現在、温暖化による気候変動が深刻です。今のままでは2100年には連日のように40度を超えることが予想されており、私たちの暮らしに多大な影響を与えるでしょう。
この問題を解決するためにも二酸化炭素量を減らしたり、電力の供給源を見直したりと、やるべきことはさまざま。しかし、ひとりひとりの力ではどうにもならないことが多く、企業や組織から変わる必要があります。
そこで今回は、SGDs目標13「気候変動に具体的な対策を」に関して、積極的に取り組んでいる企業を5つ挙げました。
すべての生き物が安心して暮らせる未来のために、気候変動に向き合い、解決へのヒントを探ってみましょう!
目次
SPARK(リトアニア)
気候変動の原因のひとつとして、移動や輸送に使われる化石燃料を燃焼することで排出される二酸化炭素です。
自動車業界では、石油由来であるガソリンを使用しない移動手段として、EVをはじめ、電気自動車の開発・販売に力を入れる企業が増えています。
日本でも認知度が高まりつつある電気自動車ですが、世界ではすでに電気自動車のレンタル・カーシェアリングといったサービスも普及しはじめているところ。
今回は、北欧バルト三国・リトアニアで人気上昇中のサービスを紹介します。
企業の紹介
SPARK(スパーク)は、リトアニア初の電気自動車シェアリングサービスを提供しています。
2016年にはじまって以来、今では首都ヴィリニュスを中心に、全国の主要な町で気軽に利用できるサービスにまで成長。
2019年には周辺国(ルーマニアなど)にも進出し、欧州で電気自動車シェアリングの輪を広げています。
どのような事業なのか
SPARKで貸し出している車は、すべてEV電源100%で稼働する自動車です。
メーカーは、フォルクスワーゲンや日産・ヒュンダイなどさまざまですが、どれも1時間以内~数週間とフレキシブルな期間で使える点が魅力。
ひとつのアプリ内で近くの車を予約し、移動距離の確認やチャージステーションの検索・支払いまで一括管理できます。
ほとんどの人にとって、暮らしの中で車が必須なリトアニアでは、すでにEV車の普及に関する整備や優遇が進行中。
電気自動車の専用レーンを走行して交通渋滞を回避したり、公共の駐車場が無料になったりと、使う側にとっても特典が多いのです。
とはいえガソリン車がまだまだ大きな割合を占めているのは事実です。それでも、車を持っていない若者や旅行者を中心に、電気自動車を選択する人が増え、需要が拡大しています。
またSPARKは、さらなるEV車の普及につなげるため、チャージステーションの開設にも力を入れ、より多くの利用者が気軽に電気自動車に乗れるよう努力しています。
どのようにSDGsの達成につながるのか
SPARKの取り組みは、以下のような点でSDGs目標の達成に寄与しています。
- SDGs目標13への貢献
気候変動の一大原因である化石燃料(石油)を使用しない移動手段の提供 - SDGs目標9への貢献
電気自動車を利用しやすいインフラの整備
日常での使用はもちろん、ちょっとした移動や旅行の際、環境にやさしい車を選びたいですよね。
電気自動車のシェアリングサービスは、日本でもこれから需要が増していくに違いありません。
Atomosfair(ドイツ)
次にご紹介するのは、気候変動を考える上で欠かせない、二酸化炭素を減らす取り組みを行なっている団体です。
先ほどのSPARKは自動車にまつわる企業でしたが、最も多く二酸化炭素を排出する乗り物が「飛行機」です。
Atomosfairでは、特に旅行やビジネス・家族の都合といった理由で、どうしても飛行機に乗らなければならい人に、ぜひ知ってほしい取り組みを行なっています。
企業の紹介
Atomosfair(アトモスフェアー)は、ドイツの環境省がリサーチプロジェクトの一環で立ち上げた非営利団体です。
2004年の設立以降、気候変動への解決につながる「二酸化炭素排出の削減」を掲げ、余剰な二酸化炭素排出量をお金で購入・寄付するカーボンオフセットの仕組みを行なっています。
また、ケニアやインド・ネパールといった開発途上国を中心に、農業や普段の暮らしに必要な電力を賄うための再生可能エネルギー発電所を設置する活動も行っています。
どのような事業なのか
Atomosfairでは、飛行機の搭乗による二酸化炭素の排出量を可視化し、過剰排出した二酸化炭素をお金で支払う「カーボンオフセット」の仕組みを提供しています。
カーボンオフセットについて
同社のレポート によると、2050年の1.5度目標を達成するためには、1人あたり年間1,500㎏の二酸化炭素排出量に抑える必要があります。
しかし、1度飛行機に乗るだけで、多くの場合は年間目標を一気に超えてしまうのです。
そこでatomosfairでは「そもそも二酸化炭素排出を避ける」ことを前提にしつつも、万が一飛行機に乗る場合はオフセットをするように求めています。
同団体が用意するカーボンオフセットのページでは、
- 搭乗するフライトにあわせてカーボンオフセット
- 定期的な寄付
- 応援したいプロジェクト・団体を指定して寄付
- atomosfairへ直接寄付
と、さまざまな方法でカーボンオフセットを呼びかけています。
たとえば、搭乗するフライトにあわせてカーボンオフセットを行いたい場合、経路や搭乗クラス・飛行機のタイプを選択するだけで、自動的に推定二酸化炭素排出量を数値化。カーボンオフセットに必要な量と金額を表示します。
例として、日本と欧州の直行便で最も近いといわれている、ポーランド(ワルシャワ)~日本(成田)のフライトに、エコノミークラスで搭乗した場合の二酸化炭素量排出を入力してみました。
この場合「Your climate impact(推定の二酸化炭素排出量)」は、2,312㎏、オフセットに必要な金額は54ユーロ(約7,020円)でした。
図の中のの棒グラフでは、さまざまなシミュレーションを基にした二酸化炭素排出量を確認できます。
上から順に、
- 搭乗予定のフライト(赤)
- 南アフリカ・エチオピアの国民が輩出している、平均的な二酸化炭素の量(青)
- 1台の普通車が12,000㎞走行した場合に出す二酸化炭素の量(青)
- 気候変動を食い止めるために、年間で1人当たりが出せる二酸化炭素の許容量(緑)
搭乗クラスや距離にもよりますが、1度でも飛行機に乗れば、その年に出してもOKな二酸化炭素量を優に超えてしまうことが分かります。
また、ここでエチオピアの例が示すように、実は開発途上国に住む人の多くは、ほとんど二酸化炭素を排出していないことにも気づかされるのです。
このカーボンオフセット・シミュレーションを通して、いかに飛行機移動が特別な手段なのかを可視化でき、気候変動を食い止めるためにできるだけ「飛行機に乗らない」という選択肢をとる人が増えれば、地球へのインパクトは随分変わってくるのではないでしょうか。
どのようにSDGsの達成につながるのか
Aomosfairの取り組みは、以下の点でSDGs目標の達成に関連しています。
- SDGs目標13への貢献
二酸化炭素排出量を可視化し、カーボンオフセットによって排出量を相殺する - SDGs目標7への貢献
途上国を中心に、自然エネルギーを利用した発電所を設置し、誰もがクリーンな電気へアクセスできるようにする
発電システムを整えることは、SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」にも通じますね。
デルタ航空(アメリカ)
先の例では「飛行機に乗らないことが、二酸化炭素排出量を防ぐ手段になり得る」と示しましたが、当の航空会社が行っている取り組みを見逃すわけにはいきません。
世界を繋ぐ大切な手段でもある航空業界も、持続可能な未来へ向けて努力をはじめています。
ではここで、アメリカの航空会社・デルタ航空に着目してみましょう。
企業の紹介
デルタ航空は、アメリカの航空会社。日本はもちろん、世界じゅうに空路を持つグローバルな航空会社のひとつです。
どのような事業なのか
2020年3月、デルタ航空は航空業界ではじめて、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言しました。
10年後の2030年までに1億ドルもの資金を投じ、
- より二酸化炭素を排出しないシステムの開発
- 空気を汚さない技術の開発
- 機内サービスで使用する容器やアメニティの素材を環境にやさしいものにする
などの計画を発表しています。
また、カーボンニュートラルへの取り組み方法として、カーボンオフセット以外にも、中期目標として「2030年までに使用燃料の10%を化石燃料から持続可能な燃料へと切り替える」と掲げています。
どのようにSDGsの達成につながるのか
デルタ航空の宣言は、SDGs目標の達成において、以下の項目と関連します。
- SDGs目標13への貢献
新しい技術の開発を通して二酸化炭素排出量を減らし、気候変動の加速を食い止める
とはいえ、取り組みはまだはじまったばかり、これからの動きに注目したところですね。
Plastic Free July(オーストラリア)
これまで、主に乗り物に関する取り組みを紹介してきましたが、実は気候変動の大きな引き金になっている「石油」は、プラスチック製品の生産に多く使用されています。
プラスチックは土や水の中で分解されるのに100年以上かかるため、海・陸の生態系に悪影響を与えている点も深刻な問題です。
まずはとにかく、プラスチックの生産・使用を削減することが求められる中、ひとりひとりの取り組みで世界を変えようとする動きが出てきています。
企業の紹介
Plastic Free July(プラスチック・フリー・ジュライ)は、オーストラリアを拠点に活動する、2011年設立の非営利団体です。
海や道ばたに捨てられているプラスチックごみを拾う活動からはじまり、今ではグローバル規模で「プラごみをなくす」運動を広めています。
どのような事業なのか
毎年7月、できるだけプラスチック製品を使用しない「Plastic Free July」というキャンペーンを展開しています。
目標はゼロでなくても大丈夫。何かペナルティがあるわけでもありません。
本当に誰でも気軽に参加できるプロジェクトなのです。
同団体のレポートによると、2020年の参加者は3億2,600万人で、なんと推定9億kgもの使い捨てプラスチックを使わずに済みました。
ひとりひとりの活動は小さいかもしれませんが、世界規模に換算すると大きな数値としてあらわれることが分かります。
このキャンペーンは様々な国のメディアに注目され、企業や政府といった組織への強いメッセージにもなりました。
アクションに参加すると、期間中に行われる世界各地で行われるさまざまなイベントに参加でき、新たな学びを得られることも。
ウェブサイト内では下の画像のように、プラスチックを減らすためのヒントをカテゴリー別に掲載し、いつでも気軽にプラごみをなくす取組を実践できます。
大事なのは、ひとりひとりがプラスチックの削減にチャレンジし「意外といける」という意識を持つこと。
キャンペーンが終わったあとも、プラスチックを使わない生活を継続するための、大切なきっかけづくりになっています。
どのようにSDGsの達成につながるのか
Plastic Free Julyの取り組みは、以下の点でSDGs目標の達成につながります。
- SDGs目標13への貢献
プラスチックの使用を避けることで、世界全体のゴミ削減・企業によるプラスチック生産を止める動きをつくる - SDGs目標14、15への貢献
海や陸の生態系に悪影響を与えるプラスチックを使わない - SDGs目標17への貢献
世界じゅうから参加でき、イベントや情報を通してみんながプラスチックごみの削減に取り組む
年ごとに参加者が増えている様子からも、こうした非営利団体だけでなく企業や自治体が率先してプラスチックの使用を避ける動きは、今後はさらに強く求められるはずです。
ロンハーマン(日本)
最後は、世界の産業で2番目に二酸化炭素排出量の多い業界といわれる、アパレル分野からの取り組みを紹介します。
アメリカ生まれのブランド・ロンハーマン(RON HERMAN)では、経営陣から意識の改革を実行し、持続可能な社会に向けて具体的な行動を起こしている、先進的な一例です。
企業の紹介
ロンハーマンは、1976年カリフォルニアで誕生したアパレルブランドです。
現在、日本での運営は、株式会社サザビーリーグが行っています。
上質な素材と洗練されたデザインで、性別問わず幅広い層から支持を受け、国内に15店舗・アメリカで3店舗を展開する人気ぶりです。
どのような事業なのか
ロンハーマンは、2021年5月にサスティナビリティ・ビジョンを発表。
- 環境
- コミュニティ
- 顧客
- チームメンバー
の4つの要素で構成しています。
たとえば環境に関して、2030年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにし、店舗の電力源は再生可能エネルギーに変えるといった取り組みを実行しています。
ほかにも、そもそもの生産量を見直し、可能な限り削減して資源・排出ガスの量を減らす計画を発表。
アパレル業界といえば、平時の売り上げに加え、年に数回のセールによって売り上げを伸ばすスタイルが一般的です。
しかし、それはつまり「セールが開催できるほど余剰な在庫を抱える」ことになってしまいます。
SDGs目標12「つくる責任、つかう責任」でも提示されるように、ひとつのアイテムをできるだけ長く使うことが求められている以上、ロンハーマンは「そもそも生産ペースを落とす必要があり、気候変動を食い止めるための大切な一手だ」と考えているのです。
どのようにSDGsの達成につながるのか
ロンハーマンの取り組みは、次の点でSDGs目標の達成に関わっています。
- SDGs目標13の達成に貢献
生産量や工程を見直し、地球環境への負担削減に励む - SDGs目標12の達成に貢献
材料の調達から透明性を確保し、消費者側に情報を提供
アパレル業界から気候変動へアプローチをかけることで、消費者だけでなく生産農家や工場・輸送会社のように、関連するさまざまな業界にも影響を与えることができます。
まとめ
今回は、SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」に関連する取り組みを、5つの企業・団体を例に挙げて紹介しました。
気候変動と聞くと、イメージが付きにくいかもしれませんが、私たちの暮らしや将来の生き方を大きく左右する重要な要素です。
まずは自分に関わりのある業界や、日々の暮らしの中で、どのような現状が起きているのかを知ることからはじめてみましょう。
そして自社の事業と結びつけ、何ができるか考えて実践することが大切です。
時間はかかるかもしれませんが、小さな取り組みで未来を大きく動かせるはずです。
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