SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」に取り組む企業5選

SDGsの目標3「すべての人々に健康と福祉を」は、地球に住むすべての人が健康で人間らしい生活を送るために掲げられた目標です。最近では目標の実現に向けてさまざまな企業が取り組みを進めています。

そこでこの記事では、目標3に取り組む企業の事例を紹介します。読み終わる頃には、自社の事業とSDGsをどのように関連させていくががイメージできるかもしれません。早速見ていきましょう!

この記事の監修者
阪口 竜也 フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)

株式会社EMSS(つむぐ家)

引用元:つむぐ家

企業の紹介

株式会社EMSS(つむぐ家)は、SDGs未来都市に認定されている堺市にある建築事務所です。家づくりを通して持続可能な社会を目指した取り組みを行っています。EMSSでは、以下の4つの約束とこだわりを掲げています。

【4つの約束とこだわり】

引用元:つむぐ家

住む人と環境に寄り添った家づくりを心掛けていることが伺える内容ですね。そして、このようなこだわりを実現した家づくりが「パッシブハウス」です。

パッシブハウスとは

省エネ基準と家づくりの両方を兼ね備えた住宅設計で、環境先進国と呼ばれているドイツで誕生しました。

EMSSでは、パッシブハウスの要素を取り入れた新築注文住宅ブランド「つむぐ家」を展開。長年にわたり家づくりを行ってきた地域工務店と設計士が、堺市の風土にあった住宅を建設しています。

次ではパッシブハウス「つむぐ家」が、どのような住環境づくりになるのかを見ていきましょう。

どのような事業なのか

日本の家づくりは、世界より30年も遅れていると言われています。1年中冷暖房を自由に使えて、化学の力によって完成した丈夫な建材を使っているにもかかわらずです。とても快適な暮らしに見えますよね。

しかし、冷暖房に使われているエネルギーは枯渇していく化石エネルギーが中心。化学建材も10~20年しかもたないため、住宅寿命は約27年~30年と言われています。フランスやドイツの住宅寿命は60年以上、イギリスに関しては80年以上が平均となるため、日本の住宅寿命は世界からすると信じられない数字でしょう。

これまでに挙げられた多様な問題を解決し、自然と調和した家づくりを実現したものがパッシブハウスを用いたつむぐ家になります。

つむぐ家は

  • 化学建材ではなく木材を使う
  • 自然エネルギーを利用する
  • 効果的な断熱材の配置を意識する
  • 住む人の健康にも配慮する

といった要素を積極的に取り入れ、人と環境に優しい家づくりを実現しました。

どのようにSDGsの達成につながるのか

では、この取り組みがSDGsとどのようにつながるのでしょうか。

【取り組み①パッシブハウスと高気密高断熱住宅】

引用元:つむぐ家

つむぐ家の特徴の1つである「高気密高断熱住宅」は、屋内と屋外の温度差をなくし、ヒートショックなどの人体への影響を軽減しました。

ヒートショックとは

暑い場所から寒い場所へ(逆もあり)移動した際に、温度差によって身体がダメージを受ける現象です。冬場のお風呂場で発生することが多く、最悪の場合は亡くなる人もいます。

ヒートショックなどの人体へのダメージを防ぐために、つむぐ家では高気密高断熱住宅を採用。これは目標3「すべての人に健康と福祉を」の達成につながります。性能としては、下記の通りです。壁や基礎など、その場所に適した断熱材が設置されています。

【つむぐ家の高気密高断熱住宅】

引用元:つむぐ家

そして、自然エネルギーを積極的に利用することで、SDGs目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」と目標13「気候変動に具体的な対策を」を実現。

今まで使っていた化石エネルギーは、二酸化炭素など環境に悪影響を及ぼす物質を排出していました。しかし、自然エネルギーは太陽や風などが原料となっているため、二酸化炭素を排出しません。環境に配慮されたエネルギーといえます。

【取り組み②安心安全に配慮した家づくり】

引用元:つむぐ家

つむぐ家では「日本住宅の資産価値の向上」も目指しています。SE構法と呼ばれる、耐震性に長けたデザイン性の高い住宅を可能にした構造を全棟に採用。木造でも大きな吹き抜けや柱のない大開口を実現しました。

そのほかにも、全棟長期優良住宅を取得し60年の定期点検も行っています。住む人にとって暮らしやすく居心地の良い空間は、精神的にも身体的にも必要不可欠です。さまざまな面から環境と人に配慮したつむぐ家は、目標11「住み続けられるまちづくりを」目標3「すべての人に健康と福祉を」を達成しているのではないでしょうか。

同時に、11と3の目標を達成するために工夫を凝らしたつむぐ家の想いが伝わり、実際に暮す人々も環境への配慮を意識します。その結果、目標12「つくる責任つかう責任」の達成にもつながります。

NEC

引用元:NEC

企業の紹介

50ヶ国以上301拠点でビジネス展開しているNEC。AI技術は勿論、セキュリティや通信などのプラットフォーム技術に長けている企業です。

更には、

  • 認識AI
  • 分析AI
  • 制御AI
  • システムプラットフォーム
  • 通信
  • セキュリティ&ネットワーク

の6つの分野の研究開発にも取り組んでいます。研究所は全部で7つあり、日本の中央研究所を始め北米やイスラエルなど海外に6拠点存在します。

NECではこれまで世界との幅広い繋がりを利用し、社会の課題解決へと取り組んできました。技術提供を行い企業や国際機関、地域社会と共創することによって、安心・安全・公平・効率という社会価値をつくり上げてゆきます。この仕組みが、SDGsの目標達成への大きな鍵となっているのです。

どのような事業なのか

NECはデータとデジタルテクノロジーを使い、暮らしや社会、産業の更なる効率化を目指しています。そのなかでも、デジタルトランスフォーメーション(以下DX)に注目しており、人々がより豊かで快適に、安心安全に生活できる社会を実現するために企業全体で取り組んでいます。

DXとは、分かりやすく言うと「人々の生活を、ITによってより良いものにすること」です。デジタルテクノロジーの分野に特化したNECだからこそできる、指紋認証やAI技術を使ったDXが、日本や世界の問題解決に貢献しています。

実際にNECの指紋認証技術を使い、多くの開発途上国の子どもたちが救われました。どのような取り組みを行い子どもたちの命を救ったのか。そして、どのようにSDGs目標3の達成につながったのかを見ていきましょう。

どのようにSDGsの達成につながるのか

【取り組み①開発途上国の子どもへの支援】

引用元:NEC

世界中で適切な予防接種を受けられない子どもたちは、約1,990万人いると言われています。そのうち、助かるはずの命は150万人にも及ぶのです。とくにこの問題は開発途上国で深刻化しており、現在も2,000万人の子どもたちが予防接種を受けられずにいます。

世界中の子どもたちがワクチンを受けられる環境をつくるために、国際組織であるGaviワクチンアライアンスはNECやシムプリンツ社と協力して実現に向けて動きだしました。その時使われたものが、NECの指紋認証技術です。

子どもたちに打つワクチンは、1種類ではありません。そのため、

  • 子どもの名前
  • ワクチン名
  • 摂取した日にち

などを把握する必要があります。

そこで世界1の認証精度を誇る、NECの指紋認証技術に白羽の矢が立ったのです。完成までさまざまな問題や苦労がありましたが、幼児の指紋認証率99%を実現。

現在は予防接種だけでなく、医療や教育、金融サービスを受けるために、指紋認証技術を応用した身分証明書の付与に向けて動きだしました。NECは、独自の技術である指紋認証を使い世界へ大きく貢献し、SDGsの目標3に取り組んでいます。

小川珈琲

画像はイメージです

企業の紹介

1952年から京都の地でコーヒーづくりを始めた小川珈琲では、コーヒーを嗜好品として扱っていません。「日常にとってかけがえのないもの」として、お客様に提供しています。そして、コーヒーづくりにおいて重要な地球環境生産者に注目している所も特徴です。

その年の品質の良い豆を購入するだけでなく、生産者と向き合い共に歩みながらコーヒーづくりを行っています。豊作不作に関係なく、信頼しているコーヒー農家が丁寧に育てた豆を買い取ることによって、生産者の収入の安定化や地球環境の保全にも繋がりました。

その丹精込めて作られたコーヒー豆を、約70年の歳月をかけて編み出した焙煎とブレンド技術によって仕上げます。コーヒー豆や生産者、地球環境と、コーヒーづくりに関わるすべての物に真剣に向き合い特別な一杯を提供する。小川珈琲はコーヒーづくりを通して、人や地球の未来を考える企業です。

どのような事業なのか

世界に通じる本物の味わいを追求するだけでなく、

  • 気候変動などの環境問題
  • 国家間の経済格差

など、コーヒーを通してさまざまな問題の解決に取り組んでいます。

使用するコーヒー豆は、安心安全の有機JAS認証マークがついており、さらには生産者の生活を考え、相手の納得のいく価格で仕入れるフェアトレードのものを採用。

高品質な豆が手に入ると同時に、生産者にも最低限度の生活が保証されます。小川珈琲では誰も犠牲にならず、みんなが幸せになれる事業を展開し、実現しました。

それでは、小川珈琲で行われている数々の取り組みが、SDGsの達成にどのように繋がっているのか見ていきましょう。

どのようにSDGsの達成につながるのか

【取り組み①有機栽培の促進】

引用元:小川珈琲

小川珈琲では環境と人の健康を考え、有機栽培によって育てられたコーヒー豆を仕入れています。

【環境に優しい有機栽培の促進】

引用元:小川珈琲

有機栽培は、通常の農業で使われている化学肥料や農薬を使っていません。そのため、土壌へのダメージも少なく、土に直接触れて作業をする農家の人々にとっても安全です。また、遺伝子組み換えなどの科学技術にも頼らず、自然の力だけで育てられています。

品質管理も徹底しており、農園や工場では毎年、正しいで手順で製造されているか検査が行われています。厳しい検査を通った製品には「有機JASマーク」が付けられ、小川珈琲は2001年に京都工場が有機JAS認証を取得しました。

【取り組み②コーヒー生産国の女性への支援】

引用元:小川珈琲

コーヒーの生産に関わっている人々は、世界に約1億2500万人いるとされており、そのうち7割は女性です。また、コーヒー豆生産国の多くは、経済格差などの問題を多数抱えています。そこで小川珈琲では、生産者の生活やコーヒー生産の安定化を目的とした支援活動に力を入れています。

例えば、コーヒー生産国の女性を対象に、健康促進や子宮がん検診などを行っていたアメリカの非営利団体「グラウンズフォーヘルス」への支援を2009年に開始。小川珈琲の店内でキャンペーンを行い、売り上げの一部を団体へ寄付しました。

直接的ではなく間接的にコーヒー生産国の女性たちを支援したのです。

ミズノ株式会社

企業の紹介

スポーツ用品などで知られているミズノは「より良いスポーツ品とスポーツの復興を通じて社会へ貢献する」を理念に活動している企業です。拠点も国内にとどまらず、ヨーロッパや中南米など世界中で活躍しています。

ミズノが掲げている長期経営方針は、

  • 未来へ続くブランドの共創
  • 世界企業ミズノの実現
  • 誇りある企業文化の育成

の3つです。そのなかでも「誇りある企業文化の育成」には、SDGsを含む持続可能な社会の実現への貢献が含まれています。

実際にミズノが、どのようなSDGsの取り組みを行い、持続可能な社会の実現へ貢献しているのか見ていきましょう。

どのような事業なのか

ミズノの強みというと、

  • 開発力
  • 技術力

の2つではないでしょうか。

実際に、ミズノのトップである水野明人氏もホームページに掲載されているトップメッセージの中でも「スポーツ分野で培った機能や素材を生み出す開発力と、高い品質のモノづくりを実現する技術力」と話しています。

ミズノはこの2つを武器に、ビジネスや環境問題、福祉などさまざまなジャンルの課題に取り組んできました。また、スポーツ品の提供や運動プログラムの普及、スポーツ施設の運営なども行っています。とくに運動プログラムにおいては、国内だけでなくベトナムなどの海外でも普及しています。

どのようにSDGsの達成につながるのか

【取り組み①スポーツ用品を使った活動】

創業者である水野利八氏が野球と深く関わる人生を歩んできたため、野球関連の製品づくりには徹底的にこだわってきました。ミズノは野球製品の提供や修理を行うワークショップを開くことで、野球の発展と普及に貢献しています。

そのほかにも、夏場の強い日差しから選手を守るために、シューズ内外の温度の上昇を防ぐ機能の付いた特殊なスパイク「白スパイク」を開発。2020年の高校野球から白スパイクは解禁されています。

【取り組み②スポーツ分野の技術を活かした活動】

スポーツ分野において数々の実績を誇るミズノ。その技術はスポーツのみならず、生活や福祉の分野でも使われています。内容としては下記の通りです。

  • 企業の健康経営に寄与するプログラムの提案
  • 健康維持・増進に効果的な歩き方のプログラム提案
  • 年齢による筋力低下を補う衣服や用具の開発
  • 歩行時の膝の内側にかかる負担を軽減する「ひざ誘導ソール」を開発

この他にも、日常生活の合間にできる「ながら運動100」やリビングなどで行える手軽な運動で健康をサポートしています。得意分野を活かしたミズノの取り組みは、SDGsの目標達成に大きく貢献していると言えるでしょう。

株式会社神美

引用元:株式会社神美

企業の紹介

美容事業を柱に、

  • 「THE PERFECT LINE」事業
  • フランチャイズ事業
  • オリジナル商品開発事業

などを行っている企業です。「変わりたい女性」に焦点を当て、行動へ移すきっかけとなり、最終的には「女性が輝き活躍する社会の実現」を目指しています。

同時に、現代社会を生きる上で切り離せないストレスに注目し、女性が毎日をいきいきと過ごすための事業も展開しています。代表的なものが、WEBメディアの立ち上げや「女性×ストレス」に特化したデータマーケティング事業です。

「女性の活躍」や「日常をいきいきと過ごす」などは、SDGsの目標達成に欠かせない課題です。課題達成のために、神美がどのような取り組みを行っているのか見ていきましょう。

どのような事業なのか

神美は、ストレスとセルライトの関係に注目。日本初のセルライトケアに特化したサロンの経営やセルライト専用のジェルの販売事業、オリジナル商品の開発などを行っています。

「できることなら、ストレスなく過ごしたい」と思っていても、現代ではストレスと無縁の生活を送ることは難しいですよね。仕事や人間関係など、何らかの原因でストレスは必ずと言っていいほど発生します。しかし、ストレスをなくすことは不可能であっても、女性の悩みを解決する方法はあります。

神美は事業を通して、女性の心身の健康と自分らしく輝ける社会を実現してゆくのです。さらに神美では、SDGs目標3を達成するために、他の取り組みも行っています。

どのようにSDGsの達成につながるのか

日本の社会問題の1つに、薬物乱用があります。下記の表が示す通り、国内で薬物が原因で検挙される人数も年々増加傾向にあり、他人事ではすまされないのが現状です。

【薬物事犯検挙人の推移】

その多くは若者に集中しており、最多理由は「人から誘われて」。

このような現状を受けて神美では、2ヶ月に1度、薬物乱用に対する勉強会を社員向けに開いています。薬物乱用に対する勉強をすることで自身の身を守ると同時に、将来結婚して子どもができた時に、子どもを守ることにもつながると考えているためです。

専門の外部講師から学ぶことによって、知識が身に付き薬物乱用防止の意識も更に高まるでしょう。

まとめ

この記事では目標3「すべての人に健康と福祉を」に取り組む企業事例を見てきました。

多くの人が「健康」や「福祉」と言うと、難しく考えてしまうかもしれません。とくに福祉は種類の幅が広く、言葉1つに沢山の意味があります。健康のように自分に置き換えられないことも多く、結びつきづらい印象です。

しかし、今回紹介した企業の取り組み事例を見て、以前より健康と福祉のことをなんとなく理解できたのではないでしょうか?SDGsの目標は、世界中のすべての人が参加しなければ達成できません。1人が頑張って大きなことをやるのではなく、全員が小さなことをやることに意味があります。

企業の規模によってはミズノのようなスポーツ用品を提供するのが難しいかもしれません。しかし、神美のように薬物乱用などを勉強して知識を得ることはできますよね。

住宅購入の予定があるのであればEMSS(つむぐ家)のように、人と環境に配慮した家づくりに力を入れている建築事務所にお願いしてみるのも良いですね。

すべての人が健康で不自由なく暮らせる世界を目指して、1人ひとりが行動し全員で助け合いませんか。