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ひとり親世帯が受けられる支援制度をわかりやすく解説!

ひとり親世帯になる、という状況は離婚だけでなく、不慮の事故によるパートナーの死亡など、誰にも起こりうるリスクと言えます。いざ、ひとり親世帯になったとき、国や自治体にはどのような支援制度があるかを知っておくことは、誰しも完全にゼロとは言えない、ひとり親世帯になるというリスクへの知識的備えとなるととともに、そのような事態に陥った際の不安を軽減する効果もあります。

子どもを持つ人から、これから子どもを持ちたいと思う人にとって重要な知識となる、ひとり親世帯が受けられる支援制度をわかりやすく解説します。

【2024年最新】ひとり親世帯の現状

近年、少子高齢化離婚率の上昇にともない、ひとり親世帯の数も増加傾向にあります。子ども家庭庁の2021年の調査によると、ひとり親世帯数は、

  • 母子世帯:約119.5万世帯
  • 父子世帯:約14.9万世帯

に達しています。

【世帯の家族類型別一般世帯数】

ひとり親世帯の増加要因

ひとり親世帯の増加には、さまざまな要因が考えられます。主な要因としては、以下のようなものが挙げられます。

離婚率の上昇

離婚率の上昇は、ひとり親世帯増加の最も大きな要因の一つです。厚生労働省の調査によると、2022年の離婚率は1.90で、過去最高を記録しています。

【婚姻・離婚・再婚件数の年次推移】

晩婚化・未婚化

晩婚化・未婚化が進展していることも、ひとり親世帯増加の一因と考えられます。晩婚化・未婚化が進むと、結婚せずに子どもを持つケースが増え、それがひとり親世帯につながる可能性があります。

非婚カップルの子どもの出生増加

近年、非婚カップルの子どもの出生数は増加傾向にあります。厚生労働省の調査によると、2022年の非婚カップル出生数は約3万件で、過去最多を記録しています。

出生率の低下

【合計特殊出生率※の「実績」と「仮定値」】

【出生数の動向(推計と実績)】

出生率の低下は、ひとり親世帯の増加と実は密接に関係しています。出生率が低下すると、全体の子どもの数が減るため、ひとり親世帯の割合が相対的に高くなります。

※特殊出生率

特定の年齢層や特定の集団における平均出生数を示す指標。一般的には、15歳から49歳の女性における1年間の平均出生数を示す。特殊出生率が高いほど、その集団や地域で出生率が高い。

ひとり親世帯の割合の推移

【 ひとり親と子から成る世帯数の推移】

現在、ひとり親と子から成る世帯は着実に増加を続けています。昭和55年の205万世帯から、令和2年には503万世帯へとほぼ倍増しました。

将来に向けても増加が予想され、令和13年には553万世帯でピークを迎えた後、減少に転じ、令和32年には2020年の485万世帯を下回る見通しです。

一般世帯総数に占めるひとり親世帯の割合も増加傾向にあり、令和8年から令和12~17年にかけては9.6%まで上昇すると予想されています。その後は若干の低下が見込まれ、令和32年には9.2%に落ち着く見通しです。

この過去の実績と将来の推計からも、現状では、ひとり親世帯の割合が社会全体で増加していることが明らかです。経済や社会状況の変化に伴い、ひとり親世帯への支援制度や社会の対応は、今後ますます重要となると考えられています。*1)

ひとり親世帯が抱える課題

ひとり親世帯の多くは、経済的な困窮社会的な孤立など、さまざまな課題を抱えています。代表的な課題の例として以下のようなものがあります。

【ひとり親家庭の主要統計データ(令和3年度全国ひとり親世帯等調査の概要)】

経済的な困窮

ひとり親世帯は、一般の共働き世帯と比べて平均所得が低く、貧困状態にある世帯も少なくありません。厚生労働省の調査によると、2020年時点におけるひとり親世帯の平均所得は約291万円で、これは共働き世帯の平均所得約776万円の約38%に過ぎません。

経済的な困窮は、子どもの教育や生活に大きな影響を与えます。貧困状態にあるひとり親世帯の子どもには、学習意欲の低下や健康問題など、さまざまな問題が起こりやすくなります。

社会的な孤立

ひとり親は、周囲からの理解や支援が得られにくい場合があり、社会的な孤立を感じやすいという課題もあります。特に、地域社会とのつながりが希薄な都市部では、孤立感や孤独感を感じやすい傾向があります。

社会的な孤立は、親の精神的な健康に悪影響を及ぼし、家庭環境を悪化させて、子どもの成長にも好ましくない影響を与える可能性があります。

育児と仕事の両立

ひとり親は、育児と仕事を両立しなければなりません。特に、子どもが小さいうちは、保育所や学童保育所の利用が困難な場合もあり、仕事と育児の両立に大きな負担がかかります。

育児と仕事の両立が困難な状況が続くと、親の心身への負担が大きくなり、うつや虐待などの問題につながる可能性もあります。

【母子家庭の就業状況】

健康問題

ひとり親世帯は、経済的な困窮や育児と仕事の両立によるストレスなどから、健康問題を抱えやすい傾向があります。例えば脳科学的な見地から、以下のように、環境の影響を受けることがわかっています。

  • 栄養:栄養不足は、脳の発達に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 睡眠:睡眠不足は、集中力や記憶力などの低下につながる可能性があります。
  • ストレス:ストレスは、脳の機能を低下させる可能性があります。
  • 愛着:愛着形成がうまくいかないことは、子どもの情緒の発達に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 遊び:遊びを通して、子どもはとても多様なことを学びます。遊びの機会が少ないことは、子どもの発達に悪影響を及ぼす可能性があります。

教育格差

ひとり親世帯の子どもは、教育格差の問題にも直面しています。経済的な困窮から学習塾や習い事に通えない子どもが多く、学力低下や進学断念のリスクが高くなります。

文部科学省の調査によると、2020年時点におけるひとり親世帯の子どもの大学進学率は、一般の共働き世帯の子どもの大学進学率の約7割にとどまっています。

教育格差は、将来の就職や社会生活にも大きな影響を与え、貧困の連鎖につながる可能性があります。

このように、ひとり親世帯は、さまざまな課題を抱えていますが、国や自治体では、このような課題を解決するため、支援制度を用意しています。ひとり親世帯の人は、自分が利用できる支援制度について情報収集し、積極的に活用しましょう。*2)

ひとり親世帯向けの支援制度について

こども家庭庁の設立や子供大綱の策定など、近年、ひとり親世帯への支援の重要性が注目されています。この章では、ひとり親世帯向けの支援制度について、概要と具体的な活用方法をわかりやすく解説します。

児童扶養手当

児童扶養手当は、ひとり親家庭(父子家庭・母子家庭)の生活と児童の育成を支援するために基準に応じた金額が給付される制度です。この手当は、18歳に達する日以後最初の3月31日までの児童を保護する人や、20歳未満で一定の障害がある児童を保護している人が対象となります。

受給資格

児童扶養手当を受給する条件は以下の通りです。

  • 父母が離婚した後、父または母と生計を異にする児童
  • 父または母が死亡した児童
  • 父または母が重度の障害を有する児童
  • 父または母が生死不明、または1年以上遺棄されている児童
  • 父または母が配偶者からの暴力(DV)で裁判所から保護命令を受けた児童
  • 父または母が法令により1年以上拘禁されている児童
  • 婚姻によらないで生まれ、父または母と生計を異にする児童

ただし、児童が児童福祉施設に入所している場合や、申請者の所得が一定額以上の場合は支給されません。

申請方法

児童扶養手当の申請は、居住地の市区町村の自治体窓口で行います。申請には認定請求書の提出が必要で、住民票や戸籍謄本などの添付書類が必要ですが、必要な書類は市町村によって異なるため、具体的な申請方法は市町村役場で確認しましょう。

支給金額

支給金額は受給資格者の所得によって異なりますが、2023年4月以降の児童扶養手当の月額は、児童1人につき最大44,140円、児童2人目の加算額は最大10,420円、児童3人目以降の加算額は最大6,250円です。

支給時期

児童扶養手当は原則として年6回、2か月分がまとめて支給されます。支給月は1月、3月、5月、7月、9月、11月です。

注意点

  • 所得制限限度額を超えると支給が停止されることがあります。
  • 毎年8月には現況届の提出が必要です。
  • 手当を受給してから5年経過すると、一部支給停止適用除外の届出が必要になる場合があります。

こども家庭庁設立:ひとり親家庭のワンストップ支援体制を強化

ここで、こども家庭庁について簡単に内容を把握しておきましょう。

2022年4月に設立されたこども家庭庁は、ひとり親世帯を含むすべての子供と家庭の支援を一元化する役割を担っています。

従来、ひとり親世帯向けの支援は、厚生労働省、文部科学省など複数の省庁に分かれていました。こども家庭庁の設立により、複雑な手続きや担当窓口の混乱といった課題が解消され、ひとり親世帯にとって より分かりやすく使いやすい支援体制が構築されています。

具体的には、以下の支援が提供されています。

  • 子育て支援:子育てに関する相談や情報提供、地域の子育て支援センターとの連携
  • 教育支援:教育費支援、学習支援、進路相談
  • 経済支援:児童扶養手当、生活保護、ひとり親家庭等就労・自立支援事業
  • 医療支援:乳幼児医療費助成制度、ひとり親家庭等医療費助成制度
  • その他:離婚・DV相談、住居支援、就労支援

これらの支援は、こども家庭庁の窓口やオンラインで利用できます。

【関連記事】【2023年4月発足】こども家庭庁とは?目的や組織概要、最新情報を解説

こども大綱策定

2022年12月に策定されたこども大綱は、2050年までの子供を取り巻く社会のあり方を示した指針です。ひとり親家庭についても、自立と社会参加の促進、子育て支援の充実などが重点課題として掲げられています。

こども大綱に基づき、以下の具体的な支援が推進されています。

  • 経済支援の拡充:児童扶養手当の増額、生活保護基準の見直し
  • 教育支援の充実:幼児教育の無償化、大学進学支援の強化
  • 医療支援の拡充:乳幼児医療費助成制度の対象拡大、ひとり親家庭等医療費助成制度の利用促進
  • ワークライフバランスの推進:柔軟な働き方の推進、育児休暇制度の拡充
  • 地域子育て支援の強化:子育て支援センターの拡充、地域子育て支援拠点の整備

これらの各支援制度の詳細は、こども家庭庁のウェブサイトまたは電話でも確認できます。

【関連記事】こども大綱とは?6つの柱や重要事項、策定された背景をわかりやすく解説!

具体的な支援制度(こども家庭庁)

こども家庭庁の行っている、具体的な支援策を紹介します。

ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業

ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業は、ひとり親家庭の親が高等職業訓練を受けるのを支援します。入学時には50万円の貸付けを行い、資格取得後には20万円の貸付けを提供します。

さらに、就職後には貸付金の返還が免除される条件があります。また、児童扶養手当を受給しているひとり親家庭には住宅支援も行われます。

最大12か月間、家賃の実費を支援し、上限は月額4万円です。

母子家庭等就業・自立支援センター事業

母子家庭等就業・自立支援センター事業は、ひとり親家庭を包括的に支援するサービスを提供しています。

  • 就業相談
  • 就業支援講習会の開催
  • 情報提供
  • 養育費や親子交流に関する専門相談

など、幅広い支援を提供します。

また、在宅就業をサポートするためにPCの貸与や訓練環境整備も行っています。

ひとり親家庭の在宅就業推進事業

ひとり親家庭の在宅就業推進事業は、自営型の在宅就業や企業での雇用(雇用型テレワーク)を希望するひとり親を支援しています。在宅就業コーディネーターがサポートし、独り立ちに向けたノウハウを提供しています。

支援内容として、在宅就業希望者に対し、在宅就業コーディネーターが支援を行い、自営型の在宅就業や企業での雇用への移行をサポートします。必要なスキルの習得には、母子家庭等就業・自立支援センター事業の訓練を受けることができます。

母子・父子自立支援プログラム策定事業

母子・父子自立支援プログラム策定事業は、それぞれのひとり親家庭の親の状況に合わせた自立支援プログラムを立案しています。ハローワークや母子家庭等就業・自立支援センターなど複数の支援機関と連携し、就業支援などを提供しています。

このプログラムでは、児童扶養手当を受給するひとり親の生活状況、子育て状況、求職活動、自立・就業に関する課題を把握し、生活支援や就業支援、雇用関係助成金などを組み合わせて、個々の状況に合わせたプログラムを策定します。プログラムの見直しを通じて目標達成をサポートします。

高等学校卒業程度認定試験合格支援事業

高等学校卒業程度認定試験合格支援事業は、ひとり親家庭の就職支援を目的として、高卒認定試験に合格するための講座(通信講座を含む)を受講し、修了または合格時に受講費用の一部を支給する取り組みです。

具体的には、受講開始時に受講費用の4割、修了時に1割、合格時に1割の支給があります。高卒認定試験に合格した場合には、さらに1割の支給があります。

支給額の上限は、最大で受講費用の6割までとなります(通信講座の場合は最大15万円、通学または通学・通信併用の場合は最大30万円)。

母子家庭等自立支援給付金事業

【自立支援教育訓練給付金事業】 

このプログラムでは、指定された教育訓練を修了したひとり親に受講料の一部が支給されます。就職に繋がる教育訓練を受けた場合、受講費用の6割に相当する金額がサポートされます。

【高等職業訓練促進給付金等事業】

このプログラムでは、看護師、介護福祉士、保育士、LPI認定資格などの資格取得のために1年以上の養成機関で修業する場合に、生活費の給付金が支給されます。支給内容は、月額最大10万円(最大4年間)で、修業の最終年限1年間は4万円が追加支給されます。

修了後には最大5万円の支給があります。

ひとり親家庭への相談窓口の強化事業

ひとり親家庭への相談窓口の強化事業では、ひとり親家庭の課題に対応するために、母子・父子自立支援員や就業支援専門員を配置し、地域のニーズに合わせたワンストップ相談窓口を設置しています。

母子・父子自立支援員は、支援を必要とする方々の課題を把握し、子育てや生活支援(例:児童扶養手当の手続きや養育費の確保など)を行います。一方、就業支援専門員は、就職やキャリアアップに向けたアドバイスや情報提供、マザーズハローワークなどへの支援を行います。

この支援体制では、母子・父子自立支援員と就業支援専門員を同じ窓口に配置し、ひとり親家庭が必要とする支援を一括して提供します。さらに、児童扶養手当の手続きなどの際には、弁護士やハローワーク職員も配置され、さまざまな課題について集中的に相談できる機会を提供しています。

具体的な支援制度(厚生労働省)

こども家庭庁だけでなく、厚生労働省もひとり親世帯の支援を行っています。

ハローワークにおける児童扶養手当受給者等に対する就労支援(生活保護受給者等就労自立促進事業)

この取り組みは、児童扶養手当を受給している人々が自立するための就労支援を行うものです。ハローワークの窓口で提供されています。

具体的な支援内容として、

  • 求人情報の検索や仕事探しの相談
  • 職業紹介
  • 履歴書の作成
  • 面接アドバイス

などを無料で提供します。また、担当者が個別に支援を行い、就職後のフォローアップも行っています。

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金の制度は、母子家庭の母親や育児で仕事に長いブランクがある方など、就職に不安を感じている人が、仕事や企業についてより深く理解するために最大3か月のトライアル雇用(試行雇用)を提供しています。トライアル雇用中は労働基準法が適用され、賃金が支払われます。

この制度の利点は、実際に働くことで、仕事や企業に適しているかどうかを確認できることです。労働基準法の保護下で働きながら、貴重な経験を積むことができます。

トライアル雇用を利用するには、ハローワークや職業紹介事業者などで公開されているトライアル求人から、紹介してもらい活用することができます。企業がトライアル雇用を提供する場合には、助成金が支給されます。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース、成長分野等人材確保・育成コース)

特定求職者雇用開発助成金の制度は、就職が特に難しい母子家庭の母親などを、ハローワークなどの紹介によって雇用し、継続して雇用する事業主に対して助成金を支給するものです。訓練や賃上げを行う場合には、通常の1.5倍の助成金が支給されます。

また、雇用未経験者に対して、資格取得を目指す訓練(例:保育士、介護職員初任者研修)を行った場合には、追加の助成金が支給されます。

この制度は、就職が難しい特定の求職者を支援し、雇用を継続する事業主に補助金を提供します。また、資格取得を目指す訓練を受けることで、雇用未経験者のスキル向上や雇用機会の拡大に貢献します。

このように、ひとり親世帯を支援する制度は数多くあり、各都道府県や市町村でも独自の支援を行なっている場合があります。まずは自分の地域の地方公共団体のホームページなどで情報収集をすることが大切です。

また、市役所・区役所の子育て支援課、ひとり親支援センターなどで相談することもできます。話を聞いてもらうことで、不安が和らぐこともあるので、もしも今後ひとり親になるかもしれないという状況にある人は、そのような相談窓口に1度は行ってみることをお勧めします。*3)

ひとり親世帯の支援とSDGs

ひとり親世帯が抱える生活の困難が、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にどのように影響するかを考えてみましょう。ひとり親世帯は経済的な負担や子育ての課題に直面しやすく、これがひとり親世帯の生活を困難にしています。

この状況が放置されると、教育の格差や貧困の連鎖が生まれ、社会全体の持続可能な発展において障壁となる場合があります。

一方で、ひとり親世帯への適切な支援は、SDGsの目標達成にどのように貢献するでしょうか。経済的支援や教育支援を通じて、彼らの生活を安定させ、生活や将来への不安を減らすことにより、貧困の連鎖を断ち切り、教育の機会均等を実現することができます。これは、

  • SDGs目標1:貧困をなくそう
  • SDGs目標4:質の高い教育をみんなに

などの目標に直結しています。

さらに、ひとり親世帯への支援は、ジェンダー平等や社会的包摂の推進にもつながります。女性が経済的に自立し、子供たちの健やかな成長を支えることで、社会全体の持続可能な発展に貢献するのです。

このような支援は、

  • SDGs目標5:ジェンダー平等を実現しよう
  • SDGs目標16:平和と公正をすべての人に

などの目標達成に貢献する重要な要素となります。

このように、ひとり親世帯への支援はSDGsの目標達成にも不可欠です。ひとり親世帯の子どもたちが、他の子ども達と同じように不安なく健やかに成長し、社会の一員として活躍できるよう、様々な支援体制を充実させていくことは、持続可能な社会の構築にあたって重要な取り組みの1つなのです。

また、ひとり親となった人でも、安心して子どもを育て、不安のない生活を送るための支援は、

  • SDGs目標11:住み続けられるまちづくりを
  • SDGs目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

などの目標達成に向けても重要です。はるか昔、例えば日本でいえば縄文時代の人々は、親を失ってしまった子供だけでなく、障害をもって生まれた人や病人・けが人も集団で協力して世話をして生活していたそうです。

私たち日本人にとっては、SDGs目標の達成は、そのような時代にできていたことを思い出す取り組みなのかもしれません。*4)

>>SDGsに関する詳しい記事はこちらから

まとめ

すべてのひとり親世帯がそうとは言えませんが、一般的にひとり親世帯は、

  • 経済的な困窮
  • 育児と仕事の両立困難
  • 社会的な孤立

などに陥る家庭も多く、さまざまな面で困難を抱えやすいと言えます。これらの課題は、ひとり親世帯の精神的な負担にもなり、自己肯定感の低下などから負のスパイラルを引き起こし、日々辛い気持ちで過ごしているひとり親や子どもたちは少なくありません。

毎月の生活費、子どもの教育費、将来の生活への不安など、経済的な面での不安は多くのひとり親家庭にとって大きな悩みとなっています。そのため、それらの不安を解消する公的な支援は不可欠です。また、そのような子育て支援を充実させることは、ひとり親家庭の生活が安定するだけでなく、これから家庭を持ちたいと思う若い世代への安心感にもつながります。

また、経済面だけでなく、精神的なサポートも重要です。なぜなら、ひとり親世帯になってしまう過程において、ほとんどの場合、大きなストレスや強いトラウマを抱えてしまうからです。

ひとり親になってしまう理由は家庭によりさまざまですが、多くの場合、人生が大きく変わる辛い体験です。ただでさえ、そのような困難を体験して疲弊しているのに、ひとり親になるや否や、経済的な不安、子育て・家事・仕事の両立、健康面への不安などがのしかかってきます。

もしもあなたがひとり親になってしまいそうな状況であれば、とにかくたくさん情報を集め、ひとり親になってからの生活に備えましょう。行政機関や民間団体の支援制度について調べ、積極的に相談することが大切です。

また、できるだけ早く資格取得やスキルアップなど、将来の収入につながる活動を始め、前向きな目標を持って行動することを心がけましょう。近年、多様な働き方ができるようになってきて、リモートワークや子育て支援雇用など、ひとり親でも働きやすい環境が整いつつあります。

さらには、離婚率が増加していることは社会に広く認知され、ひとり親世帯への社会全体の理解も高まってきています。少子高齢化が加速している日本において、ひとり親として支援を受けていても、子育てしていることで、社会にじゅうぶん貢献していると誇りを持ってください。

政府は貧窮する子育て世帯に、生活に足るギリギリの支援をするのではなく、安心できる支援をすることが重要です。現状の支援制度は改善に向かっているものの、特に費用のかかる高校受験・大学受験、特別な才能を伸ばす教育などにおいて、まだ十分とは言えません。

また、返済義務のある奨学金制度では、将来的にひとり親や子ども達が社会に出てからの生活を苦しめる可能性があります。安心して学び、才能を伸ばせる社会づくりは今後の日本にとって不可欠です。

ひとり親をはじめ、すべての子どもを育てたいと思う人、子どもを育てる人、子ども達が、安心していきいきと、幸せに暮らせる社会を実現しましょう。

私たちはみな、多かれ少なかれ影響し合い、この社会を形成しています。一人ひとりがより良い社会のビジョンをはっきりと持ち、それに向かってできることから取り組んでいきましょう!

<参考・引用文献>

*1)【2024年最新】ひとり親世帯の現状
国立社会保障・人口問題研究所『『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』(令和6(2024)年推計)』
男女共同参画局『男女共同参画白書 令和4年版 婚姻・離婚・再婚件数の年次推移』(2022年)
厚生労働省『離婚の年次推移 (1)離婚件数の年次推移』
厚生労働省『将来推計人口(令和5年推計)の概要』(2023年5月)
こども家庭庁『こどもの貧困対策・ひとり親家庭支援の現状について』(2021年)
厚生労働省『ひとり親家庭の現状と支援施策の課題について』
内閣府『ひとり親世帯の現状』
厚生労働省『令和3年度 全国ひとり親世帯等調査の結果を公表します 』(2022年12月)
国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(全国推計)(令和 6(2024)年推計)-令和 2(2020)~32(2050)年- 』(2024年)
*2)ひとり親世帯が抱える課題
厚生労働省『「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」結果について』(2023年1月)
厚生労働省『ひとり親家庭等の支援について』(2019年4月)
徳田 彩『母子家庭の相対的貧困問題における本質的問題の研究 生きづらさを解消するデザイン』(2022年)
*3)ひとり親世帯向けの支援制度について
【2023年4月発足】こども家庭庁とは?目的や組織概要、最新情報を解説
こども家庭庁『ひとり親家庭等関係』
こども家庭庁『第1回 こどもの貧困対策・ひとり親家庭支援部会』(2023年7月)
こども家庭庁『こども家庭庁説明資料(自殺総合対策大綱における施策の実施状況について)』(2024年3月)
内閣官房『子供の貧困対策に関する大綱の進捗状況及びこども大綱策定に向けての意見 』(2023年1月)
こども家庭庁『ひとり親家庭等の支援について』(2023年4月)
男女共同参画局『ひとり親家庭の方への就業支援』
*4)ひとり親世帯の支援とSDGs
経済産業省『SDGs』