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土壌汚染とは?影響や原因、対策、私たちにできること

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土壌汚染は目には見えにくいものの、私たちの身近にも起こりうる問題です。汚染された土壌は地下水を汚染する恐れもあり、私たちの健康にも悪影響を及ぼします。

この土壌汚染は、工場などから流出する有害物質だけでなく、農薬による汚染や廃棄物の不法投棄、自然由来の汚染など、さまざまな原因があります。

見えにくい問題だからこそ、土壌汚染について影響や原因、対策を知り、私たちにできることから対策に取り組むことが大切です。

本記事では、土壌汚染についてわかりやすく解説します。

目次

土壌汚染とは

【土壌汚染とは】

土壌汚染とは、土壌が有害物質によって汚染された状態のことです。土壌は、私たちの生活に欠かせない水や空気と同様に、人間を含む生き物が生きる上で重要な環境です。土壌には、地中に生息するさまざまな生物が生活しており、そこに含まれる水分や養分が、私たちの食べる農作物を育んでいます。

しかし、工場や事業場から有害物質が漏洩したり、不適切に処理されたりすることで、土壌汚染が発生します。こうした人為的な活動に伴う土壌汚染のほかに、自然由来の重金属汚染など、地質的な要因によって土壌が汚染されている場合もあります。

土壌汚染は目に見えにくいため、気づいたときにはすでに広範囲に広がっている可能性があります。そのため、土壌汚染の早期発見と適切な対策が重要となります。

土壌汚染の特徴

【さまざまな土壌汚染】

土壌汚染には、大気汚染や水質汚濁とは異なる独自の特徴がいくつかあります。

①体感しにくい公害

土壌汚染は、有害物質が地下に浸透するため、目視やにおいで汚染を感じにくい特徴があります。このため、有害性の認識が低く、公害への対策も遅れがちだったという経緯があります。

特に、過去には工場敷地内での廃水の地下浸透など、土壌への有害物質の浸入が問題となっていました。

②長期にわたる滞留・蓄積

土壌に浸入した有害物質は、土壌粒子への吸着などの現象により、地域的に限定された汚染状態が長期にわたって持続する傾向にあります。地下水への拡散も極端に遅いため、汚染が広範囲に広がりにくい一方で、蓄積性が高いことが特徴です。

③公共財と私有財産の混在

土壌には、環境を守る上で大切な役割がありますが、その土地が個人の所有物だという問題があります。つまり、土壌は公共の財産としての性質を持ちながら、同時に個人の私有財産でもあるのです。

この二面性が、土壌汚染対策を進める上で、課題となることがあります。

④汚染原因の特定が困難

土壌汚染は蓄積性が高いため、場合によっては汚染の発生時期を特定することが難しく、汚染原因者を特定するのも容易ではありません。さらに、物質の有害性に対する理解が後から深まることも、原因追跡を困難にしています。

土壌汚染は、目に見えず、長期的に影響が続くという特徴があり、対策には様々な困難が伴います。これらの特徴を理解し、関係者間の連携を強化しながら、長期的な視点に立った対策を進めていくことが重要です。*1)

土壌汚染の影響

【人が有害物質に暴露される経路】

繰り返しになりますが、土壌汚染は目に見えない脅威です。 その存在に気づきにくいだけでなく、長期にわたって影響を及ぼし、私たちの健康を損なう可能性があります。

土壌汚染による代表的な影響を確認していきましょう。

汚染土壌の直接摂取による健康リスク

土壌汚染では、子供の砂遊びなどによる土壌の直接摂取が大きな問題となります。汚染された土壌を口に入れることで、有害物質を体内に取り込んでしまう恐れがあります。

また、風により巻き上げられた土壌粒子の吸入も健康被害のリスクがあります。

地下水汚染による健康リスク

土壌に蓄積された有害物質が地下水に溶け出し、その水を飲用することで健康被害を受けるリスクがあります。地下水の汚染は目に見えにくいため、早期発見が難しい課題となっています。

農作物・家畜への蓄積による健康影響

汚染された土壌で育った農作物や家畜に有害物質が蓄積し、それらを摂取することで健康被害につながる可能性があります。食料生産の機能を守ることも土壌汚染対策の重要な視点となっています。

これらの影響を未然に防ぐには、土壌汚染の早期発見と適切な対策が不可欠です。次の章では、土壌汚染の原因について解説していきます。*2)

土壌汚染の原因

土壌汚染の原因を知ることは、その解決のために非常に重要です。土壌汚染にはさまざまな原因がありますが、その多くは人為的な活動に起因しています。

人為的原因による土壌汚染

工場や事業所の操業によって、有害物質を含む液体や固体が不適切に処理されることにより、土壌が汚染される事例が多数報告されています。このような人為的な要因によって発生した土壌汚染は、周辺の環境や住民の健康に深刻な影響を及ぼすことがあります。

これらの有害物質は地下に浸み込んだり、不適切な処理によって地表に残留したりするため、適切な対策が取られなければ長期にわたって土壌を汚染し続けることになります。

具体的には、以下のような例が挙げられます。

有害物質を含む液体の地下への浸透

工場で使用する重金属※や揮発性有機化合物 (VOC)※などの有害物質を含む液体が、適切な処理をされずに地下に染み込むと、土壌を汚染します。

重金属

金属元素のうち、毒性が高く環境や健康に害を及ぼすもの。工場の廃液に含まれる重金属は土壌を汚染し、植物や水生生物に被害を与える可能性がある。

・鉛(Pb):塗料、ガソリン、バッテリーなどに使用

・水銀(Hg):電池、蛍光灯、温度計などに使用

・カドミウム(Cd)ニカド電池、メッキ加工などに使用

・六価クロム(Cr(VI)) 金属メッキ、皮なめし、顔料などに使用

などが代表的。

揮発性有機化合物 (VOC)

気体や蒸気として容易に拡散し、地下水や土壌に浸透して環境汚染を引き起こす有害物質。

・ベンゼン:石油化学製品、溶剤などに使用

・トルエン:塗料、接着剤、シンナーなどに使用

・キシレン:塗料、印刷インク、接着剤などに使用

・エチルベンゼン:塗料、インキ、樹脂などに使用

・スチレン:合成樹脂、断熱材などに使用

などが代表的。

有害物質を含む固体の不適切な取り扱い

廃棄物が、適切に処理されずに放置されたり、不法投棄されたりすると、土壌を汚染します。

自然由来の土壌汚染

日本列島は四方を海に囲まれ、多くの鉱山が存在しています。このため、もともと海底であった時期に海水を含んでいた土壌や、鉱石に由来する物質が表流水によって運ばれて堆積した地層に、砒素やフッ素、ホウ素などの有害物質が含まれていることがあります。

このような自然由来の土壌汚染は、地質的に同質な状態で広く分布しているのが特徴です。特に、

  • ヒ素
  • カドミウム
  • 水銀

などの重金属が問題視されています。自然由来の土壌汚染は、広範囲にわたって存在し、人為的な土壌汚染と比べて対策が難しいという課題があります。

水面埋立て用材料由来の土壌汚染

公有水面埋立法※により造成された土地では、水面埋立て用の材料として使用された水底土砂や建設残土に有害物質が含まれていた場合、土壌汚染が生じることがあります。この種類の土壌汚染は、埋立て時の材料選定や管理が適切でなかったことが原因となっています。

水面埋立て用材料として使用される材料には、海泥や浚渫土、建設残土などが含まれます。これらの材料の中には、重金属やVOCなどの有害物質が含まれている場合があり、適切な処理をしないと土壌を汚染する可能性があります。

つまり、法的に適切な手続きを経て建設された土地であっても、原材料の選定や管理が適切ではなかったために、土壌汚染が発生してしまうという問題が生じているのです。

公有水面埋立法

公有水面の適切な管理と保護を目的とした、公有水面(海や川など)の埋め立てや干拓を規制する法律。

実は、身近なクリーニング店や自動車修理工場なども、土壌汚染の原因となる可能性があります。これらの施設で使用される溶剤や洗浄液には、VOCなどの有害物質が含まれている場合があり、適切な処理をしないと土壌を汚染する可能性があります。

土壌汚染の解決には、まず原因を理解することが重要です。土壌汚染問題への関心を高め、また、事業活動や生活の中で、環境を守るためのルールを誠実に守ることが大切です。*3)

日本で過去に起きた土壌汚染事例

【不法投棄された産業廃棄物】

土壌汚染は、経済活動や開発行為にともなって数多く発生してきました。実際に起きた土壌汚染の事例をいくつか紹介します。

埋立材由来の土壌汚染が売買成立後に判明

ある関東地域の工業用地の所有者が、建物の老朽化により土地の売却先を探していた事例を紹介します。土地の売却先として、倉庫用地を探していた不動産業者との商談が成立しました。

事前に簡単な地歴調査を実施し、有害物質の取り扱いがないことを確認していたため、問題がないと判断して売買契約が締結されました。しかし、その後不動産業者が建設工事に着手しようとした際に、土地に有害物質の汚染が存在することが判明しました。

調査の結果、この土壌汚染は造成時に使用された埋立材料由来のものであることが明らかになりました。売買契約書には瑕疵担保条項(かしたんぽじょうこう)が記載されていたため、売り主である工場は6億円もの土壌汚染対策費用を負担することになりました。

このように、臨海部の土地売買では、地歴調査を行っても判断できない汚染が存在する可能性があります。過去にも、埋立工事の際に使用された鉱さいや建設残土に有害物質が含まれていた事例が報告されています。土地取引の際は、このような潜在的な土壌汚染リスクを十分に認識しておく必要があります。

リスク管理型対策によって土壌汚染対策費用を軽減した例

次は、関東地域の工業用地で、機械器具製造業の工場が閉鎖に伴い、土地の売却先を探していた事例を紹介します。この土地では、工場の操業時に使用された有害物質による重篤な土壌・地下水汚染が敷地の約6割で確認されていました。

このような深刻な土壌汚染が確認されたため、当初は掘削除去による対策を検討していましたが、対策費用が莫大になってしまうことから、なかなか買い手が付かない状況でした。

その状況で、大型商業施設用地としての購入希望者が現れました。ただし、その条件として、早期の店舗開店、地下水汚染の拡大防止、そして将来的な宅地転用の可能性が提示されました。

そこで、売り主は地下水汚染の拡大防止策として、遮水壁と透過性地下水浄化壁を設置することで対応しました。また、2mより浅い汚染土壌については掘削除去を行いました。

この「リスク管理型」の対策により、当初試算された対策費用の1/5まで圧縮することができました。その結果、土地の売買が成立し、現在では大型商業施設として有効活用されています。

ここで紹介したのは、過去に日本で実際に起きた土壌汚染の事例です。土壌汚染は目に見えにくいという特徴がありますが、身近な所でも起こりうる、誰にとっても決して他人事ではない問題なのです。*4)

日本における土壌汚染の現状

【汚染土壌処理業の許可件数(施設別)2016年】

土壌汚染は、必ずしも表面的に目立つものではありません。工場跡地の再開発などで、はじめて土壌汚染が明らかになることがあります。

例えば、長年の産業活動によって蓄積された重金属類や化学物質による土壌汚染は、案外身近な問題なのです。

土壌汚染の実態

環境省が把握する土壌汚染の調査事例は、1991年の土壌環境基準制定以降、年々増加傾向にあります。2002年度には一時的に大幅に増加し、2010年度にも再び増加しています。2014年度末までの累計では、約20,000件もの土壌汚染調査が行われ、そのうち約半数にあたる9,733件が環境基準値を超過していたことが分かっています。

土壌汚染の内訳をみると、工場や事業場の敷地跡地が6割を占めています。物質別にみると、トリクロロエチレンやテトラクロロエチレンなどの揮発性有機化合物(VOC)や、鉛、ヒ素などの重金属類が多くを占めています。

都市部の土壌汚染

都市部の土壌は、農地や森林などの自然土壌とは大きく異なる特徴を持っています。コンクリートやアスファルトなどの人工物質を多く含むため、土壌の性質が大きく変化しているのです。

また、人工的な土地造成が行われ、土壌の生物活動が著しく損なわれているケースも少なくありません。

土壌の性質変化の一例として、アルカリ化固結化※が挙げられます。こうした土壌では、本来期待されるさまざまな生態系サービスを発揮することが難しくなっています。

また、都市開発に伴う土地造成では、土壌の変化が十分に把握されないまま進められることもあります。構造物の下の土壌では、還元状態から酸化状態への変化により、土壌劣化が進行するケースがあります。

また、補修やインフラ更新時に、酸性化や侵食などの問題が生じる可能性も指摘されています。

固結化

土壌中の粘土鉱物や有機物が化学反応によって固まり、土壌が硬くなる現象。固結化によって、土壌の透水性や通気性が低下し、植物の根の伸長が阻害される可能性がある。

農業分野でも土壌汚染が問題に

近年、農業分野における土壌汚染も大きな問題となっています。特に、無機ヒ素による土壌汚染が深刻化しており、国際的な機関も対策に乗り出しています。

2012年、国際的な食品安全基準を策定するコーデックス委員会※は、精米に含まれる無機ヒ素の最大基準値を0.2mg/kgと設定しました。これは、従来の基準値よりも大幅に厳しい基準です。

コーデックス委員会

国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が共同で設立した、国際的な食品安全基準を策定する委員会。

無機ヒ素は、水稲の生育阻害や人体への悪影響が懸念されています。農林水産省では、水稲におけるヒ素のリスクを低減する栽培管理技術の開発など、対策に取り組んでいます。

このように、日本でも広範囲にわたる土壌汚染の問題が顕在化してきました。特に、産業活動に関連した土壌汚染は深刻で、再開発に合わせて汚染が発見されることも多くあります。また、農業分野のヒ素汚染など、見過ごされがちな問題も存在しています。これからも、様々な角度から土壌汚染の実態解明と対策が求められるでしょう。*5)

土壌汚染の解決法と対策

環境省の調査によると、有害物質を使用している、またはしていた事業場の約半数で土壌汚染が確認されています。つまり、有害物質を取り扱う企業にとって、土壌汚染のリスクは決して低くないのが実情です。

適切な対策を講じることで、環境保全と事業継続の両立が可能となります。

【有害物質を使用している(していた)事業場で発覚した汚染件数】

土壌汚染対策法

土壌汚染の深刻化にともない、対策の法制化の必要性が高まってきました。この流れを受け、2003年2月に「土壌汚染対策法」が制定されました。この法律の目的は、土壌汚染の状況を把握し、人の健康被害を防止する対策を実施することで、国民の健康を守ることにあります。

土壌汚染対策法では、まず対象となる特定有害物質を政令で定めています。特定有害物質には、

  • ヒ素
  • トリクロロエチレン

などをはじめとする、土壌に含まれることで健康被害を及ぼす可能性や、生態系に影響を及ぼす可能性のある25物質が指定されています。

この法律では土壌汚染の実態調査を義務付けています。有害物質を扱う施設の跡地や、地下水汚染が認められた地域などが対象となり、土地所有者に調査を命じることができるのです。調査の結果、基準値を超える汚染が確認された場合は、その土地を「指定区域」に指定し、公示することになります。

中小企業の土壌汚染対策

【土壌調査】

土壌汚染は、見つかりにくく見過ごされがちな環境問題ですが、企業にとって大きな影響を及ぼす可能性があります。そのため、中小企業においても、積極的に土壌汚染対策に取り組むことが重要です。

有害物質の使用・管理状況を確認

まずは、過去から現在までの有害物質の使用・管理状況を確認することから始めましょう。当時を知る社内の人材に聞き取りを行い、土壌汚染の可能性を把握することが大切です。

万が一、過去に不適切な管理があった場合は、早期の対策が求められます。

土壌調査の実施

場合によっては、簡易的な土壌調査を行い、汚染の有無を確認することが大切です。土壌汚染対策法に基づく正式な調査は指定機関が行う必要がありますが、自社で初期調査を実施することで、本格的な対策の必要性を事前に判断できます。

土壌汚染が確認された場合は、操業中対策の検討が重要です。汚染を完全に除去するのは費用がかかりますが、汚染土壌を管理する方法もあります。

地下水汚染のリスクがある場合

特に、地下水汚染のリスクがある場合は、モニタリングを続けながら、必要に応じて対策を講じる必要があります。汚染の拡大を防ぐことで、最終的な浄化コストを抑えられる可能性があります。

必要な知識が不足している場合は、指定調査機関や土壌汚染対策の専門家に相談しながら、最適な対策を検討しましょう。

土壌汚染問題は見過ごせば、企業経営に深刻な影響を及ぼします。中小企業においても、早期発見と適切な対応が不可欠です。自社の過去を確認し、必要に応じて専門家に相談しながら、着実な対策を進めましょう。

農業での土壌汚染対策

農業分野における土壌汚染対策は、安全な農作物を育むために非常に重要です。土壌汚染された農地で栽培された農作物は、カドミウム、銅、ヒ素などの有害物質を蓄積する可能性があり、人体への悪影響を及ぼす恐れがあります。

これに対し、農用地土壌汚染対策法に基づき、農林水産省と環境省が連携し、農業分野の土壌汚染対策に取り組んでいます。具体的には以下の対策が実施されています。

  • 農用地土壌汚染対策地域の指定:特定有害物質の量が一定基準を超えた地域を対策地域として指定
  • 農用地土壌汚染対策計画の策定:対策地域ごとに、汚染状況に応じた対策計画を策定
  • 対策事業の実施:汚染農地の復元や、農作物の汚染防止対策などを実施

しかし、農業分野における土壌汚染対策は、多くの課題を抱えています。

  • 全国の農地を調査し、汚染状況を把握する必要がある
  • 土壌汚染の除去には長期間かかる場合があり、継続的な取り組みが必要
  • 土壌汚染対策には高額な費用がかかり、財政的な負担が大きい

などが、主な課題として挙げられます。これらの課題を克服するためには、国や自治体、農家、企業などが連携し、技術開発や資金調達などに取り組むことが必要です。*6)

土壌汚染の解決法と対策で私たちができること

私たちが住む地域や社会を守るためには、一人ひとりが土壌汚染に目を向け、その実態と対策の重要性を認識することが肝心です。ごく身近なこの問題に目を向けないと、いつの間にか被害が広がっているかもしれません。

まずは知識を深める

土壌汚染の原因や影響について学ぶことは、問題の重要性を理解する第一歩です。インターネットや図書館などで情報を集め、信頼できる情報源から知識を得ることが大切です。

また、地域の環境保護団体や自治体が主催するセミナーや講演会に参加すると、専門家から直接学ぶよい機会になるでしょう。

廃棄物の適切な処理

家庭から出る有害な廃棄物(例えば、電池や電子機器、塗料など)は、適切に分別し、自治体の指示に従って処理することが重要です。これにより、有害物質が土壌に流れ込むのを防ぐことができます。

リサイクル可能な資源を分別し、リサイクルセンターに持ち込むなどをして、廃棄物の減少に貢献しましょう。

地域活動への参加

地域で行われる清掃活動や土壌保全活動に積極的に参加することで、直接的に環境保護に貢献できます。また、これらの活動を通じて、他の住民と協力し合うことができます。

学校や職場でも、環境保護に関するプロジェクトを提案し、みんなで取り組むことができます。

農業分野の土壌汚染対策のために

農業分野における土壌汚染対策は、行政機関だけでなく、私たち一人ひとりが取り組むべき課題です。消費者の以下のような行動が、土壌汚染対策につながります。

  • 安全な農作物を選ぶ:産地や栽培方法などを確認し、安全な農作物を選ぶ
  • 環境に配慮した農産物を購入する:有機栽培や無農薬栽培などの農産物を積極的に購入する
  • 食品ロスを減らす:食べ物を無駄にしないことで、農薬や肥料の使用量を減らす
  • 土壌汚染に関する情報収集を行う:土壌汚染問題について理解を深め、意識を高める

土壌汚染問題は、私たち一人ひとりの意識を変えることで、解決に向けて大きく前進することができます。無理なくできることから、取り組みを始めましょう。*7)

土壌汚染とSDGs

土壌汚染は、日本だけでなく、地球環境全体にとって深刻な問題です。この問題の解決は国連が掲げるSDGs( Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の達成においても非常に重要です。

SDGsの中には、環境問題、経済問題、社会問題など多岐にわたる課題が含まれています。壌汚染の解決に関連の深いSDGs目標を見ていきましょう。

SDGs目標2:飢餓をゼロに

土壌を資本とする農業は、世界中の多くの人々の食糧源を支えています。しかし、土壌が重金属や農薬で汚染されると、安全な食料生産が困難になります。汚染された土壌で育った作物は、有害物質を含む可能性があり、これが人々の健康を脅かすことになります。したがって、健康で栄養価の高い作物を生産するためには、土壌の浄化が不可欠です。

土壌汚染を解決することで、安全で栄養豊富な食糧の生産が可能となり、飢餓問題の解決に大きく貢献できます。

SDGs目標3:すべての人に健康と福祉を

土壌汚染は直接的に人々の健康に悪影響を及ぼします。例えば、鉛やカドミウムなどの重金属が含まれた土壌で育った作物を摂取することにより、慢性的な健康被害を引き起こす可能性があります。また、汚染された地下水を飲用水として使用することも健康リスクとなります。

土壌汚染の解決は、健康被害の予防につながり、人々の生活の質を向上させることができるのです。

SDGs目標6:安全な水とトイレを世界中に

土壌汚染は地下水汚染を引き起こす大きな要因の一つです。地下水は多くの地域で重要な飲料水源となっており、その汚染は深刻な健康問題を引き起こします。特に途上国では、安全な飲料水へのアクセスが依然として大きな課題です。

土壌汚染を対策することで、地下水の汚染を防ぎ、安全な飲料水の供給が確保され、目標達成に貢献します。

SDGs目標12:つくる責任 つかう責任

土壌汚染の多くは、産業活動や農業における化学物質の不適切な使用や廃棄物の無秩序な処理に起因しています。持続可能な生産と消費のためには、これらのプロセスを見直し、汚染の根本的な原因を取り除く必要があります。

持続可能な生産と消費の実現を通じて、土壌汚染を防止し、資源の効率的な利用が促進されます。

目標15:陸の豊かさも守ろう

土壌は生態系の基盤であり、植物や動物の生息地として重要な役割を果たしています。しかし、土壌汚染が進行すると、生態系が破壊され、生物多様性が損なわれます。これにより、食物連鎖や生態系サービスに重大な影響が及びます。

土壌汚染を防止・解決することで、生態系の健全性を保ち、生物多様性の保全に貢献することができるのです。

このように、SDGsの実現に向けた取り組みの中で、土壌汚染対策は欠かせない要素なのです。私たち一人ひとりができることから始めて、地域の環境保全と、地球規模の課題解決にもつなげていきましょう。*8)

>>各目標に関する詳しい記事はこちらから

まとめ

土壌汚染は、私たちの生活に欠かせない環境要素である土壌が、有害物質によって汚染される状態を指します。これには、工場や事業所からの有害物質の漏洩や不適切な処理、さらには自然由来の重金属汚染などが含まれます。

土壌汚染は目に見えないため、汚染が気づかれにくく、長期にわたって影響が持続します。そのため、土壌汚染の早期発見と適切な対策が不可欠です。土壌汚染の特徴をまとめると、

  • 体感しにくい公害:有害物質は地下に浸透するため、目視やにおいでは汚染を感じにくい。
  • 長期にわたる滞留・蓄積:土壌に浸入した有害物質は、長期間にわたり地域に留まることが多い。
  • 公共財と私有財産の混在:土壌は環境機能としては公共財ですが、土地そのものは私有財産であるため対策が難しい。
  • 汚染原因の特定が困難:汚染の発生時期や原因特定が難しく、過去の活動が問題となることが多い。

などが挙げられます。

土壌汚染による影響は、直接摂取や地下水汚染、農作物への蓄積などによる健康被害が問題になっています。汚染土壌が広範囲に広がり、問題が深刻化する前に発見し、迅速に対策を講じることが重要です。

土壌汚染は今後も続く可能性があります。都市化や工業化が進んでいる地域では、依然土壌汚染リスクが高い状況が続くでしょう。

また、世界的に見ると、先進国では全体的に改善傾向にあるものの、新興国の急速な経済発展に伴い、土壌汚染問題が世界的に深刻化する懸念があります。そのため、企業は自社の操業履歴を確認し、潜在的な土壌汚染リスクを把握する必要があります。

私たち一人ひとりも、身近な地域の土壌環境に関心を持ち、公的機関や地域団体と協力して対策に取り組むことが重要です。快適で持続可能な社会を実現するために、できることから、確実に行動を起こしていきましょう。

<参考・引用文献>
*1)土壌汚染とは
環境省『2 土壌汚染とは?』
環境展望台『環境省、平成30年度農用地土壌汚染防止法の施行状況を公表』(2019年12月)
経済産業省『中小事業者のための今すぐ始める土壌汚染対策』(2022年11月)
*2)土壌汚染の影響
環境省『1. 土壌汚染の特徴』
環境省『1. 土壌汚染の特徴』
環境省『土壌汚染対策法のしくみ』
日本経済新聞『環境保全しながら経済合理性のある土地活用を』
*3)土壌汚染の原因
環境省『土壌汚染による環境リスクを理解するために』
経済産業省『事業者の土地の利活用のための土壌汚染対策ガイド』(2018年3月)
環境展望台『土壌汚染調査』
農林水産省『[事例 1]養分過多の土壌が、農作物と環境に影響を与えていた』
経済産業省『土壌汚染対策のための技術開発事後評価の概要』(2016年1月)
日本環境協会『第1章 土壌汚染とは (1) 土壌汚染の種類』
*4)日本で過去に起きた土壌汚染事例
警察庁『第2章 生活安全の確保と警察活動 環境犯罪への対応』
環境省『令和4年度 土壌汚染対策法の施行状況及び土壌汚染調査・対策事例等に関する調査結果』(2024年4月)
環境省『令和3年度 土壌汚染対策法の施行状況及び土壌汚染調査・対策事例等に関する調査結果』(2023年4月)
日本環境協会『1.有害物質の取扱い-人為的な漏洩等によって新たな土壌汚染の要因をつくらないために-』
*5)日本における土壌汚染の現状
環境省『土壌汚染対策の現状と主な課題』
環境省『土壌汚染対策の現状と主な課題』
環境展望台『土壌・地下水汚染対策』(2017年9月)
環境省『環 境 省 「土 壌 汚 染 対 策 法」 に つ い て』
農林水産省『農地土壌の現状と課題』(2007年10月)
小林 剛『土壌汚染の現状と今後の課題』(2001年)
日本土壌肥料学会『都市域土壌の現状と課題 』(2020年9月)
*6)土壌汚染の解決法と対策
経済産業省『今すぐはじめる土壌汚染対策』(2022年11月)
土壌汚染対策法『土壌汚染対策法について(法律、政令、省令、告示、通知)』
土壌環境センター『土 壌 汚 染 対 策 と 情 報 開 示』
*7)土壌汚染の解決法と対策で私たちができること
農林水産省『農用地の土壌の汚染防止等に関する法律に基づく対策』
*8)土壌汚染とSDGs
国際連合広報センター『SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン』