
「アファーマティブアクションとは?」
「何が問題なんだろう…」
アファーマティブアクションとは、性別や人種などで不利益を被っている集団に対し「不利益を解消する措置」のことです。
2023年6月29日、アメリカ連邦最高裁判所は、大学の入学選考において人種を明示的な採点要素として扱うアファーマティブアクションを「合衆国憲法第14条修正案の平等保護条項に違反する」として違憲としました(Students for Fair Admissions v. Harvard / UNC)。
この判決以降、多くの名門大学が自己表現文や地域・経済状況など「人種を直接的に記載しない背景情報」を重視する形に入学選考を改訂し、人種を「暗黙的に」判断する余地を狭めています。
2024年以降の実務報告では、南西部や南部の一部州では、人種を考慮しない代わりに、地域・経済的不利を重視する新しい配慮が導入されている一方で、入学者層の多様性が縮小する可能性を指摘する声も出ています。
この記事では、アファーマティブアクションとは何か、歴史、海外と日本の取り組み事例、問題点や課題、SDGsとの関係を解説します。
目次
アファーマティブアクションとは?問題点をわかりやすく解説

アファーマティブアクションとは、人種や肌の色、宗教、性別、出身国などを理由とした差別の解消に向け、積極的な措置をとることです。
「アファーマティブ」には「積極的な」「肯定的な」という意味があり、制度や仕組みなどにおいてより踏み込んだ解決策を打ち出すことを言います。
アファーマティブアクションは、主に次のような場面で行われています。
- 大学入試など、教育機関の入学選考
- 採用選考など、就職の機会
- 役員の就任など、昇進の機会
そして、主に次のような手段が用いられています。
- クオータ制(割当制):人種や性別、宗教を基準に一定の比率で人数を割り当てる制度
- 加点や減点:試験において、人種や性別などを基準に一定の点数を加えたり減らしたりする措置
- その他:特別な配慮やサービスなど
アファーマティブアクションはこれまでに、アメリカをはじめ、ヨーロッパ諸国、北欧諸国、日本などで行われています。
アファーマティブアクションは日本語で「積極的格差是正措置」
日本ではアファーマティブアクションを一般的に「積極的格差是正措置」と訳しています。他には、「積極的差別是正措置」という呼び方もあります。
「格差」と「差別」の意味の違いはありますが、いずれも人種や性別などによる社会の中の「差を解消する措置」という内容は同じです。
日本のアファーマティブアクション
日本のアファーマティブアクションの1つに、女性の社会参画を進める「ポジティブ・アクション」があります。
ポジティブ・アクションは、政府が主な政策と位置づけている取り組みであり、次のように定義されています。
現在の社会では、個人の能力や努力とは関係のないところで男女の格差があるのが実情です。
この格差をなくすため、男女が平等な機会を持てるように女性に特別な配慮を一時的に行うことがこの政策の目的です。
海外におけるアファーマティブアクションの別名
自国においてアファーマティブアクションを行う場合、別の呼び方を使用している国もあります。
日本の「ポジティブ・アクション」も一例です。その他の国は、「差別」や「特別扱い」などの言葉を使うほか、「平等であること」を表すなどして名付けています。
■アファーマティブアクションを自国で行うときの呼び方
- アファーマティブアクション(affirmative action)…アメリカ
- 雇用の均等(employment equity)…カナダ
- 積極的/肯定的な差別(positive discrimination)…ドイツ、フランス、スウェーデン
- ポジティブ・アクション(positive action)…イギリス、イタリア、オランダ、日本など
- 積極的な/肯定的な特別扱い(positiv särbehandling)…スウェーデン
なお、「アファーマティブアクション」という言葉がないわけではなく、一般的に「積極的に差別や格差を解消していく取り組み」という意味で使われています。
日本のアファーマティブアクションの問題点
日本におけるアファーマティブアクション(ポジティブアクション)は、主に女性の社会進出を支援する目的で導入されていますが、いくつかの問題点があります。
逆差別と捉える意見もある
まず、「逆差別」と感じる声が一部にあり、性別だけで採用や昇進に差をつけることへの反発が見られます。特に大学入試や昇進などで、優遇措置の対象外となった人の間では不満や分断が深まり、社会的な対立を招く要因になりやすいです。
また、アファーマティブアクションによって登用された人材が「実力以外で優遇された」と見なされることで、職場での立場が不安定になる懸念もあります。
能力や成績が優れていても人種や性別などの属性によって評価されなければ、真の意味で平等とは言えません。
アファーマティブアクションを進める際は、多くの人が納得する制度にする必要があるでしょう。
組織によって対応状況が異なる
企業や組織によって対応のばらつきが大きく、制度が形骸化しているケースも少なくありません。
積極的に取り組む組織がある一方で、制度の導入方法や運用基準が統一されておらず、表面的な対応に留まっているのです。実際に数値目標の達成のみを重視し、形式的に多様性を確保するだけで、実質的な機会の平等や環境改善が伴わないケースもあります。
こうした対応のばらつきは、組織間の格差を生む要因となっています。
制度の目的や意義が十分に理解されないまま進められると、新たな偏見や格差を生むおそれがあるため、制度設計と周知が重要です。
アファーマティブアクションの歴史
【ホワイトハウスの閣僚室で雇用機会均等に関する大統領委員会の会合に出席するジョン・F・ケネディ大統領とリンドン・B・ジョンソン副大統領】
では、アファーマティブアクションは、いつどこで生まれたのでしょうか。歴史を簡単に振り返ってみましょう。
1961年の大統領令で言及されたのが始まり
アファーマティブアクションの始まりは、1961年のアメリカであるといわれています。
1961年、ケネディ大統領は大統領令(第10925号)を発し、「連邦政府から事業を請け負った事業者は、人種、信仰、肌の色、国籍を理由に従業員や応募者を差別しないこと」、また「これを保証するために積極的な措置(アファーマティブアクション)を取る」としました。
1964年には、公民権法の中で、連邦政府が援助する事業や雇用の場面において、人種や性別などによる差別を禁止しています。そしてこの法律に基づき雇用機会均等委員会(EEOC)が設置され、差別のない雇用を実現するための指針が策定されました。
こうして公共事業では、これまで採用されにくかったアフリカ系アメリカ人をはじめとした少数派の労働者を積極的に雇用するなどの取り組みが全米で進められます。
1990年代に反アファーマティブアクションが活発に
アファーマティブアクションが雇用の場面で進められると、大学や大学院の入学選考時といった教育の分野にも広がっていきました。
しかし1990年代以降になると、特定の人種に対する不当な優遇であり、逆差別であるとして批判を受けることが増えていきます。
例えば1996年、カリフォルニア州は州民投票を行い、州憲法改正案「プロポジション209」を可決しました。
内容は、「公的教育、政府契約・公的雇用での人種、性別、肌の色、民族、国籍に基づく優遇措置を禁止する」というものです。1998年には、ワシントン州でもほぼ同じ内容の州憲法改正案が可決されています。
カリフォルニア州の州憲法改正案可決については差し止めを求める訴えも起きましたが、連邦最高裁はこれを退けました。
格差を解消する取り組みは他国でも活発になる一方で、反アファーマティブアクションが起きるという状態は現在も続いています。
海外におけるアファーマティブアクションの取り組み事例
アメリカから始まったアファーマティブアクションは、国境を越えて世界に広がっています。アメリカを含めた5カ国の事例を見ていきましょう。
アメリカ
アメリカでは、先述の通り1964年の公民権法から、アファーマティブアクションが具体的に進められています。
この法により設置された雇用機会均等委員会(EEOC)は、法律の解釈や適用についてのガイドライン[ii]を策定しているほか、差別の防止や申し立てがあった際に調査するなどの取り組みを行っています。
大学や大学院の入学選考におけるアファーマティブアクションは、1970年代から行われるようになりました。
具体的には、少数派や女性の入学枠を別に設けたり、試験結果に加点・減点したりする方法です。過去にはハーバード大学のほか、スタンフォード大学やコロンビア大学、ミシガン大学などで実施されました。
一方で、アリゾナやカリフォルニア、フロリダを含めた9州では禁止されています。[iii]
EU(欧州連合)
EU(欧州連合)では、1990年代から差別をなくす取り組みが始められました。
2000年には、「人種・民族平等待遇指令」や「一般雇用平等待遇指令[iv]」を採択し、人種や民族、宗教、信念、障がい、年齢、性的嗜好に基づく待遇の差別を禁止しています。
EU欧州議会は、域内の上場企業に一定の比率で女性の取締役を登用することを求める「性別バランス指令(Gender Balance on Corporate Boards Directive)」を2022年に採択しました。
この指令は、規模の大きなEU上場企業に対し、非業務執行取締役の40%以上、または全取締役の33%以上を少数派の性が占めるよう求めるものです。加盟国は2024年12月28日までに国内法化を完了するよう求められており、2025年時点の報告では、ドイツやフランスなど多くの国が法化を完了しましたが、一部の国では遅延や緩和措置が認められています。企業側は2026年6月30日までに指令の目標を満たすことが求められ、2025年までの統計では、EU全体の上場企業の女性取締役比率は約36%前後と報告されています。
フランス
フランスでは、共和国憲法の基本理念に「フランスは、出自、人種または宗教の差別なく、すべての市民の法の前の平等を保障する」と掲げています。
また、「選挙による任務、職務、職業的、社会的な要職に対する女性と男性の平等な参画は、法律により促進される」とし、人種などの差別を禁じているほか、女性と男性の平等な社会参画を推進しています。
特徴的な取り組みとして、「男女同数制」(フランス語では「パリテ」と言う)があります。
多くの国が採用している「クオータ制」は、一定の割合を女性に割り当てる仕組みですが、その比率は各々異なります。
一方「男女同数制」は、その言葉通りに男女同数であり比率は変わりません。
現在、男女同数制は、企業の取締役会や選挙の候補者枠において実施されており、2022年時点では、「最大手上場企業の取締役会に占める女性の比率」は45%と目標の半数に迫っています。[vi][vii]
スウェーデン
スウェーデンでは、2003年以降、政府が大学入学選考において男女の進学率を均等化するアファーマティブアクションを一部の大学に認めてきました。
しかし、この制度が男子希望者に過度な優遇を生み、結果的に「不平等」を助長しているとの批判を受け、政府は2010年にこの措置を撤廃しています。
その後も、高等教育進学者の多くは女性であり、2023年の統計では、3年以上の大学・大学院レベルの学位を有する者が女性のほうが男性より多く、2024年の大学・大学院進学開始者のうち女性の割合が依然高い状況が続いています。
韓国
韓国では、2020年代に入っても女性の就業率は中高水準で推移していますが、依然として男女の賃金格差が大きく続いています。
2024年のデータによると、韓国女性の時間当たり賃金は男性の約71%にとどまり、OECD加盟国の中で最も大きな格差を維持しています。
2023年時点で賃金格差は約29%(女性の収入は男性の71%相当)と、2018年時点の約34%からやや縮小しているものの、OECD平均の約11%と比べると依然として大きな差があります。
低賃金層の女性の割合も男性より高く、2024年の統計では、時給の2分の1程度以下の低賃金労働者に占める女性の割合が男性の約2倍となっており、雇用の質の格差が解消されていないことが指摘されています。
韓国では、大韓民国憲法の中で「すべての国民は法の下に平等である。何人も性別・宗教または社会的身分により政治的・経済的・社会的・文化的生活のすべての領域において差別を受けない(第11条1)」としています。
また、「男女差別禁止法」や「雇用上年齢差別禁止法」などにおいて、差別の禁止を個別に規定しています。
具体的な積極的雇用改善措置(アファーマティブアクション)としては、一定の人数以上を雇用している企業や公共機関に「男女勤労者の現況報告書」を提出することを義務付けているほか、女性の雇用や管理職の比率が同種産業の平均値の6割に達しない事業主に、積極的雇用改善措置計画書の提出を求めています。
「2023年女性経済活動白書」によると、2022年の女性の就業率は52%と2012年から4.3%上昇しています。
また、時間当たりの女性の賃金は男性の70%であり、2012年の64.8%から差は縮小しました。[xiii]就業率や賃金の面では、男女の格差は小さくなる傾向にあります。
日本におけるアファーマティブアクションの取り組み事例
日本におけるアファーマティブアクションとして、「男女共同参画基本計画」と「障がい者に対する差別解消」について取り上げます。
日本のジェンダーギャップ指数は、世界125位(2023年)と大きく遅れを取っています。
また、障がい者への差別については、就労や教育、生活支援の整備が課題です。それぞれの取り組みをアファーマティブアクションの視点から見ていきましょう。
男女共同参画基本計画
■成果目標(一部抜粋)

男女共同参画基本計画とは、男女共同参画社会基本法において定義されている「男女共同参画社会」をつくるための必要な施策をまとめたものです。
男女共同参画社会とは、「男女が平等に社会のあらゆる分野に参画する機会を持つ社会」です。
男女共同参画社会基本法では、男女間の格差を改善するために必要な範囲内で、男女のいずれか一方に対して機会を積極的に提供する、積極的改善措置(ポジティブ・アクション)が認められています。
この積極的改善措置などにより、各分野に設けられた成果目標を達成する計画です。具体的には、次のような成果目標が設定されています。
男女共同参画基本計画には合計11分野があり、それぞれ「施策の基本的方向」「具体的な取組」が示されています。詳しい内容については、男女行動参画局「第5次男女共同参画基本計画」のサイトで確認できます。
障がい者に対する差別解消
■障がい者に対して合理的配慮が行われない場合、差別に当たるか

2021年6月、障がいを理由とする差別を解消するための支援措置を強化する改正障害者差別解消法が公布されました。
この法律には、事業者が障がい者に合理的な配慮をすることを義務付けているほか、障がいを理由とした差別を解消するための支援措置を強化することが盛り込まれています。
合理的配慮とは、障がい者でない人には簡単に利用できても、障がい者にとっては難しいため活動が制限される際に行われる配慮のことです。
具体的には次のような行為を指します。
- 意思を伝え合うために絵や写真のカードやタブレット端末などを使う
- 段差がある場合に、スロープなどを使って移動する
- 障がい者から「自筆が難しいので代筆してほしい」と伝えられたとき、問題ない書類であれば、意思を十分に確認して代筆するなど
2022年11月、障がいを理由とする差別に対する国民の意識を調査した「障害者に関する世論調査」が行われました。
「障がい者に対して合理的配慮が行われない場合、差別に当たるか」という質問に、「差別に当たる場合がある」と答えた人は64.7%と半数を超えました。
アファーマティブアクションに当てはめてみると、障がい者への合理的配慮は、差別の解消につながる1つの積極的格差是正措置と言えるでしょう。
日本では、性別や障がい者以外にも多くの差別が存在しています。これを解消する手段として、アファーマティブアクションが1つの選択肢になっています。
次からは、アファーマティブアクションの問題点や課題を見ていきましょう。
アファーマティブアクションの賛否・課題
冒頭でも伝えたように、2023年6月29日、アメリカの連邦最高裁判所は、大学の入学選考において人種を考慮するアファーマティブアクションを違憲としました。
入学選考におけるアファーマティブアクションは逆差別だとする訴訟はこれまでありましたが、条件付きで継続が認められてきました。
しかし、これまで賛否が分かれていたのは事実です。この判決は、アファーマティブアクションの肯定派と否定派との間により大きな議論を巻き起こす結果となりました。
アファーマティブアクションは入学選考だけではなく、就職や昇進などの場面でも行われています。広い意味でのアファーマティブアクションについて、肯定派と否定派の考える「平等」の観点から問題点や課題を確認します。
肯定派
肯定派は、アファーマティブアクションを「相対的平等」と捉えています。相対的平等とは、差異のある各人を均一に取り扱うことはかえって不合理な結果を生むこともあるため、差異を考慮した取り扱いを認めるべきだという考え方です。
ただし、その取り扱いが合理的であるのか、理にかなっているのかを判断することに難しさがあります。アメリカでの入学選考の方法や、日本の障がい者への合理的配慮がその例です。
「合理的である」ことの線引きをどこにするのかが、アファーマティブアクションの課題です。
否定派
否定派は、アファーマティブアクションを「絶対的平等」と捉えています。絶対的平等とは、各人の差異は考慮せず、すべての人に対して同じ取り扱いをすることが平等であるという考え方です。
ただし、この平等は差別や格差を広げることも事実です。とはいえ、相対的平等に基づく取り扱いにより優遇される人がいる一方で、そうでない人たちは同じ機会に恵まれないので「機会の平等」がありません。否定派はこれを逆差別と捉えています。[xiv]
「機会の平等」とは何かという問いに今のところはっきりした正解を見つけられていないことが、アファーマティブアクションの問題と言えるでしょう。
アファーマティブアクションに関するよくある質問
ここでは、アファーマティブアクションに関するよくある質問についていくつか紹介します。
アファーマティブアクションとポジティブアクションの違いは?
アファーマティブアクションとポジティブアクションは、基本的に同じ考えに基づいた施策です。前者は主にアメリカなどで使われる用語で、人種や性別などを理由に差別されてきた人々への是正措置を指します。
一方、ポジティブアクションは日本で多く使われる言葉で、特に女性の雇用や昇進を支援する取り組みとして知られています。つまり、対象や表現の違いはありますが、本質的な目的は共通しています。
アファーマティブアクションは憲法で禁止されている?違憲?
日本国憲法第14条では「すべて国民は法の下に平等」と定められていますが、アファーマティブアクションは「実質的平等」を実現するための手段とされています。
そのため、形式的平等を超えた積極的是正措置として、憲法上違憲とはみなされていません。
ただし、特定の集団を優遇しすぎると逆差別に当たる可能性があるため、内容や運用には慎重さが求められます。アメリカでは一部が違憲と判断され、議論が続いています。
アファーマティブアクションはなぜ女性支援に使われるの?
女性は歴史的に社会的・経済的に不利な立場に置かれ、雇用や昇進の機会に格差がありました。
アファーマティブアクションは、こうした構造的な不平等を是正するために導入され、特に女性の採用・管理職登用などで活用されています。
能力があってもチャンスが与えられない状況を改善することが目的であり、男女平等の実現やダイバーシティ推進の観点からも重要な取り組みとされています。
アファーマティブアクションは法的に義務ですか?
アファーマティブアクションの法的義務性は国や地域によって大きく異なります。
アメリカでは連邦政府と契約する企業に対して一定の取り組みが義務付けられていますが、民間企業全体への強制力はありません。
日本では法的義務はなく、男女雇用機会均等法でポジティブアクションが推奨される程度に留まっています。
ダイバーシティとアファーマティブアクションの関係は?
ダイバーシティとアファーマティブアクションは密接に関連していますが、異なる概念です。
アファーマティブアクションは不利な立場にある集団への積極的是正措置であり、具体的な優遇策を伴います。一方、ダイバーシティは多様性を尊重し、さまざまな背景を持つ人々が活躍できる環境を目指す広い概念です。
アファーマティブアクションはダイバーシティ実現のための一つの手段として位置づけられています。
アファーマティブアクションとSDGs
最後に、アファーマティブアクションとSDGsの関係を確認します。
アファーマティブアクションは、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の中でも、特に「ジェンダー平等(目標5)」「教育の機会均等(目標4)」「減少する不平等(目標10)」と深い関係を持っています。
2023年以降の国連・各国政府の報告では、女性議員のクオータ制の導入や、障がい者・マイノリティのための教育支援プログラム、少数グループの雇用促進策など、アファーマティブアクションに近い施策がSDGsの進捗を向上させる手段として紹介されています。
目標4「質の高い教育をみんなに」
教育の分野においてジェンダー格差をなくし、障がい者や少数派などが教育を平等に受けられるようにする
目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
政治、経済、公共の場での意思決定において、女性の参画と平等なリーダーシップの機会を確保する
目標10「人や国の不平等をなくそう」
年齢、性別、障がい、人種、民族、出自、宗教、経済的地位にかかわらず、すべての人々が社会的、経済的、政治的に参加する力を与える
日本においても、内閣府が発表する「SDGs達成に向けた取組」の最新報告では、女性の政界・経済界での参画促進や、障がい者雇用の拡大など、差別の解消と平等な機会の創出を目的とした政策がSDGsの目標達成に貢献していると評価されています。
まとめ
アファーマティブアクションは「積極的な格差是正措置」と訳され、人種や肌の色、宗教、性別、出身国などを理由とした差別を解消するために積極的な措置をとることを言います。
主に入学選考や採用選考、役員就任などの場面で、一定の比率で人数を割り当てるクオータ制や、試験を加点・減点する方法などで行われています。
アファーマティブアクションは各国で取り入れられていますが、日本では男女行動参画基本計画や障がい者に対する差別解消などの取り組みに採用されています。
ただし、不平等を解消するための配慮が合理的であるのか、機会の平等とは何かという疑問が残るところに、アファーマティブアクションの問題点や課題があります。今後、これらの問題点や課題を議論していく必要があるでしょう。
<参考文献>
[i] ポジティブ・アクション | 内閣府男女共同参画局
[ii] EEOC Guidance | U.S. Equal Employment Opportunity Commission
[iii] 人種を考慮した入学選考は違憲 米連邦最高裁、従来の判断覆す – BBCニュース
[iv] 人種・民族平等待遇指令(Council Directive 2000/43/EC of 29 June 2000 implementing the principle of equal treatment between persons irrespective of racial or ethnic origin)、一般雇用平等待遇指令(Council Directive 2000/78/EC of 27 November 2000 establishing a general framework for equal treatment in employment and occupation)
[v] 社外取締役の4割女性に EU、上場企業に義務化 – 日本経済新聞 2022年11月23日 20:25、「【EU】上場企業取締役のジェンダーバランスを改善する指令の制定」外国の立法 No.295-2(2023.5) 国立国会図書館 調査及び立法考査局
[vi] 特集1女性の政治参画を進める「フランスからの示唆──政治による男女平等の推進」糠塚康江著 学術の動向 2023.2、
[vii] 取締役会の女性比率割り当て法案、成立へ働き掛け=欧州委員長 | ロイター
[viii] 各国憲法集(11)スウェーデン憲法【第2版】 2021年3月 国立国会図書館調査及び立法考査局
[ix] Benchmarking gender gaps, 2023 – Global Gender Gap Report 2023 | 世界経済フォーラム
[x] 「女性議員の割合、2021年は31.6%に」11/03/2022 OECD
[xi] スウェーデン、大学入試における差別是正措置を撤廃へ 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
[xii] 日本とスウェーデンにおける高等教育の現状と課題 -博士号を取り巻く環境-ストックホルム研究連絡センター 山下史恵著
[xiii] 雇用労働部と女性家族部、女性経済活動白書を創刊(韓国:2024年1月)|労働政策研究・研修機構(JILPT)
[xiv] 法務省「ルールづくり(ルールの在り方を考える)」指導案(4)大学入試のアファーマティブ・アクションについて考えよう
この記事を書いた人
池田 さくら ライター
ライター、エッセイスト。メーカーや商社などに勤務ののち、フリーランスに転身。SDGsにどう取り組んで良いのか悩んでいる方が、「実践したい」「もっと知りたい」「楽しい」と思えるような、分かりやすく面白い記事を書いていきたいと思っています。
ライター、エッセイスト。メーカーや商社などに勤務ののち、フリーランスに転身。SDGsにどう取り組んで良いのか悩んでいる方が、「実践したい」「もっと知りたい」「楽しい」と思えるような、分かりやすく面白い記事を書いていきたいと思っています。
