近年、世界中で叫ばれている「気候変動」。WMO(世界気象機関)の、2021年8月の報告によると、過去50年間で、異常気象の発生数は5倍にも増えています。
気候変動の大きな要因である地球温暖化を止めなければ、この先も気温上昇が進み、ますます住みにくい環境になってしまうのです。
人間だけでなくすべての生き物が暮らす地球を守るために、私たちは今すぐに行動を起こさなくてはなりません。
この気候変動を食い止めるべく、国や地域を超えた課題解決を掲げるのが、SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」です。
今回は、個人で気候変動へのアクションを起こすために役立つヒントを5つお伝えします!
目次
【まずは「知る」から】気候変動の実態を学ぼう
日本では教育の場で気候変動を詳しく取り上げる機会が少ないこともあり、
- なぜ気候変動が起きているのか
- 気候変動がどのような影響を与えるのか
などが分からずに、具体的に何をすべきかが分からない人が多いのではないでしょうか。
気候変動についてアクションを起こすには、まず基礎から学ぶ必要があります。
ここでは、初心者も学びやすい「本」と「映画・動画」「音声コンテンツ」について見ていきましょう。
基礎知識を得るなら「本」がおすすめ!
書籍には、学者・研究者をはじめ、気候変動にかかわるエキスパートによって、分かりやすくまとめられたものがたくさんあります。
たとえば、
- 「地球に住めなくなる日: 「気候崩壊」の避けられない真実」デイビッド・ウォレス・ウェルズ(著)
- 「図解でわかる 14歳から知る気候変動」インフォビジュアル研究所(著)
は、気候変動についてよく知らなくても読み進めやすいように書かれています。
はじめはこのような入門書を読んで「気候変動って何?」から入り、本から得た知識やキーワードをもとに、さらに興味のある分野を深堀りしていくといいでしょう。
納得がいくまで読み込み、じっくりと知識を深めてみてはいかがでしょうか。
映像でイメージを膨らませるなら「映画・動画」がおすすめ!
映画・動画でも気候変動について知識を深められます。
ドキュメンタリーからノンフィクションまで、さまざまなタイプがありますが、おすすめしたいのが、気候変動問題の大きな原因となる「プラスチック」をめぐる「The Story of Plastic」です。この動画では、プラスチック生産~廃棄の現状を2分程度でまとめているため、気軽に見ることができるでしょう。
また、実際に気候変動に対する考え方や取り組みについて、幅広い分野の人々が出演する「PEOPLE POWER~気候変動と日本Ⅱ~」を見ると、自分がアクションを起こすきっかけづくりになるかもしれません。
ほかにも、現実に存在するうつくしい地球の姿や、たくましく生きる動植物の様子を追ったドキュメンタリー映画「Our Planet」を通して、気候変動へ取り組むモチベーションを上げるのも良いですね。
映画は、映像と音声を通じて、問題をよりリアルに感じられる点がメリットです。
忙しい人には「音声コンテンツ」がおすすめ!
気候変動について学びを深めたいけれど、なかなか時間が取れない…という人には、ラジオやPodcastといった音声コンテンツが最適です。
- 研究者やアクティビストを招いてトークを行なう「Emerald Practices」
- イギリスの国営放送局BBCによる「The Climate Question」
などは、問題がわかりやすくまとまっていて聴きやすい番組です。
音声コンテンツは、エピソードごとに完結するため、家事の合間や通勤・通学中の時間を使って学べるのでおすすめです。
どのようにSDGsの達成につながるのか
本や映画・音声コンテンツを通じて気候変動の知識を深めるアクションは、以下のターゲットの達成に貢献します。
13.3 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。
まずは気候変動に関する正しい知識を身につけ、次の行動に移していきましょう。
【方法はさまざま!】気になる活動団体をサポートしよう
次にご紹介するのは、気候変動問題に取り組む活動団体をサポートするアクションです。
個人で「何から始めたらいいのか分からない」と思ったら、まずはすでに実績を積んでいる団体の活動内容を知り、一緒に出来ることを見つけてみてはいかがでしょうか。
実はけっこう見つかる!団体を探してみよう
インターネットでは「気候変動 団体」のようにキーワードを入れるだけで、たくさんの団体を見つけることができます。
また、漠然とした問題に聞こえがちな「気候変動」ですが、取り組みを始めるにあたっては、さまざまな切り口があります。
例えば、
- 環境問題
- アニマルライツ
- 難民問題
- 社会問題(女性や性的マイノリティへの差別・子どもの教育など)
など。
どのような問題でも、気候変動と密接な関係を持っているため、自分が特に興味を持った分野から探すのもいいでしょう。
気候変動に関連する活動団体やアクティビストは、団体の枠を超えて連携していることもあるので、ひとつ見つけたら、さらに世界が広がるきっかけになるかもしれません。
寄付・ボランティアにチャレンジ
気になる活動団体を見つけたら、寄付やボランティアを募集しているか確認してみましょう。
最近ではオンラインで参加可能なボランティアも目立ちます。それぞれの活動内容をチェックし「これなら出来る!」と思ったら、サポートしてみて下さい。
ボランティアに参加すれば同じ志を持つ仲間に出会うチャンスも生まれます。
どのようにSDGsの達成につながるのか
寄付やボランティアへの参加は、SGDs目標13全般の達成にかかわります。
サポートという形で活動団体にかかわるだけでも、気候変動の解決に向けて大きな力になるもの。ぜひ、積極的に参加してみてはいかがでしょうか。
【声をあげよう】署名活動・デモに参加しよう
気候変動に関する署名活動やデモへの参加も個人ができるアクションです。
個人の力は小さく思われがちですが、みんなで足並みをそろえ、効果的なアクションを起こすことで、社会を変えられるほどの大きな波が生まれます。
「私1人が頑張っても意味がない」と思わずに、積極的に活動に参加してみましょう。
活動団体・アクティビストのSNSをフォローしておこう
気候変動に関する活動の多くは、主にSNSやウェブサイトを通じて告知されます。
もし、気になる団体や活動家がSNS・ホームページを持っていれば、あらかじめフォローしておきましょう。
過去の投稿を遡れば、実際にどのような活動が行われたのかを知ることもできますよ。
個人が集まって行動を起こせば、声は届けられる!
同じ志を持つ個人が集まり行動を起こせば、国や企業にその声が届くこともあります。
たとえば、スウェーデン人活動家グレタ・トゥーンベリがはじめた気候ストライキを元に誕生した団体「Fridays for Future」は、若者が中心となってさまざまなイベントを企画。
そのなかの代表的なアクションとして、毎年複数の団体と協力して開催している「グローバル気候マーチ」が挙げられます。
これは日本だけでなく、世界各地で一斉に気候変動の現状と解決を訴えるイベントです。
個人では国際サミットのような会議には参加できませんが、みんなが集まることで市民の声が反映されやすくなり、気候変動の方針を決める政府や企業に、大きなインパクトを与えることができるのです。
ほかにも、Change.orgのようなプラットフォームを活用した「署名活動」であれば、現地へ赴けない人も気軽に参加可能です。
過去には、
- アメリカのコーヒーショップで提供していたプラスチック容器の使用中止を実現
- 化粧品メーカーに動物実験の廃止の実現
など、署名を通して気候変動に関するポジティブな成果を生んだ例もあります。
「たった一人の声なんて」と思わずに、おかしいを感じることには恐れず声をあげましょう。一人一人の声が集まれば、世界を大きく変えるチャンスにつながります。
どのようにSDGsの達成につながるのか
デモ・署名活動を通して声を上げるアクションは、SDGs目標13全体の達成に通じます。
同じ意思を持った人と力を合わせる、という意味では、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」にもつながりますね。
「デモ」や「署名」と聞くと、なんとなく不安に思う人もいるかもしれません。しかし実際は、平和に実施しているものが多く、有効に活用すれば企業や政府に声を届けられ、より良い社会づくりに役立てることが可能です。
【実は身近な存在!】政治に対して声を上げよう
次にご紹介するのは「政治に対して声を上げる」アクションです。
先ほどの「デモ・署名活動」と合わせて行えば、国・地域の気候変動に関する政策に、市民の意見を反映するチャンスがより広がります。
市民の未来のために。参政権を上手に活用しよう!
政治と聞くと、少し硬いイメージを持たれることもあるかもしれません。しかし実際は、私たちの暮らしに直結する、大切な要素です。
特に、生まれながらにして誰もが持っているのが「参政権」。等しく与えられた一票を使って、貴重な市民の意思を反映することができるのです。
権利を上手に活かすには、日頃からの意識も大切
政治への参加を気候変動問題の解決に繋げるためには、1度の投票だけではなかなか難しいかもしれません。
そうはいっても、一刻も早く解決しなければならない気候変動。政治でより効果的に課題解決へ向かうには、「適切な政治家を選ぶ」ことが大切です。
そのためには、普段から政治の動向をできる範囲でチェックしておきましょう。
- 政党の方針や動向
- 自分の投票区で活動する政治家
などについて知り、疑問があれば直接ぶつけるのも有効です。
ほかにも、気候変動・環境問題に関する法案について、パブリックコメントを出してみてはいかがでしょうか。
一般的には、以下のような流れて実施されます。
たとえば、環境問題を大きく左右する発電・エネルギーの基本方針を決める「エネルギー基本計画」は、定期的に見直しがされます。オンラインや郵送といった手段を使って、個人の意見を政府に直接届けることができるのです。
どうしても個人ではできることが限られる気候変動問題。だからこそ、国の方針で少しでも良い方向へ変えるために、普段から政治へ意識を向けてみてください。
どのようにSDGsの達成につながるのか
「政治に対して声を上げる」取り組みは、SDGs目標13のターゲットの中でも、
13.2 気候変動対策を国別の政策、戦略及び計画に盛り込む。
13.b 後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において、女性や青年、地方及び社会的に疎外されたコミュニティに焦点を当てることを含め、気候変動関連の効果的な計画策定と管理のための能力を向上するメカニズムを推進する。
の達成に貢献します。
国のあり方・方針を決めるのは、私たち国民です。気候変動に立ち向かい、より良い暮らしを手に入れるべく、積極的に政治の動きをチェックし、声を上げていきましょう。
【あなたの預金、大丈夫?】ダイベストメントを実行しよう
最後にご紹介する取り組みは「ダイベストメントの実施」です。
本来は、主に企業や投資家の間で用いられる言葉ですが、近年は、
- 化石燃料ダイベストメント
- 石炭ダイベストメント
のような、温暖化に大きな影響を及ぼす化石燃料へ投資する企業・機関にお金を預けることをやめよう!といった動きが、個人の間でも巻き起こっているのです。
気候変動問題に取り組む国際環境NGO FoE Japanから、2013〜2015年の間、化石燃料への投資金額を国別に示したグラフが発表されています。(黒:石油とガス、灰色:石炭)
日本はなんと、アメリカや韓国をもはるかに超える金額を、化石燃料に投資していることがわかります。
しかし、これだけのお金が、一体どこからきているのでしょうか?
実は、資金源のひとつとして使用されているのが、私たちが銀行に預けているお金なのです。
環境団体350 Japanの報告によると、世界の銀行のうち、化石燃料事業へ投資を行う銀行ランキング・トップ3を日本の銀行が独占しているのが現状。
自分のお金が、知らないところで気候変動に加担しているなんて嫌ですよね。
そこで、個人のアクションとしておすすめなのが「ダイベストメント」なのです。
ダイベストメントのステップ①利用している銀行の投資状況をチェック!
まずは、現在利用している銀行の融資状況をみてみましょう。
どの金融機関にも、ウェブサイトへ行くと融資状況の報告や、融資の基準があります。とはいえ、わかりにくいなと感じた場合は、迷わず問い合わせフォームから直接聞いてみるのをおすすめします。
「自分が利用している銀行は大丈夫そう」と思っても、問い合わせへの回答内容が曖昧だったり、インターネットでニュースを検索したら事実と違っていたり、という可能性もあります。
もし、調べてみて、利用中の金融機関が化石燃料に投資していることが明らかになった場合は、次のステップ「銀行の乗り換え」に進みましょう。
ダイベストメントのステップ②銀行の乗り換え
銀行の乗り換えには、金融機関によって手続きの方法が異なります。インターネットで受け付けていない場合には、直接店舗に出向いて口座を閉じましょう。
その際、理由を聞かれることがあるかもしれません。答えられるようであれば、素直に理由を説明するようにしましょう。金融機関にとっては、ユーザーの声を企業方針に反映する、いい機会になるはずです。
乗換先の銀行は、350 Japanの「COOL BANK RANKING」がわかりやすいのでチェックしてみてください。
ダイベストメントをする人が増えれば増えるほど、化石燃料への融資の動きを止められるチャンスが増えます。
自分がダイベストメントを実行したら、次は家族や友人に話をして、アクションの輪を広げていってください。
どのようにSDGsの達成につながるのか
「ダイベストメント」の取り組みは、SDGs目標13のうち、特に、
13.b 後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において、女性や青年、地方及び社会的に疎外されたコミュニティに焦点を当てることを含め、気候変動関連の効果的な計画策定と管理のための能力を向上するメカニズムを推進する。
の達成に貢献します。
この取り組みで働きかける金融機関の投資先が、エネルギーに関連するため、SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」や、12「つくる責任つかう責任」の達成にもつながります。
ただ預けているだけのお金も、必ず世の中で回っています。自分のお金によって気候変動をこれ以上加速させないためにも、一人でも多くの人がダイベストメントを進めることが大切です。
まとめ
今回は、SDGs13「気候変動に具体的な対策を」について、個人でできる5つのアクションをお伝えしました。
地球規模でスピーディに取り組まなくてはならない課題だからこそ、一人一人が意識を高め、国や地域を超えて、みんなで力をあわせることが重要なポイントです。
一人で「どうやったら気候変動問題を解決できるかな?」と模索するよりも、個人と個人が手を取り合うことで、気候変動に必要な対策に対し、声を届けられます。
同じ地球に住む一員として、できることから着実にはじめ、解決のために歩みを進めていきましょう。
参考文献
BBC NEWS JAPAN「世界の気象災害、50年間で5倍に 経済損失は3.6兆ドル=世界気象機関」
WMO「Weather-related disasters increase over past 50 years, causing more damage but fewer deaths」
350 Action Japan「PEOPLE POWER 〜気候変動と日本Ⅱ〜」
グローバル気候マーチ
Change.org「活動報告2018」
e-Govパブリック・コメント「パブリック・コメント制度について」
国際環境NGO FoE Japan「Financing Climate Disaster : How Export Credit Agencies Are a Boon for Coal, Oil and Gas」
Sustainable Japan「ダイベストメント(Divestment)とは・意味」
350 Action「let’s divest」