SDGs目標7は、地球を持続可能なものにするために、環境に優しいクリーンなエネルギーを使っていこうという目標です。
電気やガスは、さまざまなものを動かすうえでなくてはならないもの。これからの社会では、そのエネルギーをただ使うのではなく、
- どのようにつくられているのか
- どのように使うべきか?
に目を向けることで目標達成の道が見えてきます。
そこで今回は、個人でできるSDGs目標7達成への取り組みを5つご紹介。どれも簡単に取り入れられるので、ぜひ参考にして下さい。
目次
【その電気、何でつくられている?】家の電力プランを見直そう
ここで紹介するのは、現在使用している電力プランについて見直すことです。ではどのような観点から見直せば良いのでしょうか。
再生可能エネルギーに注目しよう
日本の電力の7割は火力発電で、石油や石炭・天然ガスを燃やして作られています。
そのため電気を使えば使うほど、たくさんの二酸化炭素を排出するため、地球温暖化が加速してしまうのです。
これ以上地球を汚さず、持続可能な暮らしを実現するために向かうためには、再生可能エネルギーの導入が不可欠。
再生可能エネルギーとは、
- 太陽光
- 水力
- 風力
のような、自然の資源を利用した、環境にやさしいエネルギーのことで、発電時に二酸化炭素を排出しないこともポイントです。
また、これまでの石油・石炭・天然ガスは海外からの輸入に頼っていたため、資源の輸送時にも二酸化炭素が排出されていました。対して再生可能エネルギーは国内での発電が可能なため、輸送する必要がありません。
つまり、自宅の電力プランを再生可能エネルギーを利用した内容のものにすれば、自然と環境を守る取り組みにつながるのです。
再生可能エネルギーの重要性を踏まえて、次からは電力プランの見直すための方法を見ていきましょう。
ステップ①契約書・請求書をチェック
まずは現在の契約プランで、自分がいま使用している電気のエネルギー源を見てみましょう。契約書や請求書に詳細が書いていない場合は、電力会社のウェブサイトから簡単にチェックできます。
ステップ②再エネを取り入れている電力会社を探す
自分の家の契約タイプがわかったあとは、再エネを取り入れている電力会社を探してみましょう。
主要電力会社が再生可能エネルギーの供給に力を入れはじめているほか、みんな電力やハチドリ電力のように、100%再生可能エネルギーを取り入れて電力会社もあります。
近年は再生可能エネルギーのコストが下がってきたため、従来の電気料金よりも安くなる可能性もあります。
ウェブサイトで料金シミュレーションができる会社もあるので、どれくらい電気料金が変わるのかを確かめてみましょう。
ステップ③契約を切り替え
確認が終わればいよいよ契約の切り替えです。
「電力会社を切り替えるなんて面倒くさそう」と思う人もいるかもしれませんが、実際はオンラインで簡単に手続きを終わらせることができます。
どのようにSDGsの達成につながるのか
「電力供給プランの見直し」は、
7.2 2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
の達成につながります。
また、環境への配慮という面では、二酸化炭素の排出量減少に貢献できるため、SDGs目標13~15への取り組みにもなるでしょう。
【小さな積み重ねが大事!】電気・エネルギーの無駄遣いを減らそう
電気やエネルギーの無駄遣いを減らす、いわゆる節電も目標達成には重要です。
とはいえどのような電力を節電を節約すればいいのかわからない方も多いと思うので、まず現状を知るところからがスタートしましょう。
以下は、エネルギー庁による「家庭の用途別エネルギー消費の推移」を示しています。
1965年度に比べると、2018年度時点で私たちのエネルギー消費量は、なんと約2倍に増えています。
内訳としては
- 半分以上が、暖房・給湯といった「あたためるため」
- 3割以上が家電製品を「稼働させるため」
となっているのです。
便利なアイテムがどんどん登場する世の中だからこそ、本当に必要なものや、エネルギーの使い方を見直す必要があります。
そこで、地道ながら続けることに意味のある取り組みについて、改めて考えてみましょう。
アクションの紹介
このアクションには、大きく分けて、
- ⑴普段の暮らしに必要なアイテム選び
- ⑵できるだけエネルギーを無駄にしない
の2つがあります。
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
⑴普段の暮らしに必要なアイテム選び
まずは、アイテム選び。自分のライフスタイルにあわせて、本当に必要なものだけを選ぶようにしましょう。
注意する点は、
- 似たような用途・機能を持つ端末を所持していないか
- 本当に必要な調理アイテムか
- 照明の数・サイズは適当か
などです。
たとえば電動の掃除用具をいくつも所持せず、1つの掃除機を使ったり、場所によってはホウキで済ませたりといった工夫ができますよね。
台所でも、電動フライヤーではなく手持ちのフライパンで揚げ物をするなど、手でもできることであればわざわざ家電製品に頼る必要はないでしょう。
照明の数やサイズも必要以上に増やしてしまうと無駄に電力を消費してしまいます。
こういった小さな工夫は、一見すると不便のように思われるかもしれませんが、今すでに持っているアイテムで過ごすことで、余計なエネルギーを使わなくて済むのです。
近年は、「省エネ」の商品も増えています。一度購入したら長く使うことを前提に、同じ家電製品でも電気を極力使わずに済むものを選ぶことを心がけましょう。
⑵できるだけエネルギーを無駄にしない
できるだけエネルギーを無駄にしないためには、普段からの節電はもちろん、長時間使わない家電製品はコンセントを抜く(=待機電力の削減)といったアクションが大切です。
資源エネルギー庁によれば、家庭内の消費電力のうち、6%が待機電力です。テレビや扇風機といった家電製品は、プラグを挿している限り、いつでも稼働できるように電気が流れた状態になっているのです。
寝る前や家を長期間空ける場合は、
- 主電源をオフにする
- コンセントを抜く
など、日ごろから出来る限りエネルギーを無駄にしない意識を持って生活しましょう。
どのようにSDGsの達成につながるのか
「電気・エネルギーの使い方の見直し」は、SDGs目標7はもちろん、暮らしの中でエネルギーの使い方を意識し、地球にやさしい商品を選択できるという意味で、SGDs目標12にも関連します。
筆者も電気を使いすぎない暮らしを実践していますが、意外に困ることはありません。なにより地球に負担をかけていないと思うと気持ちがよくなるので、ぜひチャレンジしてみてください。
【そのデータ、必要?】クラウドに保存したファイルの整理
近年は社会全体で電子化が進み、紙などの無駄な資源を節約できるようになりました。その一方で、クラウドサービスやサーバーに保存したファイルにたくさんのエネルギーが使用されていることをご存じですか?
私たちが何気なく保存しているクラウドサービスは、管理会社のデータサーバーで保管しています。
NTTファシリティーズによると、データの保存に必要な機器が置かれるデータセンターでは、データを溜めるために必要な電力だけでなく、稼働の際に発生する熱を冷却するためにもたくさんのエネルギーが使用されています。
つまり、データの量が多ければ多いほど、どんどんエネルギーを消費してしまうのです。
そこで、電子データのエネルギーの使い過ぎを防ぐために、必要なアクションをお伝えします。
アクションの紹介
普段から撮りためた写真や動画、生活に必要な書類など、端末のサーバー・クラウドに保存しているさまざまなデータを、定期的に整理するようにしましょう。
「これは大事なもの」と思って保存したものの、時が経つとそうでもなかったり、「もう必要ないな」と思うものがたくさんあるはずです。
中でも、意外と溜まりがちなのは、メールデータではないでしょうか。
手動で削除するのが面倒な場合は、各サービスの「自動削除」できる場合もあるので、設定を見直してみてください。不要なデータのために、地球の資源を消費するのはもったいないですよね。
どのようにSDGsの達成につながるのか
「保存したデータの整理」はSDGs目標7全体の達成はもちろん、エネルギーの使いすぎを防ぐことで、SGDs目標13の達成につながります。
また、最近では電子書籍を読む機会も増えていますが、図書館や中古本のお店を利用するなど、すでにある資源を上手に使用するといった取り組みもおすすめです。
【電気だけじゃない!】毎日の移動手段について考えてみよう
これまでは主に、電気についての取り組みをご紹介してきましたが、今度は交通面からエネルギー消費について考えてみましょう。
さまざまな交通手段が当たり前になっている現代だからこそ、どのくらいエネルギーを消費しているのか、という事実に目を向けることが大切です。
いつも乗っている乗り物が排出する二酸化炭素の量を知ろう!
乗り物に乗ることは、燃料や電気を使用することだけでなく、二酸化炭素の排出にもつながります。
Our World in Dataによる「公共交通機関別 1kmに消費する二酸化炭素量(2018年)」のグラフを見てみましょう。
【グラフの見方】
上から、国内線飛行機、中型ガソリン車、短距離飛行機・エコノミークラス、タクシー、長距離飛行機・エコノミークラス、バス、中型バイク、中型電気自動車、列車、フェリー
表を見ると、
- 国内線飛行機
- ガソリンを燃料に走る中型車
- 短距離の飛行機
の順に二酸化炭素を排出していることがわかります。
こうしてみると、いかに飛行機・ガソリン自動車が環境に負担をかけているのかが分かるのではないでしょうか。
エネルギーの消費を抑え、二酸化炭素も削減するためにも「移動手段の工夫」について考えていきましょう。
アクションの紹介
出発する前に自分が乗る乗り物の二酸化炭素量について考え、適切な移動手段を選択できるようにしましょう。
例えば自家用車ではなく公共交通機関を利用したり、距離が近い場合であれば、自転車もしくは徒歩に変更するのもいいですね。
そうはいっても、目に見えない二酸化炭素量について考えるのは難しいかもしれません。そんなときは、二酸化炭素量を計算できるツールを使ってみましょう。
ベルギーの団体Green Tripperが用意するページでは、利用する乗り物ごとに二酸化炭素量を可視化できるようになっています。

英語ではありますが、操作はシンプルです。
計算したい乗り物のアイコンをクリックすると、
- 乗り物の詳しい種類
- 出発・到着地
- 人数
- 往路だけ(Single)なのか復路もあるのか(Return)
といった項目を入力できます。
最後に緑のボタンを押すと、どれだけ二酸化炭素を出すことになるのかが分かる仕組みです。
こうしたツールを利用しながら、普段の暮らしで利用している交通手段を見直し、できるだけ二酸化炭素を排出しないように気を付けてみてはいかがでしょうか。
どのようにSDGsの達成につながるのか
クリーンエネルギーの乗り物を選択することでSDGs目標7全体の達成に貢献できます。
もし公共交通機関が少なく、自家用車を利用しなければならないエリアに住んでいる場合でも、燃費のいい車種や電気自動車といった、よりエネルギーの使用を減らせるオプションを選ぶことが大切です。
【どうしても、の場合は…】カーボンオフセットをしよう
最後にご紹介するのは「最終手段」という意味での取り組みです。
数ある交通手段のうち、最も二酸化炭素を多く輩出するのは飛行機で、一度乗るだけで、大量の温室効果ガスを出してしまいます。
スウェーデンをはじめ欧米では「飛び恥(Flight shame)」という言葉も出てきたほど、飛行機に乗る=気候変動に大きな負担をかける、という認識が強まっているのです。
しかし、海外に住んでいる場合など、やむを得ない事情を抱える方にとって、飛行機は必須ですよね。そんなとき、カーボンオフセットという手段を知っていれば、二酸化炭素削減のアクションに参加できます。
アクションの紹介
万が一の事情があって飛行機に乗ったときには、排出した推定二酸化炭素量の金額を支払って、カーボンオフセットを行ないましょう。
カーボンオフセットはどうやるの?
カーボンオフセットは、現在さまざまなプラットフォームで利用できます。先ほど例に挙げたGreen Tripperのほか、ドイツのAtomosfairもおすすめです。
日本では、個人でカーボンオフセットを行なえるサイトこそあまり存在しませんが、国が運営するJ-クレジットという制度があります。
この制度は、団体のイベント・商品購入といったサービスを通じて、
- 植林活動
- 再生エネルギー発電
などを行っている事業者にお金が渡る仕組みです。
このように、カーボンオフセットは、何らかの理由で過剰に排出してしまった二酸化炭素を、未来の技術や森林保全活動を通して、将来の排出量をゼロに戻す取り組みなのです。
そのため、特に飛行機を利用する際は、カーボンオフセットをしてみはいかがでしょうか。
どのようにSDGsの達成につながるのか
「カーボンオフセットをする」取り組みは、目標7の以下のターゲットの達成に貢献します。
7.a 2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。
ほかにも、主に植林活動に使われるカーボンオフセット制度に参加し、陸の自然保全へつなげるという点では、SDGs目標15の達成に貢献できますね。
カーボンオフセットは、あくまでも「出してしまった二酸化炭素を、今後の活動・技術で回収する」ことを目的にした制度であり、根本的な解決にはつながりません。
そのためには、やはりできるだけ飛行機に乗る回数を少なくする努力が大切です。
まとめ
今回は、SDGs目標7「エネルギーをクリーンに、そしてみんなに」について、個人ができるアクションのヒントを5つお伝えしました。
普段、何気なく利用している電気や燃料は、すべて地球の資源からできています。
目に見えないものだからこそ、ついつい気軽に使ってしまいがちですが、エネルギーを使えば地球に負担がかかることや、二酸化炭素の排出によって環境に影響を及ぼしていることを忘れてはいけません。
「私たちは地球の資源を使わせてもらっている」という意識を持ち、毎日の暮らしに小さな工夫を取り入れていきましょう。
参考リンク
資源エネルギー庁「省エネって何? | 家庭向け省エネ関連情報 」
NTTファシリティーズ「冷却によって増え続けるデータセンターの電力消費 | ビジネスコラム 」
Our World in Data「Which form of transport has the smallest carbon footprint?」
Greentripper
環境省「カーボン・オフセットガイドライン」
NHK「ヨーロッパで広がる”飛び恥” – みんなでプラス」
カーボンオフセットフォーラム「オフセット/ニュートラルとは?」