#SDGsを知る

育児休業制度とは?育児休暇と育児休業の違い、法改正のポイントも

イメージ画像

イクメンという言葉が広く言われるようになってから大分経ちますが、まだ仕事と家庭の両立に悩む若い夫婦や、キャリア形成に悩む女性の姿、育児休暇をとることを躊躇する男性が多いことも現実です。

子育ては、母親にも父親にも大事なプロジェクトです。育児休業制度について最新の情報を整理し、社会全体の成長につながる有効利用について、一緒に学んでいきましょう。

育児休業制度とは

育児休業制度とは、育児・介護休業法 ※ に基づいて定められた、原則1歳未満(最長2歳まで)の子どもを養育するための休業制度です。

育児・介護休業法

正式名は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」。仕事と家庭生活の両立を支援することを通して福祉の増進を図り、あわせて経済・社会の発展を目指すことを目的として平成3年に制定され翌4年に施行、その後何回か改正を加えられ今に至っている。

対象者

育児休業制度では、子育て中の男女労働者が対象となっています。

日雇い労働者を除き、有期雇用労働者(パート、派遣、契約社員など雇用期間に定めがある労働者)も一定の条件 ※ を満たせば取得することができます。

※ 「一定の条件」:子どもが1歳6か月までの間に契約が終了することが明らかでないこと。

ただし、例外的に労使協定の定めによって会社は育休の申し出を断ることができます。

「雇用された期間が1年未満」や「週の労働日数が所定以下」などが労使協定に持ち込まれている場合です。

労使協定は、従業員や組合と会社が話し合って決めたルールです。自分の所属する会社にそのようなルールがあるか確認する必要があります。

引用:Ⅱ-1 育児休業制度 Ⅱ-1-1 育児休業の対象となる労働者

期間

1歳未満の子ども1人につき原則として2回まで取得することができます。

1歳を過ぎても、保育所に入所できないなどの事情があれば、最長2歳になるまで延長することができます。開始日もかなり柔軟に設定出来るようになり、夫婦で交代してとることもできます。

しかし「仕事と家庭を両立させる」にはその後も支援が必要です。最新の改正(令和3年)では、

  • 産後パパ育休
  • パパ・ママ育休プラス
  • 子の看護休暇

などが、基法を補完する形で盛り込まれています。その内容についてこれから分かりやすくまとめていきます。

その前に、育児休暇育児休業の違いについて押さえておきましょう。

育児休暇と育児休業の違い

「休暇」と「休業」は字面も似ていて、同じように使われることもありますが、育児休暇と育児休業は、どのように違うのでしょうか。

休暇と休業

一般的に「休暇」とは、学校や官庁・会社などの日曜や祝日以外の休みを言う場合が多く幅の広いものです。「休業」は業務に就くことを免除または禁止することを意味し、多くは法律の規定を根拠とします。

会社か法か

育児休暇育児休業もどちらも育児支援を目的とした制度ですが、大きな違いは、育児休暇は「会社の制度」で、育児休業は「国が法律で定めた公的制度」という点です。

育児休業では、対象や期間はどの労働者にも平等に定められており、該当者が申し出があれば会社は拒むことはできません。近年は国の奨励により、各企業の育児休暇も内容が見直され、充実していることを会社のアピールポイントとしている所もあります。

また、中には法の定める休暇制度もあります。「子の看護休暇」もその1つです。

子の看護休暇制度

子の介護休暇は次のような休暇制度です。

対象小学校入学前の子どもがある労働者
内容内容:子ども1人の場合年5日、2人以上の場合は年10日まで、病気・ケガをした子の看護または、子に予防接種健康診断を受けさせるために取得できる休暇
単位1日または時間単位。当日の申し出も可能。
引用:Ⅳ 子の看護休暇制度及び育児・介護休業法のポイントより筆者表作成

子の看護休暇は、育児・介護休業制定当時からありましたが「努力義務」でした。しかし2005年には従業員の権利として義務づけられています。法に基づく権利なので、申し出があれば企業は適切に対応しなくてはなりません。

令和3年の法改正のポイント

それでは、「産後パパ育休」を始めとする最新の育児休業制度改正についてみていきましょう。

改正ポイント①「産後パパ育休」制度新設

産後パパ育休」は「出生時育児休業」の通称で、育児休業とは別に子どもが生れてから8週間以内に4週間の休業を取得できる新しい制度です。

  • 対象:主に父親が対象ですが、養子縁組などで産休を取得していない女性もとることができます。正社員だけでなく、有期雇用労働者もとることができます。
  • 期間:4週間は分割してとることもできます。
  • 勤務態様:労使協定や個別合意の元、就業することも可能です。

といった内容になっていて、子の出生直後の時期にこれまでよりも柔軟で取得しやすい枠組みの休業となるよう設けられました。

参考・出典: Ⅱ-2-1 産後パパ育休の対象となる労働者

改正ポイント②柔軟な取り方

改正後は、期間や日数の数え方が柔軟になり、いままでより個々の事情に応じた取り方が出来るようになりました。

項目改正前改正後
分割取得原則分割不可分割して2回取得可能
1歳以降の延長育休開始日は1歳、1歳半の時点に限定開始日は柔軟化
1歳以降の再取得再取得不可特別な事情 ※ がある場合再取得可能
※ 特別な事情:第1子の育休中に第2子を出産、第1子の育休を終了したが、その後第2子が死亡してしまった場合、再度育休を取得できる。

これらの改正により、2010年より取り入れられている「パパ・ママ育休プラス」 ※ などと合わせると、夫婦の休暇の取り方を工夫すれば、個に合わせた様々なパターンで育児休暇をとることができるようになりました。

画像出典と内容引用:パパ・ママ育休プラス
パパ・ママ育休プラス

両親がともに育児休業を取得する場合、子どもが1歳2か月に達する日までの間で1年間休業可能。

改正ポイント③有期雇用労働者の育児休業取得要件の緩和

有期雇用労働者の育児休業取得要件の緩和も大きなポイントです。

これまでは、有期雇用労働者が育児休業を取得する要件として、

  1. 引き続き雇用された期間が1年以上
  2. 1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない

の2点がありました。

それが、今回の改正で「1)引き続き雇用された期間が1年以上」という要件が撤廃されました。

つまり、育児休業の申し出があった時点で「労働契約の更新がないことが確実か否か」によって判断されることになります。

改正前改正後
1)引き続き雇用された期間が1年以上撤廃
2)かっこに1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない継続
引用:児・介護休業法令和3年改正内容の解説(厚生労働省)表は筆者作成

改正ポイント④企業への義務付け

今回の改正では、企業に対して次のようなことが段階的に義務付けられました。

  • <令和4年(2022年)4月1日>
    個別周知・意向確認の義務化
    雇用環境整備の義務化
  • <令和5年(2023年)4月1日>
    育児休業等の取得状況の公表の義務化

個別周知・意向確認の義務化

労働者が本人または配偶者の妊娠・出産を申し出た場合、企業は個別に休業制度の周知と休業の意向確認をしなくてはなりません。事実婚養子の場合も含まれます。

周知すべき内容は次の4点です。

  1. 育児休業・産後パパ育休に関する内容
  2. 育児休業・産後パパ育休の申出先
  3. 育児休業給付に関すること
  4. 休業期間中の社会保険料の取り扱い

申出は、オンラインを含む面談書面のどちらでもよく、労働者が希望すればFAX電子メールでも可能です。出産予定日が明らかになったらできるだけ速やかに申し出ると、その後の準備にも余裕がもてます。

雇用環境整備の義務化

企業は、育児休業・産後パパ育休を取得しやすい環境を整備するため、次のいずれかの措置を取らなくてはなりません。

  1. 研修実施
  2. 相談窓口設置
  3. 事例の収集・提供
  4. 制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

育児休業等の取得状況の公表の義務化

常時雇用する労働者が1,001人以上の事業主は、毎年1回男性の育児休業取得状況を公表しなくてはなりません。

公表内容は、

  1. 男性の育児休業等の割合
  2. 育児休業等と育児目的休暇の割合

の2点です。

②の「育児目的休暇」とは、前章でお話した就学前の子どもの養育のための企業の休暇です。国の育児休業や子の看護休暇、その他の有給休暇以外の休みを指し、国が企業の子育て支援策を促したり、後押ししたりする意図が現れています。

参考・出典:児・介護休業法令和3年改正内容の解説(厚生労働省)

なぜ「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度が創設されたのか

今回の改正の目玉とも言える「産後パパ育休」制度はなぜ新設されたのでしょうか。男性の育休取得促進の理由を、育児休業改正の趣旨を読み解きつつ整理していきます。

労働者の希望

厚生労働省は、男性の育児休業取得促進の第1の理由として「労働者の希望」を挙げています。

若者へのアンケート結果から、確かに男性が育休を取得したいと考えていることが分かります。女性においては、「自身が取得したい」と考える人はほぼ100%、夫に取ってほしいと希望する人が9割にのぼることが分かります。また若い社員ばかりでなく、中堅社員達の希望も増えています。

「産後パパ育休」は、これを契機として職場環境の整備が進み、子育て当事者やこれから子どもを持つ人たちが、男女ともに希望するような取り方のできる育児休業制度が展開されることを狙っています。

また「出生時」を「取得ニーズの高い時期」ととらえていますが、同時に長期の育児休業取得に不安がある労働者に短期間の育休を試してもらい、長期休業取得への足がかりにしてもらおうという意図もあります。

女性の雇用継続、希望する数の子を持つ 

もう1つのねらいは、男性が主体的に育児・家事に関わり、夫婦共に納得する分担となることで、

  • 女性の雇用促進
  • 夫婦が希望する数の子を持つこと

につながることです。

日本の女性の労働力率は、出産・育児開始と思われる20代後半から下降し、子育て一段落した40代で元通りではないもののまた上がるという、いわゆるM字カーブ型を描きます。これは、男性や欧米にはない型で、その原因の1つに家事・育児の分担の在り方があると考えられています。

共働き世帯が年々増加しているにも関わらず、日本の夫婦の家事・育児は、国際的にみて妻に著しく偏っています。そのため自身のキャリアをあきらめる女性も多く、40代で復帰しても多くは有期雇用労働者となっています。

近年の日本の人口減少は深刻な状況にあり、特に少子高齢化による生産労働人口の減少は大きな問題となっています。国は、男性が育児参加する機会を増やすことで、家事・育児による女性の負担を軽減し、女性の活躍を推進することで社会全体の成長につなげようとしているのです。

日本の育児休業制度の取得状況

さて、これまでもそして今回の改正でも、かなり手厚くなったと思われる育児休業制度ですが、効果はどうでしょう。

大きな男女差

出典:図表1-8-1 育児休業取得率の推移(厚生労働省)

上のグラフからは、以前は1%に満たなかった男性の取得率が、2019年には7.48%を示していることが見て取れます。最新の調査結果ではさらに13.97%(2021年)と伸び、少しずつですが順調に伸びている様子です。

しかし、女性の取得率は2007年あたりから8割台を保っていて、男性との差はかなり大きくなっています。

欧米の男性と女性の育児休業取得割合と比べてみてもかなり差があります。

男性女性
日本2.4%97.6%
アメリカ13.9%16.0%
イギリス12%12%
スウェーデン36%64%
第3節 労働分野における女性の参画(男女共同参画局)及び01 リリース(R3年度雇用均等基本調査)を参考に筆者作成

国が目指す「女性の雇用継続」の意図は、少なくとも即効的な効果を見せてはいません。

女性の就労と出生率

近年日本では、1人の女性が一生の間に産む子どもの数が減少し続け、2005年には1.26人と最低を記録しました。その後一時増えたものの、2022年には再び1.26人を記録しています。しかし「理想とする子どもの数」は2.32人という調査結果が出ていて、「持ちたいが持てない」現実が見えてきます。

女性が就労しないほうが出生率が上がるのでは、との考えもあるかもしれません。しかし、スウェーデンを始めとする北欧諸国のように育児休業取得率に男女差が余りない国は、女性の就業率が高いのが実情です。

制度の手厚さや改正の意図、そして労働者の希望と現実のギャップはどこからくるのでしょう。次章ではその課題についてまとめていきます。

育児休業制度の課題

育児休業制度がうまく機能するには、どんな課題をクリアしなくてはならないのでしょう。

男性の取得率を上げることをねらってるのに、なぜなかなか成果に結びつかないのか、原因や背景をみていきましょう。

日本は育休制度1位

日本の育児休業制度は、父親に認められている育児休業期間が最も長く、改善の過程も認められ、ユニセフからも「制度として1位」(41か国中)という評価を受けています。

参考・出典:子育て支援策 新報告書 先進国の育休・保育政策等をランキング

出典:1 第1章 国際比較から見る日本の育児休業制度の特徴と課題(独立行政法人労働政策研究・研修機構)

それでも男性が育児休業を取得しなかった理由が、調査の結果から見えてきます。

<出産・育児を目的として休暇・休業を利用しなかった理由>

育児休業を取得しなかった理由

上位にランクされている理由をみてみましょう。

第1位「会社で育児休業制度が整備されていなかったから」

育児休業制度は国が定める権利です。今回の改正で国が「個別周知・意向確認」を義務化したのはこのような背景があったからです。

第2位「収入を減らしたくないから」

休業期間中は、給料が支払われないことがほとんどであるため、この理由が第2位に位置していると考えられます。しかし休業期間中は、雇用保険から育児給付金が支払われます。

  • 支給期間:子どもが満1歳になるまで。条件により2歳まで延長可能。
  • 支給額:休業前の賃金の67%が180日まで。180日を越える場合は50%。
    「産後パパ育休」の給付金については、現在引き上げも検討されています。
  • 有期雇用労働者も対象です。

その他に、各自治体で独自の給付や支援を行っているところもあります。

また出産に関しては、出産一時金や出産手当金などが健康保険・国民健康保険などから支払われます。

つまり休業前の給料とは形はちがうものの、手取りとしての収入があることが分かります。国が「給付制度」についての説明を義務付けたのも、収入源への不安を取り除く意図があるからです。

第3位「職場が取得しづらい雰囲気だったから」

この理由は、第4位の「会社や上司、職場の理解がなかったから」と合わせると最多数になります。

「家事・育児は女性の仕事」といったバイアス(偏見・先入観)のかかった考えを持つ上司の意識改革は、最重要と言えるのではないでしょうか。今回の改正ポイントでもある「雇用環境整備の義務化」は、システムばかりではなく、そういった意識の改革も視野に入れたものです。

企業が育児休業制度を設定する際のポイント

「義務化」の内容を整理し、課題をとらえてていくと、今後企業が育児休業制度を設ける際のポイントも見えてきます。

ハラスメント対策

令和元年(2019年)に職場におけるパワハラ防止対策が事業主に義務付けられ、令和2年にはさらに「相談したこと等を理由とする不利益取扱いの禁止」が加わりました。

解雇や左遷などはもちろんのこと、育児休業を申し出たことに対しての「嫌がらせ」もハラスメントです。特に直属の上司の個人的なバイアスは、労働者が育児休業を取得するための大きな障害となります。

その中で、今回の改正では「研修」が義務化されました。各職場においてまだハラスメント行為が残っていないか見直すことも研修内容に含まれます。相談窓口日常の業務を通してのコミュニケーションを円滑にすることも対策として奨励されています。

参考・出典:職場における・パワーハラスメント対策・セクシュアルハラスメント対策・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です!(厚生労働省パンフレット)

労使協定・労働時間等の見直し

「一定の条件のもと」あるいは「労使協定の定めによって」という文言が、幾度か制度の説明に登場しました。まだ会社独自の育児休暇制度と国の育児休業制度の整合性を模索している企業も少なくないのではないでしょうか。

事業主あるいは労務担当者は、自社の状況に合わせて対象者や期間など今までのシステムを再考しなくてはなりません。特に労働時間については、次の4つを再確認する必要があります。

制限・制度内容利用可能者
所定外労働の制限残業を免除する制度3歳未満の子どもがいる労働者
短時間勤務制度1日の勤務時間を短縮可能3歳未満の子どもがいる労働者
時間外労働の制限1か月で24時間、1年で150時間を越える時間外労働を制限小学校入学前の子どもがいる労働者
深夜業の制限午後10時から午前5時までの労働を免除小学校入学前の子どもがいる労働者
そのときのために、知っておこう 育児休業制度」参考に筆者表作成

「労使協定の例」について詳しくは「Ⅲ 育児・介護休業等に関する労使協定の例

育児休業制度に関してよくある質問

育児休業制度の最新の改正ポイントについて整理してきました。この章ではよくある質問にお答えします。

最新動向は?イクメン・イクボス?

なかなか増加しない男性の育児休業取得に、厚生労働省は2010年「イクメンプロジェクト」を起ち上げました。これは、社会全体で男性がもっと育児に関わることができるよう様々な活動を展開していくプロジェクトです。

「イクメンプロジェクト」では、今回の改正を「新たなステージ」と位置づけ、産後パパ育休の浸透・定着させることを目指しています。

また「イクボス」宣言も促しています。

「イクボス」とは、部下が育休取得しても業務を滞りなく進め、仕事と私生活を両立できるよう配慮し、自らもワーク・ライフバランスを充実させている管理職のことです。

イクボス宣言とは、自らがイクボスであることや、なろうとしていることを宣言するのもで、このような上司がいる職場では「育休が取りにくい雰囲気」は一掃されそうです。

海外の現状は?パパ・クオータ制度?

北欧諸国は福祉先進国の1つ、ノルウェーには「パパ・クオータ制度」という育児休業制度があります。

この制度は、1993年に導入された父親割当制度です。スタート当時は4週間でしたが、現在は6週間になり、給付金なども手厚く補償されています。

特徴的なのは、父親専用の休業で母親に譲渡することはできず、受給しなければ権利は消滅してしまうという点です。

この制度により、導入前は4%だった父親の育児休暇取得率が9割になったということです。

似た制度がスウェーデンにもあります。「パパ・ママクオータ制度」です。

スウェーデンでは、父親・母親それぞれ240日間の受給権を持っています。このうち60日分は配偶者に譲渡することができず、受給しなければ権利は消滅してしまいます。

同様の制度は、2007年にドイツに導入されるなど、ヨーロッパの国々に広がっています。

参考・出典:諸外国におけるパパ・クオータ制度等 ,○ノルウェーのパパ・クオータ(1993年導入)

育児休業制度は義務?

育児休業制度について説明する中でいくつもの「義務化」に触れてきました。これはすべて

企業側に課せられた法的義務です。各企業がさらに独自の育児休暇について充実させることは「努力義務」とされています。

男性の育児休暇取得を推進した企業、家庭と仕事の両立を推進した企業に対して、国や自治体から助成金が出る制度もあります。

育児休業制度とSDGs

最後に育児休業制度とSDGsとの関連をみていきましょう。

育児休業制度を推進・利用することは、生産人口を増やすことに直結するので、社会・経済の多くの目標達成に貢献します。その中でも特に、

の達成に貢献します。

SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」との関連

制度として高い評価を受ける日本の育児休業制度でしたが、国際社会における男性育休取得率の低さ、男女間の大きな差が課題でした。それを解消するために今改正で取り入れられたのが「産後パパ育休」です。

女性の就労率は出生率の増加にも貢献するというデータもあります。仕事と家庭を両立することを支援する施策は、不安なく「希望する数の子どもを持つ」ことにもつながります。

SDGs目標8「働きがいも経済成長も」との関連

育児休業制度が正しく利用され、多くの労働者が安心して働ける企業が増えることは、社会全体の経済成長に繋がります。

夫婦で、家族で、そして職場や地域で、それぞれの望むワーク・ライフバランスのとれた生活ができる働きがいのある社会は、さらなる経済成長を生み出していくのではないでしょうか。

まとめ

育児休業制度について、令和3年の最新の改正を中心に解説してきました。

制度として立派な日本の制度も、理想と現実、世界とのギャップがまだあるのも事実です。しかしそれを解消し、希望するライフスタイルで生活していけるよう、少しずつ支援が進んでいるのは明るい兆しです。

今回の改正では企業への義務化が一層進められました。育児・介護休業法の趣旨が生かされるよう正しく運用されるよう願っています。イクメン・イクボスの活躍も楽しみです。

<参考資料・文献>
Ⅱ-1 育児休業制度 Ⅱ-1-1 育児休業の対象となる労働者
育児・介護休業法のあらまし(厚生労働省)
育児休業特設サイト|厚生労働省
 Ⅱ-2-1 産後パパ育休の対象となる労働者
パパ・ママ育休プラス
育児・介護休業法令和3年改正内容の解説(厚生労働省)
【過去最高】男性の79.5% 子供が生まれたときには、育休を取得したい(公益財団法人日本生産性本部)
女子学生の就職活動に関するアンケート調査(キャリタス・リサーチ)
第1-2-1図 女性の年齢階級別労働力率の推移(男女共同参画局)
図表1-8-1 育児休業取得率の推移(厚生労働省)
第3節 労働分野における女性の参画(男女共同参画局)
01 リリース(R3年度雇用均等基本調査)
出生動向基本調査(国立社会保障・人口問題研究所)
1 第1章 国際比較から見る日本の育児休業制度の特徴と課題(独立行政法人労働政策研究・研修機構)
子育て支援策 新報告書 先進国の育休・保育政策等をランキング
男性の育児休業取得促進等に 関する参考資料集(厚生労働省)
就業規則への記載はもうお済みですか
職場における・パワーハラスメント対策・セクシュアルハラスメント対策・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です!(厚生労働省パンフレット)
そのときのために、知っておこう 育児休業制度
イクメンプロジェクト育てる男が、家族を変える。社会が動く。
諸外国におけるパパ・クオータ制度等 ○ノルウェーのパパ・クオータ(1993年導入)
男性の育休:小泉文明(PHP新書)
世界の子育て:メイリン・ホプグッド;野口深雪訳(中央公論新書)
2050年の世界:英エコノミスト編集部(文春文庫)
SDGs:蟹江憲史(中公新書)