真夏の最高気温、40.8℃の日本を想像できますか?
文部科学省 気象庁が発表した「日本の気候変動2020」によると、日本は1898年から2019年の100年の間に1.24℃も平均気温が上昇しています。日本の平均気温の上昇率は世界の平均気温(0.74℃)の上昇率と比べても、大変大きいものです。
この気候変動に何も対策をしなかった場合、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の報告では世界の平均気温はどんどん上昇し、2100年頃の日本の真夏の最高気温は40.8℃、真夏日は連続50日、熱帯夜は連続60日になると予想しています。
そうなったとき、私たちの生活はどうなってしまうのでしょうか。
SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」は、実践することでSDGsが掲げる多くの問題の解決につながる重要なテーマです。
持続可能な生活を送るためにも、気候変動に関心を持ち、行動に移すことがとても重要になります。
まずは世界と日本の現状を知り、自分たちに何が出来るのか考えてみましょう。
目次
目標13「気候変動に具体的な対策を」とは?
今、世界中で起きている異常気象は、気候変動、つまり長期間にわたる気温や雨の量、雨の降り方などの移り変わりによるものだと言われています。
「気候変動に具体的な対策を」の対策には、「緩和」と「適応」があり、IPCC第5次評価報告書 特設ページには以下のように書かれています。
- 緩和→気候変動を抑えるための対策
- 適応→すでに起こっている自然災害などの防止や軽減
出典:JCCCA IPCC第5次評価報告書特設ページ 緩和・適応とは
日本国内でも近年、ゲリラ豪雨や長雨などの自然災害や、酷暑による熱中症などが深刻な状況となっていますよね。気候変動への対策は、私たちにとって、SDGsの目標の中でももっとも身近で深刻な緊急の課題です。
まずは、解決のために掲げられたターゲットを確認しましょう。
目標13を構成する5つのターゲット
目標13「気候変動に具体的な対策を」は5つのターゲットから構成されています。
「13.1」のように数字で示されるものは項目の達成目標、「13.a」のようにアルファベットで示されているものは実現のための方法です。理解を深めるためにも、1度目を通してみましょう。

13.1 すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靭性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する
“ここ10年の自然災害の発生件数は1970年代の約3倍なんだって。災害に負けない世界にしたいね!“

13.2 気候変動対策を国別の政策、戦略及び計画に盛り込む
“日本は平成30年に「気候変動適応法」を施行して安心・安全な社会を目指しているよ。“

13.3 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する
“イタリアでは、世界で初めて気候変動の授業がすべての公立学校で義務付けられたんだって!“

13.a 重要な緩和行動の実施とその実施における透明性確保に関する開発途上国のニーズに対応するため、2020年までにあらゆる供給源から年間1,000億米ドルを共同で動員するという、UNFCCC(国際連合枠組条約)の先進締約国によるコミットメントを実施するとともに、可能な限り速やかに資本を投入して緑の気候基金を本格始動させる
“「緑の気候基金」というのは、開発途上国の温室効果ガス削減と気候変動への対処を支援するための基金のことなんだって。“

13.b 後発開発途上国及び小島嶼(しょうとうしょ)開発途上国において、女性や青年、地方及び社会的に疎外されたコミュニティに焦点を当てることを含め、気候変動関連の効果的な計画策定と管理のための能力を向上するメカニズムを推進する
“小さな島国の社会から取り残されたコミュニティまで、まさにSDGsの「誰一人取り残さない」を目指す目標だね!”
このようにSDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」は、世界中すべての人々が取り組むべき課題なのです。
とはいえ、ターゲットを一度読んでもなかなか理解しにくい面も多いと思います。
そこでここからは、なぜ「気候変動に具体的な対策を」が必要とされているのかを詳しく説明していきます。
なぜ、目標13「気候変動に具体的な対策を」が必要なのか?
それは、地球温暖化によって気候変動が起きていると考えられているからです。中でも二酸化炭素の排出などによる地球の温暖化は深刻なものです。
私たち人間が豊かな生活を送るために産業を発展させてきたことで、二酸化炭素が大量に排出され地球温暖化が進みました。これにより全世界で自然災害が増加しているのです。
特にアジアでは災害が多発しており、2004年にインド洋津波災害、2008年には9万人の犠牲者を出した中国四川地震など、多くの犠牲者が出る自然災害が多発しています。ここ10年で1970年代に比べて、自然災害の件数と被害者数が3倍に増えています。
二酸化炭素の排出量は中国、アメリカ、インド、ロシア、次いで日本です。先進国や、人口が多く、近年経済発展が進む地域が排出量が多い傾向にあります。さらに先進国の1人当たりの二酸化炭素排出量は途上国と比べても大幅に上回っています。
◆自然災害の被害は途上国に多い
また、1984年~2013年の間に起きた自然災害の犠牲者(248万人)の多くが低所得、中低所得に偏っています。所得が低い国ほど自然災害の被害が多く、貧困による悪循環が課題になっています。(※1)
この課題はSDGs目標1「貧困をなくそう」とも深く関わりがあり、共に解決する必要があります。
では、解決に向けて私たちが何をすればいいのかを考えていきましょう。

温暖化の原因を知る
「地球温暖化」の大きな原因となっているのが温室効果ガスです。
温室効果ガスとは、二酸化炭素、メタン、フロン類など地球温暖化をもたらすガスを指します。
過去50年で工業化が進み産業活動が急速に活発になったことで、二酸化炭素、メタン、フロン類などが大量に排出されて地球大気の温室効果が進み、気温が上昇しています。
本来であれば「温室効果ガス」があることで、地球は平均気温を14℃に保つことが出来ています。温室効果がない場合、地球の平均温度は-19℃になると言われているので「温室効果ガス」は生物が生きるために必要なものです。しかし、温室効果ガスの濃度が濃くなることで温室効果が強くなり、気温が上昇しているのです。
温室効果ガスの排出量の中で3/4を占めるのが二酸化炭素です。二酸化炭素は私たちの呼気に含まれるだけではなく、石炭や石油、天然ガスを燃焼させることで発生します。
産業活動が活発になったことで石炭や石油の燃料を燃やしてエネルギー源として使用することで、二酸化炭素を大量に放出しているのです。(※2)
・自動車や電車、飛行機など交通機関
・家電製品
・土地開拓のための焼き畑農業
・森林火災
また、二酸化炭素についで温室効果ガスに多く含まれるのがメタンです。国立環境研究所によると、世界のメタンの放出量は過去20年間で10%近く増えています。フロンは自然界には存在しない人工物質です。冷蔵・冷凍の冷媒や、スプレーの噴射剤など身近なものに使用されています。人体に毒性が少ないとのことで活用されていました。
地球温暖化が進んでいるのには、人為的な要因が大きく関係しています。私たちの生活が快適になることで、知らないうちに地球に過度な負担をかけていたのです。
温暖化の現状と危険ラインを知る
1988年にUNEP(国連環境計画)とWMO(世界気象機関)により設立された、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の発表によると、地球の気温は1880年から2012年の約30年で0.85℃上昇しています。「たった0.85℃か」と思ってしまいますが、この気温の上昇で次のようなことがすでに起こっています。
・海面の上昇
世界平均海水位は1902~2010年の間に19cm上昇しています。
海面上昇は海水温の上昇により、海水の温度の上昇による膨張と、氷河や氷床が解けたりすることが原因と考えられています。海面が上昇することで海抜の低い島国では高潮で潮が満ちると、海水が街や道路に入り込み、浸水の被害が出ています。
・海洋酸性化
海洋酸性化の原因は、大気中の二酸化炭素が海に吸収されることにより、弱アルカリ性の海水が中性に近づくこと。海洋酸性化が進むことで貝類、ウニなどの棘皮動物や、熱帯や亜熱帯に分布するサンゴなど、海の生物の成長を阻み、海の生態系に影響を与えます。(※3)

「たった0.85℃」の気温の上昇で、海にとても大きな影響が出ています。そこで、2020年以降の温暖化対策の新しい枠組みとして、「パリ協定」がCOP21(国際気候変動枠組条約の第21回会議)で2015年に採択されました。「パリ協定」は、途上国を含む197カ国が加盟しています。
パリ協定では以下のようなことが目標として掲げられています。
世界共通の長期目標として、平均気温の上昇を2℃以下に抑えることを目標の設定。
さらに1.5℃に抑える努力を追及すること。出典:外務省 2020年以降の枠組み:パリ協定
その後、現在のペースで気温上昇が続くと2030年~2052年の間に気温上昇は1.5℃に到達する可能性が高いと、2018年にIPCC1.5℃特別報告書で発表しました。パリ協定で発表したペースで二酸化炭素の排出を抑えても、1.5℃の気温上昇を抑えることが出来ないほど事態になっているのです。
日本では、平均気温が1.4℃~4.5℃上昇すると文部科学省 気象庁で発表しています。
では、気温が上昇することによって海面水位の上昇や海の酸性化以外に私たちの生活にはどんな影響があるのでしょうか。
気候変動が生活に与える影響って?
まず、世界中で予想されている温暖化により引き起こされる気候変動のリスクから見ていきましょう。
気候変動による世界のさまざまなリスク
気候変動によるリスクには、次のようなものがあります。
極端な気象現象は大雨による洪水被害だけでなく、インフラ機能に影響が出ます。電気・ガス・水道のライフライン寸断は、今の便利な生活に慣れている私たちに大きな混乱を招くでしょう。
また、近年では熱中症で亡くなっている人は増加傾向にあります。感染症(マラリアやデング熱)の増加や循環器・呼吸器系疾患の増加も。特に脆弱な層(高齢者、貧困)への早急な対策が必要とされています。(※4)
干ばつ、水不足等による食料生産量の減少、海洋生態系損失漁業への影響、陸上生態系の変化は森林や野生生物、影響が出ます。また、気候変動に対応出来ず、絶滅に迫られる生物が増えるでしょう。
さらに、美しい自然が失われることは、観光資源の損失にもつながります。(※5、6)
さらに気候変動による影響は、環境だけではありません。
多くの途上国では自国で取り組むべき対策が多くあり、限られた資金だけでは十分に対策を実施できない現実があります。十分な対策が行えないまま、気候変動による自然災害がおこれば、被害はさらに大きなものとなります。
そのため、世界全体で気候変動の対策に取り組むために、先進国の義務として2020年までに先進国全体で1,000億米ドルをを途上国へ支援することを、2009年のCOP15(国際気候変動枠組条約の第15回会議)で定まりました。(※7)
では、日本国内ではどのような自然災害の増加とリスクが予想されているのでしょうか。
日本で起こり得る自然災害の増加とその他のリスク
近年、日本では大雨や短時間の強雨は増加する一方です。台風の強度は強まり、猛烈な台風の存在頻度が増すと予想されています。
そうなれば、現在も全国各地で起きているような豪雨災害、洪水や浸水、土砂災害などの被害がさらに増え、甚大化する可能性があります。
また、農業、水産業、森林・林業にも影響が出ることで、農作物の品質の低下や栽培箇所にも変化が出るとされています。
日本は食料自給率の低い国です。災害時、食料安全保障では自国の食料確保が優先されるので、輸入に頼っている日本には大きな影響が出ることが安易に想像できますね。
世界的に大規模で残っていることが少ないブナ林。ブナ林は落葉樹で構成されており、四季折々の自然の美しさを楽しませてくれます。そんなブナ林も温暖化の影響で、2100年頃には面積が1/10に減少すると予測されています。
温暖化による気温の上昇や降水の変化が、感染症拡大に関連していると「地球温暖化と感染症」が発表しています。蚊などの感染症を媒介する生物の分布に変化が起こることで、デング熱が流行する地域が拡大するおそれがあります。
気候変動による雨量の増加は、感染症の拡大につながる危険がある、という点にも目を向ける必要があるでしょう。
2100年までの気温上昇予測
IPCC(第5次評価報告書特設ページ)RCPシナリオによると、
2100年頃までに0.3~1.7℃気温が上昇する
2100年頃までに0.6℃~4.8℃気温が上昇
すると予測しています。
出典:IPCC 第5次評価報告書特設ページ 第1作業部会(科学的根拠)
いきなり2100年の気温を言われてもイメージするのは難しいですよね。
次の章で、2050年の日本がどうなっているのかご紹介します。
気温が2℃上昇した2050年の日本はどうなっている?
たとえば、何の対策もしないまま2050年に気温が2℃上昇した場合、日本はどうなってしまうのでしょうか。
2050年の天気予報(NHK)
こちらの動画はIPCCの最新の報告書に基づいて作られた、2050年の天気予報の様子です。
2050年の日本の夏は、
- 35℃前後の気温が当たり前
- 真夏日は50日連続
- 熱帯夜は60日
- 最高気温は40.8℃
- 熱中症で亡くなった人数は6,500人を超える
など、最悪な状況になると予想されています。
また、海面水温が上がることで台風はスーパー台風となり、最大風速は70メートル以上。さらに、海面上昇の影響で高潮の被害が増えます。
そんな暮らしにくい世界が訪れないよう、私たちにどんなことができるでしょうか。
温暖化を食い止めるために、どんな解決策があるの?
では、温暖化を食い止めるためにはどんな解決方法があるのでしょうか。
温室効果ガス削減
まずは、温暖化の進行ペースをゆるやかにするために、温室効果ガスの削減に努めることです。
IPCCの2℃シナリオを実現するためには、2100年には温室効果ガスの排出量をゼロかマイナスにする必要があります。また、パリ協定では長期的な目標として「2050年までに温室効果ガスの排出量を80%削減する」(先進国全体で)と掲げています。
温暖化は、私たち人間の生活によって排出されている温室効果ガスによって進行しているので、私たちひとりひとりが協力し、排出削減をする責任があります。
再生可能エネルギーの導入
次に、化石燃料に替わる再生可能エネルギーの導入です。二酸化炭素をほとんど出さない再生可能エネルギーの導入が拡大することは、温室効果ガスを出さない取り組みにつながります。
カーボン・オフセット
カーボン・オフセットとは、市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等の社会の構成員が、自らの温室効果ガスの排出を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等(クレジット)を購入すること又は他の場所で排出削減・九州を実現するプロジェクトや活動を実施することなどにより、その排出量の全部又は一部を埋め合わせるという考え方です。
農林水産省 カーボン・オフセット
イギリスからはじまったカーボン・オフセットはアメリカ・ヨーロッパなどでも取り組まれており、日本でも広がりつつあります。
このカーボン・オフセットの「埋め合わせ」には、削減活動への投資や、森作りの活動、再生可能エネルギーの利用などがあげられます。自分が出した温室効果ガスの排出量を、他の人が削減してくれた量で埋め合わせるということです。
途上国への支援
すべての国で対策に取り組むことが不可欠ですが、資金面で対策を出来ない島嶼国(とうしょこく)や後発途上国があります。温室効果ガスの排出量が多い先進国だからこそ、途上国に支援し、すべての国で温暖化対策に取り組めるようにする必要があります。
しかし、対策をを練るだけでは解決はしません。ひとりひとりが「行動しなければいけない」という危機感を持ち、「解決しよう」という気持ちを浸透させることが重要です。
企業や団体の取り組み事例
ここでは地球温暖化などの気候変動を食い止めるために、企業や団体が行っている取り組みを紹介します。
日本企業/団体の取り組み事例
日本国内の企業ではすでに、地球温暖化のペースをゆるめるための取り組みがはじまっています。やはり排出量の多い企業が率先して二酸化炭素の削減などをしていくことは必要不可欠です。
日本航空株式会社(JAL)
JALグループでは2020年6月に「2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指す」という目標を定め、次のような取り組みを行っています。
・バイオジェット燃料の活用と国産バイオジェット燃料の開発と導入
バイオジェット燃料は、家庭から出るゴミや木材、使用済みの食用油、藻類などが原料になっています。原油からできた燃料とバイオジェット燃料を混ぜて使用することでCO2排出量が25%削減出来ます。
・省エネ機材への移行
省エネ機材へ移行することで低騒音になり、CO2排出量を約15~25%削減することが出来ます。
・日々の運航での取り組み
エコ・フライトの取り組み、定期的なエンジン内部の洗浄で燃費の向上に取り組んでいます。また、機体や修理部品の洗浄の際に大量の水を使用することで、汚水が排出されます。その水を自社の処理施設に集め、水をリサイクルしています。さらにコンテナの軽量化で積載重量を削減し、消費燃料を抑える工夫をしています。
・CO2排出量取引への対応
航空以外の業態で抑制されたCO2排出量を購入し、地球全体でCO2排出量を削減する取り組みを行っています。また、搭乗する航空機から排出されるCO2をオフセット出来る選択肢として「JALカーボンオフセット」を導入しています。
出典:JAL サステナビリティ
東日本電信電話株式会社(NTT東日本)
NTT東日本グループでは、「NTT東日本グループ環境目標2030」を掲げ、人と地球が調和する未来を目指しています。
・デジタルコンテンツ化でCO2排出量の削減
インターネットを利用することで、移動にかかるガソリンの削減、電車の利用を控えることができ、CO2の排出量を削減出来ます。また、本を作ったりする工場の電気、出来上がった本を配送する車のCO2を削減することも出来ます。
・グリーンNTT
創エネ活動として、太陽光発電システムを利用した自然エネルギーの発電・利用を促進しています。
・業務量車両のの100%EV化(電気自動車)
車両から排出されるCO2を低減するため、EV化とカーシェアリングの推進をしています。
・カーシェアリングの提供
カーシェアリングサービス「ノッテッテ」として、NTTで保有している約8,000台の業務車両を社員が利用しない休日に提供し、CO2削減に貢献しています。

日本マクドナルド株式会社
日本マクドナルドでは、店舗と物流の両面において省エネ活動に取り組んでいます。
〇店舗での省エネ
・定期的な機械のメンテナンス
マクドナルドの店舗では定期的に機械をメンテナンスをすることで、無駄なエネルギーを使用しないようにしています。
・照明類や機器の電源はドットシールで
店舗内の電力抑制のために、店舗の照明類や機器の電源はドットシール(丸シール)でON/OFFを管理しています。
・LED照明の導入とデマンド監視装置
店舗内の照明はLED照明を導入。リアルタイムで電力を監視するデマンド監視装置で無駄な電力使用を抑えています。
〇物流での省エネ
・配送スケジュールと納品体制の見直しを実施
配送によるCO2排出量を削減するために、関西地区では読売新聞グループ本社と連携し、食塩と夕刊の共同輸送をしています。食塩を共同輸送することで年間約230台の走行台数を減らすことができ、約1トンのCO2排出量の削減に繋がっています。
・環境負荷の少ないモーダルシフトに
愛知県ではトラックによる陸上輸送から鉄道輸送に切り替えています。
佐川急便株式会社
佐川急便では、CO2排出量削減や3R 推進活動、生物多様性の保全、次世代への環境教育などに取り組んでいます。
〇脱炭素社会へ向けて
・環境対応車の導入
CO2排出量削減のため、CNG(天然ガス)トラックや、ハイブリットトラック、電気自動車といった「環境対応車」を導入しています。環境適応者の保有は年々増加しています。
・サービスセンターの設置
全国にサービスセンターを設置することで、トラックを使わず、台車や自転車、電動自転車を使用し、「環境にやさしい集配」に取り組んでいます。サービスセンターを活用することで全センター合計で車両1,500台分のCO2の排出を抑えることにつながっています。
・モーダルシフトの推進
トラックによる長距離貨物輸送を、CO2排出量が少ない列車や船の輸送に切り替える「モーダルシフト」で、CO2排出量がトラックの11分の1になります。
日本貨物鉄道と共同開発した特急コンテナ列車「スーパーレールカーゴ」による貨物輸送では、1日の合計積載量は10トントラック56台分に相当し、年間1万4,000トンのCO2削減を見込んでいます。
企業の取り組みの中には、NTTのインターネットのように、私たちが参加出来ることもあります。
これからの企業ビジョンとしてSDGsへの取り組みは重要なものとなります。アルバイトや仕事を探す際にSDGsへの取り組みをチェックしてみるのも大切です。
また、全国の地方公共団体で取り組んでいる事例がわかるサイトをまとめているのでぜひご覧になってみてください。
環境省 「現在、最も力を入れている地域の地球温暖化対策・施策」
世界の企業/団体の取り組み事例
気候変動は国と経済の安全を脅かす重要な課題とし、イギリスでは2019年に「2050年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする」という目標を発表しています。世界をリードするイギリスはどのような対策に取り組んでいるのでしょうか。
また、地球環境に関心の高いフィンランドとデンマークの取り組みをご紹介します。
【イギリス】
小さなころから環境問題を学校で学んでいるため、若い世代の環境問題への意識がとて高いのです。
2019年に、ロンドンにゼロ・ウェイストをコンセプトとしたレストラン「Silo London」がオープンしました。ゼロ・ウェイストとは、「ゴミを出さない」を意味します。
- 店内で出た余った食べ残しはコンポスト機械で堆肥に
- 食材の梱包に使わない
- ジャムなどの空き瓶は飲料用グラスに使用する
- 店内インテリアは地元デザイナーによってアップサイクルされたもの
など、「Silo London」は「食料の生産・消費・再生産」のループで、無駄のないレストランを目指しています。
【フィンランド】
地球環境に関心の高いフィンランドでは、加盟しているEUの2050年までにカーボンニュートラルにする目標より15年も早い、2035年までにカーボンニュートラルにする目標を掲げています。
2019年に、フィンランドの首都ヘルシンキ市がサスティナブルな情報を発信するための「Think Sustainably」を立ち上げています。このサイトでは環境への配慮を一定基準満たしたレストランやカフェ、ホテル、イベントなどを紹介してくれます。
- 施設で使用される電力は、太陽エネルギーや水、風力エネルギーを利用
- 使い捨て食器は使用しない
- 食品廃棄が出ない工夫
など、施設には17もの安全保全基準が設けられています。
また、自分の移動にかかるCO2排出量を教えてくれる「ルートプランナー」というのがあります。車・公共機関・徒歩などどの交通手段を選んだかでCO2の排出量が可視化されるシステムは楽しみながら、CO2排出量が少ない方法を選ぶことが出来ます。
【デンマーク】
北欧は持続可能な社会づくりへの意識も高く、再生可能エネルギーや資源のリサイクルがライフスタイルとして浸透しています。
デンマークでは、「UN17Village」という持続可能な街を作るという取り組みがあります。「UN17Village」はコペンハーゲン南部にあり、広さ35,000平方メートルで5つの建物に800人以上が暮らせるエコ・ビレッジが完成予定です。
特徴は
- 建物はアップサイクル資材を使用
- ソーラーパネルの設置と雨水の再利用で、100%再生可能エネルギーを利用する
- 廃棄物は資源としゴミは存在しない
循環する街づくりを目指しています。
また、デンマークには、すでに風力発電などを用い、ドーム型のエコ住宅を集めたエコ・ビレッジ「トーラップ」や、障害者と健常者と共存できる「ヘルサ」など、いくつかのエコ・ビレッジがすでに作られ、人々が自然や多様性を重視した生活をしています。
地球温暖化を食い止めるために、私たちができること
地球温暖化が進むと私たちの生活に支障が出ること、すでに出ていることは明らかです。
表のように家庭から排出されるCO2は少なくありません。ひとりひとりの力は微力かもしれませんが、家庭から地域から、職場から、二酸化炭素を削減し、地球温暖化を食い止めるために、できることはたくさんあります。
ひとりひとりが省エネルギーを意識し、行動することが重要です。ぜひ今日から次のようなことを実践してください。
エネルギー消費を減らす
家庭で使用する電化製品の割合を把握しておくことで、どのエネルギー消費を減らせるかの目安になります。各家庭でライフスタイルに違いがあるので、自分に出来そうなことから少しずつ取り組むことをお勧めします。
- 使っていない家電は電源を切る
- プラグを抜いておく
- なんとなく付けているテレビは消す
- トイレのフタはしめておく
待機電力を減らすことで節約にもつながります。また、家族みんながひとつの部屋に集まり過ごすことでエネルギー消費を減らすとともに、楽しい時間を共有することが出来ます。
・エアコンは夏は28℃、冬は20℃に設定し、サーキュレーターを利用する
空気を効率的に循環させることで、エアコンを効率的に活用できます。また、こまめにフィルターの掃除をすることも大切です。エアコンだけに頼らないことで、体への負担も減らすことができ、健康的な毎日を送ることにつながります。
・給湯の温度/家族は続けてお風呂に入る
食器を洗う温度とお風呂のシャワーの温度が同じである必要はありません。目的ごとに温度設定を変えることでエネルギー消費も変わります。
・省エネ家電を取り入れる/ハイブリットカー、電気自動車に乗り換える/ヒートポンプ、エコキュートを利用する
家電を選ぶときにぜひ注目したいラベルです。緑のラベルを選ぶことで自然と使用中も省エネになります。また、ハイブリットカーや電気自動車に換えることでCO2の排出量を大幅に減らすことが出来ます。(※8,9)
業務用で使用されることの多かったヒートポンプ。最近では家庭用のエアコンや冷蔵庫、洗濯機にも利用されるようになりました。
●水を大切につかう
水を浄化するのに大量のエネルギーを使用します。水も大切な資源です。
- 歯磨き中やお風呂のシャワー、食器を洗っている時に出しっぱなしにしない
- 洗濯はまとめて洗う
- お風呂の残り湯を活用する
お風呂のお湯を温かいうちに洗濯で使用することで、洗剤の酵素の力がアップして汚れ落ちも良くなるメリットと、月数千円の水道代の節約にも。また、植物の水やりなどにも利用できます。
●CO2排出量の少ない交通手段を選ぶ
ガソリン車はCO2排出量が多い乗り物です。可能であれば、行く場所によって交通手段をCO2排出量の少ないものにしましょう。
- 電車やバスを利用
- 近場は自転車や徒歩
ガソリン車の利用を減らすことで、CO2の排出を減らすことができます。また、自転車や徒歩で買い物に行くことで、健康やダイエットの面でもメリットがあります。
●ゴミを減らす
レジ袋を作るときにもエネルギーを必要とします。また、ゴミは燃やすときにCO2が発生します。
- エコバッグやマイボトルを持ち歩く
- 簡易包装にしてもらう
できるだけゴミになるモノを家の中に増やさないよう工夫しましょう。
- 食べきれる量を買って廃棄を出さない
- コンポスト
- 家庭菜園
年間600万トンもの食べ物が捨てられています。水分の多いゴミは焼却にエネルギーを使います。捨てずに済む方法を考え、食べきれる量を買うようにしましょう。
コンポストという生ゴミから堆肥を作ることで、ゴミのカサを減らすことが出来ます。出来た堆肥で家庭菜園をすることで、食べれる分だけの野菜を作ることも出来ます。(※11)
●買う物について考える
買うものでCO2削減に協力できることがあります。
手に取ったときにぜひ見ていただきたいラベル。ラベルを見ればどれだけ環境に配慮しているかわかるようになっています。エコマーク、エコリーフマークは環境に負荷が少ない商品ついています。
バイオマスは生物由来の資源から作られており、再生可能エネルギーです。バイオマスプラスチックとして、コンビニの袋やパンの包装、テイクアウトの容器などに使用されています。
また、地元産の食材を買うことは、遠くから運ばれる配送時に排出されるCO2を削減することが出来ます。

●その他
・太陽光発電の利用
自家発電でエネルギー消費を抑えることが出来ます。
・グリーンカーテン
陽の光をさえぎりクーラーの使用を控えることで、CO2の削減と節電になります。
すぐに取り組める対策から、経済的、物理的にすぐに取り組めない対策もあります。しかし、意外と「自分にもできるかも?」と思えるものが多かったのではないでしょうか。
また、無駄な消費をなくすことは環境にはもちろん、家計にもやさしいのです。
まとめ
私たちが日々暮らすことで排出される温室効果ガスにより、温暖化が進んでいます。
このまま何の対策を取らずにいると、温暖化の影響により気温はどんどん上昇し続け、自然災害による被害は増える一方です。
自然災害が増えることで、人間にも動植物にも暮らしにくい世界が訪れてしまいます。
私たちを癒し、豊かな気持ちにさせてくれる美しい海や山の景色も違ったものになるでしょう。
そのために「気候変動に具体的な対策を」とることが重要です。
対策は2つ。
- 温室効果ガス排出量を削減し、温暖化のペースを緩めるための「緩和」
- すでに起こっている自然災害などの防止や軽減のための「適応」
パリ協定では「2050年までにに温室効果ガスの削減80%」を目標としています。日本では2021年、2013年対比で「46%削減」にすると新目標として発表しました。
大幅な温室効果ガスの削減は簡単なことではありません。しかし、私たちの地球を、住みやすくするのも、住みにくくするのも私たち一人ひとりの行動次第です。
今までのライフスタイルに少しだけ、地球にやさしい行動をプラスしてみましょう。
- エネルギー消費を減らす
- 水を大切に使うの
- 交通手段を考える
- 使い捨てせず、モノを大切に使いゴミを減らす
- エコ製品・リサイクル製品を利用する
また、温暖化対策を意識することは、
- 目標3「すべての人に健康と福祉を」
- 目標7「エネルビーをみんなに そしてクリーンに」
- 目標12「つくる責任 つかう責任」
- 目標14「海の豊かさを守ろう」
- 目標15「陸の豊かさも守ろう」
の解決に近づくことにもなります。
暗い未来を想像するのではなく、今まで以上に快適な生活を送れる明るい未来をイメージして、楽しみながら、自分にできることを、今日から行動に移しましょう。

参考文献
※1:内閣府 開発途上国における防災の課題~災害と貧困の悪循環~
※2:JCCCA 地球温暖化の原因と予測
※3:国土交通省 気象庁 海洋酸性化の影響
※4:国立研究開発法人 国立環境研究所 熱中症患者の発生現状と今後の予測
※5:農林水産省 地球温暖化による食料生産への影響
※6:環境省 生物多様性分野における気候変動への適応
※7:外務省 気候変動分野における途上国支援
※8:経済産業省 資源エネルギー庁 無理のない省エネ節約
※9:国立環境研究所 電気自動車は環境にやさしいの?
※10:東京都環境局 交通機関の種類とCO2排出量
※11:政府広報オンライン 暮らしに役立つ情報
