住民税を滞納するとどうなる?差し押さえはいつから・延滞金も解説

住民税は、地域社会の運営を支える重要な税金です。

しかし、予期せぬ事情で納付が困難になり、住民税を滞納してしまうケースも少なくありません。

「住民税を滞納したらどうなるの?」「いつまでなら滞納が許される?」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。

住民税の支払いが滞ってしまうと、ペナルティが課せられ、最悪の場合給与や財産が差し押さえられる事態にもなりかねません。

取り返しのつかない状態を避けるために、滞納後の流れやリスク、適切な対処法を理解しておくことが大切です。

住民税の滞納はいつまでならセーフ?滞納後の流れ

住民税の納期限は通常、年4回設定されています。

この納期限を1日でも過ぎた時点から、法的には「滞納」と見なされます。

「いつまでならセーフか」という明確な線引きはなく、納期限を過ぎたらすぐに自治体の徴収対象となると認識しましょう。

一般的な滞納後の流れと時期の目安は以下のとおりです。ただし、自治体や滞納額、これまでの納付状況によって前後はあります。

督促上・催告書が送付される(滞納20日以内)

住民税の納期限を過ぎると、通常は納期限から20日以内に督促状が発送されます。

これは地方税法で定められたものです。

督促状が届いても納付がない場合、さらに「催告書」や「差押予告通知書」が送られることがあります。

これらの通知は、滞納後1ヶ月から数ヶ月にかけて段階的に送付されることが多いです。

財産調査がされる(滞納1ヶ月以内)

督促状が発送されてから10日が経過すると、自治体は滞納者の財産を差し押さえることが法的に可能になります。

これに伴い、財産調査も開始されます。

財産調査では、預貯金口座の残高、所有する不動産や自動車の有無、さらには勤務先からの給与額などが詳しく調べられます。調査は地方税法に基づき行われ、金融機関などへの情報照会も可能です。

これは、差し押さえ可能な財産を特定し、滞納処分を進めるための法的根拠に基づいた手続きです。

差し押さえされる(滞納1ヶ月以内、実務上は数ヶ月後)

督促状が発送されてから10日を経過しても完納されない場合、自治体は法律に基づき財産を差し押さえなければならないとされています。

つまり、納期限から遅くとも約1ヶ月後には差し押さえの対象となります。

通常の借金と異なり、裁判所を通さずに直接差し押さえが可能な点が、税金滞納の最も大きな特徴です。

実際には、督促や催告を重ねた上で実行されることが多く、数ヶ月程度の猶予があるケースもあります。

そもそも住民税とは?

住民税は、私たちが住む都道府県と市区町村に納める地方税で、教育や福祉、ごみ処理など、身近な行政サービスを支える重要な財源です。

前年の所得に基づいて課税され、地域社会の費用を住民みんなで分かち合うという性質を持っています。

住民税は、主に「均等割」と「所得割」の2つの要素で構成されています。

・均等割: 

所得の金額に関わらず、すべての住民が定額で負担する税金です。

・所得割:

前年の所得金額に応じて負担する税金です。

この二つを合算したものが一年分の住民税になります。

住民税の計算方法

住民税の所得割は、前年1月1日から12月31日までの1年間の所得に基づいて計算されます。計算式は以下のとおりです。

住民税額 = (所得金額 – 所得控除額) × 税率 + 均等割額

住民税を構成する各要素は以下の通りです。

・所得金額: 

給与所得、事業所得など、さまざまな所得の合計額から必要経費(給与所得者の場合は給与所得控除額)を差し引いた金額。

・所得控除額: 

納税者本人やその家族の状況(扶養家族の有無、社会保険料の支払いなど)に応じて、所得から差し引かれる金額。

控除が多いほど、課税される所得が減り、住民税も安くなります。

・税率: 

所得割の税率は、10%(うち都道府県民税4%、市町村民税6%)が全国一律の標準です。

一部自治体では内訳が異なりますが、合計は同じです。

・均等割額:

所得の多少にかかわらず定額で課税され、都道府県民税、市町村民税を合わせた金額です。令和6年度からはこれらに森林環境税が加わり、標準で年額5,000円となります。

2025年度の東京都の場合は以下の通りです。

都民税1,000円 + 特別区民税3,000円 + 森林環境税1,000円 =年額5,000円

住民税の納付方法

住民税の納付方法は、個人の状況によって主に2種類あります。

・特別徴収(給与天引き):

会社が毎月の給与から住民税を天引きし、まとめて自治体に納付します。

会社員や公務員など、給与を受け取っている人の大半がこの方法で住民税を納めます。

納税者にとっては、納め忘れの心配がないのがメリットです。

毎年6月から翌年5月までの12回に分けて徴収されます。

・普通徴収: 

自治体から送付される納税通知書を使って、自分で金融機関やコンビニエンスストアなどで納付します。

自営業者やフリーランスの方、年金受給者の一部、年の途中で退職した方など、特別徴収されない人がこの方法で納めます。

通常、年4回(6月、8月、10月、翌年1月)に分けて納付します。

退職時の住民税に注意!

退職すると、特別徴収ができなくなるため、残りの住民税の支払い方法が変わります。

具体的な変更点は、退職する時期によって異なるので注意が必要です。

・1月1日~5月31日退職の場合:

 退職時に残っている住民税(退職した月以降の5月までの分)が、その月の給与や退職金から一括で徴収されます。

給与や退職金で不足する場合は、普通徴収に切り替わります。

・6月1日~12月31日退職の場合: 

この期間に退職する場合、退職月の住民税は給与から天引きされますが、翌月以降の住民税は原則として普通徴収に切り替わります

自治体から自宅に納付書が送られてくるので、自分で支払うことになります。

ただし、退職者が希望すれば、残りの住民税を最終の給与や退職金から一括徴収してもらうことも可能です。

退職後に収入が激減しても、前年の所得に応じた住民税は発生し、普通徴収に切り替わって自分で納める必要が生じます。この際、「こんなに税金がかかるのか」と驚く人も多いため、計画的な対応が大切です。

住民税の滞納によるリスク

住民税の滞納は、放置すると様々な深刻なリスクを伴います。

延滞金が発生する

住民税を納期限までに納めないと、納期限の翌日から延滞金が発生します。

延滞金は、滞納した税額、延滞した日数、そしてその期間に応じた年利率を使って計算します。

延滞金は、以下の基本式を用いて計算されます 。  

延滞金額 = 未納税額   ×(延滞日数 ÷ 365日) ×   延滞期間における年利率

この延滞金利率は、滞納期間によって2段階に分かれています。

1. 納期限の翌日から1ヶ月を経過する日までの期間

2. 1ヶ月を経過した日以降の期間

かつては一律の利率が適用されていましたが、現在の低金利環境を考慮し、納税者の負担を軽減するために「特例措置」が適用されています。

この特例措置の基準となるのが「延滞金特例基準割合」です。

これは、租税特別措置法第93条第2項に規定される「平均貸付割合」に年1%を加算した割合として定義されています

この特例措置により、2025年(令和7年)に適用される具体的な延滞金利率は以下のようになります。

1. 納期限の翌日から1ヶ月間: 

現在の延滞金特例基準割合(1.4%) + 1% = 2.4%

2. 1ヶ月経過後: 

現在の延滞金特例基準割合(1.4%) + 7.3% = 8.7%

これらの利率は、以前の固定利率(年7.3%/14.6%)と比較して大幅に低い水準に設定されており、低金利環境下での納税者の負担軽減が図られています。

これをもとに実際にどのくらいの延滞金が発生するのかを具体例で見ていきましょう。

住民税10万円を90日滞納した場合

最初の1ヶ月(30日間)の延滞金 

100,000円 × (30日 / 365日) × 2.4% = 197.26円 

(小数点以下切り捨てで 197円)

1ヶ月経過後(残りの60日間)の延滞金 

100,000円 × (60日 / 365日) × 8.7% = 1,429.58円 

(小数点以下切り捨てで 1,429円)

③ 合計額 (① + ②)

197円 + 1,429円 = 1,626円

延滞金の端数処理

延滞金には、以下のルールで端数処理が適用されます。

・延滞金の合計額③が1,000円未満の場合:延滞金は徴収されません(全額切り捨て)

・延滞金の合計額③が1,000円を超える場合:100円未満の端数を切り捨てて徴収されます

上記の例では、合計延滞金が1,626円なので、100円未満の端数である26円が切り捨てられ、実際に徴収される延滞金は1,600円となります。

財産が差し押さえられる

滞納が続き、自治体からの督促にも応じない場合、最終的には財産が差し押さえられます

これは、自治体が滞納者から強制的に税金を徴収するための「滞納処分」です。

差し押さえの対象となる財産は多岐にわたります。

・預貯金: 

銀行口座の預金が凍結され、引き出しや利用ができなくなります。

・給与: 

勤務先に連絡が入り、給与の一部が直接自治体に納められるようになります。

・不動産: 

土地や建物が差し押さえられ、最終的に公売(強制売却)にかけられる可能性があります。

・自動車: 

自動車が差し押さえられることもあります。

・その他: 

生命保険の解約返戻金や有価証券なども対象です。

差し押さえは、生活に大きな支障をきたし、特に給与の差し押さえは勤務先に滞納が知られる原因となります。

家族に滞納がバレる

住民税の滞納は、家族に知られてしまう可能性が高いです。

・郵便物: 

普通徴収の場合、納税通知書や督促状は自宅に郵送されます。

家族が郵便物を確認する際に滞納が発覚することがあります。

・電話や訪問: 

自治体の税務担当者から自宅に電話がかかってきたり、場合によっては職員が直接訪問してきたりすることもあります。

これにより、家族が対応して滞納が知られる可能性があります。

・給与の差し押さえ: 

給与が差し押さえられた場合、勤務先に連絡が入ることで、職場の同僚や上司、そして間接的に家族にも知られる可能性があります。

家族に滞納がバレることで、家庭内の関係にひびが入ったり、心配をかけたりする原因になるでしょう。

信用情報・ブラックリストへの影響はある?

結論から言うと、住民税の滞納は、直接的に個人の信用情報(いわゆるブラックリスト)には影響しません。

信用情報機関が管理しているのは、クレジットカードやローンなどの金融取引に関する情報です。税金の滞納はこれらとは異なるため、直接信用情報機関に登録されることはありません。

しかし、間接的な影響が出る可能性はあります。

例えば、預貯金が差し押さえられた場合、その金融機関との取引に影響が出る可能性はあります。また、住宅ローンや自動車ローンなど、金融機関が審査を行う際に税金の納付状況を確認することがあります。

この際に滞納が判明すると、返済能力に疑問を持たれ、ローンの審査に通りにくくなる可能性は考えられます。

住民税を滞納しそう・滞納した時の対応

住民税の納付が困難になった場合や、すでに滞納してしまった場合は、放置せずに早めに対処することが非常に重要です。

まずは自治体に相談!

最も大切なのは、お住まいの市区町村役場の税務担当部署にすぐに相談することです。自治体に連絡することで、状況に応じたアドバイスや解決策を提示してもらえます。

相談のメリット:

・延滞金の発生を抑制したり、猶予を受けたりできる可能性があります。

・差し押さえなどの強制的な滞納処分を回避できる可能性が高まります。

・納税の意思を示すことで、自治体も柔軟に対応してくれることがあります。

相談時の準備: 

納税通知書や督促状、現在の収入・支出状況がわかる書類、納付が困難な理由などを具体的に説明できるようにしておくと、スムーズに相談できます。

猶予制度・減免制度を活用する

自治体に相談することで、状況に応じて利用できる制度があります。

・徴収の猶予制度: 

災害、病気、失業、事業の廃止など、特別な事情で一時的に住民税の納付が困難になった場合に、徴収を猶予してもらえる制度です。

原則1年以内で、この期間は延滞金の発生が抑えられたり、差し押さえが猶予されたりします。

・換価の猶予制度: 

すでに財産が差し押さえられている場合でも、その財産の売却(換価)を猶予してもらう制度です。

換価されると事業や生活の継続が難しくなる場合に適用されることがあります。

・減免制度: 

失業や病気、災害などで所得が著しく減少したり、生活が困窮したりした場合に、住民税の一部または全部が減額・免除される制度です。

減免の基準や対象は自治体によって異なるため、お住まいの自治体で確認してください。

これらの制度は、ご自身で申請しないと適用されません。状況に当てはまる場合は、速やかに自治体に相談し、必要な手続きを行いましょう。

分割払いを活用する

一括での納付が難しい場合でも、自治体に相談すれば、無理のない範囲での分割払いに応じてくれることがあります。

分割払いのメリット:

・一度に大きな金額を支払う必要がなくなり、経済的な負担を軽減できます。

・納税の意思を示すことで、自治体との信頼関係を築き、滞納処分を回避しやすくなります。

・延滞金は発生し続けますが、全額を滞納するよりは、一部でも納付することで延滞金の増加を抑える効果があります。

分割払いの計画は、自治体と合意した上で、その計画通りに確実に納付することが重要です。計画が守られない場合、再び滞納処分に進む可能性もあります。

住民税の滞納に関するよくある質問

住民税の滞納について、よくある疑問にお答えします。

住民税を滞納すると勤務先にバレますか?

バレる可能性は非常に高いです。 

特に、滞納を放置すると、自治体が給与の差し押さえを行うために、勤務先に「債権差押通知書」を送付します。

この通知が届くと、勤務先はあなたが住民税を滞納していることを確実に知ることになります。

住民税の支払いに時効はありますか?

住民税にも「時効」はあります。

地方税法では、住民税の徴収権の時効は5年と定められています。

しかし、この時効は非常に厳しく、自治体が督促状の送付や財産調査などの徴収活動を行うたびに時効が「中断」し、期間がリセットされます。

そのため、自治体が税金を徴収する義務を放棄することは基本的にないため、実際に時効が成立して滞納していた税金を支払わずに済むケースは極めて稀です。

時効の成立を期待して滞納を続けるのは、現実的ではありません。

住民税を踏み倒すことはできますか?

現実的に「踏み倒す」ことはほぼ不可能です。

自治体は税金を徴収する強力な権限を持っており、時効の中断措置も頻繁に行います。

滞納を続ければ、最終的には給与や預貯金、不動産などの財産が強制的に差し押さえられ、税金に充当されてしまいます。

どこかに財産を隠しても、自治体は法律に基づいて調査することが可能です。また、自己破産をしても住民税などの税金は「非免責債権」とされ、支払義務が免除されることはありません。

延滞金も増え続け、生活に大きな支障をきたすだけなので、「踏み倒す」という選択肢は避けるべきです。

まとめ

住民税の滞納は、延滞金の発生から始まり、財産の差し押さえ、家族への発覚、そして間接的ながら今後の金融取引への影響など、様々なリスクを伴います。

特に、通常の借金とは異なり、裁判所を通さずに自治体が直接差し押さえを行える点は、税金滞納の大きな特徴であり、より迅速な対応が求められます。

もし住民税の納付に不安がある場合や、すでに滞納してしまった場合は、絶対に放置せず、できるだけ早くお住まいの自治体の税務担当部署に相談しましょう。

猶予制度や分割払いなど、解決に向けた道筋が見つかるはずです。

早期の行動が状況を悪化させないための鍵となります。

SHARE

この記事を書いた人

takai ライター

前の記事へ 次の記事へ

関連記事