ポリコレとは?映画やゲームがつまらない・うざいと言われる理由ややりすぎといわれている理由を徹底解説

img

以前は、女性の職業に「看護婦」「保母」「スチュワーデス」という名称が使われていました。しかし現在は、性別に関係なく「看護師」「保育士」「客室乗務員」と呼ばれています。これは職業におけるポリコレの一例です。他にも、商品名が差別的な表現に当たるとして、販売を中止した例がありました。とりわけ企業経営においてポリコレは今、避けては通れなくなっています。

一方でポリコレに対して、「意識しすぎ」「つまらなくなる」という声もあります。

この記事では、ポリコレとは何か、具体事例や求められるようになった理由、問題点、企業が取り組むべき理由・ポイント、SDGsとの関係について解説します。

ポリコレとは

ポリコレとは、「ポリティカル・コレクトネス(political correctness) 」の略で、「政治的妥当性」「政治的正当性」という意味があります。他者に対して、人種、性別、国籍、宗教、年齢、障がいなどを理由とした「差別的な表現を正す」という考え方です。英語の頭文字をとって「PC」とも呼ばれることもあります。

例えば、以前は看護師の男性を「看護」、女性を「看護」と呼んでいました。昭和23年(1948年)に公布された「保健婦助産婦看護婦法」では、「看護婦」のように女性を表す「婦」という言葉が使われていました。しかし平成14年(2002年)3月には、「保健師助産師看護師法」という法律名に改正され、男女共に「師」にあらためられました。これは、職業において性差別をなくしたポリコレの一種です。

ポリコレが使われだした時期

ポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)という言葉がいつごろ使われ始めたのかには、いくつかの見方があります。そのうちの一つは、1917年のロシア革命後の、マルクス・レーニン主義の用語であったというものです。

当時は、旧ソビエト共産党の政策と原則を守ることを表す用語として使われていました。1970年代後半から1980年代前半には、リベラルな政治家が一部の左翼の過激主義に対して使用するようになります。

そして1990年代初めになると、アメリカの大学のリベラルなカリキュラムに反対して使われるようになりました。[i]

現在では、アメリカや日本をはじめ、世界各国に広がっています。

ポリコレの歴史

ポリコレの概念的なルーツは、1960年代から70年代にかけての米国の公民権運動フェミニズム運動にあります。
これらの運動は、社会に深く根付いた差別的な構造や無意識の偏見を問い直すことを目指しました。

特に、人種、性別、性的指向、障害などに基づく差別的な言葉遣いや固定的なな表現を改めることが、意識改革と社会変革に不可欠だと考えられたのです。当時は「ポリコレ」という言葉こそ使われませんでしたが、言葉が持つ力を重視し、より調和的な社会を目指すこの試みが、後の議論の土台となりました。

なぜポリコレが求められるようになった?

ポリコレが求められるようになった背景には、主に3つの要因があると考えられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

多様性がもたらす豊かな社会の実現

日本をはじめ世界では、多様性を尊重する方向に向かっています。なぜなら、多様性のある社会では、各々の考えが相互に作用し、新しい発想やイノベーションが生まれやすいからです。ポリコレにより差別的な表現を是正することで、多様な人材が生きやすい状況が生まれます。そのような環境の中では、人種や性別、国籍、宗教、年齢、障がいなど、多様な背景を持つ人材が、それぞれの能力を十分に発揮することが可能です。結果として、豊かな社会の創造につながり、持続可能な未来につながります。

社会的な規範に対する企業の責任

世界が多様性を尊重する方向に向かう中で、企業の動きも注目されています。企業活動において、ポリコレは社会の中での信用や企業価値の向上につながるからです。商品や広告、採用などにポリコレを適用すれば、企業の姿勢と責任を対外的に示すことができます。また、顧客やステークホルダーへのアピールになるほか、事業運営に良い影響をもたらすことが期待できるでしょう。反対に、ポリコレを無視した企業は、社会的な非難を浴びかねない状況であることも確かです。

ポリコレのメリット

ポリコレの最大のメリットは、多様な人々が互いに尊重し合い、誰もが疎外感を感じにくい社会環境を目指せる点にあります。

具体的には、人種、性別、障害、性的指向などに基づく差別的な表現や、無意識の偏見を避けることが推奨されます。これにより、これまで社会の中で不利な立場に置かれがちだった人々への配慮が促され、個人の尊厳が守られます。

また、言葉遣いや表現を見直すプロセスは、私たち自身のうちにある偏見に気づき、是正するきっかけともなります。結果として、教育現場や職場など、あらゆる場面で不要な摩擦や対立を減らし、より多くの人が安心して参加し、能力を発揮できる「インクルーシブ(包摂的)な環境」づくりに貢献します。

ポリコレの問題点

ポリコレは、多様性を尊重する社会の実現を目指す一方で、問題があることも指摘されています。

 言葉狩り

1つは、「言葉狩り」です。言葉狩りとは、差別や偏見を含んだ言葉を過剰に排除することを言います。

ただし、どこからどこまでが言葉狩りに該当するのかというはっきりした定義はありません。そのため、何を言葉狩りと判断するのかは難しいところです。

例えば、鹿児島には「薩摩(さつま)狂句」という鹿児島弁の川柳があります。

ところが「狂句」という言葉は差別や偏見を含んでいるとして、「薩摩郷句」と言い換えているメディアが複数あります。一部には、これは言葉狩りであるという見方もあります。

表現の自由

もう1つは、「表現の自由」です。アニメや漫画、ゲーム、映画、テレビ番組、芸術などで行き過ぎた配慮をするあまり、作品が持つ本来の意味が失われることが懸念されます。創作活動や企業活動に制限がかかり、創造性が退化していくことで社会にも何らかの影響を及ぼすことが考えられます。また一方で、言論を封じる可能性があるという意味では、民主主義の根幹にも関わる問題です。

「言葉狩り」「表現の自由」この2つの問題は、今後ポリコレとのバランスをどう保つかが議論のポイントになるでしょう。

やりすぎてつまらない・うざいといわれている

ポリコレが進められていく中で、この状況に嫌気がさしている人も少なくありません。先の映画やゲームの例で取り上げた、人種の問題がそうです。美男美女が登場しないゲームに、「面白くない」「魅力がない」という意見もあります。表現が制限されることで、ゲームの本来の目的である楽しみが奪われていると考える人がいるのも事実です。

身近にあるポリコレの表現例と映画やゲームでの使われ方

ポリコレはどのような場面で行われているのでしょうか。下記3つの視点と実際にどのようにゲームや映画などで使われているか、具体事例を見ていきましょう。

  1. 人種における表現
  2. 性別における表現
  3. 指向・思想における表現

人種における表現

特定の人種を指す呼び方がポリコレに反するとして、あらためられた例があります。その一つが、アフリカ系アメリカ人です。アフリカ系アメリカ人は「ブラック(Black)」と呼ばれていましたが、「アメリカン・アフリカン(American African)」になりました。また、アメリカ先住民は、「インディアン(Indian)」と呼ばれていましたが、今は「ネイティブ・アメリカン(Native American)」となっています。

他にも、日本では、色鉛筆やクレヨンの色に「はだいろ(肌色)」がありました。しかし、人の肌の色に対して固定観念を与える可能性があるため、一部の文具メーカーは「うすだいだい」と呼称を変えています。また2021年には、ファミリーマートのプライベートブランド(PB)から「はだいろ」というカラーの女性用下着が販売されます。しかし、これが不適切な表現であったとし、回収に至ったというニュースがありました。その後、カラー名を「ベージュ」に変更しています。[ii]

性別における表現

近年、特定の性別を連想する言葉が、ポリコレによりすべての人に使用できる表現に変わっています。例えば、カメラマン、チェアマン、ビジネスマンなど、男性という意味がある「マン(man)」を使用せず、「フォトグラファー」「チェアパーソン」「ビジネスパーソン」というような性別によらない呼び方が使用されるようになりました。

日本においても、スチュワーデスは「客室乗務員」「キャビンアテンダント」保母・保父は「保育士」、先の例にある通り看護婦は「看護師」にあらためられています。また報道などでは、主に小さな子どもに使う「くん(君)」や「ちゃん」という敬称も、「さん」に統一されることが多くなりました。アメリカでは、性別を表す「彼(he)」「彼女(she)」が個人の性に配慮していないとして、「彼ら(they)」「それ(it)」に置き換えられる場面もあるようです。

指向・思想における表現

ポリコレにより、LGBTQ+のような多様な性自認や性的指向を尊重する動きも始まっています。アンケートの性別記入欄には、「男性」「女性」の他に、「回答しない」という選択肢が設けられているフォームが見受けられるようになりました。カリフォルニアでは、結婚すると「夫」や「妻」ではなく、性別に関係のない「パートナー」という呼び方が多く使われています。

宗教に対する差別的な表現についても、ポリコレの対象です。知識や理解の不足により、特定の宗教やそれを信仰する人への言葉が、差別や偏見を生む場合があります。この問題は、個人的に人を傷つけるのはもちろんのこと、政治に関わる場面でも起きています。

また、「メリークリスマス」とあいさつをするクリスマスは、キリスト教のイベントです。特定の宗教の表現なので、他の宗教を信仰している人には本来向きません。そこで「ハッピーホリデーズ(良い休暇を)」という表現が代わりに使われることがあります。ただし、これは「行き過ぎだ」「意識しすぎ」という意見もあります。

ポリコレで話題になっている作品

ディズニー

ディズニーは、近年の実写映画化プロジェクトにおいて、ポリコレをめぐる議論の中心にいます。

2023年に公開された実写版『リトル・マーメイド』では、アニメ版で白人として描かれていた主人公アリエル役に、アフリカ系の歌手ハリー・ベイリーが起用されました。
これに対し、「#NotMyAriel(私のアリエルじゃない)」というハッシュタグがSNSで拡散するなど、原作のイメージを重視する層から強い反発が起こりました。
一方で、多様性を推進する動きとして、このキャスティングを歓迎する声も多く上がりました。

同様に、実写版『白雪姫』では、”雪のように白い肌”を持つとされる主人公に、ラテン系のレイチェル・ゼグラーがキャスティングされたことが物議を醸しました。さらに、ゼグラーがオリジナル版を「時代遅れ」と評したことも、ファンの反感を買う一因となりました。

こうした状況を受け、ディズニーのボブ・アイガーCEOは2023年11月、「近年の作品はメッセージ性に偏りすぎていた」「一番は楽しませることだ」と述べ、エンターテイメント性を重視する方針へと舵を切る姿勢を示しました。これは、企業側もポリコレと商業的成功のバランスに苦慮していることの表れと言えるでしょう。

ポケモン

長年、幅広い世代に愛されてきた「ポケモン」シリーズも、ポリコレをめぐる議論と無縁ではありません。

2025年発売予定の新作『Pokémon LEGENDS Z-A』では、過去作に登場した「ふりそで」というトレーナーのデザインが大幅に変更されたことが明らかになり、ファンの間で大きな話題となりました。特に、人気キャラクター「キリカ」の容姿の変更に対し、SNSでは「改悪だ」「ポリコレに配慮しすぎ」といった批判的な意見が噴出しました。
一方で、多様なキャラクターデザインを肯定的に捉える声も見られ、ファンの間でも意見が分かれています。

その他の作品

ゲーム業界全体を見ても、ポリコレをめぐる議論は絶えません。2025年発売予定の『アサシン クリード シャドウズ』は、安土桃山時代の日本を舞台としながら、主人公の一人に黒人侍「弥助」を起用したことで大きな論争を巻き起こしました。「歴史の改竄だ」という批判に対し、開発側は歴史的考証に基づいていると反論していますが、プレイヤーが期待する「侍」像との乖離が炎上の原因となっています。

また、2024年に配信された『スター・ウォーズ:アコライト』も、主演女優の過去の発言や、アジア人ジェダイの起用などを理由に「ポリコレ的すぎる」との批判を受けました。しかし、作品の内容自体は「ミステリーとして面白い」と評価する声も多く、ここでも賛否が分かれています。

以下に、ポリコレに関する推進派と反対派の主な主張をまとめます。

推進派の主張反対派(多くのゲーマー)の主張
表現について多様な人々が表現されるべきだ魅力的なキャラクターで非日常を体験したい
物語について現代社会の問題を反映させるべきだゲームの世界観や設定を尊重してほしい
企業の役割社会的責任としてDEIを推進すべきだ面白いゲームを作ることが最大の責任だ
評価の基準包括性やメッセージ性が重要だ純粋な「面白さ」や「楽しさ」が全てだ

エンタメ界においてポリコレは、SDGsが目指す多様な社会の実現のために重要です。しかし適用を誤れば分断を招き、作品の魅力を損ってしまいます。ポリコレ導入の成功の鍵は作り手のメッセージと受け手の期待のバランスにあるのではないでしょうか。多様性が面白さを犠牲にするのではなく、豊かな物語を生んでいくことを願うばかりです。

それでも企業がポリコレに取り組むべき理由とメリット

ポリコレには賛否両論ありますが、それでも企業がポリコレに取り組むべき理由はあります。2つの主なポイントを見ていきましょう。

ダイバーシティ経営の推進

ダイバーシティ経営とは、多様な人材が、各々の能力を発揮できる機会を提供することでイノベーションを生み出し、価値創造につなげる経営を言います。

性別、年齢、人種や国籍などの多様性を持った人が、組織の中で活躍できる環境を作ることで、生産性や競争力を上げることが狙いです。

日本では少子高齢化が進み、人材の確保は企業にとって大きな課題となっています。また、ライフスタイルの多様化やSNSなどによる嗜好の個別化により、市場のニーズはさまざまです。

これらに対応するためには、企業はダイバーシティ経営を推し進めて、経営を強化していく必要があります。

ポリコレは、差別的な表現によって多様な人材が排除されることを防ぎ、一人一人が生き生きと働くことのできる場を作る一つの手段です。

そうして優秀な人材を集め、革新的なアイデアを生んでいくことができれば、企業活動に良い影響をもたらします。企業が将来に向かって継続的に発展していくために、ポリコレは一定の役割を担っていると言えるでしょう。

企業価値の向上

もう一つは、ポリコレを行っているかどうかで、企業の姿勢が問われているという側面があることです。ポリコレに無関心でいると、インターネット上で批判が殺到する「炎上」になりかねません。一度炎上すると、社会からの信用が失われ、ブランド力の低下につながります。

炎上とは少しニュアンスが異なりますが、2020年12月にネットで呼びかけられた署名活動が波紋を呼んだ例があります。署名活動の内容は、ファミリーマートのお惣菜ブランドの名前を変えたいというものでした。

ファミリーマートでは、2017年から「お母さん食堂」というお惣菜シリーズを発売。しかし、「お母さんが料理をするものだという考えはジェンダーの問題に関わる」として、名前の変更を求めたのです。

結果的に、目標署名数は達成できませんでしたが、大きな話題になりました。「お母さん食堂」は、2021年10月に「ファミリーマートコレクション」というブランドに統合されるのと同時になくなっています。

その理由は「イメージアップのため」としていますが、この署名活動がきっかけになったかについては触れられていません。しかし、少なからず影響していると見られています。[iii]

現在、ポリコレは社会の人々の注目を集めているため、企業にとって無視できないものとなっています。企業価値を傷つけないためにも、ポリコレに取り組む必要があるでしょう。では、どのような取り組みが必要なのでしょうか。次に詳しく見ていきましょう。

企業がポリコレに取り組むためのポイント

イメージ画像

ポリコレは、企業活動の中のさまざまな場面に当てはめることができます。まずは、どのような目的に向かって、何を進めていくのかをイメージした上で、取り組みを始めましょう。

企業がポリコレに取り組む際のポイントは、

  1. メリットとデメリットを理解する
  2. 企業経営における3つの場面の対策を行う

上記の2点です。

企業がポリコレを行うメリットとデメリット

何のためにポリコレを行うのかを明確にするために、メリットとデメリットを整理しましょう。

メリット

企業にとってのポリコレのメリットは、市場での優位性を保持し、新たな価値を創出する一つの材料になることです。多様性を持った人が働きやすい環境を提供することで、新たな価値観を持つ優秀な人材を集めることができます。

そこではイノベーションが生まれやすく、市場での競争力が高まることが期待できます。

また、自社の提供する製品やサービスにおいてポリコレを行うことで、顧客やステークホルダーからの信頼を獲得できるでしょう。自社のブランディングとして、新たな価値を付加することが可能です。

デメリット

一方のデメリットは、自社の製品やサービスがポリコレに縛られ過ぎると、画一的になり、他社との差別化に工夫が必要になることです。

先に紹介したファミリーマートのプライベートブランド名の例にもあるように、ポリコレに配慮した場合、使用できない表現は増えます。

そのため、限られた表現を使いながら、新しさや独自性のある製品やサービスを展開していく難しさがあるでしょう。

企業経営における3つの場面の対策を行う

ポリコレのメリットとデメリットを踏まえた上で、必要な対策を進めていきます。「求人広告・採用活動」「社内の制度や文化」「製品・サービス・広告」の3つの場面に分けてまとめています。

求人広告・採用活動

企業で行う求人広告や採用活動は、ポリコレの観点が求められる場面の一つです。重要なのは、性別を理由とする差別などを禁止する「男女雇用機会均等法」を順守することです。

男女雇用機会均等法は、募集・採用、配置(業務の配分及び権限の付与を含む)・昇進・降格・教育訓練、一定範囲の福利厚生、職種・雇用形態の変更などについて、性別を理由とする差別を禁止しています。[iv]

求人広告を出したり採用活動を行ったりする際は、これらを守った上で、言葉や表現に留意することが必要です。例えば、募集・採用の対象から男女のいずれかを排除することはできないので注意が必要です。

具体的には「ウエイター」「女性向きの職種」などの言葉は使用できません。また、労働者の身長や体重、体力を要件とすることも違法です。

詳しくは、厚生労働省「男女均等な採用選考ルール」に詳しく説明されているので、参考にしてください。

社内の制度や文化

社内の制度や文化においてハラスメント(セクシャルハラスメント、パワーハラスメント)への措置を講じることは、ポリコレを行う上で一つの大きな指針になります。

ハラスメントへの対応は事業主の義務です。給与や待遇、福利厚生などの制度と社内の文書や言動などの表現が、人種、性別、国籍、宗教、年齢、障がいなどの差別に当たらないかをポリコレの観点からチェックする必要があるでしょう。

また、海外との取引があるなら、相手の文化を理解した上で、ポリコレへ対応する必要があります。異なる国の文化背景を持つ社員がいる場合も同じです。知識や対応方法を社内で共有し、思い込みや意識のずれがないようにしておきます。

製品・サービス・広告

製品やサービスを提供する際は、商品やサービスの名前、キャッチフレーズ、内容説明などがポリコレに当たるかどうかを確認しましょう。広告についても同様です。

特にSNSは一度公開すると拡散しやすいため、後で表現に問題が見つかった場合、すでにある程度広まっている可能性があります。情報発信は、特に慎重に行うことが必要です。

1つ、考えたい事例を紹介します。2022年、サンリオはテレビアニメ「おねがいマイメロディ」シリーズに登場する毒舌キャラクターの「ママ」の名言を使ったグッズの販売中止を発表しました。

商品には「女の敵は、いつだって女なのよ」といった言葉が印刷されています。ツイッター上で、この表現がジェンダーバイアスを助長するという批判を受けての決定でした。

[v]この件がポリコレに該当するかの賛否ありますが、販売を中止せざるを得ない状況になったことは、リスク管理の点からも注意が必要でしょう。

ポリコレに関する疑問

ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)は、社会で差別をなくし、すべての人々が平等に扱われることを目指す運動です。

しかし、この考え方には賛否があり、理解しきれていない人々も少なくありません。ポリコレについて抱かれる疑問を5つ解説しましょう。

ポリコレは言論の自由を制限するのか?

ポリコレの考え方は、時折「言葉狩り」や「表現の自由の制限」と結びつけられることがあります。ポリコレを批判する人は、ポリコレが過剰に適用され、自由な議論が妨げられると指摘しています。

一方で賛成する人は、差別的な言動を避けることで、社会全体の成熟度が増すと考えています。

ポリコレが進むことで逆差別が起きる可能性はあるか?

ポリコレが進む中で、特定のグループが過度に優遇されるという意見もあります。たとえば、企業や学校での採用において、性別や人種が過度に重視されることで、他のグループが不利になる場合があると懸念されています。

ポリコレが文化や伝統に与える影響は?

文化や伝統的な価値観に対してポリコレが与える影響も疑問視されています。

例えば、古典文学や映画などで使用される言葉が時代遅れとされ、修正されることに対する反発があります。このような変更が、伝統や文化を無視することに繋がるのではないかと心配されています。

ポリコレは実際に社会の平等を促進しているのか?

ポリコレの目的は平等社会の実現ですが、その効果については一部で疑問が出ています。

理論的には、ポリコレが差別の問題を改善する手助けをするとされていますが、実際には差別的な態度を変えることが難しく、形式的な変更に留まることもあるとの声もあるのです。

ポリコレをどう受け入れるべきか?

ポリコレに対してどのように向き合うべきかは人それぞれですが、重要なのは「意識を変えること」です。

無意識に行っている差別的な言動を見直し、誰もが尊重される社会を目指すことが、ポリコレを理解する第一歩だと考えます。

ポリコレとSDGsの関係

イメージ画像

最後に、ポリコレとSDGsの関係について確認していきます。ポリコレは、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、目標10「人や国の不平等をなくそう」に関係があります。

目標5「ジェンダー平等を実現しよう」

目標5「ジェンダー平等を実現しよう」は、女性や少女に対する差別をなくしてジェンダーの平等を促進することを目標に掲げています。

ポリコレは、性別の違いによる差別的な表現をあらためる考え方です。世界や社会の中で不平等に扱われる傾向にある女性や少女が、表現による差別を受けることはあってはなりません。ポリコレを適切に使用すれば、差別をなくしてジェンダーの平等を実現する一つの契機になるでしょう。

目標10「人や国の不平等をなくそう」

目標10「人や国の不平等をなくそう」は、2030年までに年齢、性別、障がい、人種、民族、出自、宗教、経済的地位などにかかわらず、すべての人々に社会的・経済的・政治的に参画できる力を与えるという目標です。

ポリコレは、差別的な表現を是正することで多様な人が尊重される社会の創造につながります。そうした社会では、個人が能力を発揮し、生き生きと活動することが可能です。このことは、社会的・経済的・政治的に参画する力になり、目標10の達成に貢献します。

まとめ

ポリコレとは、「ポリティカル・コレクトネス」の略で、人種、性別、国籍、宗教、年齢、障がいなどを理由とした「差別的な表現を正す」という考え方です。社会では、さまざまな人たちが共存する多様性が進んでいます。その中で、あらゆる人を尊重するために、ポリコレが求められるようになってきました。アニメや漫画、ゲーム、映画、テレビ番組、芸術などの世界でも、ポリコレは広がっています。

企業にとってポリコレは、ダイバーシティ経営の推進や企業価値の向上に不可欠な要素になりつつあります。製品・サービスを提供する際や、採用活動、社内の制度などにもポリコレの意識が必要です。しっかりした対策を立てて、対応しましょう。またポリコレは、SDGsの目標に掲げられている人やジェンダーの平等に貢献します。ポリコレに取り組むことは、企業経営にとって今後も重要な意味を持つでしょう。

※[i] Britannica “Political correctness (PC) | Definition, Origin, History, & Facts
※[ii] 朝日新聞デジタル「ファミマ、『はだいろ』表記のPB下着を回収」2021年3月26日
※[iii] 日経クロストレンド「“お母さん”は終了 ファミマが2つのPBを『ファミマル』に統合
※[iv] 厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)「男女雇用機会均等法のあらまし
※[v] 産経ニュース「マイメロが差別?堕落した左翼のポリコレ 小浜逸郎

SHARE

この記事を書いた人

running.freezy ライター

前の記事へ 次の記事へ

関連記事