#インタビュー

船井総研ロジ株式会社|物流という仕事の素晴らしさ。誰もが鍵を握る物流業界の課題解決と、持続可能な物流業界の発展のために

船井総研ロジ株式会社

船井総研ロジ株式会社 執行役員 コンサルティング本部 副本部長 田代三紀子さん インタビュー

田代三紀子

製造業・小売業を中心とした荷主企業に対して、物流戦略策定の支援を行い、物流拠点の見直し、コスト削減策の提案、物流コンペの支援を数多く行ってきた。得意なカテゴリーは、化学、日用雑貨など。また、物流をテーマにした数少ない女性コンサルタントとして、脱炭素、ESGロジスティクス実行に向けた研修やコンサルティングを行っている​​​​​​​​​​。

introduction

インターネット通販で商品を買うと翌日には届く。そんな日本の配送サービスの素晴らしさは今や当たり前とされていますが、実はその裏で、想像を超える努力を数々の方がしているということを想像したことがありますか?

今回は、物流専門のコンサルタントを長年経験してこられた船井総研ロジ株式会社の田代三紀子さんに、2024年問題をはじめとする課題や、持続可能な物流業界の発展のために必要なことについてお話しを伺いました。

物流に特化したコンサルティングで物流業界の地位向上を目指す

–まずは御社の事業内容についてご紹介ください。

田代さん:

船井総研ロジ株式会社は、物流に特化したコンサルティングをしています。主に運送会社向けと製造業・小売業・卸売業向けの2種類のコンサルティングがあります。前者の運送会社向けのコンサルティングでは、経営者に対して業績アップコンサルティングを、後者の製造業・卸売業・小売業向けのコンサルティングでは、物流部門の責任者に対して物流コストの見直しや物流センターの最適な配置など企業の経営に直結する物流体制構築のコンサルティングをしています。

また3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)という、物流業務を第三者企業にアウトソーシングするサービス、3PLマネジメントサービスも行っています。3PLマネジメントサービスでは、社内に物流部という専門の組織がなく、倉庫やトラックの手配にお困りの企業に対して、その企業の取り扱い商材や配送エリアに適した輸送手段、保管手段の提案をし、お客様の物流部の一員として、輸送や倉庫の手配をしています。

このように私たちの事業は戦略策定だけにとどまらず、実際にお客様のあるべき物流体制を実現する後工程まで、一貫してサポートできるところが特徴であり強みでもあります。

–続いて、御社が事業を通して目指していることについて教えてください。

田代さん:

私たちのミッションは、物流の先進企業をつくることです。他の企業が真似をしたくなるような取り組みをしているリーディングカンパニーを、私たちのコンサルティングを通して創出していくことで、物流業界の発展に貢献したいと考えています。

物流業界というのは他の産業に比べて、その重要性があまり認識されていません。物流が、社会インフラとしていかに重要であるかを世の中にもっと理解してもらいたいと考えています。また、ドライバー不足やドライバーの低賃金など、物流業界には様々な課題がありますが、その解決のカギを握るのは実はみなさん一人ひとりだということも知っていただきたいですね。

物流業界の課題解決のカギを握る一消費者として、2024年問題を考える

–物流業界の課題の解決に一個人である私たちがどう関わりがあるのか、詳しく教えてもらえますか?

田代さん:

「物流業界の問題は自分には関係ない」と思う人も多いかもしれませんが、決してそのようなことはありません。例えば分かりやすい事例として、荷物の再配達です。通販で買い物をして、自宅で荷物を受け取ることができず、再配達を依頼したことがある人は多いでしょう。本来であれば1回で済む配達が、再配達となることにより再度同じ場所を訪問しなければならず、さらに、それが何件も重なることでドライバーの長時間労働に繋がってしまいます。

ただでさえドライバー不足であるにも関わらず、再配達の荷物が増えると、2024年問題による残業時間の上限規制により、”運べなくなる荷物”がでてくるでしょう。そのような事態を防ぐためにも、荷物を受け取る立場である一消費者として配達時間に在宅すること、宅配ボックスを導入すること、自宅以外の場所で受け取るなど、日常のちょっとした行動を見直すことで、物流業界の課題解決に貢献できることは大いにあります。

また、ドライバーの適切な給与水準を維持するためには、物流企業が荷主企業からもらう運賃をいかに上げていくかが大切です。それはつまり、消費者である私たちが、商品を購入する際の適切な送料負担をいかに理解するか、ということにも関係しています。

–物流業界の2024年問題について、現状もふまえた解説をお願いします。

田代さん:

2024年問題というのは、2024年4月1日から自動車運転業務に従事する方の、残業時間の上限が制限される法改正です。制度改定以降は、定められた残業時間を超えると罰則が適用されることになりました。本来は健全な働き方を担保して新規のドライバーを確保するための法改正でしたが、その反面で残業時間の制限により物流が滞り、スーパーなどのお店に欲しい商品が届かない、つまり購入の機会が制限されるということも生じてくると危惧されています。また、残業時間が制限されることで残業代分の給料が減ってしまうため、ドライバーの仕事を辞める人が出てきて逆にドライバー不足に拍車がかかるとも言われています。

–2024年以降荷物が届くのが遅くなったり、スーパーの品ぞろえが悪くなったりしたとは個人的に感じないのですが、それはどうしてなのでしょうか。

田代さん:

残業時間の超過につながる長距離の輸送や手積み・手降し作業・荷待ちなどの常態的な発生、さらには適正な運賃が収受できない輸送に関しては、運送会社も業務を撤退しているのが事実です。一方で、そこをビジネスチャンスとして廉価な運賃で運ぶ事業者がいるのも事実です。しかし、廉価な運賃で運ぶ事業者は長続きしません。

私たちの生活において、何不自由なく商品を購入することができるのは運送会社が残業時間の上限規制がありながらも、最適な輸配送手段を選択しながら、物流網を維持していることが考えられます。

例えば、一人のドライバーが長距離を運転するのではなく、鉄道輸送や船舶に切り替えることで、トラックドライバーの長時間労働を回避することができます。また、自社のみの商品を載せて運ぶのではなく、届け先や届け先のエリアが重複している事業者同士を集めて1台のトラックで効率よく運ぶことで、限られたドライバーで荷物を届けることができます(共同配送)。このような影の努力もしながら、みなさんの生活を支えていることをぜひ知っていただきたいです。

–御社は物流業界の地位向上のために奮闘されているということですが、物流業界の地位の問題や、他の問題についても教えてください。

田代さん:

例えば製造業であれば、製品を製造して販売し、売り上げを立てるというのが本業です。一方で製品をお客様にお届けするという業務、物流は、”コスト”として捉えられます。つまり、製造業にとって運賃は抑えるべきコストとして捉えられてしまいます。

物流企業は荷主企業からの運送の依頼が経営を支えています。そのため、例えば「本当は現状の運賃では事業が成り立たないので運賃を値上げしたい」と考えていても、値上げの申し入れをしたことで、取引停止になったら・・という考えがよぎり、思うように提案ができていないという実態があります。

また、物流は減点方式と言われます。時間通りに破損することなく品質よく届けることが当たり前で、これが100点満点。もし遅延したり、貨物に不具合発生などの問題があれば減点されてしまいます。もともとは物流企業が、他社との差別化や利用者の利便性を追求するために始めた時間指定や附帯作業といった物流サービスですが、時代が変わり、これほど人手不足が進んだ今、物流サービスを維持するために見えないところで多くの方が苦労をしながら、様々な工夫をしているということが、もっと理解されるべきです。

リスクを抑えた効率的で持続可能な物流網を構築するために

–御社のコンサルティング導入事例に関わるエピソードをご紹介いただけますか?

田代さん:

私の担当した事例をご紹介します。製造業のお客様向けにコンサルティングを実施した際の事例です。お客様の実態として、これまでは物流コストをいかに抑えるかが使命で、効率的な物流網の構築には無関心でした。そこで弊社は全国に点在した倉庫の再編、長年契約をしてきた運送会社のリスクなどを可視化し、新たな物流体制の構築や、物流拠点の整理などを提案しました。

取り組みを始めた当初は、なぜそこまでしないといけないのか、というお声をお客様からいただくこともありました。それでも、エリアごとに取り組みを進めて、成功事例が出来上がると効果を実感してもらったり、別のエリアにも展開しやすかったりといった状況に変化しました。あわせて、物流に関する取り組みを変えていかないと会社の経営にリスクがあることを説明した結果、物流を運送会社任せにするのではなく自分事として捉え、全社的に持続可能な物流に対する理解や積極的な取り組みが見られるようになりました。

物流という素晴らしい仕事を支えるために、一丸となって

–持続可能な物流業界の発展のために必要なことや、御社の今後の取り組みを教えてください。

田代さん:

物流業界としては、人材確保のために3K(きつい・汚い・危険)などのマイナスイメージを払拭していく必要があります。輸送を指示している製造業や小売業にもできることが大いにあります。例えばトラックへの荷物の積み込みです。トラックの積載効率を最も高めることができるバラ積み(荷物を1つずつ積み込む方法)を荷主企業が求めるケースがあります。これにより荷物の積載を担う運送会社にとっては負担が大きくなってしまいます。

運送会社が過酷な労働にならないよう、フォークリフトで積み込みができるパレット積みを進めるなど、これまでの荷主企業の指示の在り方を私たちのコンサルティングを通して見直していくことで、物流が止まらない仕組みをつくっていくことが必要だと思います。

–最後に、今後ともに成長を続ける社員に向けたメッセージをお願いします。

田代さん:

かつて、製造業のお客様から言われたことで印象的な出来事がありました。製造業であれば製品を世に出すにあたり、研究開発・調達・マーケティング・製造・営業、それらを支える管理部門など、様々な方の想いが詰まった製品を、お客様に届ける最後のたすきを受け取った物流という仕事は、実はものすごく素晴らしく、同時に責任がある仕事であるとのお話をいただきました。それ以来、リスクやコストを抑えてかつ、持続可能な物流を構築するためのコンサルティングをする私たちの仕事も、同じように重要だと考えるようになりました。

この役割を担うことの意義や、社会全体にどのようなインパクトを与えることができるかを意識することで、今後の仕事が豊かなものになるのではないでしょうか。物流の取り組みには終わりがありません。5年後、10年後を見据えながらお客様と一緒に伴走し、持続可能な物流体制をつくりあげていきたいですね。

–物流という仕事に誇りを持ち、業界全体の発展のためにコンサルティングとして尽力されるお話に感銘を受けました。この度は貴重なお話をありがとうございました。

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