年収の壁とは?一覧を一挙紹介!扶養や手取りに起こる変化をわかりやすく解説

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年収の壁とは、特定の年収を超えることで税金や社会保険料の負担が増え、手取りが減ってしまう境目のことを指します。

パートやアルバイトで働く人にとっては、「どこまで働くか」を考えるうえで避けて通れない存在です。

扶養や控除、社会保障の仕組みが絡むため、正しく理解していないと働き損になることもあります。

近年では制度の見直しも進んでおり、自分に合った働き方を選ぶためには、各ラインの意味や影響を知っておくことが重要です。

年収の壁とは?主な概要を紹介

アルバイトなどの雇用形態で働いている人が、一定の年収を超えないように仕事を抑えているのが「年収の壁」と呼ばれる問題です。

所得税や社会保険の制度によって、ある年収ラインを超えると手取りが減ってしまうことがあるため、あえて働く時間を調整する人が増えています。

たとえば103万円を上回った際は所得税が生じ、130万円を超えると配偶者の扶養から外れて社会保険料を支払う必要が出てきます。

こうした制度上の区切りが、働きたい人の意欲にブレーキをかけてしまうのです。

これは人手不足が進む今、大きな社会課題でもあります。

年収の壁はいくつかあり、それぞれに異なる制度が関係しています。

6つの年収の壁を一挙紹介

年収の壁には複数のラインがあり、それぞれ税金や社会保険の仕組みと関係しています。

ここでは「100万円〜201万円」までの6つの主な壁を紹介し、それぞれの意味と注意点をわかりやすく解説します。

どのラインで何が変わるのかを知ることで、損しない働き方のヒントが見えてくるでしょう。

100万の壁

「100万の壁」とは、主に住民税がかかってくる年収のラインを指します。

パートなどで働いている人が年収100万円を超えると、原則として住民税の課税対象となります(※自治体によっては非課税枠が93万円〜100万円の間で変わることもあります)。

このラインを意識している人は多く、年収が100万円を上回ると実質的に手取りが少なくなってしまうように感じてしまうので、働き方を調整する人も少なくありません。

しかし、実際の負担額は数千円〜1万円程度であることが多く、労働時間の調整による収入減の方が大きな影響を与える場合もあります。

住民税は自治体によって非課税ラインが微妙に違うため、正確な情報はお住まいの自治体サイトを確認するのがおすすめです。

103万の壁

「103万の壁」は、所得税の課税が始まる基準となる年収ラインです。

配偶者の扶養に入っている人が年収103万円を超えると、本人に所得税が課されることになります。

また、103万円を超えると配偶者控除の対象外となり、配偶者が受けられる所得控除が減ることもあるため、世帯全体の税負担が増える点にも注意が必要です。

ただし、実際にかかる所得税は大きな額ではなく、年収が増えることで手取りが目減りするとは限りません。

むしろ「103万円以下に抑える」という固定観念のほうが、収入を伸ばすチャンスを失うことにもつながります。

配偶者控除や所得税の仕組みを正しく理解し、必要に応じて税務署や国税庁の情報を参考にすることが大切です(参考:国税庁「配偶者控除」)。

106万の壁

「106万の壁」は、社会保険の加入義務が発生するラインのひとつで、特に注目度が高い年収基準です。

具体的には、一定の条件(週20時間以上勤務・1年以上の雇用見込み・従業員101人以上の企業など)を満たす際、年収が106万円を超えると健康保険と厚生年金の加入対象になります。

これにより、保険料が給与から天引きされるため、「手取りが減る」と感じる人が多く、働くのを抑える理由になっています。

ただし、社会保険に入ることで、将来の年金が増えたり、医療費の負担が軽減されたりと、長期的に見るとメリットも大きいです。

短期的な損得だけでなく、ライフプラン全体を見据えて判断することが重要です。

特に若い世代にとっては、加入しておくことで将来の保障を得るという視点も欠かせません。

130万の壁

「130万の壁」は、配偶者の扶養から外れるかどうかの重要な基準です。

年収が130万円を超えると、原則として健康保険と年金の扶養対象外となり、自身で社会保険に加入する必要が出てきます。

このラインを意識して働く人は非常に多く、保険料の負担が一気に増えるため「手取りが大幅に減る」と敬遠されがちです。

特に中小企業や主婦層では、130万円以下に収入を調整する「就労セーブ」が常態化しています。

とはいえ、130万円を超えて働く時でも、保険加入による保障や年金額の増加などのメリットがあります。

また、政府はこの壁に対して「扶養継続の特例措置」などの対応も進めています。

損得だけでなく、「自分で社会保障を持つこと」の意味も含めて、正しく理解したうえで働き方を選ぶことが大切です。

150万の壁

「150万の壁」は、配偶者特別控除が段階的に減っていくラインのひとつです。

配偶者が年間を通じて稼ぐ金額が150万円を上回ると、配偶者控除の金額が減額され、最終的には201万円の時点で控除がなくなります。

つまり、103万や130万の壁と違って急に税金や保険料が発生するのではなく、控除の額が徐々に減っていく「グラデーション型」の壁です。

そのため、150万円を超えたからといって急に手取りが減るわけではありません。

ただし、世帯全体の税負担はじわじわと増えるため、「壁」として意識されやすいポイントでもあります。

特に共働き世帯にとっては、税制面での損得を計算しながら働き方を考える場面が多くなります。

一方で、年収を上げれば控除が減っても手取りが増えることがほとんどです。

201万の壁

「201万の壁」は、配偶者特別控除が完全になくなるラインです。

配偶者の年収が201万円を超えると、配偶者控除・配偶者特別控除のどちらも受けられなくなり、扶養している側の所得税が増えることになります。

これによって、世帯全体の税負担が確実に上がるため、働き方や家計への影響を事前に理解しておく必要があります。

ただし、201万円を超えるような働き方を選ぶ場合、本人の収入も十分に増えていることが多く、最終的には手取りも上回るケースが一般的です。

この壁を超えるタイミングでは、世帯全体で家計を見直し、「どちらが働くか」「働き方をどうするか」を話し合う良い機会にもなります。

「201万円を超えたら損」ではなく、税制が変わるだけの話であり、総合的な収支を見ながら判断することが大切です。

年収の壁による従業員と企業への影響

年収の壁は、働く人の手取りや扶養の状態だけでなく、企業の運営にも影響を与えています。

従業員が働き方を調整することで、企業側も人手不足や管理の負担に直面することになります。

ここでは、年収の壁がもたらす具体的な影響を「働く人」と「企業」に分けて詳しく解説します。

従業員への影響

年収の壁があることで、パートやアルバイトなどの働く人にさまざまな負担がかかっています。

特に手取り収入の変化や扶養の扱いに直結するため、慎重に働き方を調整する人も少なくありません。

こうした「制度に合わせて働き方を制限する」という状態は、本人の働く意欲や成長機会を奪う場合もあります。

本来であればスキルや希望に応じて働けるはずなのに、「扶養内におさめたいからシフトを減らす」などの判断をせざるを得ない場面もあるのです。

ここでは、年収の壁が従業員にもたらす具体的な影響について、3つの観点から見ていきましょう。

手取り収入の減少

壁を超えると、税金や保険料がかかり、それまでと比べて手取り収入が減ることがあります。

たとえば、106万円や130万円を超えて社会保険の加入義務が生じると、保険料が給与から差し引かれるため、見かけの給与が上がっても実際の手取りが減ってしまうこともあります。

そのため、「少し多く働いただけで損をするように感じる」人が多く、収入の伸びにブレーキがかかってしまいます。

しかし、社会保険に加入することで将来的に年金が増えたり医療保障が充実するなどの利点もあるため、目先の手取りだけで判断するのはもったいないとも言えます。

短期的な手取りと長期的な保障、どちらを優先するかは家庭の状況やライフプランによって異なります。

扶養から外れ家計へ影響

年収が一定額を上回ると、配偶者の扶養でいられなくなってしまうことがあります。

例として、130万円を上回ることで、年金や健康保険の扶養に入れず、保険料を自ら用意しなければなりません。

これにより、世帯全体の支出が増えるため、「家計の中で損した」と感じる人も少なくありません。

特に共働き世帯では、配偶者控除や特別控除の適用が変わることで、夫婦どちらかの所得税が増えることもあります。

しかし、社会保険に入ることは、自立した保障を得る一歩でもあります。

家計への影響は確かにありますが、将来のリスク管理としては前向きに捉えるべき側面もあるのです。

働く時間や収入の調整が必要

年収の壁を意識することで、多くの人がシフトや労働時間を自ら調整するようになります。

「このままだと103万円を超えてしまう」「130万円に届かないように働こう」といった形で、自分の収入を意図的にセーブすることは珍しくありません。

これは一見合理的な判断にも思えますが、働きたいのに働けないジレンマや、労働意欲の低下にもつながります。

また、職場によっては「もっと入ってほしいのに断られる」というミスマッチも生じます。

本来、働き方は自分の意思と状況に応じて柔軟であるべきですが、制度の枠に合わせて無理に調整することは、長い目で見ると不利益にもなりかねません。

企業への影響

年収の壁が影響を及ぼすのは従業員だけではありません。

実は企業側も、これにより人材の安定確保や業務運営に支障をきたすことがあります。

従業員が「扶養から外れたくない」「税金が増えるのは困る」といった理由で働く時間を調整する結果、シフトが埋まらない・繁忙期に人が足りないといった問題が発生します。

また、壁を超えたことで社会保険に加入するパターンが増えると、企業側にも保険料の負担や事務手続きの手間がかかります。

ここでは、企業が直面する「年収の壁」の影響を、労務管理と人材確保の観点から詳しく見ていきましょう。

労務管理コストの増加

従業員が社会保険の加入ラインを超えると、企業側も保険料の一部を負担する必要が出てきます。

たとえば厚生年金や健康保険では、事業主と従業員が折半で保険料を負担するため、対象者が増えれば企業負担も増加します。

また、加入・脱退の手続きにかかる事務処理や、年収調整の相談対応、就業時間の調整など、労務管理の業務量が複雑化します。

特に中小企業ではこうした管理にかけられる人手や時間が限られているため、現場の負担がより重くのしかかる傾向があります。

つまりは、年収の壁は単なる従業員の話にとどまらず、企業経営にも見えないコストとして影響しているのです。

人手不足やシフト調整の困難化

「このままだと130万円を超えてしまうので、今月はもうシフトに入れません」といった声は、パートやアルバイトを多く抱える職場でよく聞かれます。

年収の壁を意識する従業員が勤務時間を減らすことで、企業側は急な人手不足に陥ることがあります。

特に飲食店や小売店などシフト制を採用している業種では、壁を意識した就労調整が広がると、シフトの穴埋めが非常に困難になります。

ベテランのパートが毎年秋ごろになると稼働を抑える、という事例も珍しくありません。

このように、制度に振り回される形で現場運営が不安定になるのは、企業にとって大きな痛手です。

年収の壁に対して政府の対策を紹介

年収の壁による働き控えをなくすため、政府はさまざまな対策を打ち出しています。

対象となる年収ラインや制度ごとに内容は異なりますが、主な対策を押さえれば、働き方の選択肢が広がります。

ここでは103万・106万・130万円の壁に対する政府の主な支援策をわかりやすく解説します。

103万の壁に対する対策:160万へ見直し

「103万の壁」は、配偶者控除の対象となるかどうかを分けるラインとして多くの人に意識されてきました。

しかし、政府はこの壁による就労調整を緩和するため、控除対象の年収上限を「150万円まで」に引き上げ、さらに配偶者特別控除の対象も「201万円」まで拡大しました。

これにより、配偶者の年収が103万円を少し超えても、すぐに税負担が大きくなるということはなくなりました(※参考:国税庁「配偶者特別控除」)。

以前よりも柔軟に働ける制度に改善されており、「160万円を超えるまでは控除が段階的に減る仕組み」になっています。

今まで「103万円を意識して働き控えていた」方にとっては、大きな前進です。

配偶者控除の仕組みを正しく理解することで、自分に合った働き方を選びやすくなります。

106万の壁に対する対策:社会保険適用時処遇改善コース

106万円を超えると社会保険に加入する必要があります。

この106万の壁を理由に、就労を控える人が後を絶ちません。

そこで政府は、企業に対して「社会保険適用時処遇改善コース」という支援策を導入しました。

この制度では、対象となるパート・アルバイトに対して賃上げや労働時間の延長、正社員化などを行った企業に対し、最大57万円の助成金が支給されます。

保険適用によって増える企業側の負担を減らすことで、働く人が安心して「壁を超える」環境を整えることが目的です。

労使双方の負担軽減と安定就労を支援する制度であり、企業にとっても人材確保のチャンスといえるでしょう。

130万の壁に対する対策:扶養継続を認める特例を導入

「130万の壁」を超えると、配偶者の扶養から外れて自分で社会保険料を負担しなければならないことから、多くの人がこのラインを気にして働き方を調整しています。

そこで政府は、2023年より「一定の条件下であれば扶養を継続できる特例措置」を始めました(参考:厚生労働省「「130万円の壁」への対応」)。

これは、短期間の収入増加や一時的な就労拡大によって130万円を超えてしまった際でも、直ちに扶養から外れることがないように配慮されたものです。

そのため、「たまたま一時的に収入が増えただけ」で扶養を外れるリスクを回避でき、安心して柔軟な働き方が可能になります。

特に繁忙期に少し多めに働きたい人や、臨時収入がある人にとって、ありがたい措置といえるでしょう。

年収の壁に関するよくある質問

年収の壁にまつわる制度は複雑で、「結局どこを気にすればいいの?」という疑問を抱える方も多いはずです。

ここでは、特に多く寄せられる5つの質問に答えながら、制度の基本と最新情報をわかりやすく整理します。

年収の壁って具体的に何を指すのか?

「年収の壁」とは、税金や社会保険の制度上、一定の年収を超えることで手取り額や扶養の扱いが大きく変わる基準ラインのことです。

具体的には、100万・103万・106万・130万など、さまざまな壁があります。

なぜこのラインが重要かというと、たとえば103万円を超えると所得税がかかり、130万円を超えると配偶者の扶養から外れて社会保険料の負担が発生するため、働いても手取りが増えない、または減ることがあるからです。

このような仕組みが「働く意欲をそぐ原因」として問題視されており、政府も対策に乗り出しています。

年収の壁とは制度によって働き方が制限される境目といえるでしょう。

106万の壁と130万の壁は何がどう違うのか?

2つとも社会保険に関わってきますが、適用される条件が変わってきます。

106万円の壁は、20時間より長く一週間で働き、1年より長く雇用される見込みがある、かつ企業で働いている人の人数が101人を上回っているなど、条件を満たすと社会保険に加入が必要になります。

130万円の壁は、それらの条件に当てはまらない小規模事業所などに勤務する時の基準で、年間に稼ぐ金額が130万円を上回ると扶養ではいられず、保険加入が義務になります。

106万円の壁は「企業規模と労働条件」がポイントで、130万円の壁は「年収そのもの」が基準になります。

どちらも手取りに影響するため、自分の働き方に応じてどの壁が関係するのかを把握することが大切です。

1度不要に外れたらもう戻れない?

結論から言えば、扶養から外れた後も条件を満たせば再度扶養に戻ることは可能です。

たとえば、年収が減って130万円未満となったり、週の労働時間が20時間未満になったりした際には、配偶者の扶養に再度入ることができます。

ただし、手続きには時間がかかる場合や、保険者側の審査が必要になるため「自動的に戻れる」わけではありません。

また、職場や保険組合ごとに運用の違いがあるため、事前の確認が大切です。

「一度外れたら戻れない」と誤解している人も多いですが、実際には柔軟に見直しが可能です。

状況が変わった際は、扶養者の勤務先の担当部署や保険組合に相談することをおすすめします。

社会保険に加入するとどれくらい引かれる?

社会保険に加入すると、健康保険料と厚生年金保険料が給与から天引きされます。

負担額は収入や地域、保険組合によって異なりますが、おおむね年収130万円前後で年間20〜30万円程度が引かれると見ておくと良いでしょう(参考:日本年金機構「保険料額表」)。

手取り額が減るため「損」と感じる人もいますが、実は将来の年金受給額が増えたり、医療費が軽減されたりといったメリットもあります。

特に厚生年金は自営業者より手厚い保障があり、長期的に見ると社会保険に加入していたほうが有利になることもあります。

目先の手取りだけでなく、将来のリスクや老後の安定もふまえて判断しましょう。

現在政府が見直しを検討している壁はある?

政府は現在も年収の壁による就労抑制を問題視しており、特に106万円・130万円の壁に対する見直しを重点的に検討しています。

たとえば、130万円の壁については「短期間の収入増なら扶養継続を認める特例措置」が2023年から導入されました。

また、106万円の壁に対しては「社会保険適用拡大」の一方で、企業に助成金を出す制度(処遇改善コース)などの支援策も進められています。

今後、さらに適用条件や扶養認定の柔軟化などが議論される見込みであり、最新情報は厚生労働省の公式サイトなどで確認するのが安心です。

まとめ

「年収の壁」は、働く人にとって「どこまで働くか」「どこで抑えるか」を考える大きな分かれ目となっています。

100万円から201万円まで、壁ごとに関係する税金や社会保険の制度が異なり、それによって手取りや扶養、働き方に影響を与えます。

本記事では、それぞれの壁の意味や、従業員・企業への影響、そして政府の対策まで詳しく紹介してきました。

制度を正しく理解すれば、「損をしない働き方」や「将来を見すえた選択」がしやすくなります。

また、年収の壁は今後も見直しが進む可能性が高く、最新の制度を知っておくことも重要です。

「なんとなく壁を避ける」のではなく、自分や家族にとって何が一番よいのか、ライフプランに合わせた判断をしていきましょう。

迷ったときは、税務署や年金事務所、職場の総務担当など専門機関に相談するのもひとつの手です。

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この記事を書いた人

エレビスタ ライター

エレビスタは「もっと"もっとも"を作る」をミッションに掲げ、太陽光発電投資売買サービス「SOLSEL」の運営をはじめとする「エネルギー×Tech」事業や、アドテクノロジー・メディアなどを駆使したwebマーケティング事業を展開しています。

エレビスタは「もっと"もっとも"を作る」をミッションに掲げ、太陽光発電投資売買サービス「SOLSEL」の運営をはじめとする「エネルギー×Tech」事業や、アドテクノロジー・メディアなどを駆使したwebマーケティング事業を展開しています。

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