2025年問題とは?企業の取り組みやSDGsとの関わりも

「2025年問題」は私たちの社会を脅かす重大な事案であるにもかかわらず、世の中にはまだあまり知られていないのが現実です。しかしこの問題を放置しておけば、2025年どころかその後30年以上にわたり、我々の社会に致命的な打撃を与えることになります。

そこでこの記事では、2025年問題について基本的な部分から、企業ができる対策、SDGsとの関わりまで詳しく見ていきましょう!

この記事の監修者
阪口 竜也 フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)

2025年問題とは

2025年問題をひとことで言うと、「団塊世代」と呼ばれる世代の人たち全員が、75歳以上の後期高齢者になることで起こる問題です。団塊世代とは、1947~1949年に生まれた世代を指し、この世代だけで約800万人という非常に多い人数となります。

その結果、大量の後期高齢者を支えるために、社会保障、主に医療・介護、年金などが限界に達し、社会全体に負の影響がもたらされてしまう。それが2025年問題です。

キーワードは超高齢化社会

2025年問題の背景には、「超高齢化社会※」の到来があります。

厚生労働省/今後の高齢化の進展~2025年の超高齢社会像」によると、2025年には65歳以上の人口が3,500万人に達し、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上となります。

一方では、止まらない少子化の影響により、その後も若い世代の割合は減り続けていきます。

問題の要点は、極端な少子・超高齢化によって「高齢者の急増」から「現役世代の急減」へと局面が変わっていくことなのです。

超高齢化社会

65歳以上の割合が全人口の21%以上を占める社会のこと

2025年問題が与える影響   

では、超高齢化社会による2025年問題は、日本の社会にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

その影響は多方面にわたりますが、全てに共通することは「必要なお金が毎年増える」のに「稼げる人の割合は減っていく」ということです。順を追って1つずつ確認していきましょう。

①社会保障費の負担が増える

一番大きな問題は、働けなくなった高齢者などを支えるための、社会保障に使うお金が増えていくことです。

特に75歳以上の後期高齢者は、他の世代に比べ医療費や介護費用がより多く必要になります。2025年には、この世代の医療費は47.8兆円、介護は15.3兆円、これに年金などを含めると、必要になる社会保障給付費は約140~140.6兆円になると見込まれています。

2018年が約121兆円だったことを考えると、大幅な負担増と言えるでしょう。

②介護者が増加する

後期高齢者になると次第に身体が不自由になり、介護を必要とする人が多くなります(75歳以上の被保険者のうち23.3%が介護が必要だと試算されています)。中でもその半分は認知症の影響が認められるといいます。

2025年には、実に700万人の人が認知症に罹っているという数字が予測され、そのうち、要介護Ⅱ~Ⅲが117~127万人、要介護Ⅳ~Ⅴでも92~99万人に上り、2020年と比べて、1.13~1.15倍の増加になります。

③医療体制の維持が困難になる

病気を抱えた高齢者が増えれば、それだけ医療施設と医療従事者が必要になります。しかし、それに必要な社会保障費が捻出できなくなれば今までのようにはいきません。少ない費用でより大勢の患者を診なければならなくなり、質の低下が危惧されます。同時に病院の経営も圧迫されたり、公立病院が削減されるなど、量的にも維持が困難になります。

コロナ禍がもたらす医療への負担

こうした状況に拍車をかけているのが、新型コロナウィルスの影響です。

このまま収束の兆しが見えずに病床が不足し、医療従事者が減少するなど医療体制が逼迫し続ければ、予測よりさらに早く医療体制が立ち行かなくなることが懸念されます。

④人材不足が起きる

超高齢化社会は老人の割合が増えれば増えるほど、当然ながらその下の世代の割合は減っていきます。労働者として生産し、経済を回す下の世代が減れば、

  • 物を作る人・売る人
  • 電気や水道を管理する人
  • 会社や役所で働く人
  • 病院や介護施設で働く人

といった、世の中のありとあらゆる産業で人が足りなくなるでしょう。高齢者は増えても、彼らを支える人々がいなくなるのです。

⑤事業継承問題

2025年に企業が直面する問題に事業継承があります。日本では企業・法人の9割を中小企業が占めますが、2025年には中小企業の経営者約380万人のうち、245万人が70歳を迎えます。さらにそのうちの127万人は会社を引き継いでくれる後継者が決まらず廃業の危機にある状況です。

その場合、従業者650万人が失業し22兆円相当のGDPが失われるおそれがあるのです。

⑥状況の悪化に拍車をかける氷河期世代の存在

2025年問題の潜在的な不安要素となるのが「就職氷河期」と呼ばれる世代です。団塊世代に次いで人数が多い彼らは、2025年に40~50歳代を迎えるため、本来ならば増え続ける社会保障費の担い手となるはずでした。

しかし、不況による就職難と非正規雇用推進政策により、多くの氷河期世代は極端な低賃金を強いられ続け、むしろ高い割合で貧困層を抱えた世代となっています。社会保障を担うどころか、彼らへの生活保護費が増えれば逆に社会保障費を増加させる可能性すらあります。

⑦事態の放置は国力の荒廃にも

より深刻なのは2025年問題はその年だけではなく、その後30年にわたって続くということです。

働けなくなる高齢者と、彼らを支えるために必要なお金は増える一方であるのに、そのお金を生み出す現役世代は減る一方です。

さらには現役世代は収入が低く、自分たちの生活を支えるので精一杯となるでしょう。

2040〜50年代には貧困層の多い氷河期世代も後期高齢者になります。その頃には社会保障どころか、生産力もインフラも医療も治安も維持できなくなり、国そのものが衰退から崩壊への途を辿る可能性があるのです。

国の対策

ではこうした危機的な状況に対して、国はどのような対策を講じているのでしょうか。

公費負担の見直し

社会保障費を安定して確保するために国が行っているのが、公費負担の見直しです。

厚生労働省は2025年からその先の2040年をも視野に入れ、社会保障の給付と負担の見直しに着手しています。その主なものは

  • 高齢者医療や介護において、所得や資産の保有状況など「能力」に応じた負担の検討
  • 医療費の保険給付率と患者負担率のバランス診療報酬などの総合的な対応
  • 介護のケアプラン、室料、軽度者への生活援助サービス等に関する給付について検討
  • 薬価改定など
  • 外来受診時等の定額負担後期高齢者の窓口負担を検討

などです。

こうした制度改定の結果、平成31年度(令和元年度)には1200億円程度の公費抑制につながっています。

地域包括ケアシステム

国が高齢者の総合的な支援として取り組んでいるのが、地域包括ケアシステムの構築です。

これは、高齢者ができる限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを送れるようにするため、住まい/医療/介護/予防/生活支援を日常の生活圏内で提供することを目指すものです。

その基本的な考え方となるのが

  • 介護予防・生活支援
  • 住まいと住まい方
  • 本人の選択と本人・家族の心構え

となっており、国が画一的なモデルを提示するのではなく、地方や自治体がそれぞれの地域の特性に合わせて作り上げることが重視されます。

健康寿命の延伸

高齢者がより長く健康でいられるような環境を作る取り組みも行われています。

例えば、

  • 健康づくりの生活習慣を推進
  • 疾病・重症化予防を重視した医療プログラムの策定
  • 介護予防フレイル※対策認知症予防研究の推進

などが挙げられます。

フレイル

活動性が低下し、筋力、体重や体力が失われることで、健康寿命を損う状態のこと

年を取っても元気で活動ができれば社会の活性化にもつながり、医療機関や介護施設の利用も少なくなるため、社会保障の負担軽減が期待されます。

介護職員の充実

要介護の高齢者を支えるため、介護従事者を充実させることは急務です。2025年度には約243万人、現在と比べると約32万人(5.3万人/年)の職員が必要とされます。

しかし介護業界では、重労働や低賃金、労働環境の問題などから離職者も多く、大都市を中心に人手不足が続いています。そのため国は、介護に関する入門的研修の実施で介護事業への参入を促進したり、資質の向上と労働環境・待遇の改善を目指すべく、認証評価制度を導入したりと、支援策を打ち出しています。

雇用対策

社会保障を支え、活力のある社会を維持するためにも、安定した雇用は不可欠です。

そのため国は、健康な高齢者に就労を促すことに加え、現役世代の待遇改善や就労支援策を重視して取り組んでいます。

  • 高齢者雇用機会
  • 高年齢者雇用/就業確保措置
  • 中高年齢離職者に対する再就職の援助
  • 事業者への高齢者雇用促進制度
  • 現役世代の待遇改善
  • 非正規雇用の正社員転換
  • 同一労働同一賃金の導入・最低賃金の毎年3%アップの引き上げ目標
  • 氷河期世代の就労支援

企業ができる対策

では2025年問題に対し、企業はどのような対策が求められるのでしょうか。

企業では、特に人手不足が深刻な問題として上がってきます。こうした懸念に対する方策をいくつか紹介していきます。

介護離職対策

2025年には、仕事と介護の両立に関わる「ビジネスケアラー」が急増することが見込まれます。彼らが介護に限らず、社員一人ひとりの事情に応じて、安心して働ける仕組みや環境を整えることが、「介護離職」を防ぐためには重要です。

そのためには、フレキシブルな勤務時間の設定やリモートワークの積極的な導入などの環境を整備することに加え、社内全体で介護への理解を深めておかなければなりません。

これには

  1. 介護は誰もが当事者であるという認識
  2. 仕事と介護を両立するには、自力ですべての解決は困難で、ある程度は外部のプロに委ねることが必要という認識
  3. 会社は、国の介護支援制度のほか、官民含めたさまざまな選択肢や手続きについても十分な情報を集めておく

といったことを意識しておくことが重要でしょう。

高齢者雇用

人材確保のためには、定年を過ぎた高齢者に引き続き働いてもらうことも選択肢のひとつです。

65歳以上の高齢者でも、65%以上が就労を希望している現状があるものの、実際の就業率はそのうちの45%にとどまっています。

企業は国が支援する助成金や就労支援サービスを積極的に活用して、高齢就業者の雇用や職域を確保するだけでなく、彼らが働きやすい職場環境を作っていくことが求められます。

生産性向上

働き手の減少が避けられない将来において、いかに少ない人数で高い利益を上げるかは大きな課題です。そのため、ICT技術の導入による省力化はどの産業においても必須となります。

  • ICTで見込まれる生産性向上
  • 農作業用ロボットやスマート農業の導入
  • 流通業におけるドローンによる配送自動運転パワードスーツの実用化
  • セルフレジとキャッシュレスによる無人店舗

一方で「ICTによる生産性向上方策と効果 – 総務省」によると、日本企業は「主として業務効率化及びコスト削減を目的としたプロセス・イノベーションを強く意識しており、他方ビジネスモデル変革などのプロダクト・イノベーションについては米国企業と比べると意識が低い」と指摘されています。つまり日本ではICTを省力化の手段として考える意識が強く、付加価値を上げる手段として使うという意識がまだ足りないということになります。

今後はこうした付加価値向上の視点からもICTを導入していかなければなりません。

事業継承問題への対策

高齢の経営者の方は、会社の事業を誰に、どのように引き継ぐかを考えなくてはなりません。

後継者を決めたら、円滑に事業継承ができるように早めに、時間をかけて育成と引き継ぎを始めましょう。

第三者承継の活用

親族にも社内にも後継者がいない場合は、外部に経営を引き継ぐという選択肢があります。

M&Aという形で会社ごと他社に経営を委ねる「第三者承継」は、中小企業庁が促進する事業継承対策です。一代で会社を築き上げた場合、抵抗がある方もいると思いますが、従業員の雇用が守られるだけでなく、買収に値する企業価値が評価されているということでもあります。

廃業を避け、会社をさらに発展させるためにも、前向きに考えてみてはいかがでしょうか。

SDGsとの関わり

2025年問題は、日本の社会の土台を揺るがす問題であり、ひいてはSDGsの目標達成にも大きく関わってきます。

中でも特に関連の深い項目と合わせて紹介していきます。

SDGsとは

SDGsは、国連が定めた「持続可能な開発目標」の総称です。2030年までに、「誰一人取り残さない」ことを目指して全世界が解決すべき17の目標を掲げています。

目標1「貧困をなくそう」

現代日本において、世帯の所得が中央値の半分以下である「相対的貧困率」の高さは深刻な社会問題です。子どもの貧困、ひとり親家庭、ワーキングプア、貧困老人など、その対象は全ての世代に及びます。

この問題を放置することは、社会正義に反するだけではなく、社会保障費の面からも2025年問題の解決にとって大きな障害となります。

関連ターゲット

1.3 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030 年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。

目標3「すべての人に健康と福祉を」

2025年問題の解決は、この目標の達成とイコールであると言っても過言ではありません。

医療や介護、生活支援を含む包括的な福祉政策は万国共通の重要事項であり、日本が先駆けてこの問題を解決できれば、SDGsの目標3の達成に向けたモデルケースを世界に示すことにもなります。

関連ターゲット

3.8 すべての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。

目標8「働きがいも 経済成長も」

増え続ける社会保障費をまかなうためには、安定した財源とそれを支える持続可能な経済成長が欠かせません。

そのためには、就労を望む全ての人々が、働きがいと、仕事に見合った十分な報酬を得て人間らしく働くことが必要です。全ての職種にいえることではあるものの、特に介護・福祉や医療の分野では、2025年問題に立ち向かうためにはこのターゲットの実現は不可欠です。

関連ターゲット

8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する

目標11「住み続けられるまちづくりを」

2025年問題への対策として国が目指す地域包括ケアシステムの大枠は、高齢者が住み慣れた地域で、自分らしく生活していける仕組みを作ることです。これは高齢者だけでなく、地域に住むあらゆる世代にも適合しており、

11.3 2030 年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、すべての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。

11.a 各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。

というターゲットに沿ったまちづくりにもつながります。

まとめ

2025年問題は、超高齢化社会をどう乗り切るかだけではなく、それ以降の日本の運命をも左右する重大な問題です。

大勢の高齢者を支えるために、より少ない人数で臨むことは困難な道のりかもしれません。とはいえ国、自治体、企業と私たち地域住民が一体となって取り組むことで、解決への道は拓けるでしょう。

日本が持続可能な社会を維持できるかどうかは、これからにかかっています。

<参考文献>
社会保障クライシス 2025年問題の衝撃」山田謙次/東洋経済新報社
今後の社会保障改革について ー 2040年を見据えてー – 厚生労働省(PDF)
厚生労働省/今後の高齢化の進展~2025年の超高齢社会像
認知症施策の総合的な推進について|厚生労働省
地域包括ケアシステム – 厚生労働省
日本における認知症の高齢者人口の – 厚生労働科学研究成果 …
3 高齢者の健康・福祉|平成28年版高齢社会白書(概要版) – 内閣府
2025年問題とは?事業承継できずに廃業する中小企業の特徴・事例
人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度について – 厚生労働省
高年齢者の雇用 – 厚生労働省
非正規雇用に関する総合的な方針等 – 厚生労働省
LYXIS AGING LITERACY | 超高齢化社会を生き抜くエイジング …
中小企業・小規模事業者における M&Aの現状と課題
ICTによる生産性向上方策と効果 – 総務省