右翼・左翼とは?語源から日本の政党との関係までわかりやすく解説!

ここ数年の間にネットのSNSなどで「右翼」「左翼」という政治的概念がクローズアップされることが増え、右翼思想を持つ政党と左翼思想を持つ政党のどちらを支持するか、といった論争が繰り広げられることも増えました。

その結果、普段選挙に関心がない人も投票に行くようになり、2025年の参院選はここ数年で一番の盛り上がりを見せました。

政治的論争が展開される過程で耳にすることが増えた右翼・左翼という言葉の語源から日本の政党との関係などをわかりやすく解説します。

右翼・左翼の語源と基本的な考え方

近年、ネットのSNSなどの盛り上がりをきっかけにして若い世代の間でも知られるようになった右翼と左翼という言葉の語源を紹介します。

また、右翼と左翼の概念は国や時代によって異なるケースがあるため、ここでは現代日本における右翼・左翼それぞれの定義と代表的な特徴と基本的な考え方を解説します。

フランス革命に由来する「右翼」と「左翼」の誕生

右翼と左翼は、フランス革命が勃発したのがきっかけで生まれた言葉と概念です。

フランス革命が起こった1789年7月9日から1791年9月30日まで憲法制定国民議会が開催されました。

この国民議会の開催期間だった9月11日に開かれた会議で、従来の秩序を維持したいと主張する王党派・貴族派・国教派などの保守・穏健側が、議長席から見て会議場の右側に着座しました。

それに対して、従来の勢力を排除したいと考えて保守・穏健側と真っ向から対立した共和・革新側が左側に着座しました。

議論が紛糾した国民議会に続いて1791年10月1日から1792年9月5日まで開催された立法議会の席上でも、保守・穏健思想で立憲君主サイドのフイヤン派が議長席の右側に、共和・革新側を含む急進サイドのジャコバン派が左側に着座したことにより、保守派が右翼、共和派が左翼という概念が誕生したのです。

右翼・左翼という言葉は、1815年のフランス王政復古以降から使われることが多くなり、世間に広く知れ渡りました。

右翼の定義と主な特徴

右翼は、一般的には語源と同様に自分の国や民族が持つ従来の文化や伝統、思想などを重んじる政治思想と定義されており、右派と呼ばれることもあります。

特徴に該当する代表的な主義は以下の通りです。

  • 保守主義
  • 反動主義
  • 国家主義
  • 国粋主義
  • 民族主義
  • 資本主義

保守主義とは、従来の社会の秩序や伝統、歴史や宗教を重視することで、反動主義とは、全ての改革・革新に対抗する姿勢や行動のことです。

国家主義とは、自分の国家や政府が根本的なものであると考え、その主張や権威を重視する考え方で、国粋主義は自分の国家・政府・歴史・伝統・文化などが他国よりも優れていると考え、それを守りながら発展させていこうとする考え方です。

民族主義とは、その民族の共通の言語と秩序などを保持し、自分の民族が形成する国家を建設、あるいは保持・発展させようとする考え方で、ナショナリズムと言われることもあります。

そのため、日本国内では右翼=ナショナリストと定義することもあります。

また、個人が自分の意志で財産(土地・お金など)の資本を所有して商取引ができるシステムである資本主義も、右翼思想に分類されます。

資本主義は「個人の自由な取引を重んじる」という点で国家主義と相対するように思われがちです。

しかし、国民が資本を取引する際のルールや秩序は国家・政府が決めて管理するという流れになっているので、相対する思想というわけではありません。

左翼の定義と主な特徴

左翼の基本的な定義は、平等な社会を目標に社会を変革しようとする勢力やその行動や思想を支持する人で、左派とも呼ばれます。

特徴とされる代表的な主義をご覧ください。

  • 社会主義
  • 共産主義
  • 社会自由主義
  • 社会民主主義
  • 進歩主義
  • アナキズム

社会主義とは、資本を国家のものとして国家が資本を管理して国民を平等にしようという体制を表す言葉で、共産主義とは、財産を私有するのではなく共同体で所有することによって貧富の差がなくなることを目標にする思想や運動を表します。

共産主義は社会主義がより発展して国家という枠を取り払った思想ですが、近年は混同されることが多いです。

同様に混同されやすいのが社会自由主義と社会民主主義ですが、社会民主主義は国家の階級社会における政治体制を軸にした考え方です。

それに対し、社会自由主義は権力が個人の自由な活動を阻害しないように政府が介入して自由を守り、社会の公正さを維持しようという概念です。

進歩主義とは、現状で不合理とされる状態を改善してより良い体制を築いていこうという考え方で、革新主義とも呼ばれます。

アナキズムは政治的な権力と権威(国家・宗教など)を否定して個人の自由を重視する社会運営を目標としています。

現代社会では従来の共産主義や社会主義よりも進歩主義やアナキズムを左翼思想ととらえることが多くなってきました。

右翼・左翼の違い|思想・政策における対立軸

右翼と左翼の違いを、それぞれの思想と制作における主な対立軸から見ていきましょう。

以下の対立軸を見ると、右翼と左翼それぞれがどういった立場でどのような価値観で活動しているのかが見えてきます。

伝統 vs 変化

右翼の代表的な主義である保守主義・国家主義・国粋主義・民族主義は、どれも従来の国家・民族の秩序と伝統を尊重して守っていこうという考えで、反動主義はそれを変えようとする勢力に反発する考えです。

左翼の代表的な主義である共産主義・進歩主義は、これまで不平等だった状況に革新をもたらして改善していこうという思想です。

この思想に基づき、右翼が守っていこうとしている伝統や文化を含め、社会を不平等な状態にする要素があるものを取り除いていくことを目標に掲げています。

その結果、主に保守主義と共産主義、反動主義と進歩主義が対立するという構造になっているのです。

国家 vs 個人

右翼思想の根底には常に国家と政府があります。国家と政府の制度や伝統、秩序を重視していくという考えは、右翼思想の特徴に該当するどの主義にも共通しています。

それに対して、左翼思想は、社会や共同体を最重要視しているように見えますが、社会や共同体はあくまで個人の立場や財産を平等な状態に維持するための制度という考えです。

そのため、国家主体で作られ、維持されている右翼サイドのシステムに疑問を感じ、「不平等と思えるシステムを個人を守るために変化させよう」というのが左翼の目的の1つです。

右翼サイドは、「不平等な制度の改革は個人の財産を増やす自由を阻害する」という懸念を持っているため、相反する考えによって対立が生まれています。

国家と個人の対立は、どちらも個人の自由意志を違う形で維持しようという思想から続いているのです。

市場経済 vs 公的介入

市場経済と公的介入の対立軸を、右翼の国家主義・資本主義・左翼の社会主義と共産主義に基づいて解説します。

右翼思想の軸の1つである国家主義・資本主義は、国家・政府が定めた資本の売買ルールに基づいて、国民が所有する資本を自由に売買するというシステムです。

それに対して、左翼思想の特徴に含まれる社会主義は、「国家のものである資本を国家が管理して国民に平等に行き渡るようにする」という定義で、共産主義は共同体で資本で所有して個人個人の貧富の差をなくすというシステムです。

左翼サイドは「一部の資本家ばかりが財産を増やしていく」という右翼サイドの資本主義に反発しており、右翼サイドは「国家や共同体が個人の自由な売買を阻害するために介入する」という共産主義的なシステムを危険視しています。

国益優先 vs 国際協調

日本政府は、衆議院の公式サイト上で、国益について「国家または国民社会における最良の価値と利益で、国家(政治指導者である対外政策決定者)が対外行動で追求するべき価値と定義しています。

簡単に言えば国の利益のことで、それを優先しようというのが右翼側のスタイルです。

国際協調主義とは、国益だけを追求するのではなく、他国と協力し合って共存していこうという考え方で、インターナショナリズムとも呼ばれ、日本国憲法にも記載されています。

そのため、政府側=右翼側の思想とされることも多いのですが、近年は「国際協調は左翼的な思想」と認識されています。

しかし、左翼の活動に対して「国益よりも他国の利益を優先している」ととらえられることもあり、その結果「国益を最優先にするべき」という右翼側と「他国と協調して利益を得よう」という左翼側の対立を生んでいます。

歴史から見る右翼・左翼の概念の変遷

18世紀のフランス革命期に従来の封建制度を維持したい側と革新を求める側の対立から生まれた右翼・左翼は、19世紀に入ると保守主義の右翼と自由主義の左翼の対立に変化しました。

20世紀に入ると左翼の間で社会主義・共産主義が台頭し、保守主義・国家主義をメインに唱える右翼と真っ向から対立するようになり、第一次・第二次世界大戦勃発を招いています。

第二次世界大戦終結後に始まったのが冷戦です。右翼に当たる資本主義陣営(アメリカ合衆国・西側諸国)と左翼に属する共産主義・社会主義陣営(ソビエト連邦・東側諸国)のイデオロギーの対立で起こった冷戦は、1947年から1989年まで続きました。

冷戦が終結するとイデオロギーの対立が沈静化し、それと共に右翼も左翼も多様化して「この思想は右翼」「この思想は左翼」と決めつけにくい状態になりました。

右翼と左翼という概念はあるものの、日本国内で右翼に分類される保守政権が左翼が唱える社会民主主義と福祉国家を取り入れたこともあり、かつてのような対立構造は大幅に減少しています。

日本における右翼・左翼|政党との関係

日本国内に現在ある代表的な政党が右翼・左翼のどちらに属するのかを見てみましょう。

右翼・左翼のどちらなのかは、2025年の参院選で各政党が主張した選挙公約と政策のうち、右翼と左翼思想の目安になる以下の4項目を元に分類しています。

  • 防衛費の増額(右翼側)
  • 憲法9条に自衛隊を明記(右翼側)
  • 女性天皇の承認(左翼側)
  • 外国人労働者受入れ(左翼側)

右翼的傾向の政党

  • 日本保守党
  • 参政党
  • 日本維新の会
  • 国民民主党
  • 自由民主党

選挙公約・政策の内容で右翼的傾向が強い順に並べています。

2025年の参院選で多くのメディアに「極右政党」と呼ばれたのは、今回の選挙で大躍進を遂げた参政党でした。

参政党は「日本人ファースト」というスローガンが右翼思想サイドの日本人の多くの支持を受け、逆に左翼思想サイドの人に大きく反発される結果になっています。

与党である自民党は右翼的傾向の政党の筆頭とも言える政党ですが、右翼的思想が弱いこともあってか、今度の選挙では過半数割れという結果になりました。

左翼的傾向の政党

  • 日本共産党
  • 社会民主党
  • 公明党
  • れいわ新選組
  • 立憲民主党

2025年の参院選では、左翼的傾向の政党の伸び率が非常に低く、立憲民主党は変化なしでれいわ新選組が1つ議席を増やした以外は議席が減少しています。

公明党は与党ですが、思想は左翼的傾向が強いのもあり、2025年の選挙では議席が減少しました。その結果、与党である自由民主党と公明党が過半数割れになっています。

左翼的傾向の筆頭である共産党が議席を減らし、同じく筆頭の社民党は前回と同様の2議席に留まりました。

2025年の参院選は「右翼対左翼」という見方だと、右翼側の勝利と言えるでしょう。

天皇制を巡る立ち位置の違い

日本独自の君主制と言われる天皇制を巡る右翼・左翼の基本的な立ち位置の違いを見てみましょう。

右翼も左翼も、天皇制に対する主張は戦前・戦後・現代に至るまでほとんど変わっていません。

右翼は天皇制支持と皇族尊重、左翼は天皇正反対と皇族の特権廃止を主張し続けてきました。

現代日本では、今上天皇の一子が愛子内親王だけという事情から「女性天皇容認」の声が増え、左翼サイドがそれを強く支持しています。

しかし、天皇制を支持する右翼サイドは「皇室規範の規定で女性天皇を認めていない」「皇室を安定的に継承できなくなる」という観点から女性天皇容認論に反発しています。

現状では今上天皇の弟である秋篠宮殿下が後継者ですが、左翼側からの「女性天皇容認を」「皇族特権廃止を」の声は途絶えておらず、立ち位置の違いから今後も論争が続いていくことでしょう。

単純な二分法では語れない右翼・左翼

右翼・左翼という分類はあり、対立はあるものの、右翼と左翼は単純な二分法では語れません。なぜなら、現代社会の右翼と左翼は前述したように多様化しており、思想がグラデーションのように連続しているからです。

右翼の政策・主義は、保守主義・反動主義・国家主義・国粋主義・民族主義・資本主義ですが、資本主義は左翼の自由主義にもつながる、個人の資本を自由に売買して財産を増やせるという主義です。

左翼の政策・主義は、社会主義・共産主義・社会自由主義・社会民主主義・進歩主義・アナキズムですが、社会主義・社会民主主義は資本を国家が所有して国民に公平に分配するという主義で、右翼の国家主義に通じる部分があります。

右翼と主張する人が左翼的思想を語ったことに対し「変節・転向した」と批判したり、その人の主張内容を「左翼的だ」と安易にレッテルを貼ったり決めつけたりすることは危険なので避けるべきです。

右翼・左翼という枠組みにとらわれず、多角的な視点で物事を見て判断することが大切なのです。

右翼・左翼のよくある質問

右翼・左翼について多くの人が抱きやすい疑問をまとめました。疑問に対する回答とあわせてご確認ください。

右翼でも左翼でもない人の呼び方は?

右翼でも左翼でもない場合の呼び方は「中道主義」あるいは「中道派」です。

「ノンポリ」という呼び方もありますが、ノンポリは本来政治運動に無関心なことを意味する言葉なので、左翼でも右翼でもないけれど政治には関心がある人に不適格とされることが多くなり、現代では使われることが減っています。

日本国内で右翼と左翼のどちらが多い?

2025年の参院選の投票結果で見ると、右翼的思想の人の方が多いという解釈もできます。実際に、今回の参院選の結果を見て「日本は右傾化している」という声がよく聞かれるようになりました。

しかし、右翼と左翼という概念が過去よりも曖昧になったこともあり、現代日本でどちらが多いのかは断定しにくくなっています。

観念右翼というのはどういう意味?

観念右翼というのは、特定の右翼党派のことではなく、日本精神主義を純粋に辛抱して思想・行動の原理にしている右翼団体を表す言葉です。

源流とされているのは19世紀の憲法学者である上杉慎吉氏で、観念右翼は革新右翼と昭和時代前期における右翼運動の二大潮流を形成していました。

穏健左派というのはどういう意味?

穏健左派とは、文字通り穏健な左翼思想を表し、近年では「中道左派」とも呼ばれます。穏健左派の概念は国によって違いますが、一般的には左翼の代表的な主義の1つである社会民主主義が穏健左派の理念です。

社会主義と社会的少数者の人権の保護を支持している米国式リベラルも穏健左派に該当します。

まとめ

右翼・左翼それぞれの主義や思想は18世紀のフランス革命で生まれ、世界大戦や冷戦を生むきっかけになりましたが、時代とともに右翼・左翼共に新しい概念が生まれた結果、多様化し、右翼・左翼という枠組みが無意味になりつつあります。

右翼と左翼の対立は現在も続いていますが、過去の対立ほど激しいものではなくなりました。

時代の変遷と共に対立が軟化したことを機に、右翼と左翼という枠組みにとらわれず、双方の主義・主張を柔軟にとらえることで、対立理由を減らしていけるのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

fuyuhome ライター

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