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スリープテックとは?睡眠の質を上げる方法・睡眠の重要性・市場規模・サービス例を紹介

スリープテックとは

スリープテックは、睡眠の質を上げる方法1つとして関心を集めています。

スリープテックの市場規模はどれほどになっているのでしょうか?

スリープテック・睡眠の重要性が注目される理由や現在提供されているサービス、利用度が高まっている商品・ガジェットや推進している企業を紹介します。

持続可能な社会に向けてスリープテックがどういった影響を与えるのかも見ていきましょう。

スリープテックとは?睡眠の質を上げる方法として有効?

スリープテックというのは、「Sleep=睡眠」と「Technology=技術」を組み合わせた造語で、IT・AI技術などによって睡眠分析を行うことや、睡眠の質を向上させるサービスや商品を提供することを意味します。

スリープテックは、人間の心身の健康を維持するために必要な「睡眠」を技術分野からアプローチすることにより、睡眠の質を向上させることを目指しています。

現在どれほどの市場規模になっているのか、スリープテック商品やサービスにはどのようなものがあるのか、スリープテックが持続可能な社会にどう働きかけていくのかなど、スリープテックの実情を複数の角度から見ていきましょう。

スリープテックの市場規模

出典:株式会社矢野経済研究所「スリープテック市場に関する調査を実施(2024年)」

上のグラフをご覧いただけるとわかるように、スリープテックへの関心が高まるのにしたがって、数多くの企業がスリープテック商品やサービスを提供するようになり、商品やサービスの種類が増え続けています。

上グラフを作成した株式会社矢野経済研究所の調査によると、日本国内のスリープテック市場規模は30億円だった2020年から2023年までに95億円に達し、調査開始から3倍以上に拡大していることが判明しました。

矢野経済研究所はこれまでの情報を分析した上で2024年以降の予測も立てており、2024年以降も年ごとに10億円ずつ増えていくという予測結果を公表しています。

Precedence Research調査では、2024年時点の世界市場規模はおよそ248億ドルという結果でした。

スリープテックの市場に参入している企業やメーカーは以下の通りです。

  • 情報通信企業
  • ヘルスケア企業
  • 大学発スタートアップ企業
  • 寝具メーカー
  • 電機メーカー

スリープテックが市場に登場した頃は睡眠に直接影響する寝具・ヘルスケア系の企業・メーカーが大半を占めていました。

しかし、近年は技術分野の台頭がめざましく、情報通信企業・電機メーカーが増えると同時に、異業種の連携によって新商品・サービス開発を行うようになっています。

スリープテックが注目される理由【睡眠の質を上げる社会的意義】

スリープテックが現在注目されているのは、睡眠不足が社会問題として提起されているという背景によるものが大きいです。

睡眠不足が社会にどう影響しているのか、メンタルヘルスとどう関わるのか、スリープテックにおけるテクノロジーはどう進化しているのかを解説します。

睡眠不足による労働生産性の低下・経済損失

(出典:厚生労働省「解説書 知っているようで知らない睡眠のこと」

上のグラフは、OECD(経済協力開発機構)が33カ国を対象に調査した平均睡眠時間です。日本人の平均睡眠時間は調査対象国の中で最も短いという結果でした。

こちらのグラフを作成・公開した厚生労働省では「調査方法・文化や地理的背景の違いなどがあるため正確な睡眠時間を表していないことがある」と付記しています。

しかし、33カ国の平均睡眠時間が8時間半近くであるのに対し、日本人の平均睡眠時間が1時間近く下回り、しかも最下位となっているのは事実です。

慢性的な睡眠不足の人が多いとされる日本では、睡眠不足によって労働生産性が低下し、それによる経済的損失は小さからぬものであるのも事実です。

アメリカ合衆国のシンクタンク・RAND研究所の試算結果によると、睡眠不足による日本の経済損失は20兆円で、GDP比では2.92%になります。

アメリカ・イギリス・ドイツ・カナダの経済損失の推計も出していますが、平均睡眠時間が短い日本の経済損失が特に大きいと見られています。

睡眠の質とメンタルヘルスの関係

睡眠はメンタルヘルス(心の健康)にも大きな影響を及ぼします。

睡眠には体の疲労を回復する効果があるだけではなく、心の疲労を回復させる効果もあります。受けたストレスを0にすることはできませんが、睡眠を十分にとることによってストレスを大幅に和らげることが可能だからです。

しかし、睡眠が不足するとそれまで受けたストレスを緩和できないだけではなく、平常よりもストレスに敏感になります。

そういった流れで、ストレスが蓄積することによって不眠症などの睡眠障害を発症することが多いので、睡眠不足とストレスの悪循環を引き起こす可能性が高まります。

その結果、不眠症や不安障害やうつ病といったメンタル系の病気に罹患するケースが多いのです。

ストレスへの耐性を高めてメンタルヘルスを健康な状態に保つには、質の良い睡眠を十分にとることが必要です。

テクノロジーの進化

眠れないことが原因で発症したメンタルヘルスの病気はメンタルクリニックなどで治療できます。

しかし、技術分野からメンタルヘルス系の病気にかからないための対策を講じていることが、スリープテックが注目されるようになった理由の1つです。

良質な睡眠をとれない場合、従来は食生活の改善・寝具交換・ライフスタイルの見直し・カウンセリングや投薬などによる治療で対策していましたが、テクノロジーが進化したことにより、技術面から睡眠の質を上げることが可能になりました。

スマホ・スマートウォッチ・スマートリングなどのウェアラブル端末などを駆使して質が高い睡眠がとれるようになってきたのです。

心地よい状態で眠るには快適な寝具が不可欠ですが、その寝具を用意する際にも技術的な側面からアプローチしています。

たとえば、寝具メーカーと情報産業企業といった、通常では交わらない異業種が提携し、より快適な睡眠をとれるための商品・ガジェット・サービスを考案しています。

それがテクノロジー、ひいてはスリープテックの進化につながっているのです。

睡眠の質を上げるスリープテックのサービス・商品

現在提供されており、高評価を受けているスリープテックのサービスと商品をジャンルごとに解説します。

購入を検討されている方は、興味のあるサービスや商品をチェックしてみてください。

寝具

スリープテック商品の中で特に注目度・利用度共に高い寝具を紹介します。寝具の買い替えをする前にスリープテック商品として提供されている寝具を見てみましょう。

ベッド・マットレス

ベッドやマットレスは、横たわった時に心地よいだけではなく、マットレスに睡眠中の動きを検出するラインセンサーなどを搭載したものが開発され、市場に出ています。睡眠時間と睡眠環境をチェックしてエアコンの温度や風向を調整したり室内の明るさなどを適正な状態にして睡眠を快適な状態にするという働きをします。

寝具メーカーと技術系メーカーがコラボすることによって、テクノロジーで安眠に導くベッドやマットレスは、寝具の老舗メーカーである西川と技術系企業であるパナソニックが提携して開発・販売しており、この2社に続いて数多くのメーカーがスリープテック仕様のベッドやマットレスを提供しています。

枕・布団・シーツ

従来は清潔感・弾力の程度・肌触りなどが重視されてきた枕と布団とシーツも、技術面からのアプローチによりスリープテック商品として販売され、利用者の好評を得ています。

枕は利用者の寝方に合わせた立体構造にして通気性と頭圧分散性を重視するなどの改良で、快適度を大幅に上昇させました。

布団は保温性と軽さに特化したものが増え、シーツは複数の素材を組み合わせたものをマットレスとセットにすることにより、マットレスの性能をより活かせるように製造されています。

寝巻き・パジャマ

寝巻きやパジャマなどのスリープウェアの開発もここ数年の間に飛躍的に進んでいます。

スリープテック分野で人気が高いメーカーでは、血流を改善する特殊機能を備えた繊維や遠赤外線によって血行を促進して疲労回復効果を得られる繊維などで作られたスリープウェアを販売しています。

ウェアラブル端末

寝具とは違うアプローチで睡眠の質を上げるウェアラブル端末もスリープテック分野での注目株です。

特に若い世代に人気が高いスマートウォッチ・スマートリングなどのスリープテックガジェットをチェックしてみましょう。

スマートウォッチ

運動時の消費カロリーや心拍数のチェックなどの従来の機能に加え、利用者の睡眠状態をモニタリングする機能を備えたスマートウォッチが増えてきました。

レム睡眠など眠りの深さをスマートウォッチで測定した上で、睡眠中のデータの解析や提案などをアプリで行ってくれるので、それを参考にすることでより快適に眠ることが可能です。

スマートリング

指輪型やリストバンド型など好きなタイプを選べるスマートリングの中にも、スリープテック対応型が増えています。

睡眠時間を計測する共に、睡眠中の体温や心拍数といった体調変化、いびきや寝返りなどの睡眠中の体の活動を測定し、起床時の活動状態と睡眠の関連性を分析することで、睡眠を改善する提案をしてくれるという点でスマートウォッチと共通しています。

スマートウォッチやスマートリング以外にも様々なガジェットが取り揃えられているので、睡眠中邪魔に感じないタイプのガジェットを身につけて眠れます。

アプリ・ゲーム

アプリやゲーム型のスリープテックも広い世代に受け入れられています。

眠るとき、枕元などにセットして眠ると、アプリが寝付くまでの時間やレム睡眠から深い眠りに入るまでの時間などの睡眠レポートを作成し、レポートをグラフ化するという機能を備えたアプリゲームも話題を集めました。

特に人気が高いアプリでは、眠りの質によってゲーム内のキャラクターが成長するといったゲームの楽しみ要素も搭載し、睡眠時間を削ってゲームをしがちなゲーマーの睡眠の質の向上に貢献しています。

食品

良い睡眠習慣を得るには食生活の改善も不可欠ですが、スリープテック分野の食品で特に人気が高いのはプロテインです。

サプリで飲むタイプやドリンクタイプなどのスリーププロテイン・ナイトプロテインなどが数多く販売されており、ココア風味などをつけて飲みやすさと入眠効果をさらにアップさせた商品も好評です。

スリープテックとは何か気になる人からよくある質問

生活にスリープテックを取り入れることを検討している人がネット掲示板やSNSなどに投稿している質問の中から、よく見かける質問を紹介します。回答とあわせてご覧ください。

スリープテックガジェットで特に人気が高いのは?

スリープテックガジェットの中で特に人気が高いのは、ウェアラブル端末です。ウェアラブル端末だと、旅行や出張などの外泊時にも使えるという利便性、高価なものが多いスリープテック商品の中では入手しやすい価格のものが多いという点で支持を集めています。

また、手軽という点でスマホアプリやスマホゲームタイプも、子供でも楽しみながら眠れるというメリットがあることで人気が高いです。

スリープテックを推進している国内企業は?

スリープテックを推進している国内企業では、以下の企業の知名度と人気を得ています(五十音順)。

  • S‘UIMIN
  • 西川
  • ニューロスペース
  • ポケモン

S‘UIMINは、AIなどを活用して睡眠データを計測するタイプのサービスを提供しています。

西川は、記事本文でも紹介したように、パナソニックと提携してテクノロジーを搭載した寝具を開発・販売中です。

ニューロスペースは、睡眠改善プログラムや睡眠アプリの研究・開発を行っている企業です。

ポケモンは、スリープテックゲームアプリで「革命的」と称賛された「ポケモンスリープ」を提供し、全世界で累計2000万ダウンロードを突破しています。

スリープテックの将来性は?

日本人の睡眠時間が少ないという情報がありますが、睡眠時間が多くても良質な睡眠をとれていないと心身の不調をきたすため、スリープテックの注目度は全世界で高まる一方です。

テクノロジーが進化することによってスリープテック商品やサービスのクオリティも上がり続けているため、将来性は十分にあると言えます。

スリープテックは持続可能な社会にどう影響する?

持続可能な開発目標=SDGsの中には、直接的に睡眠について記述された目標はありません。

しかし、睡眠は人間の心身の健康を保持するため、労働生産性の向上に不可欠な要素なので、目標3「全ての人に健康と福祉を」と目標8「働きがいも経済成長も」に貢献できます。

睡眠不足は学習意欲にも影響するので、目標4「質の高い教育を皆に」も達成可能です。

まとめ

スリープテックはこの5年の間に全世界で飛躍的に促進されている分野ですが、睡眠不足大国とも言われる日本での関心度も上昇し続けており、日本をスリープテックの市場として捉えている国も増えています。

スリープテックは複数の社会問題を解決する糸口であると共に、持続可能な社会の実現にとって重要な要素です。

スリープテックによって質が高い睡眠を得ることが持続可能な社会に良い影響を与えることは間違いありません。