
仕事中だけ強い眠気に襲われる「ナルコレプシー」とは、どのような病気なのでしょうか。主な症状や1型・2型の違い、原因、治る可能性について詳しく解説します。症状が出た時の対策や、神経内科・精神科・睡眠外来など何科を受診すべきかも紹介。よくある質問や、ナルコレプシーになりやすい人、運転への影響、命に関わるかどうかについても触れています。
目次
ナルコレプシーとは?主な症状について解説
【主な症状】
- 日中に強い眠気を感じたり、突然眠り込んでしまう(睡眠発作)
- 感情が大きく動いた際に体の力が抜ける(情動脱力発作)
- 眠りに入る直前にリアルな夢を見る(入眠時幻覚)
- 目が覚めているのに体が動かせない(金縛り・睡眠麻痺)
- 夜間に何度も目が覚めたり、ぐっすり眠れない(夜間の睡眠障害)
ナルコレプシーは、日中に耐えがたい眠気に襲われ、状況を問わず急に眠り込んでしまう「睡眠発作」が代表的な症状の睡眠障害です。
この眠気は非常に強く、会議中や運転中といった通常なら眠らないような場面でも発作的に眠ってしまうことがあります。
加えて、笑いや驚きなど感情が高ぶった際に一時的に筋力が低下する「情動脱力発作」がみられることもあります。
また、寝入りばなに現実と区別がつかないほど鮮明な夢を見る「入眠時幻覚」や、目が覚めているのに体が動かない「睡眠麻痺(金縛り)」を経験する人もいるようです。
夜間も熟睡できず、何度も目が覚めたり、夢が多く睡眠の質が低下しやすい点も特徴です。
すべての症状が揃う人は少なく、いくつかの症状のみ現れる場合もあります。
ナルコレプシーになる原因について解説
ナルコレプシーの原因は、現時点で完全には明らかになっていません。ただし、いくつかの背景要因が関与していると推測されています。
有力な仮説の一つに、脳内の神経伝達物質「オレキシン(ヒポクレチン)」の欠乏が挙げられます。
オレキシンは睡眠と覚醒のリズムを調整する役割を持つ物質ですが、ナルコレプシー患者ではこの物質が極端に減っている状態です。
この欠乏には自己免疫反応や感染症、遺伝的な素因などが関係している可能性が指摘されているため、今後の研究が期待されます。
また、HLA(ヒト白血球抗原)など特定の遺伝子型との関連が指摘されていますが、遺伝的な要素だけで発症が決まるわけではありません。
実際には、遺伝的な体質に加え、環境要因やストレス、頭部への衝撃、ウイルス感染など、さまざまな要素が組み合わさって発症に至ると考えられています。
このように、ナルコレプシーは多因子が関与する複雑な疾患であり、今後の研究が待たれています。
症状が現れた時の対策についても紹介
【ナルコレプシー症状が現れた時の対策】
- 夜間の十分な睡眠を確保する
- 規則正しい生活リズムを保つ
- 日中に短時間の仮眠を取り入れる
- 職場や学校に症状を伝える
- 運転や危険な作業を避ける
- 必要な治療や薬を継続する
- 休憩の取り方を工夫する
ナルコレプシーの症状が出た場合は、まず夜間の睡眠時間を十分に確保し、規則正しい生活リズムを心がけることが基本です。
日中にどうしても強い眠気を感じるときは、10〜30分程度の短い仮眠を計画的に取り入れると効果的でしょう。
また、職場や学校など周囲に自分の症状を伝えておくことで、理解や配慮を得やすくなります。
眠気による事故のリスクが高い運転や高所作業などは避けることが重要です。
医師の指導のもと、必要な薬物療法や生活指導を継続することも欠かせません。
休憩の取り方を工夫し、無理せず適切に対応することで、日常生活の安全と質を保てます。
ナルコレプシーには1型と2型がある?症状の違いなどを解説
ナルコレプシーには「1型」と「2型」の2つのタイプがあり、症状や特徴に違いがあります。
ここでは、それぞれの主な症状や発症年齢、特徴について解説します。
ナルコレプシー1型とは
1型は、日中に激しい眠気(過眠)を感じることに加えて、感情の変化によって突然筋肉の力が抜ける「カタプレキシー(情動脱力発作)」が現れるタイプです。
情動脱力発作とは、笑ったり驚いたりして感情が高ぶったときに、急に筋肉の力が抜ける症状を指します。
膝が崩れたり、顎が下がって話しづらくなることがあり、持続時間は数秒から2分程度です。この発作は日常生活に大きな支障をきたすことがあり、転倒やケガのリスクも伴います。
また、1型では脳脊髄液中のオレキシンAという神経伝達物質の値が著しく低下していることが多く、これが発症の大きな要因と考えられています。
発症年齢は10代から20代の若年層に多く、思春期に症状が現れるケースが目立ちます。
さらに、入眠時幻覚や金縛り(睡眠麻痺)、夜間の睡眠障害も併発しやすいことが特徴です。
診断には問診や睡眠に関する検査、オレキシン濃度の測定などが行われます。情動脱力発作がみられない場合でも、オレキシンAの値が低ければ1型と診断されるケースもあります。
ナルコレプシー2型とは
2型は、1型と同じく日中に強い眠気(過眠)が起こる点は共通していますが、「カタプレキシー(情動脱力発作)」が見られないことが特徴です。
代表的な症状は、急激な眠気によって思わず眠ってしまうことです。
また、眠りに入る際に鮮明な夢を見たり、金縛りのような体が動かなくなる現象が現れる場合もあります。ただし、感情の変化による脱力は起こりません。
2型では、脳脊髄液中のオレキシン濃度が正常か、軽度に低下している点が1型との大きな違いです。
発症年齢は1型と同様に10代から若年成人に多く見られますが、症状の重さは1型より軽い傾向があります。
また、2型は他の睡眠障害や精神疾患との区別が難しい場合もあり、診断には詳細な問診や睡眠検査が必要です。
夜間の睡眠障害や日中の眠気が生活に支障を及ぼすことも多いため、症状が続く場合は専門医の受診をおすすめします。
ナルコレプシーにかかった時に大切な5つのこと
ナルコレプシーと診断されたとき、日常生活をより快適に送るためには、正しい知識と周囲の理解、生活管理が欠かせません。
ここではナルコレプシーにかかった際に大切な5つのポイントをご紹介します。
病気を正しく理解する
まずはナルコレプシーという病気について正しい知識を持つことが重要です。
症状や原因、治療法、日常生活での工夫などを知ることで、自分自身の状態を客観的に把握できるようになります。
正しい情報を得ることで、不安や誤解を減らし、適切な対策や治療を選択しやすくなります。
また、医師や専門家のアドバイスを受けながら、信頼できる情報源から最新の知識を得ることも大切です。自分の症状や経過を記録しておくと、医療機関での相談にも役立ちます。
周囲の理解を得て配慮を仰ごう
ナルコレプシーは外見からは分かりにくいため、職場や学校、家族など身近な人に自分の症状を伝え、理解を得ることが大切です。
周囲に理解を求めておくことで、急な眠気や脱力発作が起こった際にもサポートを受けやすくなります。
例えば、会議中に短い仮眠を取る許可をもらったり、危険な作業を避ける配慮をしてもらうなど、具体的な協力をお願いしましょう。
無理をせず、自分の状態をオープンにすることで、安心して日常生活を送ることができます。
周囲の安全確保を行う
ナルコレプシーの症状は、思わぬ事故につながることがあります。
特に運転や高所作業、調理など危険を伴う行動では、眠気や脱力発作が起きやすい時間帯を避けるか、周囲の協力を得て安全対策を行うことが重要です。
職場や家庭での安全管理を徹底し、必要に応じて作業内容を見直しましょう。
自分だけでなく周囲の人の安全も守るために、リスクを正しく理解し、事前に備えておくことが大切です。
生活リズムの管理
規則正しい生活リズムを保つことは、ナルコレプシーの症状管理に欠かせないポイントです。
毎日同じ時間に起床・就寝し、夜間に十分な睡眠時間を確保しましょう。
日中に強い眠気を感じたら、短時間の仮眠を計画的に取り入れるのが効果的です。
さらに、就寝前にリラックスする時間を設けたり、カフェインやアルコールを控えたりして、睡眠の質を高める工夫も重要となります。
生活習慣を見直すことで症状の悪化を防ぎ、日中の活動がしやすくなるでしょう。
自分を責めないこと
ナルコレプシーは、本人の意志や努力だけではコントロールが難しい病気です。
症状があらわれても、「怠けている」「頑張りが足りない」と自分を責める必要はありません。
つらいときには、ひとりで抱え込まず、周囲や専門家に相談して適切なサポートを受けましょう。
自分を責めず、無理のない範囲で工夫を重ねることが、心の負担を軽くする一歩になります。
自分らしいペースを大切にしながら前向きに過ごすことが、長期的な症状の安定や生活の質の向上にもつながります。
ナルコレプシーの症状が出たら何科に行けば良い?
ナルコレプシーの症状が現れた場合、どの診療科を受診すべきか迷う方も多いでしょう。
ここでは、主な受診先である「神経内科」「精神科」「睡眠外来」の特徴や役割について詳しく解説します。
神経内科
神経内科は、脳や神経の疾患を専門に診る診療科で、ナルコレプシーをはじめとした睡眠障害にも対応しています。
特に、日中に強い眠気や感情による脱力発作(カタプレキシー)が見られる場合、神経内科での診断が有効です。
神経内科では、まず詳しい問診や睡眠に関する聞き取りを行い、必要に応じて終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)や睡眠潜時反復検査(MSLT)などの専門的な検査を実施します。
これらの検査によって、ナルコレプシーかどうかの判定だけでなく、他の神経疾患や睡眠障害との違いも明らかにします。
薬による治療や生活面でのアドバイスも受けられるため、日常生活に影響が出ている場合や、正確な診断を希望する方におすすめです。
初診時は紹介状が必要な場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
精神科(メンタルクリニック)
精神科やメンタルクリニックでも、ナルコレプシーの診断や治療が行われています。
特に、眠気のほかに気分の落ち込みや意欲低下など精神的な症状がみられる場合、精神科での受診が勧められます。
精神科では、睡眠障害全般の診断や、うつ病など他の精神疾患との鑑別も行います。
必要に応じて睡眠外来や神経内科への紹介も可能です。薬物療法だけでなく、生活リズムの調整やストレス管理など、総合的なサポートが受けられます。
日常生活や仕事・学業に影響が出ている場合や、どこを受診すべきか迷う場合は、まず精神科やメンタルクリニックに相談するのも一つの方法です。
睡眠外来
睡眠外来は、睡眠障害全般を専門的に診療する外来で、ナルコレプシーの確定診断や専門的治療が可能です。
ここでは、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)や睡眠潜時反復検査(MSLT)など、詳細な検査を行い、他の睡眠障害との鑑別や重症度の評価を実施します。
睡眠外来は、診断が難しいケースや、一般的な治療で十分な効果が得られない場合、または専門的なアドバイスや治療を希望する場合に特におすすめです。
多くの睡眠外来は予約制で、紹介状が必要な場合もあるため、事前に確認しましょう。
睡眠障害の専門医による診断・治療を受けることで、より適切な管理や生活指導が期待できます。
ナルコレプシーに関するよくある質問
ナルコレプシーについては、日常生活や仕事に大きな影響を与えるため、多くの方が疑問や不安を抱えています。ここでは、よくある質問とその答えを詳しく解説します。
ナルコレプシーになりやすい人はどんな人?
ナルコレプシーは思春期から若年成人に発症することが多く、男女比ではやや男性に多い傾向があります。
日本では約600人に1人が発症するとされ、世界的には1000人に1人程度の有病率です。
遺伝的な要素も関与しており、家族に同じ病気の人がいる場合、発症リスクが高まることが知られています。
また、脳内のオレキシン(ヒポクレチン)という覚醒を維持する神経伝達物質の異常が主な原因と考えられていますが、詳細な発症メカニズムはまだ解明されていません。
学業や仕事など多忙な時期に発症することが多く、日常生活を満足に送れない悩みを抱える人も少なくありません。
参考:DoctorBook「日中にくる異常な眠気、過眠症と呼ばれるナルコレプシーとは?」
参考:国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部「中枢性過眠症」
ナルコレプシーによる睡眠はどれくらい続く?
ナルコレプシーによる居眠り(睡眠発作)は、一般的に2〜3分から十数分といった短い時間で終わることがほとんどです。
長くても30分以内で、目覚めたあとは、眠気がすぐに解消されることが特徴的です。
しかし、2〜3時間経つと再び強烈な眠気に襲われることがあり、1日に何度も居眠りを繰り返します。
夜間の睡眠も分断されやすく、熟睡感が得られない場合が多いですが、1日の総睡眠時間は通常の範囲内です。
ナルコレプシーは命に関わる?
ナルコレプシーは、直接命に関わる病気ではありません。
しかし、強い眠気や突発的な睡眠発作によって、運転中や高所での作業中などに事故を引き起こすリスクが高まります。
さらに、日常生活や仕事、学業に支障をきたすこともあり、精神的なストレスや抑うつ状態につながる可能性もあります。そのため、適切な治療や生活習慣の管理が欠かせません。
症状が重い場合には、医師と相談しながら安全対策を講じることが重要です。必要なサポートを受けることで、生活の質を保つことは十分に可能です。
ナルコレプシーになると車を運転してはいけないって本当?
ナルコレプシーの患者は、突然襲ってくる強い眠気や睡眠発作を予測できないため、運転中に事故を引き起こすリスクが高くなります。
そのため、症状が安定していない場合や、医師から運転を控えるよう指導されている場合は、車の運転を避けることが強く勧められます。
また、運転免許の取得や更新時に、症状について申告が求められるケースもあります。
たとえ症状が落ち着いていても、長時間の運転や単調な走行は眠気を誘いやすいため、こまめな休憩や仮眠を取り入れるなど、安全対策を十分に講じましょう。
自分自身だけでなく、周囲の安全を守るためにも、主治医と相談しながら慎重に判断することが大切です。
参考:岡崎メンタルクリニック「実は危険!?ナルコレプシー(過眠症)の特徴と対策について解説」
まとめ
ナルコレプシーは、日中に激しい眠気や急な居眠りが生じるほか、感情の変化によって筋肉の力が抜ける発作が見られることを特徴とする睡眠障害です。
原因はまだ完全には解明されていませんが、神経伝達物質に関連する異常が関与していると推測されています。
根本的な治療法は確立されていないため、生活習慣の見直しや短時間の仮眠、薬物療法などによって症状をコントロールすることが中心となります。早めに医療機関を受診することが重要です。
この記事を書いた人

エレビスタ ライター
エレビスタは「もっと"もっとも"を作る」をミッションに掲げ、太陽光発電投資売買サービス「SOLSEL」の運営をはじめとする「エネルギー×Tech」事業や、アドテクノロジー・メディアなどを駆使したwebマーケティング事業を展開しています。
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