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AIが発展した社会はどうなる?今後の見通しや生き抜くための対策も

近年、AI(人工知能)という言葉がニュースやメディアでよく取り上げられるようになり、私たちの生活の中でも身近なものになっています。AIは、音声認識機能搭載のスマートフォンや自動運転車など、色々な場面で活用されており、さまざまなものをより便利で効率的にするために活用されています。

今後、さらにAIが発展した社会はどうなるのでしょうか?今後の見通しや生き抜くための対策などを、わかりやすく解説します。

目次

AIの歴史

AI(人工知能)という概念が明確に定義されたのは、1956年にアメリカの計算機学者ジョン・マッカーシーによります。彼が初めて「人間の脳に近い機能を持ったコンピュータープログラム」という言葉でAIを定義しました。

まずは、AIについて、どのようなものか確認してから、その歴史を見ていきましょう。

そもそもAIとは

【AIを構成する分類図】

AI(人工知能)とは、英語の「Artificial Intelligence」の略称で、人間の知能や認知能力を模倣した、機械やコンピュータの技術のことです。AIは、学習、推論、問題解決など人間の知的な活動のような作業を行うことが可能で、さまざまな分野で活用されています。

AIを構成する3つの柱として、

  • 機械学習(マシンラーニング)
  • ニューラルネットワーク
  • 深層学習(ディープラーニング)

がありますが、ここでは内容を簡単に把握しておきましょう。

機械学習:経験から学ぶ賢いAI

機械学習(マシンラーニング)は、AIが経験から学習し、自分で判断できるようになる技術です。具体的には、

  • 教師あり学習:コンピュータに入力データとそれに対応する正解ラベルを与えて学習させる
  • 教師なし学習:正解ラベルを与えずにデータを解析し、パターンや構造を見つけ出すことを目的とする学習
  • 強化学習:AIが環境とのやり取りを通じて学習を行い、報酬を最大化するような行動を学習する

といった方法を通じて、大量のデータを与えて学習することで、そこに潜む法則やパターンを見つけ出します。これにより、新たなデータに対する予測や判断を行うことができます。画像認証、スパムメール検知などが活用例です。

ニューラルネットワーク:脳の仕組みを模倣

ニューラルネットワークは、人間の脳の神経回路を模倣した構造を持つ機械学習の一種です。複数のニューロン(ノード)が層状に結合され、信号の伝達や処理を行います。

ニューラルネットワークは、入力層、中間層(隠れ層)、出力層から構成され、入力データを受け取り、処理を行って結果を出力します。また、学習データを使って重みやバイアスを調整し、入力データと正解データの間の誤差を最小化するように学習します。

この学習過程を通じて、ニューラルネットワークはパターンや関係性を抽出し、未知のデータに対しても適切な予測や分類を行うことが可能となります。顔認識、音声認識などが活用例です。

深層学習:AIの飛躍的進化を支える技術

深層学習(ディープラーニング)は、多層のニューラルネットワークを用いて高度な学習を行う機械学習の一種です。通常のニューラルネットワークよりも深い(多くの層を持つ)構造を持ち、膨大なデータから特徴を自動的に学習することが可能です。

ディープラーニングは、階層的な特徴抽出と表現学習によって、複雑なパターンや関係性を抽出し、高度な認識や予測を行うことができます。画像や音声、テキストなどのデータを扱うさまざまなタスクに応用され、高い精度と汎用性を持つことが特徴です。

自動運転、医療診断、チャットボットなどに利用されています。

【関連記事】ディープラーニングとは?仕組みやメリット・デメリットと実用例の紹介

【深層学習の仕組み】

近年、機械学習、ニューラルネットワーク、ディープラーニングの3つの技術が組み合わさることで、AIは驚異的な進化を遂げています。

AIの目的は、人間の能力を拡張し、より効率的かつ創造的な活動を支援することです。続いてはAIの歴史を、過去に起きた「人工知能ブーム」から見ていきましょう。

【関連記事】ChatAIとは?仕組みやメリット・デメリット、種類、今後の課題も

【人工知能(AI)の歴史】

第一次人工知能ブーム

1950年代から1960年代にかけて、AIの研究が本格化し、第一次人工知能ブームが訪れました。この時期には、初期のAIプログラミング言語推論システムが開発され、AIの基礎が築かれました。しかし、当時のコンピュータの性能やデータ量の制約により、実用的なAIの実現には至りませんでした。

※AIプログラミング言語

AIを開発する際に利用されるプログラミング言語。Python、R、Javaなどが代表的。特に、PythonやRが特に機械学習やディープラーニングの分野で広く使われている。

※推論システム

与えられた事実や知識を元に、論理的な推論や推測を行うシステム。人工知能(AI)の一分野であり、論理や知識ベースの手法を用いて問題解決や意思決定を支援する。主に、前向き推論(Forward Chaining:与えられた事実やルールから結論を導き出す方法)と後ろ向き推論(Backward Chaining:目標となる結論から逆向きに推論を行い、最終的に与えられた事実やルールにたどり着く方法)から推論を行う。

第二次人工知能ブーム

1980年代から1990年代にかけて、第二次人工知能ブームが訪れ、AIの研究が再び盛んになりました。専門家システムや専用ハードウェアの開発が進み、AIの応用範囲が拡大しました。しかし、一部の過大な期待や技術的な限界により、再びAIの発展は停滞しました。

第三次人工知能ブーム

2010年代以降、第三次人工知能ブームが到来し、AI技術の急速な発展が見られます。深層学習や機械学習の進化により、画像認識や自然言語処理などの分野で驚異的な成果が得られるようになりました。AIの応用範囲はますます広がり、様々な産業や社会分野で活用されています。

現在、AI研究はさらに発展を続けており、AIはますます私たちの生活に身近なものになりつつあります。今後、AIはどのような進化を遂げ、私たちの生活にどのような影響を与えるのか、世界中で期待が高まっています。*1)

AIの現状

AIは現代のテクノロジーの中心的存在となり、私たちの生活や仕事に革新をもたらしています。では、AIが具体的に何ができるのか、どのような場面で活躍しているのかを見ていきましょう。

AIが得意なこと

AIは、人間よりも高速かつ正確に情報を処理し、膨大な量のデータを分析することができます。また、人間にはない学習能力を持ち、経験を積むことで精度を向上させられます。

【社会的課題と人工知能への期待】

もう少し具体的に見ていきましょう。

画像認識・音声認識

AIは、人間の目や耳よりも高い精度で画像や音声を認識することができます。例えば、顔認証や音声翻訳などの技術に活用されています。

自然言語処理

AIは、人間の言葉を理解し、処理することができます。これは、チャットボットや音声アシスタントなどの技術に活用されています。

機械学習による診断・予測

AIは、大量のデータから法則を学習し、将来の予測や判断を行うことができます。この特徴から、医療診断や金融予測などの技術にAIが活用されています。

ロボット制御

AIは、ロボットを制御し、複雑な動きをさせることができます。このことから、手術支援ロボットや自動運転車などの技術にAIが活用されています。

AIが活躍する場面

現在AIは、社会のさまざまな分野で活躍しており、私たちの生活を支えています。分野別に具体的な例を見ていきましょう。

医療分野

医療分野では、AIが医療診断や治療計画の立案、創薬支援などに活用されています。CT画像から病変を自動的に検出したり、患者の症状や病歴に基づいて最適な治療法を提案したりすることができます。

金融分野

金融分野では、AIが不正検知、リスク管理、投資判断などに活用されています。過去の取引データから不正な取引を検出したり、市場の動向を分析して投資判断を支援したりすることができます。

製造業

製造業などの産業分野では、AIが製品の品質検査、生産ラインの自動化、ロボット制御などに活用されています。製品の外観を検査して不良品を検出したり、生産ラインの稼働状況を監視して異常を検知したりすることができます。

流通業

流通業では、AIが需要予測、商品陳列、顧客分析などに活用されています。過去の販売データから需要を予測し、最適な在庫量を決定したり、顧客の購買履歴を分析して商品陳列を最適化したりすることができます。

サービス業

サービス業では、AIが顧客対応、音声翻訳、チャットボットなどに活用されています。顧客からの問い合わせに自動的に回答したり、異なる言語を話せる音声翻訳を提供したりすることができます。

AI技術は、今後もより進化し続けると考えられます。将来的に、AIはさらに多くの分野で活躍し、私たちの生活をより便利で豊かにすることが期待されています。*2)

2024年時点でのAIの市場規模

ここまで見てきたように、AIは急速に進化し、私たちの生活や社会に深く浸透してきています。では、2024年時点での国内外のAI市場の規模はどのようになっているのでしょうか。

ここでは、最新の調査データをもとに、AIの市場動向を確認していきます。

生成AIの市場規模は急速に拡大中

メタバース総研※の調査によると、2024年時点での世界の生成AI※の市場規模は約3.5兆円に達すると予測されています。一方、国内市場は約7,000億円程度と見られています。

特に、AIを活用したコンテンツ制作やカスタマーサポートなどのサービス分野で大きな伸びが期待されています。

※メタバース総研

メタバースやVR/XRに関心のある消費者や企業/公共団体向けに情報を提供する月間80,000PVの国内最大級のメディア。

※生成AI

AIの一分野であり、データや情報から新しいデータや情報を生成することを目的とした技術。画像生成、音声合成、文章生成などの分野で活用され、既存のデータから新しいデータを生成する能力を持つ。

AIパソコンの需要が高まり

2027年には、AIパソコンが全パソコン出荷台数の6割近くを占めると予想されています。AIの高度化とともに、AIチップの進化が目覚ましく、低価格で高性能なAIパソコンが普及しつつあります。個人ユーザーからエンタープライズまで、AIパソコンの需要が高まっているのが現状です。

国内外で競争が激化

日本企業もAIの研究開発に積極的に取り組んでおり、KDDIなどの大手企業が4年間で1,000億円もの投資を行う計画です。一方で、米国やEUなどでも、AIの標準化を見据えた競争が熾烈化しています。日本発の「AIの標準」※を世界に広めるべく、産官学一丸となった取り組みが重要視されています。

※AIの標準

AI技術の開発や利用において共通の基準や規格を定める取り組み。日本では、国内外の企業や研究機関との協力を通じて、AI技術の発展と社会への安全な導入を支援することを目指し、情報処理推進機構(IPA)や日本工業規格(JIS)などが中心となって、AI技術の標準化に取り組んでいる。

このように、AIを活用したサービスやデバイスの需要が高まる中、国内外では熾烈な競争が繰り広げられています。AIの恩恵を最大限に享受するためには、企業や個人が先端技術の動向に注目し、柔軟に対応していくことが大切です。*3)

AIの今後の展望

AI技術は目覚ましい進化を遂げ、私たちの生活に深く浸透しつつあります。今後はさらにその進化が加速し、社会のあらゆる側面に影響を与えると予想されています。

【AIの今後の展望】

人とAIの協働による生産性の飛躍

AIは、人間よりも高速かつ正確に情報を処理し、膨大な量のデータを分析することができます。今後は、AIが人間の得意分野である創造性や共感力と補完し合い、新たな価値を生み出すことが期待されています。

例えば、AIが設計と開発を担い、人間が創造性や革新性を発揮することで、従来では不可能だった製品やサービスを生み出すことができるようになります。

具体的には、

  • 顧客分析の高度化:AIによる顧客データ分析により、顧客のニーズをより深く理解し、的確なマーケティング戦略を立案することができます。
  • 商品開発の効率化: AIを活用した設計支援ツールにより、開発期間の短縮とコスト削減を実現することができます。
  • 顧客サービスの向上: AIチャットボットや音声認識技術により、24時間365日の顧客サポートを提供することができます。

などの活用が考えられています。

【労働環境の変革】新たな仕事と価値観の創造

AIの導入により、単純労働や定型作業は自動化され、人間はより創造性や専門性を活かせる仕事にシフトしていくと考えられます。新たな仕事として、

  • AIシステムの開発・運用
  • AI倫理の専門家
  • AIを活用したコンサルタント

などが誕生すると予想されています。

また、AIの発展により、ワークライフバランスの概念も変化していく可能性があります。AIが家事や育児をサポートすることで、人間はより自由な時間を獲得し、自己実現や社会貢献に時間を費やすことができるようになるかもしれません。

具体的には、

  • RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入: RPAにより、事務作業を自動化し、従業員の負担を軽減することができます。
  • AIによるタスク管理: AIを活用したタスク管理ツールにより、チーム全体の効率化を図ることができます。
  • テレワークの推進: AIの活用により、場所や時間に縛られない働き方が可能になります。

などが、AIによる働き方の変革として挙げられます。

【社会課題の解決】持続可能な社会の実現

AIは、医療、教育、環境問題など、さまざまな社会課題の解決に貢献できる可能性があります。個々の学習スタイルに合わせた教育プログラムや、病気の早期診断や治療支援など、AIが人々の生活や健康に貢献する可能性は無限です。

今後は、AIを活用した個別指導や医療診断支援が一般的になり、より効率的で質の高いサービスが提供されることが期待されます。

少子高齢化への対応

少子高齢化が進む日本では、AIを活用した育児支援ロボットや介護ロボットの開発が行われています。AI搭載の育児ロボットは、子育ての負担を軽減し、高齢者の見守りや生活のアシストにも活用できる可能性があります。

さらに、AIによる遠隔医療の実現も期待されており、専門医の不足する地域への医療サービスの提供にも役立つでしょう。このように、AIは少子高齢化社会の課題解決に大きく貢献できると考えられます。

製造業の変革

製造現場でのAI活用も注目されています。AIを活用すれば、工場の自動化や生産性の向上、製品の品質管理の高度化など、製造業の様々な分野で変革をもたらすことができます。さらに、製造工程の最適化やサプライチェーンの管理、メンテナンスの自動化など、幅広い活用が期待されています。

このように、AIは私たちの生活や社会システムに大きな変革をもたらす可能性を秘めています。これからのAI活用の在り方を考えることは、私たちの未来を考える上で非常に重要だと言えるでしょう。

しかし、人類にとって有益なツールとなる可能性を秘めていますが、AIは同時に倫理的な課題や社会的な問題も提起しています。今後、AIと人間がどのように共存していくのか、社会全体で議論していくことが重要です。

シンギュラリティとは【AIが人間を超える「技術的特異点」】

【シンギュラリティ時代の「生き甲斐」とは?】

AI技術の進化に伴い、近年「シンギュラリティ」という言葉が注目を集めています。シンギュラリティとは、「技術的特」と訳され、AIの知能が人間の知能を凌駕し、自己改善を繰り返すことで、爆発的に知性が高まり、人類の文明を根底から変えてしまう可能性のある特異点のことを指します。

シンギュラリティ後の社会

シンギュラリティ後の社会は、現在の社会とは大きく異なるものになると考えられています。具体的には、例えば以下のような変化が起こると予想されています。

  • 経済活動の変化:AIが得意な分野の仕事はAIに任せるようになります。そして人間は、創造的な仕事やAIにはできない仕事を中心に活動するようになると予想できます。また、AIの開発や管理など、AIによって新しい仕事が生み出される可能性もあります。
  • 政治体制の変化:AIが政治的な意思決定や法的な決断を行うようになる可能性があると言われています。
  • 倫理観の変化:AIの登場によって、倫理観が大きく変化する可能性が示唆されています。

シンギュラリティへの懸念

シンギュラリティについては、

  • AIが人類を支配する
  • AIが暴走する
  • 社会格差が拡大する

などのような懸念が指摘されています。

【経済産業省:「AI事業者ガイドライン」の対象範囲】

シンギュラリティは、まだ起こっていない未来の出来事ですが、さまざまな角度からAI倫理の研究を進め、AIと人間が共存できる社会のあり方を考える必要があります。また、AI時代に必要なスキルを身につけることができる教育改革も重要です。

シンギュラリティは、人類にとって大きな転換点となる可能性があります。シンギュラリティへの懸念も存在しますが、同時に大きな可能性も秘めています。

シンギュラリティについてよく知らないままで、シンギュラリティをおそれ、AIの社会への浸透や開発を否定するのは賢明とは言えません。シンギュラリティについて理解を深め、備えを進めていきましょう。*4)

AIの発展が社会にもたらす影響

AIの技術が驚くべきスピードで進化している中、その発展がどのように私たちの社会に影響を及ぼすのでしょうか。

ビジネスへのインパクト

AI技術の進化により、生成AIがホワイトカラーの業務※を効率化し、生産性や付加価値を向上させることが期待されています。企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)※を推進するために、経営者のコミットメントや社内体制整備、顧客価値の差別化などが重要となります。

※ホワイトカラーの業務

主にオフィスでの事務系・管理系の業務。ブルーカラー(肉体労働者)と対比される言葉として使われる。

※DX(デジタルトランスフォーメーション)

組織や企業がデジタル技術を活用してビジネスや業務プロセスを変革し、新たな価値を創造する取り組み全般を指す。競争力の維持や成長を目指す企業や組織にとって重要な戦略となっている。

【関連記事】デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?企業の取り組み事例やSDGsとの関係を解説

【人工知能技術の発展と社会への影響】

デジタル人材育成とスキルへの影響

AIの普及により、人材育成求められるスキルの変化に注目が集まっています。今後は従来のスキルだけでなく、AIを使うスキルやクリエイティブなスキルが求められるようになる可能性が高いと考えられます。個人や組織は、環境の変化に柔軟に対応し、学び続ける姿勢が重要となります。

【デジタル社会の産業構造・就業構造変⾰による横断的課題】

AIの発展でなくなる仕事・新たに生まれる仕事

AIの進化は、今後の働き方に大きな変化をもたらすことが予想されています。AIの発展によって、なくなる仕事と新たに生まれる仕事について具体的に見てみましょう。

なくなる仕事

単純作業やルーチン業務:AIの導入により、単純かつ繰り返し行われる作業やルーチン業務が自動化される可能性があります。例えば、工場の組み立てラインやデータ入力などがAIによって効率化され、これらの仕事に従事していた人々が減少するかもしれません。

一部の専門職:AIの進化により、特定の専門職の一部が影響を受ける可能性があります。例えば、簿記や会計業務など、AIが高度な計算や分析を行うことで、一部の専門家の業務範囲が変化するかもしれません。

新たに生まれる仕事

AIエンジニア:AI技術の普及に伴い、AIを開発・運用するエンジニアの需要が増加すると予想されます。AIエンジニアは、機械学習やディープラーニングなどの専門知識を持ち、AIシステムの開発や改善に携わることが期待されます。

データサイエンティスト:AIの発展により、データの解析や予測に特化したデータサイエンティストの需要が高まるでしょう。データサイエンティストは、ビッグデータを分析し、ビジネス上の価値を創出する役割を果たします。

クリエイティブ職:AIを活用したコンテンツ制作や、デザインなどのAIに関連するクリエイティブ職が新たに創出されると予想されています。

DX推進に必要な人材・スキル

AI時代には、マインド・スタンスやデジタルリテラシーが重要となります。今後は、言語を使った対話や問いを立てる力、仮説を立てる力などが必要とされるでしょう。

また、政策面でもAIに関連するデジタルスキルの普及が進められています。これから先、社会人として、

  • デジタルリテラシー
  • プログラミングスキル
  • コミュニケーション能力
  • 問題解決能力

といったスキルを身につけることが一層重要になると言えます。

※マインド・スタンス

個人の物事や状況に対する考え方や態度、心の持ち方のこと。自己認識や他者との関わり、ストレスへの対処など、様々な側面に影響を与える。そのため、自身のマインド・スタンスを理解し、必要に応じて柔軟に変えることが重要。

※デジタルリテラシー

デジタル技術やデジタル情報を理解し、適切に活用するための能力やスキルのこと。コンピュータやスマートフォンの基本的な操作方法、インターネットの利用方法、電子メールの送受信など、デジタル機器やツールを使いこなすスキルから、インターネット上での情報の信頼性を判断し、適切な情報を見分ける能力、インターネット上での個人情報やデータの保護、パスワード管理、フィッシング詐欺への対処など、幅広い知識と技術が含まれる。現代社会において必須のスキル。

AIの発展は、社会構造働き方に大きな変化をもたらす可能性があります。未来を見据え、AIと共に成長していくために、常に学び続ける姿勢を持ちましょう。*5)

AI社会で生き抜くための対策

【AI社会で求められるスキル】

出典:経済産業省『「新産業構造ビジョン」⼀⼈ひとりの、世界の課題を解決する⽇本の未来』(2017年5月)

先述のとおり、AIの発展は私たちの働き方や生活様式を大きく変化させつつあります。それでは、AI社会の中で自分らしく生きていくためには、どのような対策を講じるべきでしょうか。重要なポイントを見ていきましょう。

倫理観と社会貢献の意識の重要性

AIを活用する際には、倫理観と社会貢献の意識が欠かせません。AIの利用によるリスクや課題に対して適切な対策を講じるとともに、多様性や公正な競争環境の維持に努めましょう。

【AIガイドラインによる基本理念】

イノベーションへの積極的な参加

AI社会では、イノベーションが重要な要素となります。新たなビジネスやサービスの創出、持続的な経済成長の実現に向けて、積極的にイノベーションに参加しましょう。AI社会の到来に向けて、個人や企業が積極的に国際化や産学官連携、オープンイノベーションを推進することは重要です。

デジタルリテラシーの向上

AI社会の到来により、

  • ネット上の情報が溢れ、何が正しいのか判断できなくなる
  • 個人情報が簡単に漏洩する危険性が高まる
  • AIによって仕事が奪われる可能性が高まる

などが懸念されています。デジタルリテラシーの向上のために、

  • インターネットの使い方を学ぶ
  • SNSの使い方に注意する
  • セキュリティ対策を徹底する
  • AIについて学ぶ

といった行動を実践しましょう。大切なので何度も繰り返しますが、デジタル・AI社会において、自分の安全を確保するデジタルリテラシーのスキルは必須です。

データリテラシーを身につける

AIの活用には、データの収集、分析、活用といった一連のプロセスが不可欠です。そのため、データを適切に扱う能力であるデータリテラシーの向上が重要となります。

データの特性を理解し、データから洞察を導き出す力を身につける必要があります。単にデータを扱うだけでなく、データを読み解き、自ら課題を発見し、解決策を提案できる人材が求められるでしょう。

AIとの協調

AIは人間の仕事の一部を代替していく一方で、人間とAIが協調して新たな価値を生み出す可能性も秘めています。医療分野での人間医師とAIの連携がその一例です。

AIの特性を理解し、人間の創造性や判断力と組み合わせることで、より高度な仕事を生み出すことができます。AIと人間がお互いの長所を生かし合うことが重要です。

変化に柔軟に適応する能力の養成

AIの発展に伴い、さまざまな職業が自動化の影響を受けることが予想されます。そのような状況においては、定型的な業務スキルだけでなく、状況の変化に柔軟に対応できる能力が重要となります。

  • 課題発見力(問題の本質を見抜く力、多角的な視点、発想力)
  • 論理的思考力(倫理的な思考、客観的な視点、表現力)
  • 創造性(独創的なアイデア、柔軟な発想、行動力)

といった、いわゆる「人間らしいスキル」を身につけることが求められます。企業は従業員のスキル向上を支援し、個人は絶え間ない学習を続けることが肝心です。*6)

AI社会の発展はSDGsの達成にも影響する?

【第4次産業⾰命※技術によって実現される社会ニーズ】

AIの技術革新やデータ活用により、従来では対応しきれなかった社会的・構造的課題に対応する可能性が広がっています。このようなAI社会の発展はSDGs(持続可能な開発目標)の達成にも大きな影響を与えると期待されています。

特に大きな影響を与えると考えられるSDGs目標を確認していきましょう。

※第四次産業革命

デジタル技術や物理技術、バイオテクノロジーなどが融合し、新たな価値を創造する産業革命のこと。デジタル化や自動化が進み、従来の産業構造やビジネスモデルが大きく変化している。

【関連記事】第四次産業革命とは?特徴や生活に及ぼす影響、課題をわかりやすく解説

SDGs目標3:すべての人に健康と福祉を

  • AIを活用した医療診断や治療、介護支援などのサービスの発展
  • AIによる健康管理や予防医療の普及
  • 国民全体の健康寿命の延伸

SDGs目標4:質の高い教育をみんなに

  • AIを活用した個別指導や学習支援システムの開発による、個々の能力やニーズに合わせた効率的な学習
  • AIによるオンライン教育の普及による、場所や時間に制限されない教育

SDGs目標5:ジェンダー平等を実現しよう

  • AIを活用したジェンダーバイアスの検出や是正、女性起業家支援など、男女平等社会の実現
  • AIによる家事や育児の負担軽減による、女性の社会進出

SDGs目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに

  • AIを活用したエネルギー需要予測や省エネ対策
  • 再生可能エネルギーの効率化
  • スマートグリッドの構築による安定した電力供給と省エネルギーの実現

SDGs目標9:産業と技術革新の基盤を作ろう

  • AIを活用した新たなビジネスモデルの創出
  • 生産性の向上
  • 労働市場の適応支援
  • A地方創生や地域活性化
  • 地域格差の是正

SDGs目標11:住み続けられるまちづくりを

  • AIを活用した交通システム、エネルギー管理システム、防災システムなどの構築
  • AIを活用した災害予測、避難誘導、被災者支援など、災害被害の軽減
  • AIを活用した観光振興、地域産業の活性化、高齢者支援など、地方の活性化

SDGs目標13:気候変動に具体的な対策を

  • AIを活用したエネルギー効率化、再生可能エネルギーの導入促進、省エネルギー技術の開発など、温室効果ガスの排出量削減
  • AIを活用した気候変動予測モデルの開発による、より正確な気候変動予測
  • AIを活用した気候変動リスク分析、適応策の立案、防災・減災対策

SDGs目標16:平和と公正をすべての人に

  • AIを活用した犯罪予測、犯罪捜査、犯罪予防など、犯罪の減少に貢献
  • AIを活用した裁判資料分析、判決予測、法令調査など、司法制度を効率化オフAIを活用した人権侵害の監視、人権教育、差別解消など、人権擁護の強化

SDGs目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

  • AIを活用した国際的な研究開発、情報共有、政策協調などによる、国際協力強化
  • AIを活用した教育支援、医療支援、経済支援など、開発途上国の発展への貢献
  • AIを活用した環境問題解決、貧困撲滅、感染症対策など、グローバルな課題解決

このように、AI社会の発展は、SDGsの達成に大きく貢献することが期待されています。しかし、AI社会の発展には、多くの課題も存在します。

例えば、

  • AIの開発や利用における倫理的な問題
  • 富や情報へのアクセス格差が拡大する可能性
  • 一部の仕事がなくなる可能性

などが挙げられます。これらの課題を解決するために、国際的な枠組みやガイドラインを策定し、AIを適切に活用していくことも重要です。*7)

>>各目標に関する詳しい記事はこちらから

まとめ

 AIが発展する社会では、人間とAIの共生がますます重要となります。AIがルーチンな作業を担当し、人間は創造性や問題解決能力を活かすことで、より価値のある業務に集中できるようになるでしょう。いずれは、人間らしい感性や倫理観を持つAIの開発も進み、社会全体がより持続可能で人間中心の未来を築くことが期待されます。

個人がAI社会を生き抜くためのスキルを身につけるためには、先述の通り、スキルの向上やデジタルリテラシーの習得、イノベーションへの参加、倫理観と社会貢献の意識が重要です。

そのためには、

  • 読書:さまざまなジャンルの本を読むことで、知識を増やし、思考力を鍛える
  • アウトプット:自分の考えやアイデアを文章や言葉で表現することで、論理的思考力や表現力を高める
  • 経験:さまざまな経験をすることで、視野を広げ、柔軟な発想力を養う
  • コミュニケーション:多くの人と交流することで、多様な視点に触れる

などに、積極的に取り組むことが有効と言われています。また、さまざまな分野の新しい情報に興味を持って知識を広げ続けることも大切です。

企業はこれからのAI社会を見据え、従業員の能力開発への投資が、これから一層重要になると考えられます。

ここまで、AIの発展が私たちの生活やビジネスにどのような影響を及ぼすのかを探ってきました。AIは生産性の向上や新たな付加価値の創出、教育の質の向上など、さまざまな分野で大きな変革をもたらそうとしています。

AI社会の到来は避けられない事実と言えます。しかし、それは決して脅威ではありません。私たちが主体的に学び、AIとともに新しい価値を生み出していくことで、希望に満ちた未来を実現できる可能性が高まります。

この急速な変化の波に乗り遅れることなく、新しい社会のビジョンを明確に持ち、行動に移すことが大切です。より良い未来とAIとの共存を目指して、常に学び、新しいことへの挑戦を続けましょう!

<参考・引用文献>

*1)AIの歴史
国土交通省『コラム 「人工知能(AI)」の歴史』
ChatAIとは?仕組みやメリット・デメリット、種類、今後の課題も
総務省『第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI~ネットワークとデータが創造する新たな価値~』
日本経済新聞『生成AIブーム1年、過去10年間の歴史と熱狂の行方』(2023年12月)
ディープラーニングとは?仕組みやメリット・デメリットと実用例の紹介
総務省『第1部 特集 進化するデジタル経済とその先にあるSociety 5.0』
*2)AIの現状
NTT東日本『【2024年最新】AI(人工知能)技術の活用事例を紹介!概要や歴史、メリットも解説』
TECHBLITZ『AIはなぜ今転換点を迎えたのか?2024年の生成AIトレンドは? シリコンバレー拠点のAI専門キャピタリストが解説』(2024年3月)
*3)2024年時点でのAIの市場規模
愛知工科大学『メタバース総研の記事に情報メディア学科 山高研究室が掲載されました』(2023年11月)
総務省『第2部 基本データと政策動向 第6節 IoT・ICT利活用の推進』(2021年)
メタバース総研『【2024年最新】国内外の生成AIの市場規模は?今後の展望も解説』(2024年4月)
日経XTECH『市場回復の期待を担うAIパソコン、「2027年に全出荷の6割」予想も』(2024年3月)
NRI『生成AIの展望〜生成AIの可能性と変わる未来〜』(2024年2月)
METI Journal『AIが主戦場!日本発「標準」を世界に広める経産省の戦略とは』(2024年2月)
日経XTECH『KDDIが生成AI開発向け計算基盤を整備、経産省の助成を受け4年で1000億円投資』(2024年4月)
*4)AIの今後の展望
NEDO『人とAIが協力し合う未来へ 次のAIが見えてきた』
総務省『イノベーションと技術的特異点(テクノロジカル・シンギュラリティ)』(2018年7月)
経済産業省『「AIガイドライン」案 概要』(2024年1月)
総務省『第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI~ネットワークとデータが創造する新たな価値~』
NTT技術ジャーナル『期待高まる国産生成AI(前編)──AIの歴史的変遷と大規模言語モデルの動向』
経済産業省『「次世代デジタルインフラの構築」プロジェクトに関する研究開発・社会実装計画(改定案)の概要』(2022年9月)
日経XTECH『総務省と経産省が「AI事業者ガイドライン」公開、パブコメを反映』(2024年4月)
METI Journal『己と向き合え、世界とつながれ』(2018年7月)
*5)AIの発展が社会にもたらす影響
内閣府『人工知能技術の発展と社会への影響』
経済産業省『「新産業構造ビジョン」⼀⼈ひとりの、世界の課題を解決する⽇本の未来』(2017年5月)
NEC『AI時代における社会ビジョン ~人々の働き方、生き方、倫理のあり方~』
総務省『第3節 人工知能(AI)の進化が雇用等に与える影響』
HITACHI『【第2回】AIがもたらす未来の仕事』
東洋大学『AI普及で雇用はどうなる?専門家に聞いた、なくなる仕事・増える仕事』(2020年3月)
経済産業省『「生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方」 を取りまとめました』(2023年8月)
*6)AI社会で生き抜くための対策
経済産業省『「新産業構造ビジョン」⼀⼈ひとりの、世界の課題を解決する⽇本の未来』(2017年5月)
経済産業省『「AIガイドライン」案 概要』(2024年1月)
*7)AI社会の発展はSDGsの達成にも影響する?
第四次産業革命とは?特徴や生活に及ぼす影響、課題をわかりやすく解説
経済産業省『「新産業構造ビジョン」⼀⼈ひとりの、世界の課題を解決する⽇本の未来』(2017年5月)
農林水産省『
SDGs(持続可能な開発目標)17の目標と169のターゲット』