地域電力は怪しいって本当?メリットや注意点を解説し真相に迫る!

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域密着型で電気供給サービスなどを実施している地域電力について調査した結果を紹介します。

地域電力と新電力との違いや「怪しい」と言われる理由・メリット・注意点を見てみましょう。

主な地域電力会社の一覧もご覧ください。

地域電力とは?新電力との違いについても解説

地域電力とは、エネルギーの地産地消を目標に掲げて運営されている電気事業を表す言葉で「地域新電力」とも呼ばれますが、当記事では「地域電力」で統一します。

地域電力会社というのは、地域の行政と事業者と地域住民などが新電力会社に共同出資を行い、エネルギーの地産地消を目的として地域密着型スタイルで運営される小売電気事業のことです。

2024年10月に100社を突破した地域電力と新電力はよく比較対象になりますが、どういう点が違うのかを見ていきましょう。

新電力とはどう違う?

新電力地域電力
定義新たに進出してきた電気事業者エネルギーの地産地消を目的とする電気事業者
主体電力調達・供給・小売地域内の再生可能エネルギー電気を調達・供給
主な目的従来の電力会社にないサービスの提供地域密着型のサービスを実施
発電手段自社調達・他社調達
対象エリア特定地域から全国会社がある地域
利益の使途自社・利用者への還元など地域への還元など

新電力と地域電力の運営方針などは会社によって異なりますが、全体としては上記に沿って運営されています。

両者の共通点は、発電手段が自社調達に限らないことと、従来の電力会社が提供していないサービスを実施する率が高いことです。

地域電力は怪しい?なぜそういった声が多いのか

地域の自治体と企業が設立・運営している地域電力に対して「怪しい」という意見もあります。なぜそういったネガティブな印象を与えているのでしょうか?

悪い評価がある主な理由を見ていきましょう。

運営の情報公開が不十分であるから

地域電力は一般の電力会社よりも規模が小さいため、情報発信力が乏しいのが現状です。

情報公開を十分にしていないために、その地域電力の運営方針やサービス内容を把握しにくいという側面もあります。

また、現代社会はネット検索などで情報収集する人が多いため、提供されている情報が少ないと不信感を与えやすいのです。

地域電力だと全国展開していない分利用者が少なく口コミ評価も少ないのでその地域電力がどんな会社なのかを判断しづらいというのも、実態を知らない人が悪い噂を立てる理由につながっています。

経営破綻の恐れが大きいから

地域電力は「従来の電力会社よりも経営が破綻しやすい」という点で忌避されるケースが多いです。

東京電力といった大手電力会社は、電力市場が変動しても倒産する危険性は極めて少ないです。

それに対し、地域電力は母体となる組織の資金力などが従来の電力会社と比べて極めて少ないので、2020年以降の電力市場価格高騰の打撃を受けて倒産した地域電力も少なくありません。

実際に、電力調達コストが急騰したことで、多くの地域電力が倒産や事業停止に追い込まれているのです。

供給体制が整っていない場合があるから

また、電力の供給体制が整備されていない地域電力もあることが、多くの人が利用をためらう原因になっています。

大手電力会社は電力の供給・調達手段を自社で行えるというのが設立の条件になっているので、供給体制が維持されやすいです。

地域電力は新電力と同様に電力の供給と調達を自社で行わなくてもいいルールなので、JEPX(卸電力市場)や地域の電気事業者から電力を調達しています。

しかし、JEPXや地元電気事業者の調達コストが急騰すると調達が難航するようになり、その結果供給を停止せざるを得なくなるという事態に陥る可能性があるのです。

それでも地域電力を選ぶ理由は?3つのメリットを紹介

怪しいと噂されていても地域電力を選ぶ人はどんな理由で選んでいるのでしょうか?

主なメリットを3つ紹介します。

  • 地域全体の経済循環を促進することができる
  • 地域への還元に貢献できる
  • 脱炭素社会の実現に向けて貢献できる

地域全体の経済循環を促進することができる

地域電力の主な目標は地産地消です。地域の自治体・企業と住民が協力し合って地域電力をもり立てることが、地域全体の経済循環の促進につながり、地域電力の主目的である「地域経済活性化」を実現できます。

2024年6月に一般社団法人ローカルグッド創成支援機構は、地域電力の現状について「地域電力の販売電力量は地域電力が増えると共に増加している」と発表しました。

しかし、労働人口が少なく、中には従業員がゼロという地域電力もあります。それらの地域電力は、地域外事業者に業務を外注している状態です。

この状態を打開するために地域人材を育てることで、恒久的に地域経済を循環させ、活性化した地域経済を維持できるようになるのです。

(出典:一般社団法人ローカルグッド創成支援機構「地域新電力の現状」

地域への還元に貢献できる

地域電力の目標である地産地消を実現できれば、地域還元に貢献できるというメリットがあります。

基本的に、地域で産まれた多くの物は中央都市や人口が多い地域に流れ、利益を得るシステムになっています。その方が確実に利益を得られるからです。

しかし、地域で産まれたものを他の地域に流していくのではなく、地域で産んで地域で消費することにより、地域で発生した利益は地域電力に支払われます。

その結果、地域経済が地域の中で循環するようになります。

「地域で産まれた電力の利益を地域住民が消費することで地域に還元する」というスタイルを確立することにより、地域還元に貢献できるのです。

脱炭素社会の実現に向けて貢献できる

地域電力会社のほとんどが掲げているコンセプトは、地域で産まれた再生可能エネルギーを発電に利用するなどにより、CO2排出量ゼロにすることです。

環境保護を訴える人が多い現在社会では、地域電力だけではなく世界各国の自治体・企業・国民が脱炭素社会を実現させたいという意識を持っています。

地域電力会社の多くは、再生可能エネルギー電力を供給したり、CO2の排出量を実質0にする効果が得られるグリーン電力証書などを発行したりするなどの取り組みを実施しているので、地域電力を利用することで脱炭素社会実現に貢献できます。

解約金が発生?地域電力利用時に気をつけるべき注意点

地域電力を利用する際にはいくつか注意するべきポイントがあります。代表的な注意点2つをご覧ください。

契約内容をしっかり確認する

地域電力は、地域住民の利用率を高めるために、従来の大手電力会社よりも安い電気料金やお得なサービスで電力供給を実施していることが多いです。

その結果、安い料金に釣られて契約してしまう人も少なくないのですが、契約内容によっては一定の契約期間が設定されており、契約期間内に解約すると解約金を取られることがあります。

自分がほしいサービスを実施しているなどの好条件に魅力を感じた地域電力でも、契約内容をしっかりと確認した上で契約しましょう。

電力料金の変動には気をつける

地域電力の多くはJEPXなどから電力を調達しているので、電力市場が高騰すると電力料金が一気に上昇し、安価とは言いがたい料金になってしまうことがあります。

電力料金の変動は地域電力以外の電力会社にも大きな影響を与えますが、その結果受けるダメージは大手ではない地域電力ほど多大で、最悪の場合倒産する可能性もあります。

電力市場はこまめにチェックし、地域電力の運営に影響しそうなほど変動した場合に対応できるように準備しておきましょう。

どんな地域電力がある?主な電力会社一覧

数多くの地域電力がそれぞれの地域電力で活動しています。

特に有名な地域電力会社と地域での脱炭素化を目指す企業の取り組みをご覧ください。

みんな電力

みんな電力は、本社を東京都世田谷区に構えている株式会社UPDATERが運営する地域電力会社です。

2015年4月に電力小売サービス「顔の見える電力」の提供をスタートさせました。

現在実施している主な電力系サービスは以下の通りです。

  • 家庭向け電力サービス
  • 法人向け脱炭素サービス
  • アーティスト電力

家庭向け電力サービスでは、日本各地の電気の生産者から届けられた再生可能エネルギーを届け、法人向け脱炭素サービスでは企業の脱炭素経営を支援しています。

ユニークなアーティスト電力は、アーティストとファンが再生可能エネルギー電気を通じてつながるという試みです。

アグリパワー

アグリパワーは2002年に設立された東北電力の子会社です。

福島県会津若松市に本社を構え、東北電力の会津若松市社管内にある水力発電所ダムに漂着する河川塵芥(草葉・流木類・生活廃棄物など)を有効活用した木質ペレット燃料・堆肥・オガコなどを製造していました。

しかし、原材料となる塵芥が予想より少なく、上記の事業継続が難しくなったため、アグリパワーは2009年2月に解散し、東北緑化環境保全株式会社に事業を継承しています。

出典:東北電力「株式会社アグリパワーの解散について」

まごころでんき

まごころでんきは、北九州若松区・遠賀郡を中心に活動している電器店グループで、以下のサービスを実施しています。

  • オール電化
  • 家電販売
  • 電気配線・工事
  • リフォーム・家まわり

オール電化サービスでは、地域の人が自宅に太陽光発電・蓄電池・エコキュート・IHクッキングヒーターなどを導入するサービス・サポートを行うと共に、スマート家電工事などを行っています。

広域に事業展開するのでなく、地域の電器店ならではの地域密着型スタイルを貫いている会社です。

アクティブエナジー

アクティブエナジーは2006年3月に奈良県奈良市で設立された企業です。設立当初は地域で電気・設備工事をしていましたが、20年の間に業績を拡大し、現在は以下の活動を行っています。

  • 一般家庭の電気・設備工事とリフォーム・イノベーション
  • 住宅用・産業用太陽光発電事業
  • 法人向け省エネコンサルティング
  • 酪農型ビジネスモデルの提案
  • 上記を結集した住宅・不動産の提供

電力供給という形ではなく、電気工事や太陽光発電事業などで地域の電力活性化に貢献しています。

出典:公式サイト

しんきん電力

しんきん電力という会社名称ではないのですが、株式会社エナーバンクと信金中央金庫が再生可能エネルギー電力の調達などを目標にし、実質「しんきん電力」と言える活動を行ってています。

脱炭素社会実現に向けたこの活動は「しんきんグリーンプロジェクト」と名付けられました。

エナーバンクが信金中央金庫と各信用金庫と連携し、CO2排出量と電力コストを削減したい中小企業に対し、企業に適した電力調達と環境価値の売買などを支援するという取り組みです。

出典:enerbank「信金中央金庫との再エネ電力の調達等に向けた連携について」

まとめ

地域電力は地産地消を目的にした地域密着型サービスを実施しており、サービスを利用することで地域活性化や脱炭素社会実現に貢献できるというメリットがありますが、反面注意点もあります。

地域電力と契約する場合には、注意するべき要素を把握した上で契約しましょう。

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この記事を書いた人

fuyuhome ライター

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