいことができないなどの大きすぎる負担は、家族の不調でもあり、社会で解決すべき課題です。
大人が果たすべき役割を彼らが背負うことなく、自分の人生を選択して生きてもらうために、社会での仕組みづくりと連携が求められています。
<参考文献・資料>
「ヤングケアラー」深層へのアプローチ SNSで出会う、つながり続ける 加藤雅江
ヤングケアラーってなんだろう 澁谷智子
多機関連携によるヤングケアラーへの支援の在り方に関する調査研究報告書
ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書(日本総合研究所)
ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
ヤングケアラー支援体制強化事業の概要(厚生労働省)
ヤングケアラー支援体制強化事業実施要綱(厚生労働省)
ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム報告
児童生徒の心のケアや環境の改善に向けたスクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーによる支援の促進等について(文部科学省)
児童福祉法改正及びヤングケアラー支援について
埼玉県ケアラー支援計画のためのヤングケアラー実態調査結果
厚生労働省・文部科学省におけるヤングケアラー支援に係る取組について
この記事を書いた人

Hiroko M ライター
出産後、自分の子に限らず、子どもたちにとって未来が明るいものであってほしいと社会問題にも目を向けるようになりました。普段はライティングのお仕事と、女性や子どもの予防医療に関する活動をしています。ほしいもが大好きです。
出産後、自分の子に限らず、子どもたちにとって未来が明るいものであってほしいと社会問題にも目を向けるようになりました。普段はライティングのお仕事と、女性や子どもの予防医療に関する活動をしています。ほしいもが大好きです。